ヘイト国家・日本――原朗『日清・日露戦争をどう見るか』
旅順虐殺事件で死体をいためつける日本兵(西洋の新聞の挿絵)
日清・日露戦争をどう見るか 近代日本と朝鮮半島・中国
著者:原朗
発行:NHK出版 2014年
レーベル:NHK出版新書
外務大臣・陸奥宗光の著書『蹇蹇録』には二面性がみられる。
欧米に対し卑屈なのに、朝鮮と清国には傲岸不遜。
それが国家意志でもあった。
1894年11月の「旅順虐殺事件」では、捕虜や民間人ふくめ無差別に殺したとされ、
翌年10月には朝鮮の王宮で「閔妃虐殺事件」をおこしている。
日本の野蛮さに世界は仰天した。
板倉梓『タオの城』(芳文社コミックス)
近代以降の日本人の内面には、支那人・朝鮮人への憎悪がうづまく。
ある種のエディプス・コンプレックスだろう。
インテリは漢文をたたきこまれ、庶民は関羽など支那の英雄にあこがれた。
この世界観をひっくり返さないと、戦争など不可能。
そして大国の清に勝ってはじめて、国民意識にめざめる。
「日本SUGEEE」と感動にふるえた。
天皇とやらも、ありがたいものとおもえる様に。
日比谷焼打事件
最近の研究では、日露戦争は日本のおもいこみで始まったとされる。
司馬遼太郎『坂の上の雲』で「日本軍のみは一兵といえども略奪をしなかった」
とある義和団事件でも、連合軍の先陣きって馬蹄銀をうばっている。
講和会議で調印したポーツマス条約の内容に、民衆は憤激。
政府はこの事件をちいさくみせようと「日比谷焼打事件」と名づけたが、
実際は東京市全体、そして神戸・横浜などへひろがり、戒厳令までしかれた。
李朝時代の西大門
暴走機関車は勢いおさまらず、1910年に韓国併合。
国際法上はともかく、ハーグ密使事件など利用した強引さは正当化できない。
1915年には「対華21か条要求」。
ただ支那は一枚上手で、内容を欧米にリークし、外交的に日本を翻弄。
『暁のヨナ』(テレビアニメ/2014年)
韓国併合と同年に「大逆事件」がおきている。
まったくの冤罪で、幸徳秋水ら12名を処刑。
文明国にあるまじき蛮行に、欧米各地で抗議の声があがった。
関東大震災後に虐殺された在日朝鮮人
1919年の「三・一運動」を、朝鮮総督府は徹底的に弾圧。
死者7645名といわれる。
日本の警察が、村民30余名を教会にとじこめ焼き殺した「提岩里(チェムアリ)事件」は、
歴史に関心あるものは知らないとマズイ。
1923年の関東大震災では、政府やマスコミがながした流言により、
多数の朝鮮人が自警団や民衆に虐殺された。
日本とゆう暴れん坊をとめたのは、かつて父親役をつとめた支那で、
105万人以上の日本兵と対峙して「戦勝国」となった。
日本のリーダーは、ヘイト国家の本質を理解しないと国益をそこなう。
たとえば野田佳彦は、2012年9月11日に尖閣諸島を国有化したが、
それは満州事変の国恥記念日「九・一八」の直前で、余計な刺激をあたえた。
外交当局はなにをしていたのか?
日清・日露戦争をどう見るか―近代日本と朝鮮半島・中国 (NHK出版新書 444) (2014/10/09) 原朗 |
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