「中野 地盤沈下最大14センチ」 北陸新幹線トンネル建設
北陸新幹線(長野経由)高丘トンネル(延長6・9キロ)建設に伴う中野市安源寺地区周辺の地盤沈下問題で、地表面が最大14センチ沈んでいたことを示す文書があることが6日、信濃毎日新聞の取材で分かった。文書は、建設主体の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の職員が2008年にまとめた論文。同機構長野管理部(長野市)は、沈下に関するデータについて「施工管理のために計測したもので公表はしない」と説明。市や地元住民にも伝えていない。
京都大に提出した学位論文(博士)で、これによると03年8月〜06年4月に同機構飯山鉄道建設所長を務めていた職員が執筆した。
論文は、同地区を含む880メートルのトンネル掘削で得られたデータを、地質構造上の特徴を踏まえ9区間に分けて分析。地区内には地表面が最大14センチ沈んだ地点があったほか、区間ごとの沈下量の平均も2・9〜13・2センチだった。
論文によると、弱い地盤に造ったトンネル自体が沈み、上部の土が緩んで地表面が沈下。トンネルの直上が最も大きく沈下し周囲の地表面が傾いたため、地上の家屋がゆがんだとみられる。
一帯の土被(どかぶ)り(トンネル上部から地表までの距離)は最も浅くて20メートルほどで、トンネルの沈み込みが地表に強く影響。一帯には比較的軟らかい「豊野層」が分布している上、地区内には断層運動の影響で地盤が波状に曲がっていたり、たくさん亀裂が入ったりした脆弱(ぜいじゃく)な区間があり、こうした場所では特に地盤沈下が大きかった。
本紙の依頼を受け論文を分析した地質コンサルタントの塩野敏昭氏(60)=長野市=は「トンネルが沈み込んだことで、その上部の地盤にゆるみが生じ、地表面も沈んだのだろう」と指摘。同機構は地盤沈下を防ぐ複数の補助工法を用いたが、塩野氏は「一定の効果はあったと思うが、それで対処しきれないほど脆弱な地盤だったのではないか」とみる。
同機構広報課は取材に、元所長の論文について「培った技術を継承するため、職務上知り得た情報を基に個人として執筆した」と説明。内容に関し「機構として回答することは控えたい」とした。
一方、家屋補償を受けた住民の一人は、交渉の際に具体的な沈下量の説明を受けていないと明かした上で「これほど沈んでいるのは恐ろしい。情報を持っているなら、しっかり開示した上で補償の話もするべきだった」と述べた。
(8月7日)
京都大に提出した学位論文(博士)で、これによると03年8月〜06年4月に同機構飯山鉄道建設所長を務めていた職員が執筆した。
論文は、同地区を含む880メートルのトンネル掘削で得られたデータを、地質構造上の特徴を踏まえ9区間に分けて分析。地区内には地表面が最大14センチ沈んだ地点があったほか、区間ごとの沈下量の平均も2・9〜13・2センチだった。
論文によると、弱い地盤に造ったトンネル自体が沈み、上部の土が緩んで地表面が沈下。トンネルの直上が最も大きく沈下し周囲の地表面が傾いたため、地上の家屋がゆがんだとみられる。
一帯の土被(どかぶ)り(トンネル上部から地表までの距離)は最も浅くて20メートルほどで、トンネルの沈み込みが地表に強く影響。一帯には比較的軟らかい「豊野層」が分布している上、地区内には断層運動の影響で地盤が波状に曲がっていたり、たくさん亀裂が入ったりした脆弱(ぜいじゃく)な区間があり、こうした場所では特に地盤沈下が大きかった。
本紙の依頼を受け論文を分析した地質コンサルタントの塩野敏昭氏(60)=長野市=は「トンネルが沈み込んだことで、その上部の地盤にゆるみが生じ、地表面も沈んだのだろう」と指摘。同機構は地盤沈下を防ぐ複数の補助工法を用いたが、塩野氏は「一定の効果はあったと思うが、それで対処しきれないほど脆弱な地盤だったのではないか」とみる。
同機構広報課は取材に、元所長の論文について「培った技術を継承するため、職務上知り得た情報を基に個人として執筆した」と説明。内容に関し「機構として回答することは控えたい」とした。
一方、家屋補償を受けた住民の一人は、交渉の際に具体的な沈下量の説明を受けていないと明かした上で「これほど沈んでいるのは恐ろしい。情報を持っているなら、しっかり開示した上で補償の話もするべきだった」と述べた。
(8月7日)
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