健在、日本に入荷しているポリプテルスの種類は分類学上、正式に記載されているもので14種。SP.コリバのように、新種や新亜種ではないかと言われているものは今のところ正式な記載がないのでカウントしていません。正式に記載自体はあるものの採集や流通の関係で入荷のない種類はポリプテルス・ビキール・カタンガエ、ポリプテルス・パルマス・パルマス、ポリプテルス・セネガルス・メリディオナリスの3種になります。
これら3種の未輸入種もしばしば「国内初入荷」とか言うことでニュースになっていますが、残念ながらどれも本物ではないようです。
まずカタンガエについては、ぱっと見た感じで明らかにコンギクスで、試しに背中線鱗数を数えてみたところ11枚でやはりコンギクスでした。もちろん鱗数などが記載文にある範囲を超える事は珍しくないのですが、カタンガ産のコンギクスはこれまでに何度も入荷しており、それらの個体を参照してもやはりカタンガエであるという材料は発見できていません。そもそもカタンガエはエンドリケリーの亜種ではなくビキールの亜種ですから、カタンガエとコンギクスは近縁種ではありません。
次に基亜種であるパルマスパルマスですが、実はこの種類は過去に入荷したと考えられています。それは30年程昔に、「三和工業」という輸入業社によってかなりまとまったロットで入荷あった当時レトロピンニスと呼ばれていた魚です。さすがに30年前ともなると現在もその個体を飼育されている方はいるかどうかわかりませんが、当時の写真と記載文を比較したところ、おそらく間違いなくパルマスパルマスであったと思われます。昨年にも入荷したという情報がありましたがこれはビュティコフェリーでした。
メリディオナリスも過去にちょっとした事件があったのですが、それはかの五十嵐氏が外見上の特徴からこの種類の可能性を述べたものが雑誌紙面上で公開され、その直後に実はセネガルスのインドネシアでのブリード個体であったことが判明したものの、そのロットの魚は日本中のショップでメリディオナリスとして販売されたというもので、それ以降、この魚が入荷したという話は出ておりません。なお、本種は70cm級の大型個体も存在するらしい。
以上、入った、やはり違ったが繰り返されている3種ですが、いつも疑問に思うのはその価格で、未入荷種や新種と言うことになればとんでもなく高価な値段がつくことで、例えば上記のカタンガエの場合、カタンガエとしては十数万円の値段がつくのに、カタンガ産のコンギクスとしてはせいぜい2~3万円程度。でも実はカタンガエというのはデマなわけですから、十数万円の根拠が全く不明です。これはいったいショップが悪いのか、問屋なのか輸入業者なのか、はたまた現地の採集業者なのかどこに原因があるのか知りたいものです。上で述べたメリディオナリスの時は、実は価格はセネガルスと変わらないか、少し高い程度でした。それは原価がセネガルスの原価なので、ショップもいつも通りの掛け率の利益をオンして販売していたのでしょう。ここ最近のカタンガエ、パルマスパルマスの偽物については明らかにおかしな値段です。まるで予備知識のない珍しく新しいもの好きの人を食い物にしているように思えて仕方ありません。
また嘆かわしいのは、アクアにおけるメジャー雑誌がろくに調べもせずにそれらの偽新種を「新着魚」としてどうどうと載せている事です。別にその魚を購入したわけではないのですが、その記事を目にしたときは言いしれぬ怒りがわき起こり、思わず編集部に電話してしまいました。その時の対応は「担当者が不在」これは常套句として、「担当編集者がまだあまり知識がないようで・・・」あきれてものも言えませんでした。日本中の愛好家は少なからずそれらの雑誌の影響を受けて、本意ではない買い物をしたりしてしまうというのに。しかも買われるのは生き物です。こういう間違いがあって「じゃあいらない」ではすまないわけで・・・。その辺もよく考えてアクア業界に従事されている皆さんには責任のある仕事をしていただきたいです。
いつになく感情的になってしまいましたが、こちらを読んでいただいた皆さんにはくれぐれもこれらの「新種」には慎重になって頂きたいと思います。言うまでもなく、一般的なショップの店員さんにこれらの知識を要求するのは無理な相談です。ですから購入する側の方で下調べをしっかりして、購入する際は「産地はどこか」「その種類である根拠はどこが情報源か」くらいは確認した上で購入されることをお勧めします。
個人的には正真正銘未入荷のポリプたちに出会える日を楽しみにしています。
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