人間には個人差はあるものの、「自分に関心や興味がない事象については、見聞きしてもほとんど記憶に残らない」という人が大半なのではないでしょうか。そして、この原理がどのような心理的要因によってもたらされるのかご紹介致します。
■不要なものは排除する心理
日常生活において、私たちは自分では特に意識せずに見るものや聞くものを取捨選択しています。私生活においては、自分や家族・親戚・知人・友人など身の回りにいる人物に関連するものや、自分の趣味や嗜好(しこう)に関係する事象以外はほとんど記憶に残りません。これは、仕事上においても同じで、自分の仕事に関係しないものは、すべて脳内でシャットアウトするという機能が働くようです。この現象に性別での違いはほとんどないのが特徴で、人間には自分にとって無益であると判断したものは自然に記憶から排除する本能があるようです。
■「外集団同室性原理」とその危険性
「自分には関係や関心がないと判断したものは排除する」という人間の本能の分かりやすい実例としては、「日本人には外国人の顔がみな同じにみえる」というものがあります。これは、日常では接触する機会のない外国人を別世界の住人としてとらえることからくる現象で、社会心理学では「外集団同質性原理」と呼ばれています。
「外集団同質性原理」を証明するために、ある対立する思考をするグループを2つ作り、ゲームを行ってお互いに競わせる実験があります。その結果2つのグループは必要以上にお互いを憎悪の対象としてしまうという危険性があることが報告されています。
■心理的本能を把握するリーダーの役割
つまり、自分の身近でない事象については関心が起こらず記憶に残らないだけならよいのですが、未知のものが自分の領域に入って来たとき、人間はこれを憎悪し、排除しようとする心理が働くということで、この心理は男女差もさほどないといわれています。
団体行動を必要とする企業内に派閥ができて、この「外集団同質性原理」が社員間に生じてしまうと、それこそ企業存続が危ぶまれる原因とさえなりかねません。企業のリーダーは、この人間の心理状態を的確に把握して部下の統率にあたる必要があるでしょう。
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