東京電力ホールディングス(以下、東電)は、福島第一原発から20km圏内で採取したクロダイから、これまでに最高値となるストロンチウム90を検出し、その分析結果を7月13日に発表した。
東電は毎月、福島第一原発の「港湾内」(例えば2017年6月)と「20km圏内海域」(例えば2017年6月)の魚介類を採取し、放射線の濃度を発表している。
通常は、セシウム134(半減期約2年)とセシウム137(半減期約30年)のみを分析。広報によれば、今回は、2016年度第四4半期分でセシウム濃度の高かった上位5試料(クロダイ、キツネメバル、シロメバル、カスザメ)について、ストロンチウム90(半減期約29年)の濃度を分析してみたと言う。時々行ってきたストロンチウムの測定は、今回の報告分を含めて2016年度までで99検体あり、クロダイが対象となったのは今回が初めてだと言う。
東電分析で最高値
その結果、木戸川沖合2キロで、今年1月下旬に採取されたクロダイ(全長50.6センチ、重量2.24kg)から、27ベクレル/Kgのストロンチウム90を検出した。
「再度、状況を確認するために、同じ近海の違う場所でもう一度測定したところ、30ベクレル/Kgが出た。30ベクレル/Kgは過去の最高値です。
ただし、セシウムは魚の身の部分のみを分析したのに対して、ストロンチウムは骨に貯まるので、それも含めた魚全体(内臓以外)を測定した結果です」(東電広報)。
仮に食べたら「胸部レントゲンを1回の160分の1」と説明
また、東電は、「このクロダイを仮に200g食べたとすると、その場合の線量は約0.00031mSvということになりまして、この値は、胸部レントゲンを1回受けた、これがだいたい0.05mSvでありますけれども、その160分の1程度の被ばくとなります」と説明した。
しかし、レントゲンの場合は「外部被ばく」、食べた場合は身体に取り込んでの「内部被ばく」である。
水産庁に尋ねると、宮城沖と福島県沖で獲れるクロダイには、現在でも、出荷制限がかかっている(水産物の放射性物質調査の結果について~7月24日更新~)。
しかし、クロダイは地域によって「ちぬ」と呼ばれ、全国で楽しまれている魚で、海域に県境はない。大丈夫なのか。
すると、水産庁は国立研究開発法人「水産研究・教育機構」に委託して近海(福島沖、房総沖、三陸・北海道、日本列島近海)で採集、分析した水産物ストロンチウム等調査結果を公表しているという。
一方、厚生労働省は、ストロンチウム90の単独の基準値は設けず、一般食品の放射性セシウムの基準値100ベクレル/kgに含めている。今回見つかったクロダイの数値はそれ以下ではあるが、日々欠かさず摂取する水の基準値は10ベクレル/kgであることも忘れてはなるまい。
原発事故から7年、出荷制限中のクロダイから、東電調査におけるストロンチウム90の最高値が検出されたことは何を意味しているのか。次の内閣における農水大臣、厚生労働大臣、環境大臣、そして経産省は、事実を知り、意味を考え、縦割りを排して議論すべきことが山ほどあり、これはその氷山の一角だ。
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