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自転車活用推進法がわかる!新・自転車“道交法"ブック(公式amazon)

 前回(1)に続き、「新・自転車”道交法”ブック」の検証を行います。



5. 車道左側走行原理主義が阻害する自転車活用推進

 本書で疋田は、本書表紙の掲載からも分かるように、警視庁が車道に塗る「自転車ナビマーク」へ絶賛の姿勢を崩さない。

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P008(疋田)

 さて、そういう中、インフラ系も少しづつ進化し始めている。
 最近の動きの中で最も目立つのが「自転車ナビマーク」だろう。(中略)
 大きな機能が二つ。一つは自転車に「左側通行」を守らせることだ。(中略)
 もう一つが、ドライバーに対しての注意喚起である。(中略)
 「本来、自転車は車道なのです。そこを認識しなさい。今こそ"Share the Road"なのです」というのを教え諭す意味がある。
P6079237 - コピー
「自転車ナビマーク」
東京都青山通り:管理人撮影

 これは自転車ナビマーク、矢羽状の自転車ナビライン、金沢での自転車走行指導帯と地域で名称や形は異なれど、車道左端を塗っただけの存在であることに変わりはない。
 その中で疋田は類似事例金沢を引き合いにするものの、
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P041(疋田)

 また金沢でも数々のナビマークが、青山墓地と同じ結果(クルマのスピードが落ち、自転車が左側通行を守るようになった)を促し、結果として自転車事故が激減した(中略)のは有名な話だ。
 クルマのスピードが落ちたようなデータは公開されていない。それに金沢での事故減も、道路延長のわずか1%に過ぎないナビマークが事故減少を生み出したわけでもない。

【参考記事】
「地球の友・金沢」三国成子の主張と検証(4)自転車政策の目的は「事故減少」なのか

 そもそもこの車道ペイントは、国土交通省と警察庁が明言している通り、自転車を車道に出すために使っていいものではない。
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第7回安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会  平成28年2月25日
資料1 パブリックコメントの概要(htmlhtmlpdf)
【パブコメ】
 車道通行があたかも安全であるかのように一般自転車利用者を誤誘導するような整備を推進すべきではない。

【国土交通省】
 暫定形態や路面表示は全ての自転車利用者を車道通行させたり誘導するためのものではありません。
 自動車ドライバーに自転車の通行位置を示し、現に車道通行をしている自転車利用者に対する安全性を可能なかぎり向上させるという考えのもとで設置するものです。
 あくまで疋田や小林のような、既に車道を走っている自転車に対し、おまじない的な安全対策をしたという代物に過ぎない。
 本来その路線に必要な安全性が確保されていない”暫定形態”であり、危険なものを安全かのように誤認させる悪質な存在。

【参考記事】
「自転車の車道走行促進提言」の検証(6)パブコメ結果の整理
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン改定版の検証(1)危険な「暫定形態」への自転車誘導


 にも関わらず、疋田や小林ら自活研、その主張を利用する警視庁や全国の自治体は、ただ自転車を原理主義的に車道に誘導させる道具に使うという愚行に及んでいる。

【参考記事】
警視庁の自転車ナビマーク:自転車の車道走行誘導政策

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P040(疋田)

 やはり日本人は遵法精神が豊かだから、公的に示されると、(自動車は)それは守る。
 ナビマークが車道に示されても「だからどうした、チャリは歩道だろうがよ、パパーッ」なんてアナーキーなヤカラは滅多にいないのだ。
 小林さんが常々おっしゃる「何はともあれ路上に描け!」というのはじつに正しい。
 車道に塗っただけのペイントの有効性を、自分の見解で主張しているものの、
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第4回 協議資料 P20(htmlpdf)

 類似事例の京都で、ペイントがあろうがそれを避けるような第一車線の自動車の通行変化は生じておらず、
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第4回 協議資料 P22(htmlpdf)

 頑なに安全性や快適性を主張する有識者と異なり、市民の半数以上が安全性に不安を抱え、
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第4回 協議資料 P14(htmlpdf)

 結果として自転車の車道走行割合はほとんど上昇の様子が見られない。

 この京都でペイントの有効性を主張した有識者は、他でもない疋田と小林。委員会委員や実走試験に介入し、最終的には京都市役所に「市民は車道走行に慣れることが重要」とまで言わさせた。

【参考記事】
京都市自転車走行環境整備ガイドライン部会の検証(1)市民意見を切り捨てる実証実験結果
自転車ツーキニスト疋田智のデマ:京都市自転車政策審議会の検証
京都市自転車走行環境整備ガイドラインの欺瞞:「歩行者の安全が第一」の嘘


 繰り返すように車道ペイントは、自転車を車道に出すために用いていいものではない、現に車道を走る人間のためのおまじない以上の存在ではない。

 にも関わらず疋田は
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P041(疋田)

 「マシ」になったことを寿(ことほ)げ

 青山墓地のナビマークを見ると、皮肉屋の自転車乗りは、必ず「こんな狭いところに押し込めて、やはり行政は自転車のことを考えていない」なんて言い出す。
 でも、私に言わせれば、「ま、そんなにコトを急ぐなって」なのだ。
 現に、毎日ここを通る本人(つまり私)にとっては、ペイント前とペイント後では大違いとなった。格段に走りやすくなった。
 というより、以前よりも「はるかにマシ」になった。この「マシになった」部分が重要なのだと思う。そこを寿ぐべしである。
 以前よりもはるかにマシだと感じるのは、命よりも自転車が大事、多少の生命のリスクなど気にも留めない疋田ら車道走行サイクリストの認識でしかない。

 一般自転車利用者にとっては、車道をペイントしたところでマシになったものではない。それを無視しなぜ「寿げ」、黙ってありがたく称賛しろなどと口にできるのだろうか。

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P005(疋田)

 自転車は歩道じゃない、というのはすべての前提にある。
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P006(疋田)

 歩道の自転車は、百害あって一利なしなのだ。
 その疋田・小林の主張の最先鋒が、自転車の歩道走行の全否定。
 しかしその一方で、歩道走行害悪論を覆す事例が、疋田・小林が絶賛してきた金沢で既に創出されている。
 自転車の歩道通行、「自転車歩行者道」の的確な整備により、歩行者・自転車・自動車の通行分離が図られ、道路交通法に基づく安全で快適な自転車利用環境が創出。この実情にも疋田・小林は触れることはない。


 更に疋田は、宇都宮の整備事例を引き合いに、「安全で快適な自転車走行空間」を生み出した手法の拡散を批判・抑圧するような主張を続ける。
 この本書での宇都宮は疋田メルマガからの完全な流用であり、以下記事でその全容を検証済み。
【参考記事】
疋田智「宇都宮の「自転車道」に考える」の検証:”まずは車道左側走行”が破壊する自転車利用

 以下、要点を抽出していくと、
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P046(疋田)

【「自転車道」にちょっと待った!】

 ただし、私ヒキタとしては、この通りの先にある宇都宮市の自転車政策に若干の危惧をもっているのも確かだ。
 なぜか。まずは、いったんこの手の自転車道を作ってしまうと、自転車というものは「自転車道以外の空間を走ってはならない」ということになることだ。これだ道交法63条の3に定められている。
 的確な自転車道をきちんと作れば何の問題も無い話だが、後述のように、その実現を今まで10年近く妨害し続けてきたのは外ならぬ疋田・小林ら自活研。
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P041(疋田)

 しかし、すべての自転車走行空間(自転車道あるいは自転車レーンなど)が、この形を目指すとなると、それはそれで大いに疑問で、いくつかのデカすぎるハードルが待ち受けている。
 まず第一に、この形は時間とお金がかかりすぎる。
 こうして構造分離した自転車道を通そうとすると、どうしても一大プロジェクトとなってしまい、「たかだか400m程度に2年も3年もかかりました」というような話になってしまいがちなのだ。首都圏でいえば東京の環状2号線、通称「新虎通り」がそうだったように。
 同じお金と時間があれば、自転車レーンがいったい何km、いや何十km敷けたことか。
 細部のデタラメとして、新虎通りは道路自体が新規整備であり、あたかも自転車道だけに何年もかかったかのような偽装と印象操作。

【参考記事】
環状二号線の自転車走行環境(1)虎の門地区「新虎通り」自転車道

 一方で確かに、国道16号相模原自転車道では2.6kmの整備に計画含め10年ほどかかったのは事実だが、

 これは必要性の乏しい側道の封鎖と、老朽化した縁石ブロックの交換を兼ねて行ったもの。無駄な柵なども立てておらず、一般的な道路の老朽改修程度の費用で行えている。

 それより増して、この相模原自転車道では自転車の9割以上が一日を通して自転車道を通行し、歩行者のほぼ完全な安全確保が実現された。
 早くて安上がりの名目で「自転車レーン」を何十km塗ったところで、どれだけの効果があるのだろうか。

 なお相模原市民は、相模原駅前に塗られた自転車レーンのあまりの役立たずさも身をもって知っている。

【参考】
国道16号「相模原自転車道」の整備形態(1)双方向通行自転車道の真価
自転車通行環境整備モデル地区:「自転車レーン」の整備事例

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P041(疋田)

 さらには、こうした構造の自転車走行空間のまずい点は、いったんつくったが最後、おいそれと元に戻せなくなってしまうことだ。
 疋田ら自活研が自転車道妨害工作を続けるのは、おいそれと戻せない「亀戸自転車道」という国土交通省の大失敗のトラウマがあるため。

 この欠陥形態の登場以降、自転車道の設計手法を検討することすら放棄し、ただ車道をペイントさせるという思考停止の主張に集約されるに至った。

 しかしおいそれと元に戻せないのは、自転車レーンでも同じこと。

 名古屋市内の国道19号桜通、前期区間では安全で快適な自転車道が整備されたにも関わらず、後期区間では国土交通省ガイドラインを鵜呑みにする形で自転車レーンに改悪。その結果
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同上

 自転車にまともに使用されず、歩道上での自転車と歩行者の交錯という問題が何の解消もされず残存し続けることになった。
 この自転車レーン整備は、あろうことか道路の老朽改修、縁石を交換するタイミングで行われたもの。つまり次の縁石交換のタイミング、20~30年後まで(改修に余計な費用を投じない限り)残存することとなった。
 思考停止の自転車レーンが、どれだけの安全・費用・時間の損失を生むか思い至らないのだろうか。

【参考記事】
名古屋国道事務所:国道19号伏見通り・桜通りの「自転車道」と「自転車レーン」
国道19号名古屋の自転車走行空間現地調査(1)伏見通・桜通の自転車道
国道19号名古屋の自転車走行空間現地調査(2)桜通の自転車レーン

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P048(疋田)

【3つ目が最もタマラナイ、とヒキタは思う】
 日本の自転車状況の何がダメって、一番なのは逆走が多いという現実だろう。これは読者の誰もが首肯してくれることと思うが、自転車乗りが左右デタラメに走るのがスタンダードである現状。これが自転車にとって最も危険なのである。
 こんな国は日本以外にはない。先進国であれ、発展途上国であれ自転車がある程度普及している以上、その走行方向は「クルマと同じ向き」ということで常識化されるものなのだ。
 対面通行(双方向通行)の自転車道自体を疋田が排除しようとする最大の理由。
 日本の自転車状況でもっともダメなのが自転車の右側通行(逆走)であり、それを助長する整備は排除すべきと主張しているものの、

 逆走自体は前回(1)のとおり欧米各国でも生じており、それら国・都市は単に根絶すべき通行とは考えず、通行需要と理解して対面通行自転車道の整備につなげるケースが多々ある。

 そもそも、一般自転車利用者にとっての最大の問題は「車道左側走行自体が危険で不安」で(各地のアンケート結果等から示されて)いることであり、逆走を最上位に据えるのは車道走行に抵抗のない疋田らサイクリスト集団に過ぎない。

 疋田ら通勤・娯楽目的でのスポーツ自転車愛好家にとっては、長距離を車道左側通行で移動できさえすればよく、自身にとって最も排除すべきが右側通行ということ。
 だから自らの快適通行のため、対面通行自転車道を徹底的に批判する発言を繰り返す。

【参考記事】
金沢市内の自転車走行空間整備(1)自転車走行指導帯とバス専用レーン
京都市自転車走行環境整備ガイドライン部会の検証(1)市民意見を切り捨てる実証実験結果
京都市自転車走行環境整備ガイドラインの欺瞞:「歩行者の安全が第一」の嘘

 幹線道路において、危険な路面ペイントに終始するのではなく、適正な交通秩序を作り出す自転車道を整備すべき、そのような主張に対し反論を行うものの、
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P007(疋田)

 もちろんオランダやデンマークのように自転車道が縦横無尽にあれば、そりゃそれに越したことはないが、それが普及するまでに何十年かかるのか。
 とりあえずわれわれの目の前にある「非歩道」は車道なのである。
 車道ペイントの本来の意味、現に車道走行している自転車の安全を(おまじない程度でも)高める、この目的自体を否定するものではない。
 疋田・小林ら自活研の主張の重篤な欠陥の一つは、これとは別個に、並行して進めるべき自転車道の整備を、優先度が低い、それどころか排除すべきかのような言論に終始している点。

 オランダやデンマークのような自転車道網を整備するのに、何十年もかかることなど誰でも分かる。だからこそ早急に、時間を無駄にすることなく、環境創出への議論や検討を行うべきではないのか。
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図2-2: 世界各都市における自転車交通分担率(トリップベース、単位%)
世界各都市における「自転車の交通分担率」の比較より

 車道片側しか走れない都市での自転車活用推進は、オランダやデンマークはおろか、日本にすら到底届かない。
 疋田や小林は、日本の自転車活用推進をそこまでして破壊したいのだろうか。
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P041(疋田)

 一足飛びにできないことを言っても始まらない。ことさらに「これが理想だ」「こうでなくてはならない」とばかり言いつのると、ハードルが高くなるばかりで、結局できるものもできなくなってしまう。
 行政だって「じゃあできないから、やーめた」と放り出してしまう。
 考えてみれば、それがこの20年近くの自転車インフラ整備・働きかけの歴史だったともいえる。
 一歩一歩、今よりもマシな未来に前進すること。その第一歩、しかもかなり有効な第一歩こそが、この自転車ナビマークなのである。
 車道にマーキングすることが、なぜ幹線道路に自転車専用空間を創出する第一歩になるのだろうか。

 現に現在の国土交通省・地方自治体は揃いもそろって、統計捏造や印象操作を繰り返してまで「車道ペイントしただけで自転車は安全になった」とウソをつき、あたかも「だから自転車道は要らない」、本来必要な完成形態の創出を阻害し続けているのが現状。

【参考記事】
千石一丁目の現地調査:「自転車ナビライン」効果検証の実態(ver.あしプラ)
千石一丁目「自転車ナビライン」整備後における発生事故件数の検証
国道246号バス専用通行帯の自転車ナビライン報道資料:国土交通省東京国道事務所の隠蔽体質と道路交通法違反行為助長
京都市自転車走行環境整備ガイドライン部会の検証(4)自転車政策推進室の「車道走行安全論」
大阪市自転車通行環境整備計画の欺瞞:「歩行者の安全が第一」の嘘
自転車活用推進研究会:小林成基「自活研が目指すモノ」の検証(2)
「自転車レーンは最も安全効果が高い」の検証:モデル地区整備結果の実態

 そしてこれらの行政の欺瞞を扇動しているのは、他でもない疋田・小林ら国土交通省に重用される自転車愛好家・自称専門家集団。
 現在の日本においては、自転車ナビマーク等の車道ペイント自体が、安全で快適な自転車環境創出の最大の阻害要因となっている。

 そもそも疋田・小林ら自活研、これらの同志である屋井鉄雄・山中英生・古倉宗治ら自転車研究者は、今までまともに理想的な自転車走路の設計手法を検討したことも行政に提示したこともない。
 この集団は車道ペイントありき、その効果をいかに高く見せかけるかだけに心血を注ぎ、結果的にこれまで何ら有意義な具体的設計手法を導けないでいる。

【参考】
・安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン改定版の検証
 (3)自転車道の一方通行至上主義と双方向通行の否定
 (4)ピクトグラムへの固執と設計手法確立の放棄
・平面交差の計画と設計 自転車通行を考慮した交差点設計の手引」の検証
 (5-1)双方向通行自転車道への見解
 (5-2)双方向通行の自転車道の設計案

 疋田が排除を主張する、日本に乱造された欠陥自転車道、それを生み出したのは疋田ら専門家・研究者集団の設計検討の放棄が原因であると考えないのだろうか。



6. 自転車の車道走行原理主義集団「自活研」

 本書検証の最後。疋田・小林の「本意」や「信念」を引き出していくと、

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P106(疋田)

 ひと呼んで、“自転車ツーキニスト”疋田智であります。自転車通勤人生は、早いものでもう足かけ20年にもなりました。
 荒川区東日暮里から、あるいは江東区東砂から、はたまた港区芝浦から、赤坂のオフィスまで往復し続けた20年。通勤という意味で走ってきたのは、おおむね都心の大通りと路地と坂と平地と湾岸と台地と・・・、と、おや、都会型道路のほぼ全てだ。
 また一方、月に一度、必ず自転車ツーリングに出かけていく。あるときは海岸沿いを夕陽を浴びながら走り、あるときは峠道を標高差1000m以上に至るまで上る。全国47都道府県、もはや走っていない都道府県はどこにもなく、山岳も、海峡も、雨も、風も、雪も、おや、これまたほぼすべてのシチュエーションを走った。
 赤坂までの自転車通勤がライフワークとなった疋田は、その「熟練サイクリスト」としての自身の経験や立場が主張の最大の根幹となっており、
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P007(疋田)

 私など、前後に子どもを乗せたまま、電動アシスト乗せ自転車で、つねに車道を走っているが、車種がママチャリであれ、基本はロードバイクやクロスバイクと同じだ。
 本来必要な安全が確保されていない自転車ペイント上でもお構いなく、自分の子供を道連れにしてでも持論の正当化に血眼を注ぎ、

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P005(疋田)

 交通弱者とは何か。(中略、高齢者やベビーカー等の歩行者を挙げ)要するに「みずからは他者を傷つけないが、他者からは傷つけられる存在」、それを交通弱者という。(中略)
 もちろん自転車というものは交通弱者には入り得ない。
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P092(小林)

 子どもを持つお母さんたちから、子どもを乗せて車道を走るなんて怖くてできない、という切実な声が、私たちのところにもたくさん寄せられた。歩道を走る権利を認めて欲しい、と言うのである。政治家や警察の幹部は、こうした声には弱い。つい八方を丸く収めるつもりで、ママチャリならかまわないのではないか、スポーツ自転車で走る人は車道へ、といった本筋を外れた発言をして、それがマスメディアで拡散され勘違いの輪を広げている。
 子どもを乗せたお母さんの自転車と、子どもの手を引いて歩くお母さんのどちらが「弱者」かと聞かれて、自転車と答えるバカはいない。
 ママチャリであろうと交通弱者にはならない、権利を主張する権利などないとでも言わんばかりの姿勢だが、
第96回国会衆議院 交通安全対策特別委員会 4号 昭和57年04月22日(htmlpdf)
久本禮一政府委員(警察庁交通局長)

 確かに自転車に歩道を通行させているという実態はあるわけでございますが、これは車道を自転車が自動車と一緒に走るということでは、自転車が交通弱者でございまして、そういった意味で事故に遭いやすい自転車を保護するという意味から、妥協的な措置として歩道上を通行さしているという点がございます。しかし、歩道上の自転車の通行は一転して歩行者に対してはかなり脅威になるという面がございます。
 警察庁も分かっているように、当たり前の話だが、弱者というのは交通モード間の相対的な位置づけに過ぎない。
 自動車に対して交通弱者のために、自転車が守られる環境、わざわざ歩行者を脅かす強者とならずに済む環境創出を強く主張すべき立場でありながら、ただ車道に色を塗らせるだけの活動に終始。


 疋田・小林ら自活研、スポーツ自転車愛好家集団にとって自転車は、環境問題や健康問題を解決し、一つの高度な交通手段と位置付ける「崇高な存在」であり、
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P004(疋田)

 そう(※自転車が歩道を走らない)でなければ、自転車の果実は得られないからなのだ。(中略)
 自転車は「それまでクルマが果たしていた役割」の一部(または全部)を代替する(中略)、そのことがエコなのである。
 ということは、自転車が歩道を「歩行者の代用」として走っているのでは、エコという意味はなくなってしまう。「自転車はクルマの代わりの役割をはたして、はじめてエコ」。ここの部分、行政などはよく認識していただきたいものだ。
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P005(疋田)

 また健康についてはどうか。ここの部分も、自転車が歩道を通っているようではキビシイ。
 これも構図は同じで「歩くよりも楽だから自転車」という距離しか走らないのでは、歩くより、かえって腹まわりはメタボ化してしまう。この部分に関しても、これまでクルマの座席に座っていたのを自転車に置き換えるから、腹の脂肪が燃えるのだ。
 環境についても健康についても、高度な成果なしには「自転車の果実」を享受できないらしい。
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http://www.hillsidestudiobnb.com/

 日本における高齢化社会の進展、ヒザが悪く長い距離は歩けない、バス路線も近くにない、その環境に置かれた高齢者にとって、自力で外に出て買い物に出られる交通手段の有用性は何よりの「自転車の果実」ではないのだろうか。

 これまで運動に関心が無かった人物が、自転車に乗るようになり食欲が増す、多少体重が増えたところで体力や筋力向上という成果も「自転車の果実」ではないのだろうか。

 数kmの距離ですがマイカーに頼っていた人物が、13km/h程度のママチャリで買い物に行くようになる、これも環境と健康から見た「自転車の果実」ではないのだろうか。

 都心部でも自家用車と駐車場を保有できていた高給取りのTBS疋田にとって、かつて乗り回していたマイカーを完全代替できなければ自転車に意味を感じないという認識は分からなくもないが、
 何故それを一般自転車に、自転車政策に強要しようとするのだろうか。
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P013(小林)

 安全快適な自転車利用環境のためには現在の道路を改善しなくてはならないが、すぐには予算もないし、国民の理解も得られにくい。でも、遠からずクルマは減るし、自動停止装置の付いたクルマも増える。まずはクルマと自転車が車道を一緒に走ることに、みんなが早く慣れてくれないと道路交通の正常化はできない。
 このような原理主義を唱える集団が自転車有識者として幅を利かせる状況で、どうやって自転車環境整備への国民の理解を得るというのだろうか。

 自転車で車道を走っても差し支えない、全ての幹線道路が4000台/日以下で30km/h以下の自動車交通量になるまで一体何十年かかるのだろうか。

 既存の自動車交通も車線もそのまま、ただペイントしただけの空間に自転車を誘導させる、これの何がどう道路交通の正常化なのだろうか。
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P013(小林)

 また、年に2400万人ものインバウンド(外国人観光客)が押し寄せる時代である。多くが日本と違って右側通行の国からの客だ。早く道路にクルマや自転車の進行方向を矢印で示すことが、まさに焦眉の急なのである。
 もはやロンドン市民もニューヨーク市民も、自転車の果実を享受し始めた外国人観光客は、車道端をペイントしただけの空間を自転車スペースなどとは認識しない。
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P007(疋田)

 とりあえずママチャリユーザーたちに最初に言っておきたいことがある。「コツをつかみさえすれば、車道は思ったほど危険じゃない」ということだ。(中略)
 一つには道を選ぶことだ。特に幹線道路に関しては、明らかに走りやすい道路と、その逆がはっきりしている。
 道を選ばなければ危険で走れない、そのようなコツを掴むまでの”慣れ”が必要な都市環境に、外国人観光客を放り込むのだろうか。

 現在の車道自転車マーキングは、車道を走る自転車の安全を速やかに高めるという目的のため、危険な道路から順にペイントを進めている。
 本来危険な路線を、あたかも安全な推奨ルートかのように誤認させる、そのような欠陥空間で観光客を「おもてなし」するのだろうか。


 本書検証の最後の引用箇所、P116~P118の疋田のコラム。
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【COLUMN-07- 味噌も糞も一緒にするな】(疋田)

P118
「パーキングメーターを廃止し、車道の左端は自転車の走行スペースとして確保すべきだ」
「でも、自転車はルール守らないじゃん」
P116
どんなに有効で安全に資する提案でもこの言葉一発でオジャンになってしまう。

P118
 それに、よくよく見てみますと、ロードバイクよりもママチャリのほうに圧倒的に法令違反は多いんですぞ。そういうものも含め、味噌も糞も一緒にしちゃいかんと私疋田は思うのです。
 ルールを順守する、おとなしく正しく車道左端を走る「味噌」である自分たちが、ルールを守らず歩道を爆走するママチャリら「糞」と一緒にされるせいで、正論を出してもすべてルールを守って言えと一喝される。
 糞のせいで、味噌が迷惑を被っているのだと。

 安全で快適な走行空間を求める一般自転車の声に対し、「車道左側走行を守るのが先だ」と言葉一発でオジャンにさせようとしているのは一体誰だろうか。
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【COLUMN-07- 味噌も糞も一緒にするな】(疋田)

P18
 「Aの問題」と「Bの問題」をゴッチャにして混ぜっ返して、ひとり「みんなわかっちゃいないな」みたいな顔をしてる。本人は、両親は気取りで悦に入っているかもしれないんだけど、構造的に大間違いなのである。
 走行空間を整備する問題を、現行の危険な道路空間でルール順守を要求する問題と優先順位をつけさせ、議論を抑え込もうとしているのは誰なのだろうか。

 自転車が歩道を爆走するのも、ロードバイクが自動車と輻輳するのも、本来道路にあるべき自転車走行空間の欠如が引き起こしているもの。
 歩行者には歩道があり、自動車には自動車がある、しかし自転車には、自動車から弱者にさせられる車道端しか用意されない。

 道路上での権利を認められない自転車が、その反発のため歩行者と自動車の権利を侵害せざるを得ない状況に追い込まれる、このような不幸な環境の改善を目指すことをハナから放棄し、ルール順守に論点を矮小化しているのは誰なのだろうか。
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TBSプロデューサー・NPO法人自転車活用推進研究会(公式HP写真)
自転車ツーキニスト疋田智
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NPO法人自転車活用推進研究会理事長(twitter写真)
小林成基

 車道左端をおとなしく走れさえすればいいスポーツ自転車愛好家集団が、スポーツ自転車活用推進のための欠陥法律「自転車活用推進法」を作り出し、自分達スポーツ自転車活用推進のためだけに活動を繰り返す。

 サイクリストしか走れない環境でも十分、国民をみなサイクリストにすればいい、残念ながらこの疋田にも小林にも自活研にも、サイクリストの自転車活用推進以外の何も見えていない。

 自転車活用推進を名乗る集団により、日本の自転車活用推進が阻害され続ける。残念ながらこれが本書に見る、日本の自転車政策の現状です。

 本検証シリーズは以上です。


【参考】
ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)