So-net無料ブログ作成
検索選択

2002年「ニューハーフを教壇に立たせるな」事件の経緯 [現代の性(性別越境・性別移行)]

7月10日(月)

もう15年も前のことで、「バックラッシュ」に関心がある研究者さえ忘れられている(知らない)ことだが、遠藤まめたさんが覚えていてくださったので、経緯を記しておく。

------------------------------------------
2002年「ニューハーフを教壇に立たせるな」事件の経緯

【発端】
中学総合教育のプログラム「よのなか科」の提唱者である教育研究家の藤原和博氏が、2003年4月から初の「民間人校長」として杉並区立和田中学校の校長に就任することが内定した。

その前段階として、「よのなか科」の看板授業のひとつである「差異と差別を考える」(ゲスト講師:三橋順子)を、和田中学で実施することになった。

なお、当時の私は、新宿歌舞伎町区役所通りニューハーフ・パブ「MISTY」のゲストスタッフであり、中央大学社会科学研究所の客員研究員だった。

【反対運動の流れ】
まず『世界日報』2002年3月29日号に「中3授業に『女装家』講師―「ニューハーフは個性」と講義―」と題した記事を掲載。

それを受けて、6月18日の東京都議会(一般質問)で自由民主党の古賀俊昭議員が教育長の見解を問うた(教育長は「別段、問題はなし」と答弁)。

夏になると「杉並の教育を考える女性の会」という団体がビラ配りなどの反対運動をが始めた。

さらに、八木秀次氏が『正論』2002年8月号に「拝啓 石原慎太郎知事」という文章を載せ、石原知事に直訴した。

結局、諸般の事情を考慮して、杉並区立和田中学校では授業を実施せず、代替として私立の品川女子学院(中学)が引き受けてくださり、2002年10月に授業を実施した。 

なお、授業の内容については、藤原和博著『世界でいちばん受けたい授業2』(2002年5月 小学館)の「『差異』と『差別』を考えるーニューハーフの存在と自分の中の弱者(マイノリティ)の発見ー」を参照されたい。

品川学院での授業の様子がフジテレビのニュース番組「FNNスピーク 『こんな教育発見』 生の社会を教室に」(2002年11月18日)で紹介されると、12月13日の『サンケイ新聞』に「疑問に感じた『差異』と『差別』の授業」という投書が掲載された。

そして、仕上げは年が明けた『週刊新潮』2003年1月30日号掲載の「高校生にも男女同室で着替えさせる『ジェンダーフリー』教育の元凶」という記事で、光栄なことに上野千鶴子先生などと並んで、名指しで批判された。

【批判の論点】
批判側の論点は主に2つ。
1つは、ニューハーフをゲスト講師として教育の場に呼ぶことの問題性。
なお、私は「中学校(社会)一級教員免許」をもっている。
もう1つは、中学生に自分の「異性性」を気づかせることの問題性だった。

【結末】
和田中学校での授業は、藤原和博さんが校長に就任した2003年10月に1年遅れで実現した。
その際には、杉並区議会文教委員の議員の先生方々が「視察」と称してわざわざ授業の「監視」に来てくださった。

和田中での「差異と差別を考える」の講義は、藤原校長の在職中(2003~2007年度)、毎年秋に計5回、実施した。



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。