妄想考察
「イリヤルートがどんな話だったのか妄想してみる」


PS2版でリリースされるかと思いきや、幻のままに終わったイリヤルート。
幻に終わった以上、どれだけ好き勝手言っても大丈夫です(笑)。当たりも外れもない。
「イリヤルートはどんな話になる予定だったのか?」と妄想全開で考えてみます。

桜ルートの一部が元イリヤルートなのはわかっているから、主にそれ以外の部分について考える事にしましょう。
今までリリースされたイリヤルート独自の情報は以下の二つ。
(1)イリヤルートがあるとしたら、桜ルート9日目で正義の味方でもなく、桜の味方でもなく、イリヤの味方を選ぶことで分岐するのだろう(Fateサイドマテリアル用語辞典・ボツルートの項目)
(2)イリヤルートでは桜は確実にラスボス(ホロウ花札 とらぶるモード vs桜)
少なっ! 情報、少なっ! これじゃあ、とてもまともな考察にはならんなあ……。まあ、しょうがないですね。
では、これをベースにどんな話が作れるか考えてみましょう。


まずは……と。ふむふむ。イリヤルートって、桜ルート9日目・夜の公園から分岐するのね。
――って、ちょっと待って。おかしくね!?
桜ルート9日目の選択って、桜が臓硯の操り人形だったと知って、桜を殺すかどうか思いっきり悩んでるシーンじゃないですか!
この後は「レイン」ですよ! 雨の中桜を抱きしめて、桜だけを守ると誓う桜ルートの中でも屈指の名シーン!
ここからイリヤを選ぶって……あり得ない気がするんですが……。桜への裏切りじゃん。
だいたい何でイリヤルートなのに、初めからイリヤだけと親しくしないんでしょうか? 桜ルート9日目から分岐する必然性って何……?
謎すぎる。マジでわかりません。
次行ってみよう、次!

えーと、桜がラスボスですか。桜ルートでもボスだったような気がするんですけど(笑)。
でも桜ルートと違って、桜がルートヒロインじゃありません。桜を救う事がルートの目的じゃないわけです。
とすると、桜が死ぬんですかね。花札で「確実にラスボス」とイリヤに言われて、「覚悟はしている」とか「自分の時はイリヤちゃんが犠牲になったからこれも恩返し」とか桜が言うし。
――って、ちょっと待って。それもおかしくね!?
だって桜ルートで何もかも犠牲にして、ようやく桜を救ったんですよ!?
桜ではなくイリヤを選んで、そのあげくに桜が死んだから……せっかく桜ルートで桜を助けたのが台無しじゃないですか?
……どういうこと?
じゃ、じゃあ、桜ルートTrueEndと同じく、イリヤが士郎のために犠牲になって、そんでもって桜を救……う?
ないなあ。ルートヒロインが死んで、ルートヒロインに選ばなかった方のヒロインを助けるなんてあり得ない。それじゃあ、イリヤが哀れすぎます。浮かばれない。そんな結論になったらイリヤファンに刺されます。
となると、やっぱり犠牲になるのは桜の方か。もしくは両方救う。でもそうすると、桜ルートで全てをなげうって桜を助けた意味がなくなっちゃう気がするなあ……。
謎すぎる。どういう事なのか、まったくわかりません。


考えれば考えるほどおかしいですね。何かを決定的に間違えている気がします。
桜ルートの後に、桜ルートを否定するような話を持って来ちゃだめですよね。

――ん? んん? 桜ルートの後? 後? 第4ルート? 3と4?

それだ! 前提を間違えていた! 無意識にイリヤルートを第4ルートだと決めつけていた!
イリヤルートは第4ルートじゃない! おそらくは第3ルートの予定だったんだ!
イリヤルートを第3ルートと仮定すると、桜ルートさらには凛ルートとの相性が抜群に良くなる!


ちょっとここで目先を変えて、桜ルートについて考えてみましょう。
ぶっちゃけ、桜と桜ルートは人気がないですよね。残念ながら(人気がないのもわかるけど)。
そうなってしまった原因として、桜と桜ルートへの感情移入が難しいという問題があげられると思います。
(1)セイバルート・凛ルートでの桜の出番が少なすぎる。おまけに桜ルートでは、アンリ・マユの影響で桜が黒くなっていくので、桜に感情移入しにくい。というか、むしろ引くシーンが多々ある。
(2)凛ルートでの士郎の理想を目指す姿がプレイヤーの心に強く残っている。この状態で桜ルートに入ると、理想を捨てて桜を救うという選択に強い抵抗を感じる。
人によって原因は色々あると思いますが、私にとってはこの二つが大きかったです。
ようは桜ルートの前に桜の出番がもっとあって、「正義の味方を捨ててでも桜を助けたい」とプレイヤーが思うシーンがあれば良かったんです。
奈須きのこ氏はどうして桜ルートの前に、桜に感情移入できるシーンを作らなかったんでしょう?
力量の問題じゃないですね。力量のない人がこんなに多くの人を惹きつける物語を作れるはずがない。
となれば、問題は別にあったと考えるべき。
例えば……そう、『開発期間』です。
開発期間の関係上、桜ルートの前に予定されていた桜に感情移入するシーンが大幅に削られたとしたら?
そしてそれが、最後に大幅に削られたモノ……つまり、イリヤルートに含まれていたとしたら?


まず、桜ルート9日目の例の選択に戻ってみましょう。
この時点で、プレイヤーは桜が相当つらい状況にあるとようやく知ったばかりです。まだまだ桜には隠された真実がたくさんあります。雨の中の桜の大告白はもうちょっと先の「レイン」です。
で、セイバールートと凛ルートの記憶が強く残っているので、プレイヤーの大半は「正義の味方を目指す士郎」に未練がある。
仮にここで「桜を救いつつ正義の味方を貫く」という可能性が提示されたら、貴方はどうしますか?
初めてプレイする桜ルート9日目・夜の公園に戻った気になって考えてください。ちなみに私だったら飛びつきます。
具体的には士郎からイリヤに対して「桜を救うために力を貸してくれ」と頼む選択肢がでてくるわけです。士郎でも凛でも桜の命は救えませんが、小聖杯であるイリヤなら可能性はあります。
当然、イリヤもただで応じてくれるとは限らない。魔術師の基本は等価交換です。なおかつイリヤは士郎を自分のモノにしたくてしたくて仕方がないキャラ。「桜を助けるために力を貸す代わりに、シロウは私の味方になってくれる?」と聞き返してくるでしょう。
これがサイドマテリアルにあった「イリヤの味方を選ぶ」という選択肢の正体ではないでしょうか?
桜ルートをやっていないなら、わりといい選択に見えるじゃないですか! 桜は救えそうだし、正義の味方という理想も捨てなくて済む。
それに直前の凛ルートではイリヤがあっさりと死んでいます。桜を助けた後イリヤの近くにいれば、イリヤの命を救えるかもしれない。まさに美味しいずくめ……に見える罠。

「えー、ここで桜の味方をしないと、桜は救われないじゃないか!」と思った桜ファンの人。
貴方は正しい。
でも、よく考えてみてください。ここから先はイリヤルートだという仮定です。そして更に言えば、イリヤルートが第3ルートなら、「プレイヤーは桜ルートを知らない」状態です。


さて。それでは実際イリヤルートに入ったとしましょう。
士郎が桜への想いときちんと向き合うのは桜ルートに入ってすぐです。となると、イリヤルートの士郎にとって、桜は愛する女性ではなく、家族のままですね(ここ重要)。
イリヤの力で刻印虫を除去し、バーサカーと共に間桐邸を襲撃。臓硯を倒します。臓硯を倒した時点で士郎(プレイヤー)は桜が助かったと思い、約束通りイリヤの味方になってしまいます(けど実はまだ臓硯は滅んでいません)。
自虐癖の付いている桜はどう思うでしょうか? 救われたと思うでしょうか? 違うはずです。
「汚い自分を先輩に知られてしまった。先輩は優しいから口にしないけど、私は先輩に嫌われてしまった。だから先輩はイリヤちゃんの味方になった」
と思うはずです。桜を助けようとして選んだ選択なのに、桜と士郎の心はすれ違ってしまうわけです。
さらにこの段階のイリヤは桜が士郎に近づくのを嫌っているので、「マキリの汚い虫がシロウに近づかないで」とか残酷な事を言っちゃうかもしれません!

イリヤは味方になった士郎をどうするでしょうか? 士郎はセイバーを失っているので、他のマスターから見ればカモです。イリヤは保護者意識全開で凛や桜から士郎を引き離そうとするでしょう。イリヤは士郎の保護もかねて、士郎を自分の城に連れて帰るはずです。
となると、桜を保護するのは凛の役割になります。士郎も凛になら安心して桜を託すはずです。
士郎に見捨てられたと思って落ち込む桜。凛はそんな桜をぶっきらぼうに、でもどこか優しく慰めるでしょう。

しかし、桜にはラスボスになって貰う必要があります。
ここは心を鬼にして、桜の心を絶望で染め上げなければなりません。
となると、やはりここは陰険プロデューサー・臓硯先生の出番です!
臓硯は本体を桜の体の中に隠しています。桜を体の中から操って、凛を後ろからぐっさり刺すというのはどうでしょう?
血の海に倒れる姉と、血まみれの自分の手を交互に見て絶叫する桜(うん。自分で書いててワクワク……じゃなくて、凹みますね)。
これで桜は心の支えを全て失い、ラスボスへの道を歩むことになります。


イリヤルートである以上、次はイリヤに危機が訪れるはずです。
おそらくはここで、イリヤか桜のどちらを救いに行くのか選ばされる。
イリヤルートなんですから、ここで桜を選んだらBAD ENDでしょう。士郎(プレイヤー)はイリヤの味方をした代わりに、桜を助けられないという現実を突きつけられるはずです。
「えー?」と思う人は切嗣の言葉を思い出してください。
「誰かを救うという事は、誰かを助けないという事なんだ。正義の味方に助けられるのはね、正義の味方が助けたモノだけなんだよ」
正義の味方が助けられるのは、正義の味方が助けると決めたモノだけなんです。正義の味方が助けると決めたモノって、簡単に言えば正義の味方が加担すると決めた側のモノですよね。
このルートの士郎は「イリヤの味方」を選んでいます。つまり、このルートで士郎が助けられるのは味方すると決めたイリヤであって、味方をしなかった桜ではないのです。

そして切嗣と言えばイリヤの父。イリヤから見て、このルートの士郎の姿はどう写るでしょうか?
父親と同じ「十の為に一を切り捨てる正義の味方」という生き方。父親と同じ「愛する者でも切り捨てねばならない」という運命に対する苦悩。そんな風に見えるんじゃないでしょうか?
イリヤは家族(桜)を救えず苦しむ士郎の姿に、父親の生涯と苦悩を重ねるはずです。
「私を捨てた切嗣も……こんな風に苦しんでいたの?」と。
はたしてイリヤは切嗣を許す気持ちになるのでしょうか?
切嗣の実像は本来、イリヤルートでぽつりぽつりと語られていく予定だったんだと思います。


やがて物語は大詰めを迎えます。
臓硯は桜の肉体を完全に乗っ取るつもりなので、小聖杯は桜とは別に必要です。聖杯として使うためにイリヤをさらうでしょう。
従って士郎の最終目的はさらわれたイリヤを救いに行くこと。
むろん、士郎が対峙するラスボスは桜! つまり黒桜! もしくはアンリ化桜!
Fateはルート毎にボスに対抗する最終手段が異なります。鞘>UBW>宝石剣+ルールブレイカーといった感じで。
桜は桜ルートでもボスみたいなもんです。となると、ルールブレイカーは桜ルートに取っておかないとまずい。ネタバレ禁止状態。イリヤルートにおいては、ルールブレイカーで桜を助けるのは却下です(そもそもイリヤからアヴェンジャーの正体を教えられない限り、ルールブレイカーで桜を解放できるとは気がつけない)。
しかたがないのでラスボスのアンリ化桜(もしくは黒桜)には普通にダメージを与えて倒し、イリヤを助け出します。
でも、ここで桜が敵のまま死ぬというのもないはず。それでは味気なさ過ぎる。
例えば……こんな案はどうでしょう?


                 ◇  ◇  ◇


アンリ・マユの影がはじけ、中から桜の体が転がり落ちた。
「桜!」
「サクラ!」
 大空洞が崩壊を始める中、イリヤと二人で桜の元に駆け寄った。地面に倒れた桜の腹部からは、じわじわと血がにじみ出している。
どう見ても軽いケガではない。むしろ――いや、そんな事は関係ない。ここまで来たんだ。必ず桜も助けて帰る!
「あ……先輩? それに、イリヤちゃん……」
 桜は目を見開き、ぼんやりと俺とイリヤの顔を交互に眺めた。
「良かった! 正気に戻ったか! 待ってろ! こんな傷、すぐにふさいで……」
 自分の服を引き裂き、包帯代わりに桜の傷口に巻こうとする。
「いえ。いいんです。先輩……」
 桜は弱々しく手をあげて、手当をしようとする俺を押しとどめる。
「いいわけあるか! これくらいのケガがなんだ! あきらめるな!!」
 思わず桜を怒鳴りつけた。イリヤが弱った体でふらつきながらも、桜に治癒の魔術をかけ始める。
 だが、桜は地面に倒れたまま弱々しく首を振った。
「……いいんです。わたし、いっぱい人を殺しました。何人も何人も殺して、兄さん……それに姉さんまで殺してしまった」
「そんな事言うな! それは桜のせいじゃない! 臓硯とアイツが――」
 大聖杯の中、産声を上げんとする異形をにらむ。全ての元凶、アンリ・マユを。
「……いいえ。わたしは生きてちゃいけない人間だった。わたしは自分が生きたいからと、みんなを犠牲にしたんです。――そんな人間にどうしろっていうんです――。奪ってしまったものは返せない。そんなわたしが、どこに帰れるって言うんですか……」
「――っ! それは……」
 言葉に詰まる。例え桜の意思ではなかったとしても、多くの人の命を奪った咎は、桜の心にあり続ける。
 そんな桜を誰が支えてやれるというのか?
 俺が取ったのはイリヤの手だ。桜ではない。
 俺には桜を支える資格がない。
「……それに、わたしが生きて外に出れば、あの子も一緒に外に出ます。私の体を食い破って、世界を滅ぼす悪魔が生まれてしまう……」
「――なっ!?」
 桜を助ければ、世界が終わる……?
 俺に、それができるのか。
 正義の味方を選んだ衛宮士郎にできるのか。
 桜の命をわずかにつなぐために、他の全てを犠牲にする事ができるのか。
「……大聖杯が崩れます。行って下さい、先輩。あの子はわたしが道連れにしますから……。
 ――イリヤちゃん、どうか先輩をお願いします」
 桜の左手が輝いた。急に視界が歪み、あたりが薄暗くなっていく。
「――これ、まさか空間転移!?」
 イリヤの叫びが奇妙に遠くから聞こえた。空間が歪んでいる。桜が聖杯の力を行使して、俺とイリヤを外に飛ばそうとしているのだ。
「待て! 桜!」
 思いっきり手を伸ばす。
 届かない。俺の右手は、桜に左手にわずかに届かない。
 こんなに近くにあるのに、こんなに遠い。
「桜――!!」


                 ◇  ◇  ◇

                
「はあ……」
 衛宮士郎が完全に消えるのを見届けて、間桐桜は体の力を抜いた。
 聖杯の力によって吸収したキャスターの術を使う。本当に出来るかどうか不安だったが、上手くいった。
 もう、指一本動かす力も残っていない。アレが間桐桜に残された最後の力だった。
 間桐桜はぼんやりと暗い空を見つめた。「間桐」桜の人生は暗い虫倉の中に始まり、暗い大空洞の中で終わる。
 わたしにはお似合いだ――間桐桜は自嘲の笑みを浮かべた。
「……でも先輩。わたしこの二年間、幸せでした……」
 長い間、間桐桜の心の中にはあきらめしかなかった。痛いとも苦しいとも感じず、ただ受け入れるだけの日々だった。そこに変化が訪れたのは、衛宮士郎と知り合ってからだ。
 衛宮士郎との日々は、あきらめ以外を無くしていた間桐桜に、諸々の感情を取り戻させた。
 その中でも最大のモノは、痛みと苦しみだった。それでも、あきらめるだけだった間桐桜にとって衛宮士郎こそが唯一確かな救いであり、幸福だった。

 大聖杯の上に、巨大な岩が落下した。アンリ・マユの断末魔の叫びが、半ば以上崩れかけた大空洞を揺らし、崩落を早める。
 天井から崩れた岩が間桐桜の周辺に降り注いだ。だが、間桐桜は動じない。
 もはや、彼女の目には何も写っていない。彼女の耳には何の音も聞こえない。
 間桐桜の意識は既に混濁している。
「……あ。起きないと……。早起きして、先輩の家に行って……」

 ――ご飯の用意をして、土蔵で眠っている先輩を起こして

「……でも先輩。とても……眠いんです。
 ちょっとだけ、わたしも横になって……いい……です、か……」

 間桐桜は最後に夢を見た。
 衛宮士郎の隣でまどろむ夢を見た――。


                 ◇  ◇  ◇


こんな感じかな? 執筆時間20分程度の稚拙な内容ですが。
あ、桜がキャスターの術を使うのは、サイドマテリアル3の桜・隠しルートネタ"七英雄合体"を意識してます。

イリヤルートが第3ルートなら、イリヤではなく桜が犠牲になる可能性が高い。
凛ルートで示された正義の味方の負の側面「十の為に一を切り捨てる」を身を持って体験するルートです。こういうシナリオを経験すれば、「士郎が正義の味方として生きるのは正しい。正しいけど、救われないモノを切り捨ててしまって本当にいいのか?」という疑問がプレイヤーの心の中に発生するはず。
同時にプレイヤーは思うはずです。
「こんなの、いくらなんでも桜がかわいそうじゃないか! 助けてやれよ!」と。


プレイヤーが「正義の味方」に疑問を抱き、桜を助けたいと思ったところで、再び桜ルート9日目まで戻ってきます。
桜が余命行く場もないと宣告され、ショックを受けて教会から出ると、空気を読まない男・アーチャーが警告してきます。
「判っているな。衛宮士郎。お前が戦うもの、お前が殺すべきものが誰であるかという事を」
やかましい! 今度こそ桜を助けるんじゃー! お前、そんなんだから額の生え際が後退したんだよ!
と思って夜の公園に行くと、イリヤがいて桜ルートへの選択肢が発生している。
「イリヤ、すまねー。今度は桜ルートに入るんだ……。許して。こんな兄ちゃんを許して!」と思いながら、桜の味方を選ぶ。するとイリヤが
「好きな子を守るのは当たり前でしょ? シロウがそういう子だから、わたしもシロウの味方なの」
なんて微笑みながら後押ししてくれるわけです! イ、イリヤ……(泣)
桜ルート単体の時でも十分感激モノのセリフだったのに、イリヤルートの後にこんな事を言われたら、もうたまりませんよね! 感動のあまり勢い余ってもう一回イリヤる――っと? 何やらどこからともなく歌声が……

 クスクスと笑って、ごーごー

ウン、ヤッパリ今度コソ桜ヲ救ワナイトネ。(((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
こ、こうして、プレイヤーは今度こそ桜を救うために、自らの意思で桜ルートに突入してゆくわけです。

思えばここのイリヤのセリフって、ちょっと唐突なセリフでしたよね。つい先日まで「じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー!」だったのに、ここからは無条件で味方をしてくれる。でもこれがイリヤルートの後なら、まったく不自然に感じないはずです。プレイヤーの心情を計算し尽くしたセリフになる。


これでセイバールート・凛ルートが表裏の関係であったように、イリヤルートと桜ルートも表裏の関係になります。「十の為に愛する一を切り捨てる」のか、それとも「愛する一の為に十を切り捨てる」のかという分岐です。
そしてこれは、Fate/stay night全体の中で「起承転結」の『転』になります。
起……セイバールート。人の夢。夢を貫くことの美しさ。
承……凛ルート。人の理想。理想を貫く難しさと、例え報われなくとも先に進むという誓い。
転……仮定イリヤルート。理想の先に直面する現実。理想を貫くことで犠牲になるモノ。
結……桜ルート。人の愛。理想ではなく、己の大事なモノを守るという選択。衛宮士郎のひとつの結末。


これが私の妄想するイリヤルートです。
公式とは何の関係もない一個人の妄想であり、根拠のない推測です。単に「私がこの素材でイリヤルートを追加するならこういう構想にする」というだけの話です。しかも桜ルートの評価が芳しくない事を踏まえての後出しジャンケン。


もちろん、イリヤルートが第4ルートであり、正義も桜もひっくるめて全て守るハッピーなルートであった可能性もあります。ユーザーの多くが望んだのもそういうルートでしょう。
でも、桜ルート9日目といえば、セイバーはもう影に飲まれてしまった後なんです。
イリヤルートは桜ルート同様、つらく悲しいルートとして予定されていたんじゃないでしょうか。