Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

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『失われた7枚』シリーズの設定の一部です。
公開しても次回作のネタばらしにならない所だけピックアップしました。
別に読まなくても何の支障もないので読みたい方だけどうぞ。

注1:もともと吹雪自身が設定を間違えない為のメモとして書かれていますので、若干難解な表現があるかもしれませんが御了承下さい。
注2:記述が一部抜けている箇所がありますが御了承下さい。
注3:『失われた7枚』シリーズの時代の視点から書かれていますので、今後書庫に入荷される予定の違う時代の話とは多少設定が異なる場合がございます。
注4:ここに書かれていることは全てフィクションです。実在する名称・個人・団体とは一切関係がありません。


LAST UPDATE:2002/01/28


■国家
▼エルメキア礼法国
・礼と法を重んじる国。「偉大なる(el)」「秩序(mekia)」。
・建国当初は「エル・メーク(el make)」と称していたが憲法制定時に現在の呼び方に。
・国の色は『自然の摂理としての緑』
・緑を国の色として定める。裁判官や外交官など国の官職に就く者は皆緑色のローブ、またはマントを身につけている。
・裁判官・外交官は公の場に於いて「ルウフェルム(注:古代世界語で発音するところのロウ・ヘルム"Low Helmet")」と呼ばれる独特の髪飾りをつけている(男女問わず)。これには公私の区別を付けるための仮面という意味があるらしい。発案者であるエルメキア礼法国の建国者の言葉を借りるならば『法の下に於ける公正なる者としての戒めの役割を果たす』ということになる。
▽学校
・高等学校で法律一般を教えられる(エルメキアのみならずカイザリアやブランドブレイの法律も)
・初等学校の1年度から礼儀作法の授業がある。
・エルメキア方言と呼ばれる独特の言い回しがある。一般には使われず、裁判や公示等の場合に於いてのみ用いられる。丁寧語みたいなもの。一般のエングリシアに比べ、流暢な発音を必要とする。
▽産業
・林業・農業・魔導金属原料採掘。
・北部の丘陵地帯に於いてはその日光照射を利用したワインの生産も盛ん。

▼ブランドブレイ王国
・国の色は『青』
▽軍隊
・12の騎士団と1つの親衛隊より構成される(騎士団は各々12の月の名になぞらえて呼ばれる)。
・その他に、前述の騎士団とは独立した機関『特命任務師団(Super Mission Force)』が存在(注:大陸歴680年以降。それ以前も存在したようだがあまり公にはなっていなかった)。
▽産業
・放牧及び農業。だが、どちらかといえば放牧より農業の方に力を入れている。


▼シルバニア王国 -Silvania Queendom-
・国の色は『全てを包み込む優しき白』
・かつては公国であり、更にその前はブランドブレイ王国の一地方であった。
・549年、公国から王国へ。
▽軍隊
・シルバニア王立軍とシルバニア市民軍にわかれる。前者が王国に使える軍隊であるのに対し、後者は国内に於ける各々の都市に仕える軍隊である。格としては前者の方が上。前者が国家公務員であるのに対し、後者は地方公務員。基本的に各々独立しているが戦時下では市民軍が王立軍の指揮下に入る。なお、警察の役目はシルバニア市民軍が兼ねている。
・シルバニア王立軍は全部で6軍に分かれている。通常は全軍の師団長は王都シルバニアに待機している。いざ何か起こるとそこから派遣されていく仕組み。
・そしてその6軍全てを統括する将軍職が1名。この1名は師団長6名・副師団長6名、及び王の計13名の協議によって決められる(基本的に師団長達の中から将軍が選ばれるが、過去に一度シルバニア公国だった時代に公爵が将軍職を兼ねていたことがある。)。
・町の城壁等は基本的に市民軍の管轄だが、王都シルバニアの城壁だけは例外で王立軍の指揮下に入っている。シルバニアの城壁守備隊長だった者は将来基本的に師団長の地位につけるとされている。……まずいよ、それ。
▽産業
・放牧及び農業。だが、どちらかといえば農業より放牧の方に力を入れている。
・羊・牛・馬など。鶏や豚も地域によっては飼育されている。

▼アルゲンタイン帝国 -Argentine Empire-
・皇帝は前皇帝によって血族以外の者が直接指名されるという制度を持つ。
・179年、クーデターにより崩壊。跡地にカイザリア帝国とセリフォス共和国が樹立する。
・関連→ランス共和国
▽軍隊
・東西南北、四方位にそれぞれ軍を配置。

▼カイザリア帝国 -Kaisaria Empire-
・国の色は『情熱の赤』
・皇帝の議会選出制ならびにその権限縮小を除き、基本的な制度はかつて同じ場所に存在したアルゲンタイン帝国のそれを受け継いでいる。
▽軍隊
・全8軍の帝国軍より構成される。基本的に3軍が帝都待機、残りが各都市に駐在するという形式をとっている。
・皇帝が総司令職を兼ねる。(旧アルゲンタイン帝国ネルクス独裁時代、全4軍の総司令官として銀狼レインが選ばれて以来この体制が出来上がった。)
・各軍の司令官は皇帝によって任命される。
▽産業
・農業が主。麦や雑穀、そして北部ではキャッサバ等が生産される。

▼南同盟
・大陸南部に存在するいくつかの諸国家の事。各々にきちんとした名前があるのだが、通常は、彼らが結んでいる「南部非関税同盟」の略より「南同盟」と呼ばれている。
・シルバニア王国より南の地域でこの同盟に加わっていないのはランス共和国とフェーゴ共和国だけ。

▽ヴァンドレディ公国 -Vendredi Dukedom-
・初めて開拓団がこの地に足を踏み入れたのが金曜日だったことから。
・シルバニアの資金援助により開拓された新国家。
▽スピアミント連邦
・財政破綻を起こしたランス共和国をファルセリーナ騎士団国が吸収合併する形で連邦を設立。
・両国一帯がスペアミントの生息地であったことからこの国名がついた(国民投票により)。
・財政赤字を解消するために流通に力を入れたことが功を成し、大陸有数の貿易国となる。
・ここでは意味を明確にするためスピアという言葉を使いましたが、日本語読みのスペアミントでも構いません。
▽ファルセリーナ騎士国 -Farcelina Knight's-
・ファルセリーナとは古代世界語で"Force Line"(軍事最前線)の意。開拓当時の防衛ラインがこの周辺だったことに由来する。
・ブランドブレイの4月騎士団により開拓され、その指揮を執った騎士団長が初代元首に就任したことからこの名で呼ばれる。そのため宗主国であるブランドブレイとの繋がりは非常に深い。
▽ランス共和国 -Republic of Lance-
・希望を貫く固い「槍」がその国旗であり国名。
・宗主国であったアルゲンタイン帝国の崩壊により開発援助がうち切られ、開拓半ばにして独立せざるを得なくなった特殊な生い立ちを持っている。
・そのため、当初から赤字財政で始まるというマイナスからのスタートを切った。
・後に財政破綻。ファルセリーナ騎士国と合併しスペアミント連邦となる。
▽ナヴァリニア共和国 -Navarinia Republic-
▽ブランズウィック二院国
・当初はブランズウィック共和国として樹立。
・かつては大統領制の国家であったが、度重なる正副大統領の不在と議会側による改憲で大統領制が廃止され、上下両院だけが残った特殊な国家。
・その為、通常の大統領制国家では第三位の地位にいるはずの上院議会議長がここでは国家元首とされている。
▽セレリア公国

▼フェーゴ共和国 -Fuego-
・首都はシェザ。氷都とも呼ばれる。
・フェーゴとは元々エスファノールの「火」から来ている。

▼セリフォス共和国
・ニューフォークランド全島を領土とする。
・建国の際、自らの力で独立を勝ち取ったという意味を込めセルフフォース共和国が正式名称案として挙がっていたが、略称のセリフォスが正式国名として採用された。
・かつてはカイザリアの一領土の島だったのだが、ネルクス独裁時代終了の後にアルゲンタイン帝国より分離独立。
・大陸で唯一、他の何処とも国境を接していない国(周囲が全て海のため。)。

▼ケチュア自治領 -Quetua Area-
・厳密に言えばこの地に国家は存在しない。内政は不定数の長老達によって運営。大陸各国との外交問題等は基本的に隣国エルメキア礼法国が引き受けているので、便宜上「自治領」と呼ばれている事が多い(あるいはケチュア域とも)。経済・文化的には全く独立した地域。

■金属
▽一般的な金属
・金属採取は露天鉱床。山の岩肌を削り、その破片を魔導で精錬することにより魔導金属シェナが生まれる。やや青みがかった銀色をしている。金属の名前はラファエル王国時代に魔導師シェナがこの精錬魔導を発明したことに由来する。
・更に精錬すると魔導金属リルとなる。大陸に於いて用いられているリル硬貨にはこの金属が用いられている。白銀色の鈍い輝きを持ち、基本的に錆びない。ただ、その分加工は非常に難しいとされている。金属の名の由来は、発明者である魔導師リルより。
・魔導金属シェナ・魔導金属リル共に質量は同じ。硬度・耐腐性共に後者の方が上。前者は魔導である程度まで再分解できるが、後者は(現在の魔導水準に於いて事実上は)再分解できない。
・これらの金属精製魔導を使う魔導師の事を金属魔導師、あるいは錬金術師/鍛金術師と呼ぶ。
・魔導金属リルで作られた武具は数少ない。質量の小さい魔導金属リルを作るのはある程度簡単なのだが(それでも硬貨に刻まれているような複雑な紋章を刻むのは非常に難しい)、剣や鎧といった大質量の加工は熟練の金属魔導師にも難しいとされている。
・金や錫、ボーキサイトといった天然資源は一千年以上の昔に枯渇している。ただ、辛うじて銀と銅だけが僅かに北方のケチュアの地に残るとされている。(余談になるが石油、石炭も枯渇。)
・余談だが、シェナ・リル精製時に虹色の液体が生じるが、この液体は顔料の原料となっている(冷却速度により色が変わるため。急激に冷やせば青色となり、徐々に冷やせば赤色になるとの事。だがその生成過程は一般に極秘とされている)。シェナから作られた顔料の方が一般には普及しているが、リルから作られた顔料の方が発色は鮮やか。
▽ケチュアの金属
・彼らは山を掘ることにより銀や銅といった金属を手に入れているらしい。坑道を作るためにニトログリセリンが用いられている。
・ニトログリセリンの原料となる硝石や明礬は彼らの地で産出されている(明礬に関して厳密に言えば、彼らの住む地より更に北に位置する砂漠より産出。)。
・ニトログリセリンの製造方法は一般的には知られていない。その為、ニトログリセリンは非常に高価なものとされている(爆発用の魔導も存在はしているものの、禁呪とされているために一般には知れ渡っていないので彼らはニトログリセリンを使っている。)

■宝石
・ない。厳密に言えば僅かながら存在はしているものの、精錬方法を誰も知らない。
・名前だけは伝承されており、人名に用いられることもある(ジェイド/ネフライト兄弟)

■交通
・陸路は基本的に徒歩、ないしは馬車。
・伝令兵は「ダッシュ」の魔導を併用して手紙を運ぶ。一定区間ごとに伝令用の兵士が常に待機しており、リレー方式で手紙が運ばれていく。だが、ゼルイリアス大戦以後遠距離通信魔導の開発が進み、900年代には理力溝を用いた魔導通信技術が実用化される。
・コバルト海の航行は小型帆船・あるいは手漕船。大型帆船技術はない。 ・小型帆船は人的労力と時間の節約のため、スパンク(注:洋上船舶疾走魔導)を併用して航海する事が多い。(余談だが、スパンクの魔導を行使する術者のことをこの世界では航海士と呼ぶ。この魔導は船舶協会で伝授されることが多い。)
・主要街道には徒歩1日の距離毎に宿場町が設けられており、旅の安全を確保するようになっている。
・主要街道は一定時間(8時間)ごとに各国兵士が巡回する(行き倒れがいないかどうか)。これはどこの国も共通。
・主要街道間の郵便は巡回の兵士が馬車と共に運ぶが、その他の小さな街道間に於いては商人や旅人が雇われて運搬する(旅費の為に本来の依頼とは別に郵便物輸送も請け負う事が多い)。

■都市
・大都市は上水道・下水道完備。専用の管が石畳の下に埋められている。管は全てパーツ式になっており、破損した場合は石畳を剥がし簡単に修理・取り替えができるようになっている。
・中・小都市は下水道を完備はしているものの、上水道がない。飲料水は井戸水や雨水に頼っている。
・町や村には下水道すらない。汚水は基本的にピュリファイの魔導で浄化してから川に流す。
・余談になるが、露天鉱床採掘に用いられている垂直方向採掘技術が下水道建設にも用いられている(水平方向採掘技術は必要とされていないため知らない)。

■時差
・大陸中央経度線を標準とする大陸標準時の他に、ケチュア地方時(-1h)とシェザ・セリフォス地方時(+1h)が存在する。
・前者がケチュアのみで使用されているのに対し、後者はシェザを包括するフェーゴ共和国の他にセリフォス共和国などの大陸東岸の一部地域にても使用されている。
・旅行者の利便を図るため、地方時を使用している地域でも馬車の時刻表などには大陸標準時を併記している。

■経済・金融
・基本的には自由経済だが、それらの経済活動はあくまで各国家の監視下に置かれている。
・大陸全土に於いて統一貨幣が流通しているため、物価の変動は起こりにくい(競争対象となる貨幣基準が存在しないため)。
・公市場での営業を行うには、行政の発行する出店許可証が必要となる。これは各地方自治体あるいは国家が地域毎に発行している。 ・多くの場合は認可制となっているが、殆どの場合は申請すればそのまま通ることが多い。 ・だが市場が拡大しすぎて出店場所の確保に支障が出る場合などは、一時的に新規受付が停止されたり、営業実績が滞っていると見なされる(=納税額が0かあるいはそれに近い)業者の許可証を取り消すことで一定の許可証発行数を保っている。 ・大きな市場であれば基本的に一日一回、小さな市場では不定期に行政職員が許可証の確認巡回を行っている。 ・都市によっては、許可証を必要としない特別市場が設けられている場合もある(それらの多くは大陸南部の諸国に集中しているが、北方に於いてもステラ港やバレンタイン港などに設けられている)。 ・農村部に於ける小規模な定期/不定期市はこれに含まれない(ひと月の半分以上露天が常設されていることが公市場の定義とされているため)。 ・銀行業務は国家が全て取り仕切る。個人による金融業・保険業は一切認められていない。
・株式発行という会社経営の形態は「賭の対象になる」として認められていない。
・生命保険等の類も「自らの命を賭けの対象としている」と見なされるため法律で固く禁止されている。

■犯罪者
・やっぱり盗賊とかもいる。
・魔導を併用した怪盗とかもいる。
・ついでに爆発魔もいる。いなくていいのに。
・高枝切りバサミについては、法に明文化されていないので犯罪ではないらしい。

■家屋
・基本的に木と石造りの3階、ないしは4階建て(国々の家屋の高度に対する税金率によって変わる・地方によっては建坪率により税を課している場所もあり)。
・山岳の一部等、切り石が手に入りにくい場所ではログハウスという形態をとることもある。
・どこの国も高緯度に位置している為、殆どの家に暖炉がある。
・殆どの家が貯蔵庫を兼ねた半地下室を持っている(土壌が褐色土(北部では褐色森林土)のため、あまり深く掘ると水が出てきてしまい工事が大変になるので完全な地下室にはしていないケースが多い。)。
・屋根には色の付いた石が並べられる。ようするに瓦みたいなもの。

■生活
▽衣服
・木綿や毛皮が主。絹はない(厳密には蚕から絹が作られることを知らない)。
・ボタンは木製が殆ど。希に貝製のものもある。
・一応男女用ともに下着は存在。
・特に女性用には胸部保護のための凸形状帯が用意されている(現代で言うところの、肩ひものない見せ下着のような物と思ってもらえればよい。針金が存在していないため、曲げた籐や竹などで形状固定している)。
・屋内は基本的に土足(ケチュア地方を除く)。
・人力よりも生産効率の高い水車織機が存在するため、衣服は必ずしも高価なものではない。

▽料理
【植物】
・小麦から作られた白パンが主食(ライ麦から作られた黒パンもあることはある)。
・ケチュア地方の人々は時々米を食べる。当初は彼らの地にてのみ微量ながら生産されていたが、大陸歴300年を過ぎた頃から大陸北部に広まり始めた(伝播者は気づいていなかったが、実は旧文明時代に遺伝子改良された品種だったため、多少の寒冷地並びに塩分濃度の比較的高い土壌に於いても栽培可能な耐性を備えていたので生産地域を拡大することが出来た)。
【動物】
・内陸部では肉を、加えて沿岸部では魚を主に食する(魔導冷凍されて内陸にも輸送はされている)。いずれも生で食べる習慣はない。
・食肉としては、馬・牛・羊・家禽のものが多い。豚も家畜として一部で飼われているが、あまりメジャーな食材にはなっていない。
【酒類】
・飲酒は18歳から(だが特に罰する法律はないため、あまり守られていない)。
・アルコール類はワインが主。エルメキアワイン(特にメルセデスの町で生産されたワイン)が大陸で一番美味とされている。
【食器】
・木製が一般。フォークなどは先端が丸くなってきた頃に買い換えるのが一般的。
・ジャム等の保存にはガラス瓶を用いる(缶は存在していない。)。
【その他】
・料理ではないが、煙草の類は知られていない。これは旧文明時代に喫煙習慣が絶えたため。

▽教育
・識字率は98~9%。どこの町・村にもほとんど学校がある。
・初等学校と呼ばれる義務教育は7歳から8年間。ここで言語・計算・魔導・理科・社会等を習う。
・初等学校には都市初等学校と農牧初等学校の二種類がある。
・前者が人口密度の高い都市部に設置されるのに対し、後者はその名の通り農村部や放牧部に設置される。
・都市初等学校に於いての授業は基本的に午前中のみ。年度は1月に始まり、10月に終わる。(授業内容は各国毎に多少の差がある。)
・農牧初等学校は多くの場合は、通学できない距離の生徒のための寄宿舎が併設されている。加えて家業手伝いのため1年毎に授業・休校が繰り返される(その代わり四季の休みはそれぞれ一週間程度しか存在しない)。
・授業カリキュラムがそれぞれ若干異なり、前者は都市経済について授業されるべきところが後者では農牧についての基礎知識となっている。
・魔導についてはほぼ同等の教育機会を与えられているが、それ以外の科目に於いては授業時間の問題からやや差が生じているのが現状である。
・高等学校への推薦枠(志願枠)はそれぞれ同数が設けられている。ただし国内に高等学校を有していない南方諸国に於いては、旧宗主国あるいは隣接国の高等学校への推薦枠を持っている。
・その後は任意で(特に専門職に就かない若者が)4年制の高等学校に進むこともできる(国家運営のため授業料は基本的に無料)。進学率は多い年でも1割程度。
・高等学校ではより高度な魔導や戦闘訓練・古代語の読み書き等を教わる(何を教わるかは自分で選択できるが、授業内容は各国毎に多少の差がある)。ここを出た人々は教師・国家公務員等の非生産職に就くことが多い(逆に考えれば、高等学校に通うことで専門職の修行期間を逃しているのだから、それ以外で職を得ることが難しいとも言える)。

■人種・民族
▽人種
・髪の色や肌の色や瞳の色は多種多様。
・髪の色は金色、銀色(青みがかった銀色や紫がかった銀色もある)、黒(青みがかった黒もある)、茶色、赤、(極希に)緑、など。
・瞳の色はブラウン、灰色、青、緑、等(優性遺伝順)。
・白色人種が多い。だが、黒色人種や黄色人種、赤色人種(褐色人種)も多少存在する。(例:アークライト家)
▽民族
・基本的に民族という概念はない。ただ、ケチュアの民との区別は多少ある(彼らの多くは肌の色が褐色、あるいは黒い髪色を保っている)。だが、それによっての差別等はない。ケチュアの民は魔導を伝授してくれた大陸人(ここでは便宜上こう呼ばせて貰うが)に恩恵を感じているし、また大陸人もガラス等の原始的精製方法を教えてくれたケチュア人に恩恵を感じている。

■言語
▽言語一般
・エングリシアと呼ばれる言語が共通語。地方により多少の方言はあるが大差はないので、とりあえずそのままでも意志疎通は可能(エルメキア方言を除く)。
・古代語には二種類あり、古代世界語(アンシェ・エングリシア)と呼ばれるものと古代大陸語(エスファノール)と呼ばれるものがある。エングリシアは前者の流れを受け継いでいる。

▽人名
・個人名は名前・姓名の順に表記される。
・宗教が失われているため、洗礼名も存在しない。
・昔は空白を以て名前と姓名の区切りとしていたが、現在は「=」が区切り記号として使用されている。古来「=」はあだ名と名前を結びつける記号であったが、ラファエル王国時代には既にそれが名前・姓名の区切りとして用いられていたようである。
・かつてこの大陸では名前・父姓・母姓という表記方法が一般的であったため、希に未だにその風習を継承している家系も少なくはない(特に大陸北部に多く見られ、ブランドブレイ中央以南に於いてはあまり見られない)。
・父姓母性の両表記という習慣が残った一方で、祖父や一族中興の祖を中間名とする風習は既に廃れてしまっている。
・だが個人的に自らに別の名前を付け中間名とする者もいるし、それを慣用名として用いることが多くの国でも認められている。(例:ウィルバー=ロウクス=アシスト)
・エルメキア・ケチュアの出身者の名前・姓名には、古名がつけられている場合が多い。(ex.Angelica,Simon,Dorothea,Theodor,Oswald ...)[ただし、大陸の人々はそれが古名であることを知らずに、旧文明時代よりこの地に残る独特の名前だと信じている。当然その意味は知らない。]

■宗教
・概念すら存在しない(次回作以降のネタばらしになってしまうので詳細を書くことが出来ませんが御了承下さい)。

■魔導概念
・本作品に於いて、魔導とは(後述する)魔力と理力の合成により発動する物理作用と定義。
・『魔』という表現が含まれているが、妖術でも魔術でもない点に注意。
・原理解明されていない時代の呼称が『魔法』であり、旧文明崩壊後に原理解明されてからの呼称が『魔導』。
・理力="Mind Force":人間の持つ精神であり、同時に肉体という器に宿る魂そのものでもある。過度の魔導行使はこれを削るが、有る程度の自己修復機能を備えているため通常の魔導行使範囲内であれば特に人体に影響は与えることはない。
・魔力="Mystic Force":恒星から発せられる波の一種。その波を直接取り込むことは体内への悪影響が大きすぎるため、現在は月という衛星で反射された波を用いている(バルセザリアール最終大戦(大陸歴1000年)以降は遠くの恒星からの魔力を直接使用する方法へと変化)。
・最終的な発動状態を表す魔導力="Sequence Power"は机上の理論に於いて概念的にのみ存在する。主に魔導方程式を組み立てるときに(解を求めるときに)用いられる。ちなみに直訳すると『連鎖力』。同じ『力』でもも"Force"でなく"Power"であることに注意。
・原理的には魔力と理力という二種類の波を組み合わせ、その合成されたベクトルにより12の素粒子を操ることで、物質の構成に変化を与えたり原子の動きを加速・減速させ、様々な物理作用を起こすことを可能としている。

■魔導原理

【恒星からの魔導】
・人の器では太陽という至近距離の恒星からの魔力を直接受け取ることは不可能なため、月という衛星で緩衝させその反射魔力を用いて魔導を発動させている。
・このため、旧時代には「月に魔力がある」と信じられていた(人という観測者が月という対象物との関係を一対一で限定した場合、あたかも月が魔力を発しているかのように見えるため。かつて天が地球の周りを回っていると考えられていたのと同様に、魔導に対する知識が深くない時代に於いてはそう考える方がむしろ自然である)。

・理力そのものが高密度に集積すると発光現象(バースト)を起こすことがある。
・宇宙空間に於いても恒星級の理力集合体が発光する。その発光を地球から観測すると、まるで宇宙全体が光を持っているかのように見える。

【旧来の『魔法』に関する捉え方】
・この理論に於いて北欧の伝説を紐解くならば、月の光で鍛えられたという『ミスリル』金属は、すなわち月で反射された太陽の魔力を内部に含蓄した銀ということになる。
・銀ないしは水銀という物質は特に理力や魔力の波を捉えやすい。写真と現像液の関連性(もっともユリア世界にカメラは存在しない)。
・あるいは古代から聖地・霊峰などと呼ばれる場所に於いて見えないはずのバースト。自然発生した密集理力。 ・古来の人々が負の理力を有する存在(死せる者達)と対峙するには銀の剣や十字架が適すると考えてきたのも、銀という金属が理力に及ぼす影響力を経験則により身につけていたと捉えることも出来る(この理論に基づくならば、形状は問わない)。
・逆に、イギリスのウェールズ地方などケルト文明圏に於いて、馬の蹄鉄を玄関に打ち付けると妖精除けになると信じられてきたのも、鉄という金属が理力や魔力と相性が悪いためと考える事も出来る。
・かつて世界各地で妖精や精霊の目撃談があったのは、鉄がまだそれほど普及しておらず自然発生した理力体がその場に留まることの出来る環境があったため。
・産業革命と共に鉄の時代が訪れ、理力体の自然発生率は激減し、同時に科学の進歩によってそれらの目撃談が失われていったと考えることもできる。
・もっとも、人間が進化の過程で精神の安定を向上させ恒常的な幻覚を見なくなったという原因も多分にあると思われる。

【魔力含有(金属)】
・自然界に存在する物質として銀ないし水銀は純魔力を含蓄できる。
・ネルクスの塔も内部は銀が用いられている。アンデス山脈産出。
・耐熱魔導鋼ヴァイン系は錆びるという性質を持つが、その反面内部に純魔力を含蓄することができる。
・上記の金属は腐食と共に内部に含蓄した魔力が次第に漏れだし、最後にはただの金属屑となる。リサイクル不可な産業廃棄物。環境には優しくない→メルフィザーム周囲に散らばる錆び付いた魔導金属プレート
・ユリア帝国時代のユリア鋼/イーディス鋼は錆びず、魔力含蓄が可能。ただし希少生産。
・ユリア世界の魔導鋼
 シェナ(星鋼)あるいはミスリルの一種。やや青い。
 リル(百合鋼)基本は白だが、凝固の際の冷却速度によってどんな色にも染まる。リル顔料の元にもなる。
 ヴァイン鋼(葡萄酒鋼)錆びるが魔力含蓄が可能。
 イーディス鋼(女神鋼)後にユリア神話の主神となった女性の姓名より。
 メルフィア鋼(婚約鋼)リルよりもやや軽量で硬度がひとまわり大きい強化版。ただし生産は希少。

【肉体構造による差違】
・胎内に生命を宿すことの出来る女性の方が理力許容量(キャパシティ)は大きい。厳密には男女どちらとも同程度の肉体許容限界を持っているが、最大時に数人の理力を宿すことの出来る女性の方が最大理力許容量が成長しやすい。
・同様の理由により、妊娠時に大量の理力を必要とする大魔導(すなわち一時的ではあっても体内に膨大な理力展開の必要がある場合)を行使すると、胎児の理力を浸食し流産させる恐れがある。
・その危険性を極力回避しようと、ラファエル王国時代には生活魔導の消費理力を抑えるべく詠唱簡略化の研究が盛んに行われた。
・そのため、今日の生活に必要な「ティンダー」「ライト」「ウォーム」「ボイル」「ウォーター」「ピュリファイ」などの魔導の消費理力が極端に少なくなっている(事実上一日に何回でも使える)のである。
・これは同様に魔導全体の詠唱の簡略化を促し、(ラファエル王国時代初期に較べて)高速発動を可能とした。

【理力質の変化】
・肉体的な交わり(性交)を持つことで互いの理力体が干渉され、生来生まれ持った理力の質は変化する。
・ないしは輸血・手術に於いても、受けた側の理力の質は変化し得る。もっとも生命の危機には替えられないが――。
・多くの人間と交われば交わるほど自らの理力の質は低下し、理力体の生来の純度は濁っていく。このため、大陸に於いては貞操観念が非常に強いものとなっている。
・理力の発達により全般的に自らの突発的な春期発動を抑えることが不可能ではなくなっている。あるいは美徳とされる。
・そのため、生活に魔導が欠かせない物となるにつれ売春という商売は廃れていった(エルメキア法以外では特に規制されていないが、少なくとも公にはほとんど存在しない)。
・旧文明時代から性行為に対しては開放的ではないというその風習も強く影響しているが(肉体美に関しては解放さと妖艶さが存在していたが。)。
・理力密度が異なる場合、一方が他者の理力体を奪う(=密度の薄い方へ流れる)こともある。
・だが必ずしも処女喪失により感受性を失うわけではなく、相手が親族であるなど自分と非常に類似した同質の理力を備えていればそのままの感受性を保つことも可能だが、赤の他人として同質の理力存在を見つけるのはほぼ不可能に近いと考えた方が良い。
・親族間婚姻の場合は生来の理力純度は比較的保たれるが、遺伝子が近すぎるためか生まれてくる子供の肉体に何らかの影響が出やすい(遺伝的に何らかの病因を有していた場合、単純計算だけでも近親者間に置いてはその発動率は通常の2倍となる)。このため、大陸に於いても三等親以内の婚姻・姦淫は禁じられている(懲役刑)。
・例え幼少の頃から強い感受性を維持していても、繁殖の停止という更年期に入ることで自分より大きな理力を維持する力は失われ、人並みに戻ることも少なくない。だがそれを乗り越えるとより一層の感受性を手に入れることもある。
・とりわけ処女の理力感受性が強く、巫女や精霊との話者が若い者に限定されていたのもこのあたりに由来する。
・血液には理力が強く染みこんでいるが、鉄分も含まれているため、魔導的にその赤き液体は正の理力としてではなく負の理力として存在が定義される。血を浴びる=負の理力の飛沫。
・通常の鉄分は理力体にはあまりよい影響を与えないが、肉体の維持に適量は絶対に必要となるので、有る程度は鉄分の含まれる食べ物を口にした方がよい(理力体を重視する余り肉体を疎かにしては元も子もない。魔導に最も必要なのは健康管理)。
・人を殺すことでも負の理力は蓄積する。すると魔導発動が衰えるのみならず勘が鈍くなり、不慮の怪我・事故等に遇いやすくなる(いわゆる第六感の鈍化による無意識遭遇走査範囲の低下/発生確率の上昇)。
・理力と理力が交わることで新しい理力を誕生させる。生命の誕生。宿した魂にも引き継がれる正負両理力の一部。あるいは武家に課せられた殺傷縁。
・結果として死後の浄化に時間がかかり、その間は長きに渡り自らが背負った負の理力に苦しむことになる。
・生きるための殺生とは異なる。脳の大きさに比例した霊格。
・ポルターガイスト、負の理力による空間振動あるいは乱気流。気にしたら負け(←?)。
・魔力誘導方程式を反転させれば、体内に蓄積された負の理力を用いた魔導(一般に妖術・魔術・呪いと呼ばれる類の物。タロットなどの意図的な「うらない」もこれに含まれる)を発動させる事もできるが、それは正の理力としての魂(理力体)を削ることになり、自らの寿命を減らして発動させていることに他ならない。つまりは結果的に自らを滅ぼす悪循環。大陸に於いてその方法は既に失われている。
【他の波長との干渉】
・磁力は意図的な魔導にとって妨げ(ベクトルの異常変化の原因)となる。魔導の鉄との非融和傾向性(ただし一概には言えない。原子結合の強化された鉄等は逆に理力や魔力を増幅し得る/日本刀)。
・だが地磁気そのものが肉体(あるいは理力の全て)に直接/間接的に与える影響も見逃すことはできない。いわゆる風水。
・水は理力を含蓄する。そしてその理力は地磁気のサイクルにより質を変化させる。生命誕生周期における理力波長との一致/不一致、増幅となるか減衰となるか。
・光は微力ながら魔力に近い性質のため、魔導に悪影響は与えない(むしろ増幅)。
・異常な強さの魔力を浴びることでの遺伝子破損/あるいは永続把持。一度変化した後は進化も退化もしないが、歳も取らず常に肉体が永続遺伝子に基づきその状態を維持しようとするエンディル。

■遺伝性疾患
・血液型はAとOが多い。次いでB、ABの順(注:かつてケチュアにはO型しか存在しなかったが、旧文明時代の混血により現在ではA型もいる)。希にABO全ての血液型を備えるシスAB型が出現することがある。
・白色人種が多いため、一般的に遠視傾向が強い。
・同様の理由により湿性型耳垢が大半を占める(そのため現代日本でみられるような竹の耳掻きは無意味なために存在していない。細い木の枝に綿を巻いた綿棒が一般的)。
・ワールデンブルグ症候群はこの大陸に於いてあまり確認されていない。(注:左右で異色性の虹彩を持つ症状。優性遺伝。前述の症状がある場合、同時に左右の眉毛が直線上に繋がるという特徴を持つ。)
・ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)活性は個人差が大きいが、全般的にはやや強い傾向がある。
・近視の割合はさほど多くはない。黒髪系の人間に若干その傾向が見られるが、生体魔導で若干の回復は見込める(加えて機会社会から遠ざかったことで平均視力が回復している)。
・理子による遺伝子治療(親類からの転写含む)が殆ど。薬草等による解毒・治癒は通常に存在するも、それ以上の切開・薬物投与等の治療は殆ど行われない。いわば基礎と究極形の治療方法しか残っていないのが現状。

■生死
・死体は火葬。骨にした後、粉々に砕いて土に埋める。死に際する祈りや経文というものはない。死体の埋葬された上には正方形の石版(幅:40cm程度 天地:5cm~10cm)が置かれ、死した者の名や生没年が刻まれる。時として詩が刻まれることもある。
・死後は肉体を離れた理力体が転生をするという思想が一般。この概念は『太古からの自然の摂理』として受け止められている。
・転生の際に理力体に刻まれた記憶も消去されるが、まれに生前の強い思念が浄化されずに残留することもある。
・だが輪廻による涅槃(ねはん)という概念はないが、人に対して罪を犯す(他人の人生を悪い方向へ動かす)ことで理力が濁るという考えは少なくないし、学問に於いてはそう教えられている。

■大陸地理
・惑星の南半球に位置。地図も南が上となっている。(地図は基本的に正角図法(メルカトル図法))
・通常「大陸」と呼ばれている人間の生存可能領域は、厳密にはサウスアムラック大陸の南端部分だけでしかない。
・季節型は周年降水型。気候は西岸海洋性気候(現代のヨーロッパと同じ)。
・土壌は褐色土・あるいは森林褐色土。(大陸北部は砂漠土)。
・植物型は落葉広葉樹林・混合林。
・大陸最南端の町はフェーゴ共和国の首都シェザ。ラファエル王国時代、王国の探検隊に所属していた剣士シェザ(金属精錬魔導の発明者シェナの兄)がこの地で病に倒れた為、後にこの名が付けられた。余談になるが、それを悲しんだ妹のシェナは兄の為に魔導金属シェナで正方形の墓碑を作り、それを死体の埋められた場所に置いたという。これにより、正方形がこの大陸における墓碑の一般的な形となった。
・大陸最北端の町は一般的にはエルメキア礼法国メルセデスとされている。が、実際は更に北にあるケチュア自治領の町が最北端。その名はあまり知られていない。
・ケチュア自治領より北には人は住んでいない。と、されている。
・シェザより更に南に行ったところには氷の大陸ユル=シアルスがある。そこに人は住んでいない。(シェトランドと呼ばれることもある。)
・フェーゴ地方では夜空にオーロラが舞うこともある。といっても別にオーロラ=セルシウスがお嬢様笑いをしながら踊るわけではない(注:誰もそんなこと聞いてません)。
・大陸南部の冬は高緯度のため白夜となる。

■天災
・北方では時々地震が発生する。その為、エルメキア礼法国のメルセデスの町などでは殆どの家屋が二階建てどまりになっていたりする(参考までに記すが、ケチュアの地に於いては家屋の殆どは平屋。)。
・台風やハリケーンといったものはない。時たま忘れた頃に(数年に一度)草原で竜巻が起こることはあるが頻度は高くない。

■古代遺跡
▽ラファエル王国以前
・現存していない。ケチュアの伝承を信じるならば、かつては大陸を埋め尽くすほど存在していたがラファエル王国時代にその全てが消されたとの事。
▽ラファエル王国以後
・カイザリア帝国の『ネルクスの塔(大陸歴179年以降)』『旧帝都(大陸歴639年以降)』など。

■歴史
各国の年表参照(次回作以降のネタばらしになってしまうので詳細は書けません。ごめんなさい。)


地理に詳しくカンがいい人は「ん?あれ?これってもしかして?」と思うかもしれませんね。ええ、たぶんその通りです(笑)←問題発言





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