歴史学を学ぶ大切さを伝えるブログ

歴史学は本来、世界主義やその調和の為に存在します。一国主義に留まりその為の単なる道具としてしか歴史学を見れないようでは歴史は歴史ではなくなります。本ブログはそれを踏まえた上で、歴史家としての正しい姿勢を伝える事です。


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神武天皇

神武天皇(wikiより) 月岡芳年「大日本名将鑑」より「神武天皇」 明治初期の版画


今回シリーズ記事とは関係ないものですが、ある種「ネット言論」を賑わすもののひとつとして「韓国の『日王』呼称問題」について論じてみたいと思います。


まぁ、「問題」というほどではありませんが、例えば韓国と「対立」している北朝鮮においては、殊に朝鮮学校に通っていた友人に至っては「普通に授業や勉強でも天皇(チョヌァン)と呼んでいた」としています。


つまりこれを「韓国限定の問題」として捉える上で考えていきたいと思います。



ネトウヨはよく、「天皇陛下を『日王』と貶める韓国が許せない!不敬罪だ」と日ごろから顔を赤くしているようですが、本当に「貶めているのか」と、私自身その根拠を述べてみようと思います。


実は日本ほど中華文明に嫉妬している国も数少ないです。


理由として「皇」に対する異常なまでの固執ぶりから容易に想像できますし、騎馬民族のような中土を征する軍事力もなければ、それまでずっと「列島」に閉じこもっていたわけで(少々の鎖国貿易など)、アジア地域に恒久的影響力を与えていたのかと言うと、豊臣秀吉の時に朝鮮に侵略したきり、一切をアジア地域に干渉することはありませんでした。それが近代になって、西洋の科学技術の力を借りて少しの「幸運」に恵まれましたが、その時はすでに中華(皇帝)を最上とする「アジア秩序」というものは、欧米列強の横暴により崩壊していました。


そうしたざっとした歴史的系譜の中において、日本の国学者や保守系諸氏のひとびとは、日本の王朝、つまりそれまでの「国の営み」というものを、天皇に行いに帰結する意味として「皇朝」と称して特殊性を主張しました。そして皆さまはご周知のとおりだと思いますが、ここで重要なキーワードがあがります。


そうです。「皇」という文字です。


これ自体「中華文化圏」の国々なら、安易に使ってよい称号ではなく、また「中華文化圏」だからこそ、誰もが使いたくてしょうがない「憧れの称号」でありました。



その理由は、中国で「皇帝制」が始まったときに、自国が中心となって、周辺国を「冊封国」とし名目的な「属国」として位置づけ、そうした国を「朝貢国」として、朝鮮や日本、東南アジアの国々を含め「中華文化圏」としました。それとは明確に対峙する満州やモンゴル、その他多くの種族が混淆する「騎馬民族文化圏」があって、北東南アジアは文字通り、「文化的には」終始中国が牛耳り、「武力的には」騎馬民族(馬を操り、高い戦闘力や機動力を擁する「国民皆兵」制度の集団)が圧倒していた世界でした。


つまるところ、「中華文化圏」の落とし子たちは、その「皇帝」という称号の価値をよく理解していました。ゆえに日本が「皇」という文字を使って、三皇五帝のひとつである「天皇」を引き出して、文字通りその国体の権威を中国から引き出した歴史にすべてを見るのですが、ゆえに「天皇」自体は中国の文化や権威から生み出された二次的称号なのです。


それが騎馬民族が生み出した、中華世界のトップである「皇帝」とは違う「可汗」号のような独自のものと比べて、既存の中国にあった言語概念から拝借したことにはじまって、中華ファミリーとして、堂々とその事実を認めたことになるのですが、ほとんどすべての日本人にその自覚はなく、本来「皇」という文字の価値も知らずに、自前のもの(自国の文化のもの)であると考えて、ただ素朴に「天皇」やその一族をで「皇族」と呼んだり、「天皇」が書いたり読み上げる文書(命令文含む)を「詔書」とし、また「天皇」が自らのことを「朕」で臣下の者に「陛下(帝・みかど)」と呼ばせ中華皇帝と「同等の立場」であると僭称してみたりと、「皇」「詔書」「朕」いずれも中華皇帝のみがその使用を許されるものでした(補足として、「今上陛下」という言葉も、本来中国の現治世の皇帝に対して臣民が使うもの)。



なので、私自身、上記のことを踏まえて、改めて「天皇」自体の定義だったり、日本国内にいれば絶対に認識させられるこれらの言辞に対して、強烈な違和感を持っているのはたしかです。


何で中国にその称号使用を認められない中華文明圏」の国が、その君主を「天皇」とか「皇族」というのか、いや「皇族」つったら中国の皇帝一族だろと、即座にそういった思考が自らの頭を駆け抜ける次第です。


この疑問自体は、今の「天皇」の明仁氏がリベラルとか、先の「昭和天皇」こと裕仁が戦争犯罪者だとかいったもではなく、そうした話以前の、日本が抱える「歴史的かつ非常に奇妙なファクト」として、我が国の君主のあり方について考えてみたことに由来します。


次回は、日本における「自国への認識」とその歴史的事実や思想を踏まえ、私なりにより深く掘り下げて終わりたいと思います。



<参考文献>


・『中国の歴史02 都市国家から中華へ 殷周春秋戦国』平勢隆郎著 講談社)

・『興亡の世界史05シルクロードと唐帝国』(森安孝夫著 講談社)

・『騎馬民族の思想』(豊田有恒著 徳間書店)

・『朝鮮-風土・民族・伝統-』(中村栄孝著 吉川弘文館)

・『ヨーロッパ思想入門』(岩田靖夫著 岩波ジュニア新書)

・『文化人類学入門 増補改訂版』(祖父江孝男著 中公新書)

・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房』

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