【巨人】サヨナラムード一瞬…代走・重信、ベース踏み忘れでゲームセット
巨人は1点を追う9回、中日のアピールプレーによって突然の試合終了。痛恨の黒星を喫した。1死一、二塁、坂本勇の大飛球を中堅・大島が好捕した際、一塁走者の重信が二塁を回りながら、一度踏んだ二塁ベースを踏まずに一塁へ帰塁。アピールアウトとなった。阿部対岩瀬のしびれる勝負を前にゲームセットとなり、G党のモヤモヤは募るばかり。巨人は7試合連続の2ケタ安打を放ちながら、3カードぶりの負け越しとなった。
突然の幕切れに、大勢の目が点になった。1点を追う9回2死一、二塁。打席には2000安打へ歩みを進める阿部が入った。岩瀬とのベテラン対決にスタンドが沸き、同点、逆転への機運が満ちていたその時、中日のアピールプレーによって、まさかの3アウト、ゲームセットが宣告された。騒然とする東京ドーム。審判の説明後、敗戦を受け入れた由伸監督は、あきれた様子で問題の場面を断じた。
〈由伸監督〉「ルールの問題。(代走が)仕事というかルールだからね。仕事の問題じゃない。野球選手としての問題でしょう」
言葉の矛先は、失態を犯した重信に向けられていた。9回1死一、二塁。坂本勇が放った右中間への大飛球を中堅の大島が好捕した。代走で起用された一塁走者の重信は、打球が抜けた際の本塁生還を狙って二塁を回っていたが、一度踏んだ二塁ベースを踏まず、空過して一塁へ帰塁。中継プレーに向かった一塁手のビシエドと中日ベンチが、決定的瞬間を捉えていた。
一度はボールデッド時のアピールとして不成立に終わったが、2死一、二塁で再開後、マウンドの岩瀬が二塁の堂上にボールを送り、アピールプレーが成立。事態をのみ込めないファンから「慎之助」コールが鳴り続く中、有隅二塁塁審はマイクで場内に説明を行った。
〈有隅二塁塁審〉「重信選手が二塁ベースを越えたあと、二塁ベースを踏んで(一塁に)帰らなければならないところを、空過して帰りましたのでアウトとして、試合を終了いたします」
公認野球規則には「逆走しなければならないときも、(中略)すべての塁を逆の順序で、再度触れて行かなければならない」と定められている。「本人が(帰塁時に)もう1回踏まないといけないと分かっていたかが重要」と大西外野守備走塁コーチ。村田ヘッドコーチは「説明しなかったこっちの責任もある。教えていないオレらが悪い」と責任をかぶった。
仮にルールを完全に把握していなかったとすれば、ミス以前の問題。無言で帰宅した重信に対し、由伸監督は「しっかりしてもらわないと困る」と苦言を呈した。8日からは2位の阪神、首位の広島と計6連戦。プロ野球記録を更新する7試合連続3本塁打以上はならなかったが、7戦連続2ケタ安打は10年ぶりと打線の好調は続いている。ボーンヘッドで手放した流れは、勝って取り戻すしかない。(宮脇 央介)
◆ミスターや慎之助も 巨人選手が一塁走者で、続く打者の外野への打球に二塁を回るも、フライアウトになって帰塁する際に二塁を踏み直さずにアピールアウトになった例としては、最近では13年8月29日の阪神戦(東京D)の阿部(チームは3―2で延長10回サヨナラ勝ち)がある。だが、有名なのは長嶋茂雄。〈1〉60年6月25日の広島戦〈2〉64年5月21日の中日戦〈3〉68年5月16日の大洋戦と3度もあった。長嶋は58年9月19日の広島戦で、左中間にアーチを放つも一塁ベースを踏み忘れ、本塁打を取り消されたこともある。