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2010年1月28日 (木)

狂犬病予防の実態:産業動物・公務員獣医師不足問題〜国会で議員が質問、国は大学の定員増を検討!?〜

 昨日(平成22年1月27日)の参議院予算委員会で、民主党加藤敏幸議員がら産業動物獣医師や公務員獣医師不足の問題についての質問がありました。

質問内容は、産業動物および公務員の獣医師不足について、食の安全の確保や公衆衛生等の観点から畜産物や獣医師法を所官する農林水産大臣と、獣医系大学を所官する文部科学大臣の見解と対応をたずねたもので、文末(※1)の報道記事にもありますように、近年、小動物志向が強く、畜産関係や公務員の獣医師の確保が難しくなっていることが問題になっているのです。

これに対し、農水、文科両大臣は概ね以下のような答弁にしています。

農水大臣「指摘のとおり安全な畜産物の安定供給を確保すりために産業動物獣医師や公務員獣医師が重要であるが、残念ながら10年前に比して、産業動物獣医師が11%減、公務員獣医師が4%減、一方、小動物獣医師が50数%増ている。平成18年に開催した獣医師の需給に関する検討会報告書 平成19年5月 獣医師の需給によるとこうした傾向は今後も続き、ますます不足する見通しである。修学資金10万円の給付等を行っているが、今後も援助の拡充を行いたい。」

文科大臣「(獣医科大学の)定員増に関しては、農林水産省の調査結果を基に昭和59年以降、抑制してきた経過があるが、健康大国戦略の中で獣医師は感染症の予防診断、医薬品の開発、食の安全性の確保のため重要な役割を担うことになるため養成に対しては健康大国戦略の検討の中で新たな視点で対応を検討したい。」

定員の問題と言うのは、政府が獣医系大学の入学定員を長く固定し続けた背景があり、近年のペットブームもあり、学生の小動物志向が強く、その結果、産業動物や公務員獣医師の確保が難しくなっていると言うのです。(苦労して確保した公務員獣医師の中には、退職して開業する者もいるでしょう。隣町にも元家畜保健所の獣医師が小動物診療の動物病院を開業していますが評判はよろしくありません。)

国会で質問した議員は四国選出で、四国には獣医師を養成する大学が無く、獣医師の確保も難しいことから大学誘致の動きがあることも関係しているように思いますが、四国での誘致の動きも含め、これらの問題については、昨年11月にNHKが『ナビゲーション「家畜の獣医師が足りない〜揺らぐ食の生産現場〜」』(総合:2009年11月27日(金)19:30〜19:55)でも現状について伝えていました。

番組では、一昨年、愛知県下でウズラに鳥インフルエンザが発生した時には県の農政部(畜産)は勿論、獣医師免許を持つ研究職や事務職の職員まで動員してもまだ対処できずに他県の支援まで受けてどうにか終息させたことや、愛媛県今治市が獣医系大学の誘致を計画しており(※2)、愛媛県も全面的に支援しているものの、国は40年以上も大学の定員を固定し大学の新設を認めず今治市の要請を何度も却下し続けるため計画が頓挫していることを伝えています。

国はこれまで明らかに定員増に消極的で、獣医師会も「全体では獣医師の数は充足している。一部の職域で足りないだけで定員の問題ではない。」として定員増には反対しています。

定員の問題については、番組内でも既得権益の保護等と言った話も出ていましたが、獣医師会は利権のことばかり考えてる業界団体ですから反対するのも当然だと思います。(獣医師会が定員増に賛成してるなら守銭奴が寄慈善団体に寄付をするようでかえって気持が悪い。)

国が定員増に消極的だったのも、獣医師会が自○党の支持団体だったためでしょう。
定員は据え置きのまま、産業動物や公務員へ進む新卒の獣医師が増える分には、小動物へ流れる新卒者は減るので競争相手も少なくなりますが、小動物志向が強い中で定員を増やせば競争相手は増え続けて競争が激化するのは必至。商売敵は少ないほうが良いと言うのが獣医師会の本音なのでしょう。


産業動物の獣医師は医療面から日本の畜産を支えているわけですし、公務員の獣医師は、食の安全や公衆衛生(食品、環境、感染症等)の向上のために不可欠な存在で、BSEの検査を行っていたのは食肉検査所の獣医師ですし、狂犬病予防員も獣医師でなければなりません(他の業務を兼務する名ばかり予防員ではありますが)。養鶏場で鳥インフルエンザ等が発生すると対応するのは家畜保健所の獣医師です。
社会全体としては、畜産や行政獣医師は重要な存在で、重要性は、小動物を相手にする開業獣医師の比ではありません。

獣医師会が、定員増に反対すると言うことは、獣医師会は食の安全や感染症の対応よりも既存の小動物獣医師の利益しか考えてないとしか思えません。

多くの公務員の獣医師たちは、その獣医師会の会員として、或いは理事として関わっているのですが、利権のために自分たちの足を引っ張るような団体に属す意味があるのか、疑いもく会に属しているその神経を疑う。と言うより、このような小動物獣医師中心主義の利己的業界団体に取り込まれ利用されている自覚が無いのか、恥ずべき利権団体に属していることを恥とは思わないようです。


※1.公務員獣医:都道府県半数で定員割れ 動物病院人気で−−毎日新聞2009.07.15

『 都道府県で働く獣医師の職員について、毎日新聞が全国調査したところ、定員割れするなど、人材確保の困難さを訴える自治体が22道県で全体の47%と半数近くに上っていることが分かった。また、都道府県の91%が「近年、負担が増えた」と回答。BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ対策など人獣共通感染症の防止策から、相次ぐ食品異物混入事件への対応まで獣医師の役割が拡大する中、慢性的に人手が不足している実態が浮かんだ。』

※2.http://www.city.imabari.ehi

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コメント

医療「準1」のくくりを作れば一発で解決しますよw小動物臨床も驚きのブラックで公務員になりたいという潜在的な要望はたくさんありますw

公務員の給与体系は、医師・歯科医師の医療1と獣医師・薬剤師・看護師・臨床検査技師他の医療2に大きく分かれます。

公務員獣医師の社会的役割の重要さを思うのならば、それに報いる待遇が必要です。医師並みの難易度・課程の獣医師が専門学校でもなれる看護士と同じというのはおかしくありませんか?

重責にふさわしい待遇も用意せず、ただただ小動物臨床へ流れを批判する神経を疑います。それこそ、恥を知らないというものでしょう。

投稿: とおりすがり | 2012年4月 5日 (木) 18時48分

おりずかりさんへ

コメントありがとうございます。

重責にみあう待遇をと言われますがね、公衆衛生と直接的な医療行為とを同等に扱うことはできないでしょうし、重責と言う点では、直接患者の命に関わる業務を行う看護師も重責ですよ。

獣医師会は批判してますがね、別に小動物獣医師を批判しているつもりはありませんよ。

待遇的には医師並と言うのは無理でしょうけど、保健所長にはなれずとも動愛センター長や家保長にはなれるでしょ。それが嫌ならどうざ小動物医療でも製薬会社でも行きたい道に進めばいいでしょ。

投稿: 管理者 | 2012年4月 5日 (木) 20時09分

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