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【コラム】

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 きのうも長崎では、午前十一時二分に、サイレンの音が響きわたった。原爆投下のその時に合わせ黙祷(もくとう)をするためのサイレンだ▼長崎県内に住む吉田美和子さん(66)は三十三年前、その音を夏風邪で伏せっていた床で聞いた。静かに目を閉じ、合掌をしていると、おなかの中で日に日に大きくなるわが子が動き始めた。思わず両の手でおなかを包んだ▼そのとき…<ふいに サイレンの響きとはちがう/無数の唸(うな)りが/私の耳の中を 揺さぶっていく/あの日 あの時/母の温(ぬく)もりの中で/守られていた 小さな生命が/声ひとつ あげる間もなく/吹き飛ばされ 風と化していった…>(『原爆詩一八一人集』)▼産声を上げることもなく、風になった赤ちゃんが何人いたことか。きのうの平和祈念式典で長崎市長は、各国の指導者らに、語り掛けた▼「遠い原子雲の上からの視点ではなく、原子雲の下で何が起きたのか、原爆が人間の尊厳をどれほど残酷に踏みにじったのか、あなたの目で見て、耳で聴いて、心で感じてください。もし自分の家族がそこにいたら、と考えてみてください」▼吉田さんは<ピカドンによって生まれた 小さな風たちよ/…この世のすべての人を 揺さぶる風になれ/…おろかなあの日を 知らしめる風になれ>とうたった。「もし自分の家族が…」と考えれば、小さな風の声が聞こえるはずだ。

 

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