なんとなくいろいろまとめ
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げんふうけい?
  
  

せんぱや

  
先「せんぱや?」
後「うん、せんぱや」
先「せんぱや?」
後「せんぱや!」
先「せーんぱや!」
後「せんぱやぱや!」
先「ぱーやぱや」
後「ぱやぱやぱや」
先「そろそろ部活しようか」
後「そですね」
  
  
後「退屈なので、何か面白い話してください」
先「んー、難しいなあ」
後「じゃあ、詰まらない話してください」
先「あー、なら昨日、本で読んだ話」
後「面白かったら怒りますよー」
先「血液型って、O型だけ妙に離れてるじゃん」
後「ええ。A、Bってきて、次にOが来るのは予想外ですよね」
先「そのO型って言うのは、C型を見間違えたものなんだって」
後「このやろー」
先「怒られたー」
  
  
先「あのさ、後輩は先輩のことを『先輩』って呼ぶだろ」
後「最近少なくなってきましたけどねー」
先「でもさ、先輩は後輩のことを『後輩』って呼ばないよな」
後「そういえばそうですね。兄も弟を『弟』とは呼ばないし」
先「おかしいよな」
後「おかしいですね」
先「だから、俺はお前を『後輩』と呼ぶことにした」
後「……まあ、そういう姿勢は大事だと思いますよ」
  
  
後「今日、すごい変なことがありました」
先「すげー!」
後「すごいでしょー!」
先「ごめん、話して」
後「通学用の自転車を、駅に停めてるんですよ。
  今朝それに乗ろうとしたら、握ったハンドルに違和感があって」
先「違和感?」
後「見たら、避妊具が両端についてたんです」
先「あはは、何目的だろうね」
後「……私の自転車と交わろうとしたのかも」
先「最初にそんな発想がくるのか……」
  
  
先「妹が欲しかったんだ」
後「一人っ子なんですか?」
先「いや。妹が一人いる」
後「そうですか」
先「俺は一定水準を満たさないと、それを妹と認めないんだ」
後「厳しいですね」
先「だから俺には、妹はいないんだ」
後「じゃあ、一人っ子なんですね」
先「いや。妹が一人いる」
後「そうですか」
  
  
後「高校生って、お金ありませんよね」
先「うん。バイトできない高校は辛い」
後「服や小物買うだけで、すぐに足りなくなりますし」
先「パンとかお菓子も馬鹿にできないよね」
後「ですよねー」
先「なー」
後「…………」
先「…………」
後「パンが無いなら……」
先「うん」
後「いや……小麦粉をこねましょうか」
先「そうだね」
  
  
先「あれー?」
後「どうしました? 鏡でも見たんですか?」
先「いや、ふと疑問に思ったんだ」
後「自分の存在意義とかですか?」
先「そうじゃなくて。後輩って男だっけ? 女だっけ?」
後「あー……どっちでしたっけ」
先「後輩っていう生物として見てたら忘れた」
後「ちょっと待ってください……あ、女だ」
先「一人で確認して納得するなよなー」
  
 
後「あれ、そういえば、先輩はどっちでしたっけ?」
先「んー、口調的に男だと思うけれど」
後「口調は最近当てになりませんよ」
先「髪の短い女も、髪の長い男もいるしね」
後「叙述トリックも増えましたしね」
先「ああー、つまり脱げってこと?」
後「脱ぎたいんですか?」
先「ほら脱いだよ」
後「靴下をですか……」
先「どう思う?」
後「結構大きいし、男っぽいですねー」
  
  
先「あれー?」
後「どうしました? 人生の過ちに気付いたんですか?」
先「ここ、何の部活だったっけ?」
後「あー……何でしたっけ」
先「文化部だとは思うんだよ。なんか暇そうだし」
後「ちょっと確認して……あ、駄目だ、ここ講義室だ」
先「きっと、マイナーな部活だったんだろうね」
後「男女共にいることから何か分かるような気も」
先「キャッチボールでもする? ボールないけど」
後「うーん……でも意外と先輩アクティブだよなあ」
  
  
後「GW終わりますね」
先「夏休みまだかなあ」
後「しばらくは休日ないみたいです」
先「……うあああ」
後「あ、先輩が倒れた」
先「……もういくつねーるーとー、お正月」
後「あといくつですかねー」
先「今年が始まってから120日くらい経ってるから……」
後「240日くらいですねー」
先「こうはーい、起こして。立てない」
後「うるせーばか」
  
  
後「おきてくださーい」
先「……後輩って、後輩の手本だよね」
後「混乱する言い方だなあ」
先「敬語だし、ちゃんと先輩って呼んでくれる」
後「あー。なんか逆らっちゃいけない雰囲気があるんですよ、先輩には」
先「あと、背が小さいとこがさ」
後「うるせーばか!」
先「あ、ごめんなさい」
後「え、いや、すいません」
先「しかし本当小さいね。よく胎児と間違われない?」
後「いや、そこまで小さくはないですよ」
先「精子と間違われない?」
後「先輩どうしたんですか」
  
  
  
  

せんぱや2

  
先「せんぱ、や?」
後「せんぱ、や」
先「……せんぱや?」
後「せ、せんぱや!」
先「せーんぱや!」
後「ぱやぱやぱや!」
先「せんぱやぱや!」
後「ぱーやぱやぱや!」
先「そろそろ部活しようか」
後「そですね」
  
  
先「暇すぎて貧乏揺すりが止まらない」
後「それ癌じゃないですか?」
先「かもしれない」
後「そうですか……」
先「ちょっと紫外線浴びすぎた」
後「先輩、死なないで」
先「あ……、ちょっと待って。貧乏揺すり止まった」
後「それ癌治ったんじゃありませんか?」
先「かもしれない」
後「よかったですね」
先「うん。生きてるって素晴らしいね」
  
  
後「先輩大変です。クレープが美味しいです」
先「常識だと思うな」
後「甘いんですよこれ。信じられます?」
先「マジ? 信じらんねー」
後「しかもこれ、先輩のものなんですよ」
先「え、ちょっと何してるの?」
後「大変です先輩。クレープがなくなります」
先「ざまあみろ」
後「なんかクレープにお礼言った方が良いですかね?」
先「ああ、喜ぶと思うよ」
  
  
先「猫って可愛いよね」
後「なごみますね」
先「目に入れたり出したりしても痛くないほどだよね」
後「出す必要はあるんでしょうか」
先「だって、入れっぱなしじゃ可哀想じゃん」
後「まあ、いい気分はしないでしょうねー」
先「でも、俺が飼いたいのはオウムなんだ」
後「面白そうですよね、喋ったり」
先「調教して『インコー』って言わせたい」
後「覚えさせるまでが虚しそうですね」
  
  
後「セミの鳴き声っていいですよねー」
先「カナカナゼミいいよねー」
後「あ、そういえば私、セミの真似うまいんですよ」
先「前見せてもらったよ」
後「そうでしたっけ」
先「ずっと話してると、話題がループするよね」
後「ですね。何か面白い話ありませんかねー」
先「そうだなあ……」
後「…………」
先「…………」
後「あ、そういえば私、セミの真似上手いんですよ」
先「そうだね……この際やっていいよ」
  
  
後「腰が痛いです」
先「それ白血病じゃない?」
後「え、何言ってるんですか?」
先「あー……ごめん」
後「昨晩はテスト勉強しようと思って、部屋の掃除したんです」
先「その二つはナチュラルに直結するよね」
後「勉強したくないけど有意義なことしたい、みたいな」
先「筋トレとか趣味を探求したくなるよね」
後「そういえば、先輩の趣味ってなんですか?」
先「んー、なんだろうな。楽器とか、音楽鑑賞とか」
後「じゃあ、なんでこの部に入ったんですか?」
先「うーん……そういえば俺、なにしてんだろ」
  
  
先「んーんーんんーんー」
後「ぱぱやぱやぱや」
先「んー、なんか後輩、ここんとこテンション高いよね」
後「みみ触ってもいいですか?」
先「最初はもっと、大人しい人だと思ってた」
後「いや実際、部室外では大人しいんですよ」
先「あー、俺も部室外ではもっと普通だね」
後「だから、外ではなるべく先輩にあいたくないです」
先「俺も俺も」
後「もし『ぱやぱーや』とか話しかけられたら、どう反応していいものか」
先「なんだ、同じこと考えてたのか」
  
  
先「梅雨って嫌だよね」
後「自転車通学には脅威ですね」
先「いい加減傘は進化しないのかな」
後「あれで完成形らしいですよ」
先「じゃあ、ちょっと外行って濡れてきてよ」
後「わけわかんないし、だるいです」
先「だってさー、濡れた姿俺好きだよ?」
後「梅雨でよかったですね」
先「じゃあ、仕方ないから、俺が濡れてくる」
後「風邪引かないでくださいねー」
  
  
先「何あの雨。馬鹿じゃないの?」
後「うわー、びしょ濡れですね」
先「そいやっ!」
後「つめたっ!」
先「ええと、雪見だいふく買ってきたよ。なんと二個入り!」
後「デフォルトですよ。寒くないんですか?」
先「寒かったら、なんかしてくれんの?」
後「雪見だいふく食べます」
先「じゃあ寒くない」
後「あの、カーディガン貸しましょうか?」
先「いい後輩だなー本当」
  
  
後「先輩、股開いて何してるんですか?」
先「最近ストレッチを怠ってたから」
後「あー、先輩もそういうの気にするんですねー」
先「押してくれると助かるな」
後「じゃあ、ゆっくり押しますよー」
先「おー……どんどん前に進んでく」
後「先輩、踏ん張って下さい」
先「なんで地面と並行に押すの?」
後「あー、先輩が雑巾みたいに汚れていく」
先「重くないの?」
後「意外と軽いです」
先「うるさいなー黙れよ」
  
  
先「皆、忙しそうだねー」
後「まあ、運動部は忙しくなる時期ですし」
先「俺たちも、形だけでも忙しくしようよ」
後「んー、することありません」
先「……見て見て! 忙しそうなポーズ」
後「おー。よくマット無しで倒立できますね」
先「今、俺は地球を持ち上げてるんだ」
後「なんか大晦日にジャンプする子供みたいですね」
先「俺、年が明けたとき地球にいなかったんだぜ! みたいな」
後「まあ、それは私のことですけど」
先「しかし地球おもてーな」
後「がんばれ」
  
  
先「あれー?」
後「どうしました? 人生が上手くいかないんですか?」
先「いや、むしろ好調だけど。思い出せないことがあって」
後「もどかしいですよねー」
先「あのさ、後輩って男だっけ? 女だっけ?」
後「あれー……うわ、どっちでしたっけ」
先「後輩っていう人種で見てると、つい忘れるんだ」
後「ちょっと待ってください……あ、やっぱり女だ」
先「だからさー、一人で確認して納得するなよー」
  
  
後「あ、先輩が死んでる」
先「ううー」
後「なんて酷い……」
先「まだ若かったのに……」
後「で、どうしたんですか?」
先「弁当が忘れた」
後「言語障害が残りましたか?」
先「違う、弁当が俺を置いてった」
後「え、行動派の弁当ですねー」
先「朝から既に無かったんだよ」
後「……きっと、恵まれない子供の方に飛んでったんですよ」
先「あー、そっかー。俺の代わりに笑顔になる人がいるのか」
後「私がパンでも買って、先輩の笑顔を作りますよ」
先「なるほどー。世の中って繋がってるんだな」
  
  
  
  

月曜日のつらさ

  
先「あんあんあんあん」
後「先輩なにやってんですか」
先「AVとかで喘ぐ演技してる人の真似」
後「あんあんあんあん」
先「なにやってんだよ気持ちわりーな」
後「先輩の真似」
先「お前頭大丈夫?」
後「割と追い込まれてます」
先「週休四日制にならないかなー」
後「ですよねー」
  
  
母「開放記念日」
父「何を言っているんだお前は」
母「どっかーん」
父「たまに本当わけわかんないよなお前」
母「明日からはまた楽になるわ」
父「俺は仕事だよ」
母「あなたは喋らないでよ」
父「ごめん……」
母「開放記念日」
父「…………」
母「どっかーん」
  
  
兄「ふろる?」
妹「ふろる」
兄「明日は月曜日だね」
妹「言うなよ頼むから」
兄「あなわびし」
妹「なにそれ」
兄「古い日本語。『あー、こいつは困ったね』的な」
妹「あなわびし」
兄「ですよねー」
妹「穴がわびしいんだろうね」
兄「どこの穴だろうね」
妹「きもいよ」
  
  
爺「明日は月曜日じゃな」
婆「さっき食べたばかりじゃありませんか」
爺「そっかー」
婆「そうです」
爺「今日結婚記念日だって知ってた?」
婆「ええ」
爺「でもきもいよお前」
婆「おじいさんったら」
  
  
家「そういえば明日月曜日じゃん」
子「家庭教師私語すんな」
家「八つ当たりすんなって」
子「いや、九つくらい当てるつもり」
家「かわしきれるかな……」
子「ひとつめ」
家「いてっ!」
子「ふたつめ」
家「いたい、いたいってば」
子「みっつめ」
家「やめ、いたいよ、なんでこんなことするの」
  
  
弟「ねこ、さむそうだねー」
姉「毛につつまれてるけど、どうなんだろうね」
猫「さむいっす」
弟「ほらー。さむいってさ」
姉「あー……そうなんだ」
猫「てか今日マジでさむくね?」
姉「あー、さむいっすねー」
猫「でも肉球あるから平気だわ」
弟「さっすが」
  
  
先「夏休みまだかなー」
後「というか、夏まだですかねー」
先「去年の暑さはおかしかったよね」
後「あー。暑いのは嫌ですねー」
先「後輩の家にはクーラーある?」
後「ヒーターならあるんですけど」
先「どうやって夏を乗り切るの?」
後「こう、濡れタオルで定期的に体を拭いて」
先「ああ、扇風機の前に立つんでしょ」
後「はい。それで、『エスキモー』って叫ぶんです」
先「エスキモー」
後「エスキモー」
先「でもそれ『生肉を食べる人』って意味だよ」
後「ひゅー。先輩博識ぃー」
  
  
女「どすこい」
男「…………」
女「どすこい」
男「授業中です」
女「あのね、昨晩体重計見たら2kgも太ってたの」
男「そっか。大変だね」
女「だから、私力士になる」
男「そっかー……」
女「難しいかな?」
男「今何kg?」
女「えっと……342」
男「ちょっと難しいんじゃないかな」
  
  
女「私、綺麗?」
男「ええ。綺麗ですよ」
女「そっか。でも私、他に好きな人いるんだ」
男「そうですか」
女「ごめんなさいね」
男「仕方ないです」
女「マスクを外してみます。これでも綺麗か!」
男「あー、これはキモい」
女「そっか。でも私、君のこと好きになっちゃった」
男「辛いですよね」
女「届かない愛と知っているのにね」
男「そのうちいいことありますよ」
  
  
  

隣席の女の子がする独り言が未来的すぎる

  
「しっぽがかゆい」
「とてもかゆい」
「文字に例えよう」
「むるむる」
「それくらいかゆい」
 「……大丈夫か?」
「うん。だって、しっぽないし」
 「ああ、そうか」
  
  
「昼ごはんは何ごはんにしよう」
「あれ、ソの音が上手く出ない」
「お金もない」
「ソー、ソー、けへ、けへ」
「よし。流動するごはんにしよう」
「エコだね」
 「なにそれ、お粥?」
「水」
 「エコだな」
  
  
「……髪、伸びたな」
「きろうかな」
「邪魔だし」
「染めようかな」
「緑とかに」
「……背、伸びたな」
「きろうかな」
「緑とかに」
 「もう少し待った方がいいと思う」
「そうかな」
  
  
「んー」
「……あ、ごめんごめん」
「考え事をしてたんだ」
 「どんなことを?」
「お金のこと」
 「切実だな」
  
  
「たとえば私に、取っ手がついていたとするでしょう」
「非常につかみやすい」
「女の子投げ記録大会があるとするでしょう」
「優勝する」
「金の力で宇宙旅行をする」
「金星に着く。金星は毎日が金曜日」
「わーい」
 「おーい」
  
  
「最近、いじめられる」
「皆が私を囲む」
「俺を罵れ! 私をなじって! と言う」
「仕方が無いので、とっておきの悪口を言う」
「君たちは私に似ている」
 「魔法の言葉だな」
  
  
「今、私は隣席の人に見詰められています」
「へります」
「どんどんへります」
 「見られると減るタイプか」
「……君のせいだったのか」
 「なにが」
  
  
「この服は、馬鹿だと見えない」
 「見えるよ」
「というわけは、この服は頭がいい」
「だから私は、服に着られている」
「つまり私が服なのです」
「この服は、馬鹿だと見えない」
 「うるさい」
  
  
「はずかしい」
 「何を今更」
「腕に油性ペンで書いたのを消してなかった」
 「何を書いたんだ」
「自分の名前」
「ああなんで書いちゃったんだろうかなあ」
「私は馬! 私は鹿!」
「はずかしくて、穴があったら爆発しそう」
 「すごいトラップだな……」
  
  
「鼻を掘っていたら温泉が出ました」
 「おめでたいな」
「もうお金に困りません」
「金星に行ける」
「ふふふ」
「エイプリルフール!」
 「おめでたいな」
  
  
「誕生日ありがとう」
 「…………」
「誕生日ありがとう」
 「どういたしまして」
「誕生日ありがとう」
 「どういたしまして」
「んー、なにか違う気がする」
 「俺もそう思う」
  
  
「背が突然2m強になったりしないかな」
「そうしたらいじめられないのに」
 「いじめられてるのか」
「うん。よくたたかされる」
 「たたかされる?」
「たたかされる」
  
  
「ぶって! って頼まれるじゃん」
「ぶつじゃん」
「平然と帰っていくじゃん」
「くやしいじゃん」
「これが、2m強だった場合」
「ぶつじゃん」
「いやぶっちゃ駄目だよ」
「死んじゃうって」
  
  
「あ、革新的なひらめき」
「引っ張れば、身長伸びるかも」
「手伝ってください」
 「引っ張ればいいんだな」
「おおー、のびるのびる」
「首が」
「首が伸びる」
「どうしよう」
  
  
「ハンドクリームを足に塗ります」
「むるむる」
「足がハンドになります」
「立てない」
「リップクリームを」
「おいしい」
 「俺の負け」
「どうしたの?」
 「話しかけたくなったら、俺の負け」
「連勝中じゃん」
  
  
「また、いじめられた」
「自販機で牛乳を買おうとしたら、ない」
「でも牛がいる」
「なまうし」
「彼らの仕業に違いない」
「きっと影でにやにや見てるんだ」
「『いつか仕返してやる!』」
「そう言って、私は牛の乳から口を離した」
 「桜が咲いているな」
  
  
「昨晩に見た夢なんだけれど」
「私はアライグマに窒息死させられそうになるの」
「水面に押し付けてはこする」
「また水面に押し付けてはこする」
「一方でカンガルーが、私の顔にヒトデを貼り付けてくるの」
「ぺたぺた」
「ヒトデは分裂しはじめて、どんどん増える」
「食べてもおいつかない」
 「授業中にトリップするな」
「ごめんなさい」
  
  
「果汁0.1%でもりんごジュースだ」
「なら私汁をちょっと混ぜれば、私ジュースになるはず」
「売れる……」
「金持ちになる」
 「あながち否定できない」
「ありがとう!」
  
  
「あの雲の形は私に似てる」
「前方から別の雲がきた」
「きりんだ」
「くるんじゃない」
「きりんと私が密接に交わる」
「えらいことに」
「目も当てられない」
「見ちゃだめ、見ちゃだめ」
「……あれ、めんつゆになった」
「そういう仕組みだったのか」
 「……めんつゆと醤油ってどう見分けたんだ?」
「それは、私も未だに見分けがつかない」
  
  
「いじめられなくなった」
「握手して、って言われるようになった」
「うれしい」
「これが、2m強だった場合」
「んー……」
「うれしい」
 「よかったじゃないか」
  
  
「たまには君も独り言を喋ろうよ」
 「なんだその関係」
「独り言を言い合う仲」
 「要するに会話だろ」
「遠回しが好きなの。これも独り言」
 「――独り言だけれど、そういえば最近、妙な夢を見た。
  隣席の子が、アライグマに向かってヒトデを投げつける夢だった」
「独り言だけれど、へえ、なんだか嬉しいなあ」
  
  
  
  

教え子が俺のことをサボテンか何かと勘違いしている

  
「紅茶どうですか」
「紅茶おいしいよ」
「母は私のことをよくぶちます」
「それはよくないな」
「私は父のことをよくぶちます」
「それもよくない」
「父はIT関連の仕事をしていることがありましょうか。いや、ない」
「扱いに困る子だなあ」
「私のこと苦手ですか?」
「得意ではない」
  
  
「筋肉痛です」
「ああ、僕も筋肉痛」
「トレーニングですか?」
「トレーニングだね」
「誰を倒すためですか?」
「ああ。うん。君の方は?」
「自主的なトレーニングです」
「誰を倒すために?」
「やらしい」
「ごめん」
  
  
「勉強いやだー」
「僕も嫌いだったよ」
「私もその気持ち分かります」
「そうか」
「そうです」
  
  
「でも、だからこそ得意になれたんだ」
「ほら見て。プレーリードッグのまね」
「早く済ませたくて効率よくやったんだ」
「プレェーリィー。あははは」
「たまにいい話をすればこうだ」
「先生は嫌いな人と効率よくやるタイプですか?」
「時々よく分からないことを言うね」
  
  
「あのクッションに座らないでくださいね」
「うん。大事なものなの?」
「あれは先生差別専用なんです」
「へえ。すごい疎外感」
  
  
「世界史の課題の量がありえないんです」
「沢山やればいいってわけじゃないよね」
「無茶を言う人はラッコに頭を割られればいいんです」
「君の想像はいちいち愉快だね」
「こっ! こっ! こっ! こっ!」
「にわとり?」
「貝で殴っているんです。こっ! こっ!」
  
  
「日本史の課題の量がふざけているんです」
「社会は他にやらせることがないからね」
「光合成するモグラにスコップで突かれればいいんです」
「君も疲れているみたいだね」
「そんなこと言ったって何も出ませんよ」
「褒めたつもりは無いんだけれどね」
「あ、待って。出るかも。出るかも」
「出さないで出さないで」
  
  
「少し無駄話になるけれど、中学の」
「家庭教師私語すんな」
「今日から空間のベクトルに入ります」
「ああ。矢印のこと嫌いになりそうです」
「キノコかなんかだと思えばいいんだ」
「なるほど」
「納得されてしまった」
「書くときは矢印でいいですよね」
「いいんじゃないかな」
  
  
「喜んでください」
「わーい」
「ふふ」
「これは何に対して?」
「このカップは、先生専用です」
「へえ。なんだか嬉しいな」
「私は以前このカップで火傷しました」
「そうなのか」
「このカップは、先生専用です」
「悪かったよ」
  
  
「英語の発音がわかりませんすぎます」
「僕も未だに分からないことがあるよ」
「Fってどうやるんですか?」
「下唇の裏を下歯に当てる感じかな」
「誰の下唇?」
「自分の」
「なんだ。びっくりした」
「僕も緊張した」
  
  
「嘘よ! お母さんのおっことぬし!」
「どうしたんだ急に」
「昨晩妹が発した言葉です」
「すごいな」
「すごいです」
  
  
「母が私をぶちました」
「どれくらい?」
「私が泣いて止めるくらい」
「それはひどい」
「その私を妹が羽交い絞めにするんです」
「ひどすぎる」
  
  
「ほら。積み上げた本の上にレモン」
「梶井基次郎?」
「ええ。爆発します」
「危ないなあ」
「はは。勉強できないし勉強できない」
「こう見えて僕は危険物を処理する人なんだ」
「へえ」
「黄色を切れば止まる」
「さっすが」
  
  
「醤油と間違えてめんつゆを飲んでしまいました」
「僕もコーラと間違えたことがある」
「パッケージをはがさないで欲しいです」
「しょうがないよ。あれ気持ちいし」
  
  
「昨日ペンギンに飛び方を教わりました」
「あー……あんまり信用しない方がいいよ」
「先生はペンギン嫌いなんですか?」
「いや。好きだよ」
「私とペンギン、どっちが先生を好きですか?」
「うん? ええと、君」
「やったあ」
  
  
「男の人って先生みたいなのばかりですか?」
「うん」
「なら、ちょっと誤解していたみたいです」
「僕も女の人の考えは未だに分からない」
「今度クラスメイトと話してみます」
「がんばれ」
  
  
「先生は楽器を弾きますか?」
「ギターとハーモニカはそこそこ」
「ええ、そんなことないですって」
「君が否定するのか」
「昨晩私は、blackbirdが弾けるようになりました」
「へえ」
「素直に喜べって」
「おめでとう」
  
  
「失敗しました」
「どうかしたのかい」
「隣の人に、話しかけてみたんですよ」
「ほう。どんなことを?」
「今朝見た夢について。でも反応がいまいちで」
「どんな夢だったんだい?」
「アライグマに窒息死させられそうになります」
「それは、こわい」
「それでカンガルーが、私の顔にヒトデをぺたぺたと
 貼り付けてくるんです。ヒトデは分裂しはじめる」
「初めてでその話題は、ちょっと難易度が高すぎたな」
「嫌われましたかね?」
「いや。きっと照れ屋なんだよ」
  
  
「先生は私の母の娘をどう思いますか?」
「愉快な子だと思うよ」
「ですよね」
「壁越しに見るとすごい可愛い」
「それ壁です」
「遠まわしに聞くね」
「急がば回るんです」
「なるほどね」
「くるくる」
  
  
「うちにくる家庭教師の真似」
「上手い上手い」
「うちにくる家庭教師の真似」
「そんな顔してるかなー」
「してるんです」
「小躍りする教え子の真似」
「あー……。似てます」
「ドライブ、ドライブ」
「特徴を掴んでます。よく見てますね」
「フィニッシュ。ああ恥ずかしかった」
「私もちょっと恥ずかしかった」
  
  
「今日は隣の人と話しました」
「へえ。どんな話?」
「彼が見た夢の話です」
「どんな夢だったって?」
「私がヒトデをアライグマに投げつけるそうです」
「すごいな君たち」
「こんなの初めてです」
「頻繁にあったら考え物だからね」
「先生は私の夢を見ますか?」
「勉強の合間に、談笑している夢だよ」
「いつも通り?」
「いつも通り」
「くるくる」
「そう」
  
  
  
  

幼馴染がセミだったらしい  

  
男「きました」
女「よびました」
男「久しぶりだね、お前に呼び出されるのは」
女「やっぱり君には言うことにしたんだ」
男「隠し事でもあったのか」
女「驚かないでね。実は私、セミなんだ」
男「そうか」
女「ええ、おい、驚けよ」
男「で、何を言うことにしたの?」
女「だから、私セミなの」
男「そうか」
  
  
女「明日の早朝、脱皮するの」
男「中から美女でも出てくるのか」
女「どうなんだろう。とりあえず、人の姿ではあるよ」
男「服脱いで『脱皮!』とか言ったら張り倒すよ」
女「まあ明日になれば信じてくれるだろうけれど」
男「面白くなかったら叩くよ」
女「とにかく、心の準備をしておいてね」
男「他の奴と入れ替わるのも駄目だからな」
女「信用無いなー私」
  
  
女「おはよう」
男「……おはよう」
女「あついね」
男「…………」
女「もっとあついね」
男「実に声の似た人を見つけてきたね」
女「本当にそう思う?」
男「思わない」
女「ほら、嘘じゃなかったでしょう」
男「えー……なにこいつ」
  
  
男「全体的に、病的に緑青白いね」
女「もうちょっと時間が経てば、なおるよ」
男「セミかっつーの」
女「セミだよ」
男「とりあえず」
女「はい」
男「面白くなかったから叩くよ」
女「面白いじゃん。生命の神秘じゃん」
男「あ、肌色になってきた」
女「すごいな私」
男「……抜けがらはどうしたの?」
女「庭に埋めました」
男「ひいい」
  
  
男「ようやく人らしくなってきた」
女「髪も真っ白だったからね」
男「なんか、かわいい」
女「ありがとう」
男「鳴くの?」
女「鳴かないよー」
男「飛ぶの?」
女「飛ばないよー」
男「死ぬの?」
女「それなんだ」
  
  
男「数週間の命か」
女「お約束だね」
男「お約束だなあ」
女「まさか私がセミだったとはね」
男「いつ気付いたの?」
女「一昨日。セミが鳴き出したのを聞いて思い出した」
男「思い出したって事は、知ってたんだな」
女「生まれるときこう、セミの魂が混ざって」
男「なんでセミだったんだろうな」
女「猫とかだったら面白かったろうに」
男「面白かっただろうなー」
  
  
男「求愛行動とかするの?」
女「しません」
男「残念」
女「だって、対象がいないじゃん」
男「セミ人間が?」
女「その呼び方傷つくから」
男「探せば他にもいるかもしれない」
女「いたとしても、ほら」
男「ああ。そうか」
女「だから、精々濃い一週間を送るよ」
男「寿命じゃどうしようもないしなー」
  
  
女「セミらしく、甘いものでも食うね」
男「セミって甘いもの好きだっけ?」
女「私は好き。ああ、しあわせ」
男「それはよかった」
女「もう小遣いとかカロリーとか、気にならない」
男「医者とか行く気ないの?」
女「無駄だよ。ほら、腕に『残り6日』って書いてある」
男「マッキーでな」
女「ばれたか」
男「ほら。こう書き足せば60日だ」
女「じゃあ、こう書き足せば60月だ」
男「その調子だ」
女「こう書き足せば60勝だ」
男「いやいや」
  
  
男「調べて分かったことがある」
女「私を? きゃー」
男「飼育方法によっては、30日くらい生きることもあるらしい」
女「へえ。でも私が子供のころに捕まえた奴は、2日で死んだよ」
男「さっすが」
女「私も分かったことがある」
男「なんだ」
女「ここ2日、やたらセミにモテる」
男「それはそれは」
女「既に4回かけられた」
男「そうか」
女「へこむ」
男「どうでもいい」
  
  
男「つまり、今までは不完全体だったんだ」
女「そうそう。これが本来の姿です」
男「今まで損してたな」
女「それはもう」
男「俺もセミだったりしないかな」
女「だったら面白いんだけれどね」
男「それはそうと」
女「なんでしょうか」
男「ここに虫取り網があります」
女「そのようで」
男「ゲット」
女「やめてやめて」
  
  
女「髪を切りました」
男「ああ、つまり」
女「ボブです」
男「あれー……」
女「どうしたの?」
男「期待を裏切られた気分」
女「なんかごめん」
男「でもかわいいや」
女「どういたしました」
男「服も買ったんだな」
女「うん。でも暑いから脱ぐね」
男「脱ぎすぎ脱ぎすぎ」
女「セミヌード」
男「時間差か」
  
  
女「仮に寿命が一週間だとしたら」
男「残り4日、か」
女「そろそろ行動に出ないとなー」
男「なにか計画でもあるのか」
女「歴史に名を残したいけれど、無理っぽい」
男「良い具合に冷静だな」
女「なので、今までお世話になった人に挨拶してくる」
男「あー……俺もお前の立場なら、そうするかも」
女「手紙っていうのも考えたけれど、顔もあわせたくなった」
男「なんか、今更現実感が湧いてきた」
女「当事者はもっと現実感が湧かないよ」
  
  
女「ぴんぽーん。みんみんみん」
男「うるさいから」
友「はーい……あれ、どうしたの、二人して」
女「見せつけにきました」
男「きました」
友「へえ。帰れ」
女「嘘だよ。顔が見たくなったんだよ」
友「そんなに面白い顔かなあ」
女「うん。週に一度は見たくなるね」
友「あれ、なんか君、顔変わってない?」
女「かわいくなったでしょう。ははは」
友「けなしにきたのかな?」
男「どっちかというと、その逆」
女「本当は長く話したいんだけれど、そうすると笑いが止まらなくなるから。じゃあね」
友「おお。笑ってお腹を痛くしてしまえ」
  
  
女「ぴんぽーん。かなかなかな」
婆「はーい」
女「久しぶりおばーちゃん」
婆「あれ、どうしたの? 久しぶりだねえ」
女「気が向いたのできました」
婆「隣の子は?」
男「彼氏です」
婆「あらあら」
女「あらあら」
男「まあ!」
女「そういうわけです」
婆「なるほどねえ」
女「それじゃ帰ります」
婆「え、ゆっくりしていかないのかい?」
女「用があるので。お邪魔しましたー」
婆「またいらっしゃーい」
  
  
女「ぴんぽーん。あぶらあぶら」
男「せめてチャイムは押せ」
女「君はハイテンションだなー」
男「ええと、はい?」
教「はい……ええ、失礼だが、どちら様?
女「なんと教え子です」
男「ついでです」
教「ああー、あの飼育係の! 懐かしいな。久しぶり」
女「たまたま近くを通ったので、住所を調べて家を探し当てました」
男「ああ、最初の2日はその準備だったのか」
教「よくわからないけれど、嬉しいよ」
女「負けじと嬉しいです」
男「それじゃあ、失礼しました」
教「あれ、もう行っちゃうのか」
女「あの時は本当にお世話になりました。それでは」
教「いえいえ」
  
  
女「じゃ、元気でね。さよならー」
子「じゃあねー」
男「これで、最後か」
女「うん。挨拶は終わり。次は何をしよう」
男「なんか、見たいものとかある?」
女「でっかい花火」
男「八月なったら見にいこうな」
女「雪祭り」
男「気力次第だ」
女「あ、そうだ。中学。中学が見たい」
男「それなら近いし、今からでも行けるが」
女「自転車を出せー」
男「はいはい」
  
  
女「ぴぽぴぽぴんぽん。つくつくほーしつくつくほーし」
男「いや、本当静かにして」
女「はっ、まさか君、この夏休みで誰もいない中学にそっと忍び込むつもりか?」
男「お前がそうしたいって言ったからな」
女「だから私たちは黒い服装なわけだ。なるほどね」
男「多分、ここのトイレの窓が……うわ、未だに開いてた」
女「なんでこんな秘密の出入り口的なのを知ってるの?」
男「よく友達と、夜中に出入りしてさ」
女「それでジャージやリコーダーを」
男「鬼ごっことか、かくれんぼとかしたなあ」
女「じゃあ君が鬼ね」
男「今捕まったら普通にやばいんだけれどね」
女「暗いとテンション上がるんだよ。ほら、つかまえてごらーぬ」
男「あはは、待って、いやマジで待って、待て!」
  
  
女「つかれたー」
男「もう逃げるなよ」
女「で、しっかり手を握るわけですね」
男「そうするか」
女「しちゃうんですか」
男「二度と離さない、なんてな」
女「いま手汗酷いから、また今度ね」
男「あれ、なんかすげー恥ずかしいね俺」
女「うーん。屋上が開いてないのが残念だ」
男「俺も一度行ってみたかった」
女「セミならいけそうなのになあ」
男「まあ、ベランダで我慢だな」
女「うん」
  
  
女「あ、寿命きた」
男「え……待て、まだ4日目だ、そんなはずは」
女「ないよねー」
男「…………」
女「焦ってくれて嬉しいよ」
男「セミパンチ!」
女「いたっ!」
男「セミパンチは威力が中途半端なパンチなのである」
女「なんだそれ」
男「びっくりさせんな」
女「まあ、今のは冗談だけれど。実際、この感じだと一週間も持たないね」
男「残り、3日もないってことか」
女「そういうこと」
男「……寂しくなるなー」
女「セミパンチ!」
男「いてっ!」
女「セミパンチはセミが使うことによって威力が増大するのである」
男「ほんと痛い」
女「元気出してもらいたくて」
男「涙が出る」
女「あ、人のせいにした」
男「お前のせいじゃん」
女「セミパンチは半セミ人間が使うと威力はさほど出ないはずである」
男「待って、笑わせないで」
女「ないてるように見えるよ」
男「求愛行動です」
女「セミかっつーの」
  
  
男「きました」
女「よびました」
男「今日は外には出ないのか」
女「うん、中でゆっくり過ごす」
男「つかれたもんな、昨日一昨日で」
女「そうじゃなくて、ほら」
男「ああ……。そうか」
女「だから、なにか話そうよ」
男「そうだなー」
女「だなー」
男「…………」
女「あのさ」
男「ああ」
女「最期だと思っていいみたい」
男「そうか」
女「うん」
男「じゃあ言うよ。この5日間――いや、5日と言わず、ずっと。楽しかったよ」
女「負けじと楽しかったよ」
男「本当に、寂しくなるな」
女「セミパンチ!」
男「セミクロスカウンター!」
女「あ、なんか格好いいなそれ!」
  
  
女「……あついね」
男「そうだな」
女「……もっとあついね」
男「もっとあついな」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「……おーい」
男「……ああ」
女「死んだかと思ったじゃないか」
男「生きてるよ」
女「よかったー」
  
  

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