中東のエジプトで、中国の少数民族でイスラム教を信仰するウイグル族の留学生などがエジプト当局に拘束されたり、中国に強制送還されたりするケースが相次いでいて、アメリカ政府の諮問機関は「ウイグル族に対する無責任で敵対的な行動だ」と強く非難する声明を出しました。
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によりますと、エジプトでは、先月上旬以降、中国からイスラム教を学びに来ていた、少数民族のウイグル族の留学生など少なくとも62人が、エジプト当局に拘束されたり、中国に強制送還されたりするケースが相次いでいるということです。
人権団体では、その背景として、中国政府がことし6月、エジプト政府に対し、ウイグル族などが過激な思想を持っているとして、取締まりの強化を求めたことがあると分析しています。
こうした状況について、宗教の自由に関するアメリカ政府の諮問機関は、3日、声明を発表し、拘束や強制送還されたウイグル族が200人に上るという報告もあると指摘したうえで、「ウイグル族に対する無責任で敵対的な行動を強く非難する」として、エジプト政府に対し、拘束や強制送還の停止を求めるとしています。
イスラム教を信仰するウイグル族をめぐっては、中国政府が「反テロ」を名目に抑圧的な宗教・民族政策を進めているとして、ウイグル族の人たちの間で反発が広がっており、中国国外に逃れる人が増えています。
取締りを逃れた男性は…
エジプト当局の取締まりを逃れ、知人の自宅などを転々としているという中国出身のウイグル族の男性が、先月、NHKの取材に応じ、ウイグル族の人たちが置かれた状況などを明かしました。
この男性は、イスラム教を学ぶため、17年前に中国からエジプトにやってきたといい、その後、呼び寄せた家族とともにエジプト国内で生活していました。男性によりますと、先月上旬、エジプト当局が、ウイグル族が経営しているレストランや自宅などに押しかけ、ウイグル族の人たちを一斉に拘束したということです。
この男性は、家族を置いて逃げたということで、「自宅に戻ることもできず、家族とは会えていません。知人の家に隠れ、外出はできない状況で、家族とは連絡すら取れません」と当局の取締まりから逃れている状況を説明しました。そのうえで、「私たちを保護してくれる国が出てくることを期待していますが、今のところそうした国はなく、失望しています」と、苦しい胸のうちを明かしました。