25歳の恋の話

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「付き合ってって…いやいや、まだ会って間もないですし、何よりニートは嫌」



「ニートって言っても○○さん(有名社長)も言うなればニートですよ?」



「いやいやいや、何言ってるんですか。ってかちゃんと働いてる人じゃなきゃ」



「僕悪いことはしてないよ。信じて」



「いやいや、無理」と私は頑なに拒否した。


短時間で付き合ってと言われたのは初めてだったしたし、何より名前も教えてくれない人と付き合うなんて考えられなかった。


そしたら彼は「僕がイケメンだったら映画みたいな人生なのにな」



そんなの知るか、と思いつつ、彼が帰る時間になった。


私も実はその日に石垣島へ帰る予定だったので、彼に食事に誘われた。


最初は行く気は無かったが、彼が石垣牛の焼き肉を食べると言ったので付いていくことにした。



防波堤から降り、船乗り場に向かう前に、ハグして、と言われたので極力密着しないように背中を丸め胸が当たらないようにハグをした。




「・・・昨日星空を見たんですけれどね、とても綺麗でしたよ。ただ、晴れてはいましたけど、満月だったので星空観測には向かなかったみたいです。係の人がもしベストコンディションで星を見るなら新月の時に来るように、って言ってましたよ。ああ、泊まらないなんてほんとにもったいない!次は絶対泊まってくださいね!」



「はい。今度は星を見に来ます」




彼が船に乗る前にもハグして、と言うので同じようにしたら、強く抱きしめられた。


私は両手を上げて、彼には見えてないところですごく嫌そうな顔をしてされるがままにした。


「じゃあ、恥ずかしいから。また後で」といって彼は船に乗り込み、私は出発する船に手を振りながら見送った。



「ほんとに何者なんだろう・・・」




そうこうしているうちに私も帰る準備をしなければならない時間になった。


宿に戻り、自転車を返却した。


シャワーを浴びて塩を流し、鏡を見るとすっぴんで血色の悪い顔が映っていた。


「あの人、よくこのすっぴん顔の女に付き合ってと言ったなぁ・・・」と思い、慌てて化粧をして宿の方に船着き場まで送ってもらい、船乗りこんだ。


船が出発してしばらくすると防波堤の上で宿に泊まっていた女の子と宿のご主人が手を振っていた。


わたしは感動しながらありがとうございましたと言って手を振り返し、感傷にひたりながら波照間島を去った。



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