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【社説】

日報隠し特別監察 隠蔽の闇は晴れない

 防衛省・自衛隊の情報隠しが特別監察で認定された。隠蔽(いんぺい)体質の闇は深い。辞任した前防衛相だけでなく最高指揮官の安倍晋三首相の責任も免れまい。

 情報隠しが認定されたのは、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊が作成した日報に関してである。

 防衛監察本部の特別防衛監察によると、情報隠しは昨年七月、現地部隊が作成した全文書の情報公開請求があった際、陸自中央即応集団の副司令官が日報の存在を確認しながら、開示対象からの除外を指導したことがきっかけだ。

 その後、組織ぐるみで情報隠蔽にかかわることになる。

◆「戦闘」「銃撃戦」明記

 昨年七月、陸自部隊が派遣されていた南スーダンの首都ジュバでは大規模な衝突が発生し、二百七十人以上の死者が出ていた。

 その後、公開された日報にも大統領派と反政府勢力との間で「戦闘が生起した」ことや、自衛隊の宿営地近くで「激しい銃撃戦」が起きたことが記述されている。派遣部隊を取り巻く状況は、極めて緊迫していたに違いない。

 日本がPKO部隊を派遣するには、紛争当事者間で停戦合意が成立していることや、派遣先の国や紛争当事者が自衛隊の派遣に同意していることなど、参加五原則を満たすことが必要だ。

 当時のジュバは「停戦合意」が成立しているとはとても言えず、直ちに部隊を撤収しなければならない情勢だったにもかかわらず、安倍内閣は撤収させるどころか、派遣期間を延長し、交代部隊を現地に送った。首相は現地情勢の緊迫について正確に報告を受けていたのか。報告を受けた上で、戦闘は深刻でないと判断したのか。

 当時、現地での「戦闘」が公表されていれば派遣継続はすんなり認められなかったのではないか。

◆派遣継続を望んだ政権

 安倍内閣には派遣継続を望む理由があった。派遣部隊に「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の任務を与えることである。

 これらの任務は二〇一五年九月に成立が強行された安全保障関連法で可能になったが、自らを守るという武器使用の一線を越え、任務遂行のための武器使用が可能になる。国是である専守防衛を逸脱しかねない危険な任務だ。

 自衛隊の国軍化を目指す首相にとって、自衛隊により積極的な武器使用を認める安保関連法の既成事実化は、政治目標とする憲法改正に向けた一歩だったのだろう。

 陸自による日報隠しは、政権内に蔓延(まんえん)する派遣継続を望む空気も動機の一つだったのではないか。

 問題は、こうした自衛隊の運用が、派遣先の情勢を国民に隠して行われたことである。かつて旧日本軍が、戦況をめぐり国民に真実を伝えず、破局的な戦争を継続して、国内外に多大な犠牲を強いた苦い歴史を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 特別防衛監察は、情報公開や文書管理の適正化を促してはいる。それは当然だが、国民に真実を隠し、憲法を逸脱しかねない活動を自衛隊に強いたことにもメスを入れなければ隠蔽の闇は晴れない。

 自衛隊は憲法上、軍隊とは位置付けられていないが、世界でも有数の火力を備える実力組織でもある。国民が選んだ国会議員を通じて「文民統制」を受けるのは当然だ。国民に情報を隠して活動を拡大することは許されない。

 稲田朋美防衛相は、日報隠しへの防衛省・自衛隊の組織的な関与が認められたとして監督責任を取って辞任したが、今月の都議選では防衛省・自衛隊を自民党候補の支援に政治利用する発言をした。

 本来、首相は直ちに罷免すべきだった。任命責任は免れない。辞任は遅きに失したが、八月三日にも予定する内閣改造直前での辞任を追及逃れに利用すべきでない。

 監察結果は陸自での日報データ保管を、今年二月の会議で稲田氏に報告した「可能性」に触れた。稲田氏は否定しているが、双方の言い分が違うのなら、国会で徹底的に究明する必要がある。

 安倍政権は速やかに臨時国会の召集もしくは閉会中審査に応じ、稲田氏と関係者を参考人招致した集中審議を開くべきである。

◆信頼回復への一歩を

 創設から六十年を超えた自衛隊は、海外で武力の行使はしない専守防衛に徹し、災害派遣などを通じて国民の高い評価を得ている。情報隠しは積み上げてきた国民の信頼を裏切る行為であり、二度とあってはならない。

 どんな防衛相でも、自衛隊がその統制に服するのが文民統制ではあるが、稲田氏が安全保障政策に精通していなかったことも、混乱の一因だろう。後継には経験豊富な人材の登用を望みたい。新しい防衛相と事務次官の下で、再発防止策を徹底し、信頼回復への一歩を大きく歩みだしてほしい。

 

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