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日本でも世界でも1日100円台でスマホが定額利用できるAIRSIMの可能性:海外スマホよもやま話

Apple SIMを超えた格安グローバルSIMがやってくる

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スマートフォンを使うためにはSIMカードが必要だ。しかしそのSIMカードを日本で契約しなくとも、海外で買って自分のスマートフォンに装着するだけで利用でき、しかも料金は毎月3000円台で済ませることができたら、何かと便利かもしれない。香港のMVNOキャリアが発行する「AIRSIM」なら、そんなことが出来るのだ。

iPadに入れておけば、どの国でもリーズナブルな価格でデータ通信ができるアップルの「Apple SIM」。しかしiPhoneでは使えず低料金も一部の国だけと利便性はあまり高くないかもしれない。しかしそんなApple SIMと同様のソリューションでどこの国でも格安通信できるSIMが登場した。日本にいながら、日本のキャリア契約も不要でスマートフォンを使うことができるかもしれない、新しいSIMの可能性を見てみよう。
▲香港キャリアが販売するAIRSIMは日本を含む世界80カ国で使える

香港のMVNOキャリアの信京電訊が販売するAIRSIMは、世界約80カ国で利用できるSIMカード。という話を聞くと「関係ない」と思われがちだが、日本人が日本でも利用することができるのだ。AIRSIMをスマートフォンに入れれば、対応国のどこでも通信できる。日本のキャリアとの契約無しで、このAIRSIMだけで毎日スマートフォンを使うことも可能なのである。

とはいえ料金が高ければ使うメリットはないだろう。AIRSIMの料金は日本の場合、1日20香港ドル(約283円)から9日90香港ドル(約1280円)まで5種類のプランがある。9日プランを契約すれば1日あたり10香港ドル(約142円)で使うことができる。1日の区切りは利用開始から24時間。1日あたり500MBまで高速通信が可能で、それ以降は256Mbpsへと速度制限される。

このAIRSIMを1ヶ月に3回更新すれば27日間で3840円。この価格を見て「日本のMVNOのほうがお得」という声があるだろう。だがこのAIR SIMは、契約不要のプリペイドSIM。最低契約期間は無いし、使わないときは寝かせておけばいい。しかも日本ではなく香港キャリアが発行したSIMなのである。日本にいながら、日本のキャリアと契約せずとも、この料金で使うことが出来るのだ。

▲AIRSIMを入れれば80カ国で自在に使える。なお利用にはアプリが必要だ

AIRSIMが本来の本領を発揮するのは世界各国を旅行するときで、日本以外の国でも各国のデータプランを購入して利用できる。つまり自分のスマートフォンにAIR SIMを入れておけば、どの国へ行ってもリーズナブルなデータ料金を利用することができるというわけだ。冒頭ではAIRSIMの特徴を説明するために日本での利用を例に挙げたが、AIRSIM本来のメリットは世界各国どこでもSIMの入れ替え無しで使えるという点にある。海外用のルーターレンタルを利用したり、大手キャリアの国際ローミングサービスを使う必要もない、夢のようなSIMなのである。

▲各国のデータパッケージ購入はアプリ画面から簡単に行える

とはいえ実際に使ってみると、現実的にはまだまだ使い勝手は悪い。AIRSIMの購入は現時点では香港のみで、なんらかの方法で入手する必要がある。SIM入手後はスマートフォンにアプリを入れ、SIMの登録を行えばすぐに利用可能になり、料金の追加は日本のクレジットカードでも100香港ドル(約1420円)単位で可能。とにかく一度AIRSIMさえ入手すれば日々の運用は問題なさそうだ。とはいえデータパッケージを買う場合はアプリを利用するので、AIRSIM以外のデータ通信回線が必要である。まあこれも現地到着前にあらかじめパッケージを買っておけばいいだろう。しかし実際に海外へ行って端末の電源を入れてみると、どうもうまくいかないことがあるのだ。

▲夢のSIMと思いきや、電波を拾ってくれず「圏外」表示

あらかじめデータパッケージを買っておき、AIRSIMを入れた端末の電源を海外の現地で投入しても、通信キャリアの電波をなかなか拾わず「圏外」表示のままのことが何度もあった。また本来利用できないキャリアを拾ってしまうこともあった。その際は電源をON/OFFしてからスマートフォンをしばらく放置するなど、ひたすら待たねばならない。これはAIRSIMがクラウド側にキャリア情報を持つ「クラウドSIM」として動作するからで、AIRSIMが現地の電波を掴み、クラウド側で利用可能なキャリアに切り替わるまでに時間がかかってしまうのである。

そのため飛行機を降りてスマートフォンの電源を入れれば、即座に現地キャリアと接続して使い始める、とはならないことが多々あった。筆者は中国や韓国、台湾、日本でAIR SIMを試してみたものの、「圏外」表示でなかなかキャリアを掴まないケースがあったり、他のキャリアを拾ってしまい、そのまま1日放置してもキャリアが切り替わらないこともあった。ただし1度使えるキャリアを拾い、データ通信が可能になればその後は別のキャリアに切り替わってしまったり、圏外表示になることはなかった。繋がれば安定する、しかし繋がるまでに一苦労するケースが多々あったのだ。

▲中国訪問時、この時は中国移動の電波を拾うまでに1時間ほどかかった。速度はそこそこ出る

一番困ったことが、AIRSIMの発行元である香港での利用だ。香港では中国移動香港(China Mobile HK)の電波を掴まねばならないのだが、筆者の自宅では電波が弱いためか、必ず別のキャリア、3HK(Hutchison)を掴んでしまう。こうなるとお手上げで、電源ON/OFFをしたところでどうにもならない。

なおAIR SIMのアプリでは、各国の料金選択時に現地でどのキャリアと接続できるかが明記されている。あらかじめスクショを取っておくなりしてメモしておけば、AIR SIMが使えない時の助けになるはずだ。しかしAIRSIMは「違うキャリアを掴んでしまった時は、手動で本来のキャリアを掴みなおせばいい」という、一般的な常識が通用しない。クラウド側との接続情報が切り替わらない限り別のキャリアの電波を掴むことすらできないのだ。

サポートに確認すると、iPhoneなら設定画面から電話 SIM App AIRSIMと開き、Switch to primary SIMをタップすることで、クラウド側でのSIM切り替えが行われるという。これで即座にうまくいく場合もあるし、やはり時間がかかる場合もある。どうにも動作が不安定なのだ。
▲香港で3HKを掴んでしまったため(左)、SIM設定を変更(中)、しばらくして中国移動香港に切り替わった(右)。しかしこれがうまくいかない時もあった

AIRSIMアプリの各国情報を見ると、それぞれの国ごとに現地キャリアの電波を掴むためAPNは異なるが、iPhoneならば自動設定される。しかしよく見てみると、APNの設定が「3gnet」「mobile.lte.three.com.hk」など、同じ設置の国がいくつかある。このAPNはそれぞれ香港のキャリア、中国聯通香港と3HKのものだ。

つまり一部の国では現地キャリアSIMに切り替わるのではなく、香港SIMのローミングとして動作するのである。中国聯通香港は世界40カ国データ統一プランを出すなどローミングパッケージは多彩で、3HKもローミング料金は安い。AIRSIMは国によっては現地SIMではなく、香港のローミングに強いキャリアのSIMとして動くのだ。ちなみに日本でもソフトバンクの回線を利用するが、APNは3gnetで中国聯通香港SIMとしての利用となる。

▲日本(左)はソフトバンク、韓国(中)はSKテレコム、中国(右)は中国移動の回線を利用するが、APNはそれぞれ香港キャリア、しかも別々のキャリアのもの

ところでアップルのApple SIMはどこの国へ行ってもSIMを入れ替えずに格安な現地料金が使えるという触れ込みだったが、現地回線を直接利用できるのはイギリスやアメリカ、日本など一部の国のみ。それ以外では世界共通料金のグローバルローミングキャリアの回線を使うため、料金は思ったほど安くはない。一方AIRSIMは現地キャリアに加え、各国ごとにローミングが安い香港キャリアを利用することで、どの国でも現地価格に近いデータ利用金プランを提供している。

▲新たなクラウドSIMが香港から登場

すでに世界各国で利用できるモバイルルーターが1-2年前から登場しているが、スマートフォンに入れるだけで使えるSIMカードの方が使い勝手は高い。香港ではAIRSIMに続き、別のキャリアからも同様なクラウドSIMの販売が始まっている。いずれはスマートフォンメーカーがこれらのSIMを入れて販売する、という動きも始まるかもしれない。

実は中国では各社のスマートフォンにeSIM(Embedded SIM)が組み込まれている。さすがに国内での利用には国内キャリアのSIMを入れる必要があるが、海外に行く際はスマートフォンメーカーが提供する低価格な各国プランを利用できるのである。

▲OPPO R11に内蔵されているグローバルeSIM。SIMを入れなくても各国で利用できる

AIRSIMはまだ完成度が低く、万人に勧められる製品ではないと感じた。しかし「スマートフォンを買ったら電源を入れるだけで、リーズナブルな料金でどの国でも使える」時代は着々と近づいている。スマートフォンの料金は国内キャリア同士の争いだけではなく、海外利用も含めたグローバルキャリアとの戦いがこれから始まるかもしれない。

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