【内容についても下の方で考察しています】
ここ数日あまり良くない方向で話題になっている本書。
どんなものかと目を通して見ての感想を一つ。
例えばこれが小説であったなら評価は変わったかもしれません。
ですがこれは「ビジネス書」であります。
ビジネス書、言い換えれば指南書であり、読者はこれを読んで著者から何かを学ぶわけです。
であれば、「著者がどんな人物か」は書籍を購入、評価する上で一つ重要な要素であると考えます。
今回色々と騒動になっていますが、著者のSNSのフォロワー数やお気に入りユーザー数を見るに、
騒動が広がること著者は考えなかったのかな?とまず思いました。
情報が拡散し騒動が大きくなって炎上なんて事例は過去にいくらでもありますし、
今のご時世良いことも悪いこともすぐに広がってしまうもので、リスクマネジメントは大事ですね。
騒動の前に読んでいたら私の受ける印象も変わったかもしれませんが、騒動で本書を知った身としては、
「あの騒動の渦中の人物が書いたコンサル本」という印象を持ったまま読み進めまることになり、
書いてある内容に一々疑問を持ってしまいました。
(他にも理由はありますがそれは内容についての部分に書きました)
ストーリー部分に関しては、異世界のフィクションとしてまあ割り切って読むこともできなくはなかったのですが、
各節間に挿入される「この節のまとめ」に関して、「この著者が言ってることだし……」と読む度に思ってしまい、
ページを進めるうちにだんだんとストーリー部分も読む気がなくなっていきました。
【内容について】
恐らく高校生などに向けたビジネス入門の入門として作られたものだと思います。社会人にはキツいと思います。
入門書としてもいかがなものかというところもあり、例えば、一章一節の鏃を購入する部分ですが、
メリットばかりで、裏にあるデメリット(この場合は鍛冶屋の利益低下)について何も書かれていません。
「AをするとBという問題があるが、こう考えてこうした。結果ここは良かったここは悪かった。では読者も考えて」でなく、「Aをして利益も出たし絆も深まった。良かったね」とコンサルして良いことしかなかった様に書くのはフェアではないと思います。
ビジネスについての知識がなく視野も狭い学生に勧めたいのならそのあたりは考慮すべきだったと思います。
また、コンサルタントとしてクライアントである冒険者の利益優先なのは分かるが、
鍛冶屋に単価を1/10にまで下げさせては廃業になり、将来的に冒険者が不利益を被るというリスクがある。
コンサルタントとして経験豊富な主人公がそれに気付かないのはおかしな話です。
主人公のは、1回コンサルして「はい利益出ましたね?では次の方」という様なタイプではないと思いますが、
であるならば、経験や性格から考えて将来的なリスクも同時に考えていた方が違和感もなかったと思います。
【考察】
「冒険者の利益になることでも、鍛冶屋にとっては不利益になることもある」の部分について、
以下、本書では書かれなかった考察を冒険者と鍛冶屋それぞれに分けてしておきます。
素人の私でも気付くことが多いので専門の方ならより多く気付くのではないでしょうか。
冒険者
・大ロット購入(100本)により単価は1/10に下がった。
・一方、必要数(30本)以上に購入するため在庫が発生するが、その点については何も書かれていない。
・サラとキンバリーで50本:50本で分けたとして、今回不要な20本はどこかに保管するか持ち運ぶかする必要ある。
・保管する場合、倉庫を借りるには倉庫使用料、宿に置くには宿泊料がかかる。安宿の場合は盗難のリスクがある。
・持ち運ぶ場合は、それなりに激しく動くため、紛失のリスクがある。
この世界の相場や鏃の形状が分かりませんので、大ロット購入にメリットがあるかは私には判断できません。
鍛冶屋
鍛冶屋の背景については何も書かれていません。
鍛冶屋の鏃の在庫状況や客層、購入頻度、冒険者の死亡率や年間の登録数が不明ですが、
・100本買う大口顧客があると言えるが、利益は低く死亡率が高ければ数回の取引で終わる客とも言える。
・不良在庫として大量に抱えているならともかく、小ロットの客層が多ければ、100本を1/10の価格で1人に売るより、価格そのまま10本ずつ10人に売った方が利益が出る。
・安いと口コミが広がった場合、その価格で購入する客が増えて更に利益が下がるし、学がない冒険者が多い様なので「差額を返せ」などのクレームが発生する可能性がある。(クレームは難癖かもしれませんが)
・経営状態が分かりませんが、よほど儲けていたならともかく、利益が減りすぎると廃業の可能性があり、それはイコール冒険者の購入先が減ることになる。
・同じようなことが起こり購入先が減り続けると鏃の需要に対して、供給が追いつかなくなる可能性がある。
こちらも同じく判断材料に乏しいですが、それなりに不利益が大きいように思います。