「パワーアップ第一作だからこそ、
最もやりたかった作品を提案しました。」

7月28日(金)放送のパワーアップ第一弾は「ぞうとおじさん」と「ぼくミニドラえもん」。特に「ぞうとおじさん」は、1980年と2007年にもアニメ化された名作中の名作です。藤子・F・不二雄先生が原作に込めた思いを、八鍬監督はどう表現していくのでしょうか。

——「ぞうとおじさん」は、八鍬監督がぜひやりたいと提案されたとお聞きしました。

八鍬 はい。私が、このエピソードが好きだったということはもちろん、個人的に戦争で殺されてしまった動物たちのことに興味を持っていたこともあって、ぜひやらせてほしいとお願いしたんです。

大杉 でも戦争という重いテーマを『ドラえもん』で扱うのは相当の覚悟と勇気がないとできないと思うんだよね。よくチャレンジしたと思うよ。

なぜ『ドラえもん』で、
やらないといけないのか。

八鍬 企画が立ち上がった時に、やはり最初は『ドラえもん』らしい、たのしいギャグ話がいいんじゃないかという人もいました。でも、大杉さんが「最初の1本目だから、まわりは色々言うとおもう。でも八鍬くんが思う存分やったほうがいい」と応援してくれたことがものすごく力になりました。

大杉 やっぱり監督の思いがこれだけこもっていると、作品の熱量も絶対にあがる。それは視聴者にも必ず伝わると思うんです。

八鍬 監督とチーフ・ディレクターの二人体制というのは大きかったですね。シナリオ会議などでも、私たち二人の意見が一致していることに関しては、決定力が増すという効果がありました。

大杉 このおはなしは、一歩間違えるとただの美談になってしまうでしょう。

八鍬 なぜ『ドラえもん』で、やらないといけないのか。原作のコマとコマの間に隠されたF先生の思いを必死に読み解いていきました。東京大空襲のことなど、戦時下の時代考証もかなり詳しく調べました。

大杉 たとえば、戦争の時代を描いた作品の場合、戦争という狂気にみんなが狂わされて当時の人は何も言えなかったような、状況を描く。ところが、『ドラえもん』には、タイムマシンがある。現代の感覚をもったのび太とドラえもんが、戦時中の人々に遠慮なく意見をぶつけていく。

八鍬 そこにおこる化学変化。この子たちが言っていることが正しいんじゃないかと、当時の人たちが変化していくさま。それが『ドラえもん』の醍醐味だと思うんです。SFの魅力が詰まった作品です。だからこそ、パワーアップ第1作めとしてふさわしい、家族が全員でいっしょに観ることができるエピソードだと思ったんですね。

まるで、映画を作っているような
濃密な現場でしたね。

大杉 しかも、この作品は絵コンテも演出も八鍬監督自身が担当しているから、思い入れも強いんじゃない?

八鍬 そうなんです。これまでずっと『ドラえもん』を観続けてきてくれたファンの方々に、今までにない感動を与えたかったんです。だから通常のTVアニメに比べて、制作にはかなり長い時間をかけました。

大杉 シナリオを書くための調査をはじめたのが去年の10月くらいだったよね。

八鍬 完成まで約9ヶ月かかりました。通常の3倍位の時間がかかっているので、ついてきてくれたスタッフにも感謝しています。

大杉 そして、今回の「ぞうとおじさん」では、よりあたたかみのある作品にしようと、絵のトーンを変えました。そして、キャラクターたちの動きもより自然にみえるように、作画の枚数も3倍位増やした。まるで、映画を作っているような濃密な現場でしたね。

八鍬 視聴者の皆さんにも、『ドラえもん』がさらにすごくなったと感じてもらえたらうれしいですね。

第2回は、8月4日(金)AM10:00ごろ公開予定です。

※「ぞうとおじさん」のおはなしは、「ドラえもん サマースペシャル」と、てんとう虫コミックス『ドラえもん』5巻に収録されています。

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