映画「十九歳の地図」

十九歳の地図十九歳の地図
本間優二                                                                     山谷初男

今回は柳町光男監督1979年製作「十九歳の地図」をピックアップした。
脚本・監督は「ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR(1976年)」で社会派・文芸派映画で日本を代表する名匠と言われる柳町光男氏だ。当初、安田生命ホール(現・明治安田生命ホール)での 小規模公開から始まってから評判を呼び、東映系で拡大ロードショー公開され、芥川賞作家中上健次氏が評価した事がきっかけとなり、本作がクランクイン出来 たそうである。
本作以降、「さらば愛しき大地(1982年/根津甚八・秋吉久美子主演)」「火まつり(1985年/脚本:中上健次)」「愛について、東京(1993年)」などで各方面から高い評価を受けている。

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蟹江敬三                                                                   清川虹子

【追記・訃報】
名バイプレイヤーとして数々の映画、本作にも出演した蟹江敬三 氏が2014年3月30日に亡くなった。享年69歳だった。ご冥福をお祈り致します。

【ストリー】
吉岡まさるは十九歳、地方から上京してきて、新聞配達をしながら予備校に通っている。
三百軒以上もの玄関に新聞を入れる単調な肉体労働の上に、集金に行けば、どこの家からもうさん臭さがれ、無視される。吉岡は配達区域の地図をつくり、各 家々の名を書き込み、犬がいるから×印一つ、花があるから×印二つなどとランクをつけ、それぞれの家に嫌がらせの電話をかけたりしている。吉岡の同室には 三十七歳になる独身男、紺野がいる。ホラばかり吹いていて何も出来ないダメ男の紺野に、吉岡は反吐が出るような思いがする。そんな紺野の前に、自殺未遂の 末、片足が不自由になった女が現われる。男と寝ては生活の糧にしている娼婦であるその女は、紺野に輪をかけて、醜く、汚なく、そして孤独だ。そんな女を紺 野は“マリア”と呼んで慕う。吉岡には、二人は大人の人間の汚なさの象徴に見える。やがて女は身籠り、はじめて幸福な気持になった紺野は、女のために、生 まれてくる子供のために、その幸せを完成させようとするが、生来の世渡りの不器用さからうまくいかず、強盗傷害を犯して掴ってしまう。吉岡は女をなじっ た。女は「死ねないのよ……」と悲痛な言葉を吐き続ける。吉岡のやり場のない怒りは、すべての人間に向っての脅迫電話となった。東京駅や街のガスタンクの爆破予告を続ける。「のうのうと生きてる皆んなを吹っとばしてやる!殺してやる!ほんとだぞ!……」電話を終えたあと、吉岡はただ泣くばかりだ。その涙は、人間とは、人生とは、社会とは、その最深部を見、知ったことの代償なのだ。

十九歳の地図十九歳の地図
白川和子

題名:十九歳の地図
監督:柳町光男
原作:中上健次
製作:柳町光男、中村賢一
撮影:榊原勝己
照明:加藤勉
美術:平賀俊一
録音:瀬戸厳
編集:吉田栄子
音楽:板橋文夫
助監督:浅尾政行
記録:浅附明子
スチール:山田伸顕
現像:東洋現像所
出演:本間優二、蟹江敬三、沖山秀子、竹田かほり、山谷初男、白川和子、友部正人
1979年日本/ビスタサイズ・カラー109分35mmフィルム
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沖山秀子