3 Lines Summary
- ・日本時間の29日午後1時、ICBM発射実験の映像が公開
- ・真っ直ぐな道路のようなところにミサイル発射装置
- ・日米中韓がICBM発射を非難
「アメリカ全域が我々の射程内にある」
北朝鮮が、再びICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射に踏み切った。日本時間の29日午後1時、ICBM発射実験の映像が公開された。
金正恩(キム・ジョンウン)委員長が硬い表情で見つめる中、行なわれた弾道ミサイルの発射。
轟音とともに打ち上げられ、オレンジ色の炎を出しながら上昇していった。
映像は、朝鮮中央テレビが日本時間の29日午後1時に放送したもので、28日深夜、ICBM「火星14型」を発射した際のものだとしている。発射後に、満面の笑みで部下と歓談する金委員長の写真も、あわせて放送された。
また、北朝鮮メディアは29日朝、7月4日に発射したICBM「火星14型」の2回目の発射実験を、予定より前倒しで行ったと伝え、「大気圏の再突入技術」を確保したと報じている。
発射実験に立ち会った金正恩委員長は「アメリカ本土全域が射程圏内にあるというのが、はっきりと立証された」と主張したという。
7月4日に続く、2度目のICBM発射で、アメリカへの挑発を強める北朝鮮。日本や韓国も一斉に非難の声を上げた。
ミサイル発射場なのか、道路なのか…
今回の映像公開に関して、安全保障に詳しいフジテレビの能勢伸之解説委員は、発射された場所に注目している。
7月4日に北朝鮮がミサイルを発射した際には、小さなコンクリートの基礎のようなところにミサイルを立てて発射していた。
しかし、今回の発射は、真っ直ぐな道路のようなところにミサイル発射装置を立てて発射している。ミサイル発射場なのか、道路なのか、両方を兼ねているのか、それを見極めるのがかなり難しいという。
また、迷彩色の車両が林の中を移動しているため見つけにくく、発射装置そのものを見つけて破壊するのは困難だ。
「火星14号」の射程は推定9000キロから1万キロ。それが本当だとすると、アメリカの西海岸に到達することになる。
韓国軍は先月、射程800キロの玄武2‐Cという新しいミサイルの発射試験を行なっていて、これは北朝鮮全域をカバーするものとなっている。訓練映像からは、命中精度もかなり高いと見られる。
国際社会がどう対応していくかが注目される。
「北朝鮮の脅威が増した」
北朝鮮がICBMを発射したのは、28日の午後11時42分。深夜のミサイル発射に、日本政府は対応に追われた。
北朝鮮のミサイル発射の一報を受け、29日午前0時すぎに首相官邸に駆け込んできたのは菅官房長官。このあと安倍首相、麻生副総理、そして28日、防衛相を兼務したばかりの岸田外相が官邸に現れ、NSC(国家安全保障会議)が開かれた。
安倍首相は「北朝鮮に対し、厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する」と述べた。
深夜の発射は異例で、ミサイルはこれまでより長いおよそ45分間飛翔し、北海道・奥尻島から北西150kmほどの日本海に落下した。
29日午後、首相官邸では、この日2回目となる国家安全保障会議が開かれ、終了後、安倍首相がこの日3回目となる取材に応えた。その際、安倍首相は「日米双方にとって、北朝鮮の脅威が増した。そのことが、現実のものとなったことを認識するに至った」と述べ、国際社会と緊密に連携して毅然と対応すると強調した。
「向こう見ずで危険な行為」
各国もミサイル発射を一斉に非難している。
北朝鮮に南北軍事会談を呼びかけていた韓国政府。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は29日未明、北朝鮮のICBM発射を受け、NSC(国家安全保障会議)を緊急招集した。
これまで対話路線を貫いてきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領だが、今回のミサイル発射を受けて、独自の北朝鮮制裁案を検討するよう、指示したことがわかった。
韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相は「南北間の軍事的緊張緩和のための、わが政府と国際社会の期待を裏切る無謀な行為だ」と述べた。
韓国軍は今回のミサイルについて、「7月4日に発射されたICBMよりも高度と飛行距離が伸びていて性能が向上した」と評価し、さらなる分析を進めている。
また、韓国軍とアメリカ軍は29日午前5時45分ごろ、韓国の東海岸で弾道ミサイルの発射訓練を行った。
中国外務省は29日、「国連安保理決議や国際社会の期待に背き、発射したことに反対する」と、非難する声明を発表した。アメリカなどに対しても、「関係各国が慎重に行動し、緊張のエスカレートを防ぐよう希望する」と要望した。
中国は、アメリカのトランプ政権から、さらに北朝鮮に影響力を行使するよう圧力を受けている一方で、再三にわたる自制の要請を無視され続けていて、苛立ちを強めている。
アメリカのトランプ大統領も、ミサイル発射を非難する声明を発表した。
声明では「1カ月に2度のICBM実験とは、向こう見ずで危険な行為だ」と非難し、「『実験が北朝鮮の安全確保につながる』との主張は受け入れない。アメリカの安全を確保し、同盟国を守るために、あらゆる措置を講じる」と強調した。
アメリカ国防総省は今回のミサイル発射について「予想されていたICBMの発射と判断している」と発表している。
ハガティ新駐日大使も、日本や韓国と連携して、北朝鮮への圧力強化に取り組む姿勢を示した。
岸田外相は29日午前、アメリカのティラーソン国務長官と電話会談し、「北朝鮮のミサイル発射は、断じて容認できない」として、最大限の圧力をかけていく必要性で一致した。そのうえで、国連安保理のさらなる決議の採択に向け、中国やロシアへの働きかけを進めていくことを確認した。
その後、岸田外相は、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相とも電話会談し、日米韓3カ国の連携が重要との認識をあらためて共有した。
朝鮮半島情勢が緊迫の度合いを増している。
北朝鮮が公開したICBM発射映像はこちら