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「ミドリガメが餌をあまり食べません」

  • 文 塩谷亮
  • 2014年5月12日

写真:     

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 「去年の夏に買ったミドリガメですが、暖かくなってきたのに餌をあまり食べません。ずっとリビングで飼っていて、特に保温器具は使わず室温のままで飼育していました。冬眠はせず冬の間も日中は動いていたし元気そうだったのですが。」

●まず正しい飼育環境を整える

 春先からこうした問い合わせが多くあります。基本的な飼育環境の設定に間違いがあった状況ですね。

 まず、水中にはヒーターを入れて水温を25度前後に保つこと、陸上には小さなもので良いですからレフランプなど、やはり熱を供給するものを設置してください。

 もし照明器具が付いてないようでしたら爬虫(はちゅう)類飼育用の紫外線を含んだランプの設置も必要です。

 この2つのランプは朝つけて夜には消灯します。まず、このような飼育環境を整えることが最初の段階となります。

●体調が悪化した理由

 ここで、このようなことがなぜ起こるのかをご説明しておきます。

カメを含む爬虫類は外温性の動物で自ら体温を作り出すことができず周りの環境温度によって体温が変化します。

体温の上下によって食べたものの消化吸収、代謝、免疫などが大きく影響をうけます。

 ご質問の場合は、人間が起きている日中はエアコンなどで温度が高くなっているためにカメの体温も上昇して活動しています。しかし人間が寝てしまい暖房が切られると部屋の温度が下がってカメの体温も下がる、ということを毎日繰り返してきた訳です。

 実はこうした環境は生き物の体力を非常に消耗させ内臓(特に腎臓)に負担をかけます。

 ただ爬虫類はわれわれ人間と比べて代謝のスピードが遅いので冬の間にはそのダメージは表面化せず、本格的に気温が上がって代謝が活発になったときに体調が悪化することが多いのです。

●さまざまな形でダメージを回復させる

 冬眠というのは、このような生理を持った動物が活動できないほど低温になるためにこうした季節をやり過ごすための習性です。

 野生化では過ごしやすい場所を選んで越冬するのですが、それができない飼育下においては年間を通じて快適な温度環境を提供することが直接健康に結びつくと考えてください。もし、どうしても冬眠させたいということであれば、玄関や物置など暖房の影響を受けない場所で凍りつかない程度の温度を保(たも)てる場所で行います。

 餌に関しては、人工飼料の食べが悪いようであれば冷凍のアカムシ(観賞魚用の餌として市販されています)や、やはり冷凍のむきエビ(これは人間用です)といった生ものを試してみましょう。

 さらに個体の状態によっては市販の爬虫類用の総合ビタミン剤を飼育水に溶かして与えることも有効です。この場合は水質の悪化が早いのでこまめな水換えが必要です。

 さまざまな形で一冬の間に受けたダメージを回復させることをお考えください。

PROFILE

塩谷亮(しおたに・りょう)

日本ペット&アニマル専門学校講師、つくば国際ペット専門学校講師。幼少時より様々な動物に関心を持ち、採取~飼育に明け暮れる。玉川大学農学部農学科卒業後、大手総合ペットショップに入社。水草専門店舗に始まり、総合ペット店舗店長、統括バイヤーを務めた後に独立し、ペットショップ経営も行った。現在は、各種爬虫類の繁殖技術の確立、原稿執筆、セミナー講師などを中心に活動中。