過熱するICOバブル
最近、これまで以上に、ICOが盛り上がっています。
Ethereumベースのプロジェクトでは、二桁億円や、三桁億円を数時間で調達、案件によっては数秒で調達ということが、立て続けに起こっていて、2017年は、ICOブームといえる年になりました。
しかし、一部で指摘されるように、現在のICO案件や、その資金調達は、健全な市場と言い難いことは間違いありません。
製品のプロトタイプも用意していない会社が、数十億円集めるよなケースも山ほどありますが、彼らが、一般のVCやエンジェル投資家から従来的な第三者増資で、出資してもらうとしたら、数千万円の調達が精々だろうと思われます。
現在起こっていることは、例えば、発行株式の時価総額が3億円の企業が発行するトークンが、その100倍の300億円のバリュエーションをつけたりしているような状況で・・非常におかしな話です。
しかし、ICOをして、トークンを発行が完了したら、その翌週には、取引所に上場し、売買され、値段がついているのが現状です。
また、それらのトークンには、株式と違ってPERやPBRなどの指標で定量的な割高・割安判断を出来ないので、このバブルの歯止めが中々つきません。
さらに、ここで今まで暗号通貨市場の外にいた人たちが注目しはじめていて、いわゆる、彼らは、ICOを、最近「発見」した人たちです。
起業家やベンチャーキャピタリストが目立つ印象です。
本来的なICOとは、分散型のプロトコルのためのものである
さて、そもそもICOとは、何なのでしょうか?
トークン(コイン)を発行して、資金調達をすることは確かにそうなのですが、比較的長く暗号通貨に関わっている人は、最近のICOという言葉の使われ方自体にも違和感を感じるのではないか、と思います。
従来的な意味でのICOという資金調達手段は、Decentralizedのプロトコルや、DAO(decentralized autonomous organization)のプログラムの構築のためのものでした。
例えば、Ethereumや、Factom、The DAOなどがそれにあたります。
これらは、株式会社という形態の組織ではないですし、そのプロジェクトやプロトコル上の意思決定や、利益配分に、トークンが用いられてきました。
それに対して、今、ICOに注目しているのは、一般の株式会社という形態をとった組織を経営する人たちで、事情が随分異なります。
たしかに、パブリックで資金調達ができて、株式を引き渡すことなく、資金調達を出来る可能性があるのだから、起業家としては魅力的ではあります。
しかし、その場合、投資家が資金と引き換えに得る、発行されたトークンの価値の担保は、何になるのでしょうか。
トークンに対して、配当など将来的な利益を結びつけることは、現在の日本の法律では不可能です。
となると、ほとんどは、発行会社の商品と交換という形や、提供されるサービス内で利用できるポイントみたいな利用のされかたが、ほとんどであろうと予想されます。
それを企画段階の、プロダクトが出来る前に発行するのですから、いわば、前売り券みたいな扱いが精々です。
そして、前売り券の二次流通市場ができます。
少なくとも、これを「投資」というのは、質が悪いと言えるでしょう。
そういった意味で、一般の株式会社が、ICOをする合理性は、ほとんどのないというのが、僕の考えです。
もし、一般企業が、発行するトークンが価値を持つとしたら、そこに将来的な利益の還元や、株式の転換などがつく場合、つまり「配当型」が、ほとんど唯一の解であると、個人的には思っています。
ですが、前述のように、トークンに将来的な配当を唄って、発行することは、少なくとも現在の日本の法律では、違法です。
そういったことも含めて、一般企業が、ICOを行う合理性はあまりないのですが、ICO礼賛の空気感には、違和感を感じることは少なくありません。
一般企業がICOを利用する可能性の全てを否定は全く無いのですが、健全な発展がされれば良いと願っています。