東京大学は所属する教授が発表した論文に不自然な点があるとする匿名の告発を受けて調査を行った結果、分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授らがおととしまでの8年間に、国際的な科学雑誌、ネイチャーやサイエンスなどに発表した5本の論文について、画像やグラフにねつ造と改ざんの研究不正があったとする調査結果を公表しました。
5本の論文では、実際には行われていない架空の実験データを基にグラフが作られていたほか、比較する2枚の画像に差が生まれるように加工ソフトを使って色合いや明るさを変えるなどしていて、不正とされたグラフや画像は合わせて16あったとしています。
大学はこうした不正行為は渡邊教授と当時の助教の合わせて2人が行ったと認定しました。大学は「渡邊教授の研究室では不適切な画像の加工などが常態化していた」と指摘し、誤った教育を行った渡邊教授の責任は重いとしています。
大学によりますと、不正が認定された5本の論文に関係する公的な研究費は、14億8000万円余りに上っていて、今後、大学は返還額について文部科学省などと協議したいとしています。
調査結果について渡邊教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではなく、不正認定を受けたことに対しては自己の不明を深く反省します」とコメントしています。
渡邊教授は不正が認定された5本の論文について、訂正や取り下げの手続きを雑誌社と進めています。
東京大学では渡邊教授が関わったほかの論文についても不正がないか調査を行ったうえで処分を検討する方針です。
一方、同時に匿名で告発されていた東京大学医学部の5人の教授について、大学は不正はなかったとしています。
東大教授の論文 大学がねつ造と改ざんの不正認定
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国内有数の分子生物学の研究者である東京大学の教授らが、国際的な科学雑誌、ネイチャーなどに発表した5本の論文について、大学は実験データのねつ造などの研究不正があったとする調査結果を公表しました。教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではないが、深く反省します」とコメントしています。
東京大学は所属する教授が発表した論文に不自然な点があるとする匿名の告発を受けて調査を行った結果、分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授らがおととしまでの8年間に、国際的な科学雑誌、ネイチャーやサイエンスなどに発表した5本の論文について、画像やグラフにねつ造と改ざんの研究不正があったとする調査結果を公表しました。
5本の論文では、実際には行われていない架空の実験データを基にグラフが作られていたほか、比較する2枚の画像に差が生まれるように加工ソフトを使って色合いや明るさを変えるなどしていて、不正とされたグラフや画像は合わせて16あったとしています。
大学はこうした不正行為は渡邊教授と当時の助教の合わせて2人が行ったと認定しました。大学は「渡邊教授の研究室では不適切な画像の加工などが常態化していた」と指摘し、誤った教育を行った渡邊教授の責任は重いとしています。
大学によりますと、不正が認定された5本の論文に関係する公的な研究費は、14億8000万円余りに上っていて、今後、大学は返還額について文部科学省などと協議したいとしています。
調査結果について渡邊教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではなく、不正認定を受けたことに対しては自己の不明を深く反省します」とコメントしています。
渡邊教授は不正が認定された5本の論文について、訂正や取り下げの手続きを雑誌社と進めています。
東京大学では渡邊教授が関わったほかの論文についても不正がないか調査を行ったうえで処分を検討する方針です。
一方、同時に匿名で告発されていた東京大学医学部の5人の教授について、大学は不正はなかったとしています。
5本の論文では、実際には行われていない架空の実験データを基にグラフが作られていたほか、比較する2枚の画像に差が生まれるように加工ソフトを使って色合いや明るさを変えるなどしていて、不正とされたグラフや画像は合わせて16あったとしています。
大学はこうした不正行為は渡邊教授と当時の助教の合わせて2人が行ったと認定しました。大学は「渡邊教授の研究室では不適切な画像の加工などが常態化していた」と指摘し、誤った教育を行った渡邊教授の責任は重いとしています。
大学によりますと、不正が認定された5本の論文に関係する公的な研究費は、14億8000万円余りに上っていて、今後、大学は返還額について文部科学省などと協議したいとしています。
調査結果について渡邊教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではなく、不正認定を受けたことに対しては自己の不明を深く反省します」とコメントしています。
渡邊教授は不正が認定された5本の論文について、訂正や取り下げの手続きを雑誌社と進めています。
東京大学では渡邊教授が関わったほかの論文についても不正がないか調査を行ったうえで処分を検討する方針です。
一方、同時に匿名で告発されていた東京大学医学部の5人の教授について、大学は不正はなかったとしています。
東京大学は所属する教授が発表した論文に不自然な点があるとする匿名の告発を受けて調査を行った結果、分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授らがおととしまでの8年間に、国際的な科学雑誌、ネイチャーやサイエンスなどに発表した5本の論文について、画像やグラフにねつ造と改ざんの研究不正があったとする調査結果を公表しました。
5本の論文では、実際には行われていない架空の実験データを基にグラフが作られていたほか、比較する2枚の画像に差が生まれるように加工ソフトを使って色合いや明るさを変えるなどしていて、不正とされたグラフや画像は合わせて16あったとしています。
大学はこうした不正行為は渡邊教授と当時の助教の合わせて2人が行ったと認定しました。大学は「渡邊教授の研究室では不適切な画像の加工などが常態化していた」と指摘し、誤った教育を行った渡邊教授の責任は重いとしています。
大学によりますと、不正が認定された5本の論文に関係する公的な研究費は、14億8000万円余りに上っていて、今後、大学は返還額について文部科学省などと協議したいとしています。
調査結果について渡邊教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではなく、不正認定を受けたことに対しては自己の不明を深く反省します」とコメントしています。
渡邊教授は不正が認定された5本の論文について、訂正や取り下げの手続きを雑誌社と進めています。
東京大学では渡邊教授が関わったほかの論文についても不正がないか調査を行ったうえで処分を検討する方針です。
一方、同時に匿名で告発されていた東京大学医学部の5人の教授について、大学は不正はなかったとしています。
5本の論文では、実際には行われていない架空の実験データを基にグラフが作られていたほか、比較する2枚の画像に差が生まれるように加工ソフトを使って色合いや明るさを変えるなどしていて、不正とされたグラフや画像は合わせて16あったとしています。
大学はこうした不正行為は渡邊教授と当時の助教の合わせて2人が行ったと認定しました。大学は「渡邊教授の研究室では不適切な画像の加工などが常態化していた」と指摘し、誤った教育を行った渡邊教授の責任は重いとしています。
大学によりますと、不正が認定された5本の論文に関係する公的な研究費は、14億8000万円余りに上っていて、今後、大学は返還額について文部科学省などと協議したいとしています。
調査結果について渡邊教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではなく、不正認定を受けたことに対しては自己の不明を深く反省します」とコメントしています。
渡邊教授は不正が認定された5本の論文について、訂正や取り下げの手続きを雑誌社と進めています。
東京大学では渡邊教授が関わったほかの論文についても不正がないか調査を行ったうえで処分を検討する方針です。
一方、同時に匿名で告発されていた東京大学医学部の5人の教授について、大学は不正はなかったとしています。
渡邊教授「心よりおわび」
東京大学の発表について、渡邊嘉典教授は「今回の論文の調査結果を真摯(しんし)に受け止め、私どもの論文に不適切な画像操作を含む図表が掲載されましたことを、心よりおわび申し上げます。いずれも論文で述べている科学的結論は間違っていないと考えており、掲載された雑誌の指導にしたがって、必要な修正作業を進めております。指摘を受けた操作は、論文の各実験から得られる結論を覆そうとする意図で行ったものではなく、これらの操作がねつ造、改ざんに当たるという厳しい不正認定を受けましたことに対し、自己の不明を深く反省いたします」とするコメントを出しました。
認定された不正の内容
東京大学がまとめた調査報告書では渡邊教授らが中心となって発表した5本の論文の合わせて16の画像やグラフにねつ造と改ざんがあったと認定しています。
このうち平成22年に科学雑誌「サイエンス」に発表された論文は細胞分裂が起こる際、それぞれの細胞に染色体が等しく分かれる仕組みの一端を解明したとするもので、一部データについては実験が行われていないにもかかわらず架空の数値が入力されてグラフが作成されていたということです。
これについて報告書では「渡邊教授は虚偽のグラフであることを承知のうえで、論文を投稿したもので、仮に実験をしていないことを認識していなかったり、実験をしていないことを記入することを忘れたりしたのであれば著しく注意義務を怠っていた」としてねつ造だと認定しています。
またおととしにサイエンスに発表された論文ではがん細胞を顕微鏡で撮影した2枚の細胞の画像で、緑色に光らせた特定のタンパク質の量を比べる実験で、片方の画像は緑色が強く光るよう色調を操作した一方、比較対象の画像では緑色の光を弱める操作が行われていたということです。
これについて報告書では「正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為だ」として、撮影した当時の助教がねつ造したと評価するのが相当だとしています。
一方、渡邊教授は当時の助教に対して実験方法や画像の取得について指示や指導を行っていて、ねつ造に関与しているものと考えられると指摘しています。
さらに2011年にネイチャーに発表した論文では特定のタンパク質があるか調べた実験の画像について、加工ソフトを使って明るさなどを変えることで、実験結果の一部を見えなくする操作が行われていたとしています。
報告書では「実験の担当者は当初、消去されていない画像を使って研究室内で報告しており、消去された画像を作成したのは渡邊教授と認められる」と指摘しています。
渡邊教授は改ざんをみずから行ったり、不正が行われていることを知っていたりしたと認定されたほか、注意義務を著しく怠って不正を認識せずに論文を投稿したなどとして、東京大学は不正が認定された16すべての図とグラフについて、渡邊教授に責任があるとしています。
このうち平成22年に科学雑誌「サイエンス」に発表された論文は細胞分裂が起こる際、それぞれの細胞に染色体が等しく分かれる仕組みの一端を解明したとするもので、一部データについては実験が行われていないにもかかわらず架空の数値が入力されてグラフが作成されていたということです。
これについて報告書では「渡邊教授は虚偽のグラフであることを承知のうえで、論文を投稿したもので、仮に実験をしていないことを認識していなかったり、実験をしていないことを記入することを忘れたりしたのであれば著しく注意義務を怠っていた」としてねつ造だと認定しています。
またおととしにサイエンスに発表された論文ではがん細胞を顕微鏡で撮影した2枚の細胞の画像で、緑色に光らせた特定のタンパク質の量を比べる実験で、片方の画像は緑色が強く光るよう色調を操作した一方、比較対象の画像では緑色の光を弱める操作が行われていたということです。
これについて報告書では「正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為だ」として、撮影した当時の助教がねつ造したと評価するのが相当だとしています。
一方、渡邊教授は当時の助教に対して実験方法や画像の取得について指示や指導を行っていて、ねつ造に関与しているものと考えられると指摘しています。
さらに2011年にネイチャーに発表した論文では特定のタンパク質があるか調べた実験の画像について、加工ソフトを使って明るさなどを変えることで、実験結果の一部を見えなくする操作が行われていたとしています。
報告書では「実験の担当者は当初、消去されていない画像を使って研究室内で報告しており、消去された画像を作成したのは渡邊教授と認められる」と指摘しています。
渡邊教授は改ざんをみずから行ったり、不正が行われていることを知っていたりしたと認定されたほか、注意義務を著しく怠って不正を認識せずに論文を投稿したなどとして、東京大学は不正が認定された16すべての図とグラフについて、渡邊教授に責任があるとしています。
研究不正に詳しい専門家「非常に深刻な事態」
研究不正の問題に詳しい大阪大学の中村征樹准教授は「研究不正の問題は東京大学だけではなく、さまざまな大学で起きてきたが、分子細胞生物学研究所のような研究に重きを置いた施設でも不正の問題が相次いで起きるというのは非常に深刻な事態だ」と指摘しました。
そのうえで、「研究の現場では、これまで不正の問題が取り上げられても、ひと事として受け止めてきた実態があるのではないか。特に研究成果が求められるプレッシャーを最も感じているのは、研究を重視してきた東京大学などで、研究の中でこれぐらいは許されるだろうという考え方が、時間の経過とともに世間からだんだんとずれ、不正に至る『逸脱の常態化』と呼ばれる現象が起きているのだと思う」と話しています。
また、不正行為を教授みずから行ったと大学が認定したことについては、「これまでも研究不正の再発防止策は行われてきたが、どうしても若手の研究者や学生を対象とした倫理教育などが中心で、シニア世代の研究者への対策は形式的なものだったと言える。また、研究不正と研究室の環境は密接に関係していると言われ、学生や若手の研究者も、教授と対等に意見が言える風通しのよい研究環境が作れていたかも焦点の1つだ」と指摘しています。
そのうえで、海外では研究環境の改善に向けて、大学が組織ぐるみで対策を行っているとして、研究室任せにせず研究環境がどういった状況になっているかや、研究者たちがどのようなことを問題だと感じているのかを大学が調査し、組織全体で対応していくことが研究不正の芽を摘むことにつながるとしています。
そのうえで、「研究の現場では、これまで不正の問題が取り上げられても、ひと事として受け止めてきた実態があるのではないか。特に研究成果が求められるプレッシャーを最も感じているのは、研究を重視してきた東京大学などで、研究の中でこれぐらいは許されるだろうという考え方が、時間の経過とともに世間からだんだんとずれ、不正に至る『逸脱の常態化』と呼ばれる現象が起きているのだと思う」と話しています。
また、不正行為を教授みずから行ったと大学が認定したことについては、「これまでも研究不正の再発防止策は行われてきたが、どうしても若手の研究者や学生を対象とした倫理教育などが中心で、シニア世代の研究者への対策は形式的なものだったと言える。また、研究不正と研究室の環境は密接に関係していると言われ、学生や若手の研究者も、教授と対等に意見が言える風通しのよい研究環境が作れていたかも焦点の1つだ」と指摘しています。
そのうえで、海外では研究環境の改善に向けて、大学が組織ぐるみで対策を行っているとして、研究室任せにせず研究環境がどういった状況になっているかや、研究者たちがどのようなことを問題だと感じているのかを大学が調査し、組織全体で対応していくことが研究不正の芽を摘むことにつながるとしています。
最近の東大での研究不正
東京大学ではここ数年、論文のデータのねつ造や改ざんなどの研究不正や、臨床研究をめぐる倫理上の問題などが相次いで発覚しています。
このうち、東京大学分子細胞生物学研究所では3年前、今回とは別の研究グループが33本の論文でねつ造と改ざんの不正を行ったと認定され、元教授のほか、当時の准教授や研究員の学生ら合わせて11人が不正に関わったと認定されています。
また同じ3年前には東京大学医学部が関わる臨床研究で、白血病の薬の研究に製薬会社の社員が重要なデータ解析に関与するなど研究の客観性が疑われる事態が発覚したほか、アルツハイマー病の診断のための臨床研究でおよそ600人の患者から血液などを採取したものの、研究態勢やデータの取り扱いが不十分で臨床研究を取りまとめることが一時できなくなるなどの不適切な実態が明らかになりました。
このほか、6年前と7年前には社会科学研究所の当時の助教授と工学系研究科の当時の助教がそれぞれ発表した複数の論文にほかの人の論文の盗用が見つかっています。
東京大学では研究不正や倫理上の問題が相次いで発覚したため、3年前に不正防止対策の実施などを行う研究倫理の専門部署を設け、実験データを保存したり論文のデータをチェックしたりする体制を整備するなどの対策を進めてきました。
しかし今回、不正が指摘された論文の中にはこうした対策が取られた後に発表された論文も含まれていて、東京大学の研究不正への対応が十分だったのかについても改めて問われる事態になっています。
このうち、東京大学分子細胞生物学研究所では3年前、今回とは別の研究グループが33本の論文でねつ造と改ざんの不正を行ったと認定され、元教授のほか、当時の准教授や研究員の学生ら合わせて11人が不正に関わったと認定されています。
また同じ3年前には東京大学医学部が関わる臨床研究で、白血病の薬の研究に製薬会社の社員が重要なデータ解析に関与するなど研究の客観性が疑われる事態が発覚したほか、アルツハイマー病の診断のための臨床研究でおよそ600人の患者から血液などを採取したものの、研究態勢やデータの取り扱いが不十分で臨床研究を取りまとめることが一時できなくなるなどの不適切な実態が明らかになりました。
このほか、6年前と7年前には社会科学研究所の当時の助教授と工学系研究科の当時の助教がそれぞれ発表した複数の論文にほかの人の論文の盗用が見つかっています。
東京大学では研究不正や倫理上の問題が相次いで発覚したため、3年前に不正防止対策の実施などを行う研究倫理の専門部署を設け、実験データを保存したり論文のデータをチェックしたりする体制を整備するなどの対策を進めてきました。
しかし今回、不正が指摘された論文の中にはこうした対策が取られた後に発表された論文も含まれていて、東京大学の研究不正への対応が十分だったのかについても改めて問われる事態になっています。
東大教授の論文 大学がねつ造と改ざんの不正認定
国内有数の分子生物学の研究者である東京大学の教授らが、国際的な科学雑誌、ネイチャーなどに発表した5本の論文について、大学は実験データのねつ造などの研究不正があったとする調査結果を公表しました。教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではないが、深く反省します」とコメントしています。
渡邊教授「心よりおわび」
東京大学の発表について、渡邊嘉典教授は「今回の論文の調査結果を真摯(しんし)に受け止め、私どもの論文に不適切な画像操作を含む図表が掲載されましたことを、心よりおわび申し上げます。いずれも論文で述べている科学的結論は間違っていないと考えており、掲載された雑誌の指導にしたがって、必要な修正作業を進めております。指摘を受けた操作は、論文の各実験から得られる結論を覆そうとする意図で行ったものではなく、これらの操作がねつ造、改ざんに当たるという厳しい不正認定を受けましたことに対し、自己の不明を深く反省いたします」とするコメントを出しました。
認定された不正の内容
東京大学がまとめた調査報告書では渡邊教授らが中心となって発表した5本の論文の合わせて16の画像やグラフにねつ造と改ざんがあったと認定しています。
このうち平成22年に科学雑誌「サイエンス」に発表された論文は細胞分裂が起こる際、それぞれの細胞に染色体が等しく分かれる仕組みの一端を解明したとするもので、一部データについては実験が行われていないにもかかわらず架空の数値が入力されてグラフが作成されていたということです。
これについて報告書では「渡邊教授は虚偽のグラフであることを承知のうえで、論文を投稿したもので、仮に実験をしていないことを認識していなかったり、実験をしていないことを記入することを忘れたりしたのであれば著しく注意義務を怠っていた」としてねつ造だと認定しています。
またおととしにサイエンスに発表された論文ではがん細胞を顕微鏡で撮影した2枚の細胞の画像で、緑色に光らせた特定のタンパク質の量を比べる実験で、片方の画像は緑色が強く光るよう色調を操作した一方、比較対象の画像では緑色の光を弱める操作が行われていたということです。
これについて報告書では「正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為だ」として、撮影した当時の助教がねつ造したと評価するのが相当だとしています。
一方、渡邊教授は当時の助教に対して実験方法や画像の取得について指示や指導を行っていて、ねつ造に関与しているものと考えられると指摘しています。
さらに2011年にネイチャーに発表した論文では特定のタンパク質があるか調べた実験の画像について、加工ソフトを使って明るさなどを変えることで、実験結果の一部を見えなくする操作が行われていたとしています。
報告書では「実験の担当者は当初、消去されていない画像を使って研究室内で報告しており、消去された画像を作成したのは渡邊教授と認められる」と指摘しています。
渡邊教授は改ざんをみずから行ったり、不正が行われていることを知っていたりしたと認定されたほか、注意義務を著しく怠って不正を認識せずに論文を投稿したなどとして、東京大学は不正が認定された16すべての図とグラフについて、渡邊教授に責任があるとしています。
このうち平成22年に科学雑誌「サイエンス」に発表された論文は細胞分裂が起こる際、それぞれの細胞に染色体が等しく分かれる仕組みの一端を解明したとするもので、一部データについては実験が行われていないにもかかわらず架空の数値が入力されてグラフが作成されていたということです。
これについて報告書では「渡邊教授は虚偽のグラフであることを承知のうえで、論文を投稿したもので、仮に実験をしていないことを認識していなかったり、実験をしていないことを記入することを忘れたりしたのであれば著しく注意義務を怠っていた」としてねつ造だと認定しています。
またおととしにサイエンスに発表された論文ではがん細胞を顕微鏡で撮影した2枚の細胞の画像で、緑色に光らせた特定のタンパク質の量を比べる実験で、片方の画像は緑色が強く光るよう色調を操作した一方、比較対象の画像では緑色の光を弱める操作が行われていたということです。
これについて報告書では「正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為だ」として、撮影した当時の助教がねつ造したと評価するのが相当だとしています。
一方、渡邊教授は当時の助教に対して実験方法や画像の取得について指示や指導を行っていて、ねつ造に関与しているものと考えられると指摘しています。
さらに2011年にネイチャーに発表した論文では特定のタンパク質があるか調べた実験の画像について、加工ソフトを使って明るさなどを変えることで、実験結果の一部を見えなくする操作が行われていたとしています。
報告書では「実験の担当者は当初、消去されていない画像を使って研究室内で報告しており、消去された画像を作成したのは渡邊教授と認められる」と指摘しています。
渡邊教授は改ざんをみずから行ったり、不正が行われていることを知っていたりしたと認定されたほか、注意義務を著しく怠って不正を認識せずに論文を投稿したなどとして、東京大学は不正が認定された16すべての図とグラフについて、渡邊教授に責任があるとしています。
研究不正に詳しい専門家「非常に深刻な事態」
研究不正の問題に詳しい大阪大学の中村征樹准教授は「研究不正の問題は東京大学だけではなく、さまざまな大学で起きてきたが、分子細胞生物学研究所のような研究に重きを置いた施設でも不正の問題が相次いで起きるというのは非常に深刻な事態だ」と指摘しました。
そのうえで、「研究の現場では、これまで不正の問題が取り上げられても、ひと事として受け止めてきた実態があるのではないか。特に研究成果が求められるプレッシャーを最も感じているのは、研究を重視してきた東京大学などで、研究の中でこれぐらいは許されるだろうという考え方が、時間の経過とともに世間からだんだんとずれ、不正に至る『逸脱の常態化』と呼ばれる現象が起きているのだと思う」と話しています。
また、不正行為を教授みずから行ったと大学が認定したことについては、「これまでも研究不正の再発防止策は行われてきたが、どうしても若手の研究者や学生を対象とした倫理教育などが中心で、シニア世代の研究者への対策は形式的なものだったと言える。また、研究不正と研究室の環境は密接に関係していると言われ、学生や若手の研究者も、教授と対等に意見が言える風通しのよい研究環境が作れていたかも焦点の1つだ」と指摘しています。
そのうえで、海外では研究環境の改善に向けて、大学が組織ぐるみで対策を行っているとして、研究室任せにせず研究環境がどういった状況になっているかや、研究者たちがどのようなことを問題だと感じているのかを大学が調査し、組織全体で対応していくことが研究不正の芽を摘むことにつながるとしています。
そのうえで、「研究の現場では、これまで不正の問題が取り上げられても、ひと事として受け止めてきた実態があるのではないか。特に研究成果が求められるプレッシャーを最も感じているのは、研究を重視してきた東京大学などで、研究の中でこれぐらいは許されるだろうという考え方が、時間の経過とともに世間からだんだんとずれ、不正に至る『逸脱の常態化』と呼ばれる現象が起きているのだと思う」と話しています。
また、不正行為を教授みずから行ったと大学が認定したことについては、「これまでも研究不正の再発防止策は行われてきたが、どうしても若手の研究者や学生を対象とした倫理教育などが中心で、シニア世代の研究者への対策は形式的なものだったと言える。また、研究不正と研究室の環境は密接に関係していると言われ、学生や若手の研究者も、教授と対等に意見が言える風通しのよい研究環境が作れていたかも焦点の1つだ」と指摘しています。
そのうえで、海外では研究環境の改善に向けて、大学が組織ぐるみで対策を行っているとして、研究室任せにせず研究環境がどういった状況になっているかや、研究者たちがどのようなことを問題だと感じているのかを大学が調査し、組織全体で対応していくことが研究不正の芽を摘むことにつながるとしています。
最近の東大での研究不正
東京大学ではここ数年、論文のデータのねつ造や改ざんなどの研究不正や、臨床研究をめぐる倫理上の問題などが相次いで発覚しています。
このうち、東京大学分子細胞生物学研究所では3年前、今回とは別の研究グループが33本の論文でねつ造と改ざんの不正を行ったと認定され、元教授のほか、当時の准教授や研究員の学生ら合わせて11人が不正に関わったと認定されています。
また同じ3年前には東京大学医学部が関わる臨床研究で、白血病の薬の研究に製薬会社の社員が重要なデータ解析に関与するなど研究の客観性が疑われる事態が発覚したほか、アルツハイマー病の診断のための臨床研究でおよそ600人の患者から血液などを採取したものの、研究態勢やデータの取り扱いが不十分で臨床研究を取りまとめることが一時できなくなるなどの不適切な実態が明らかになりました。
このほか、6年前と7年前には社会科学研究所の当時の助教授と工学系研究科の当時の助教がそれぞれ発表した複数の論文にほかの人の論文の盗用が見つかっています。
東京大学では研究不正や倫理上の問題が相次いで発覚したため、3年前に不正防止対策の実施などを行う研究倫理の専門部署を設け、実験データを保存したり論文のデータをチェックしたりする体制を整備するなどの対策を進めてきました。
しかし今回、不正が指摘された論文の中にはこうした対策が取られた後に発表された論文も含まれていて、東京大学の研究不正への対応が十分だったのかについても改めて問われる事態になっています。
このうち、東京大学分子細胞生物学研究所では3年前、今回とは別の研究グループが33本の論文でねつ造と改ざんの不正を行ったと認定され、元教授のほか、当時の准教授や研究員の学生ら合わせて11人が不正に関わったと認定されています。
また同じ3年前には東京大学医学部が関わる臨床研究で、白血病の薬の研究に製薬会社の社員が重要なデータ解析に関与するなど研究の客観性が疑われる事態が発覚したほか、アルツハイマー病の診断のための臨床研究でおよそ600人の患者から血液などを採取したものの、研究態勢やデータの取り扱いが不十分で臨床研究を取りまとめることが一時できなくなるなどの不適切な実態が明らかになりました。
このほか、6年前と7年前には社会科学研究所の当時の助教授と工学系研究科の当時の助教がそれぞれ発表した複数の論文にほかの人の論文の盗用が見つかっています。
東京大学では研究不正や倫理上の問題が相次いで発覚したため、3年前に不正防止対策の実施などを行う研究倫理の専門部署を設け、実験データを保存したり論文のデータをチェックしたりする体制を整備するなどの対策を進めてきました。
しかし今回、不正が指摘された論文の中にはこうした対策が取られた後に発表された論文も含まれていて、東京大学の研究不正への対応が十分だったのかについても改めて問われる事態になっています。