日本地図をオレンジや緑に染め分けた核のごみ最終処分の「科学的特性マップ」。政府はこれで、誰に、何を伝えたいのだろうか。「適地」に色分けされた自治体を不安に落とすだけではないか。
原発で使用済みの核燃料。これらは「再処理」すなわち、燃料として再び使えるものを取り出す過程を経て、搾りかすの液体(高レベル放射性廃棄物)を特殊な容器に封じ込め、地中深くに埋設することが法律で決まっている。
猛毒の核のごみ。埋設後も厳重な管理が必要だ。その期間は十万年-。
電力事業者らでつくる原子力発電環境整備機構(NUMO)が、埋設先を探し始めて十七年。候補地すら決められない。
業を煮やした経済産業省は一昨年、処分地選定への関与を強める方針に切り替えた。その第一弾が「科学的特性マップ」と名付けた地図だ。日本列島を緑、濃い緑、銀、オレンジ色に塗り分けた。
オレンジは、火山や活断層などがあるため、はじめから処分場にはできない地域、緑と濃い緑が、処分場を造っても良い地域。濃い緑は、より好ましい場所である。
造ってもいい場所は、国土の約65%、全都道府県に及ぶ約千五百の自治体が含まれる。東京ディズニーランドや羽田空港なども“適地”の中にある。
公表されるやいなや、濃い緑に色分けされた自治体からは、不安と反発の声が相次いでいる。
背景には、ごみ処理の展望もないままに原発を乱造し、福島の事故を招いた上に、その後始末もままならないのに、再稼働にひた走る政府への不信感があるはずだ。
政府の積極関与がやがて処分場の押しつけにつながるという、疑心暗鬼もあるだろう。
今世界で最終処分地が決まっているのは、フィンランドとスウェーデンだけである。
フィンランドは、古い強固な岩盤の上にある、国民がほとんど地震を知らない国だ。政府から独立した原子力規制機関への信頼も「警察より厚い」という。信頼こそが、すべての大前提なのである。
経産省は、濃い緑の地域を中心に、この秋から「対話活動」に入るという。
受け入れをお願いするだけでなく、日本の原子力政策を根本から見直す姿勢を見せないと、国民的理解は到底得られず、たとえ十万年間“対話”を続けても、名乗り出るものは現れまい。
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