「規則」改正についての視座(後編)

業界のご意見番・小森勇の一喝

~ 「規則」改正についての視座(後編) ~

 

前回20日の(前編)は、“思わぬ”様々な反響を呼びました。
ズバリ規則改正に向けての「パブリックコメント」用に、警察庁から「別紙」として発せられた文章の「4.経過措置」の解釈に関するものです。
そこには以下のように書かれています。

現行基準による認定を受けた遊技機又は検定を受けた型式に属する遊技機(経過措置により、施行日後、現行基準での認定又は検定を受けるものを含む。)について、附則で定める各起算日から3年間は、引き続き営業所への設置を認めることなどを規定する。

この文章の持っている意味を正しく理解するためには、まず《「認定」制度とはいったい何なのか》
をしっかり理解しておく必要があります。

❶「認定」とはどういう制度なのか?
まずは基本となる「法」(風適法)の条文から。

風適法第20条

第1項
(ぱちんこ営業者)は、その営業所に、著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして・・
国家公安委員会規則で定める基準に該当する遊技機を設置してその営業を営んではならない。

第2項
前項の風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該営業所における遊技機につき同項に規定する基準に該当しない旨の公安委員会の認定を受けることができる。

※つまり、【著しく客の射幸心をそそるおそれが無い遊技機であること】を(各都道府県の)公安委員会に法的に認めてもらうことが、認定制度の基本精神であるという事ですね。
法では明言されていませんが、検定期間が切れそうな遊技機であっても【著しく射幸心をそそるおそれが無ければ】更に数年間は使用を認めようではないか、という“経済的配慮”があることは容易に推測されますね。

そこで、その「認定」による使用期間については、

検定規則
第4条
認定の有効期間は、その認定を受けた日から三年間とする。

※と明確に定められています。つまり【検定期間+認定期間≒約6年間】ということに成ります。

そして認定については、
第3条
公安委員会は、認定申請書に係る遊技機が(※著しく射幸心を・・云々に)該当しないと認めるとき・・は、認定をしなければならない。

※と、「認定」が任意裁量的なものではなく、いわゆる“羈束(きそく)”裁量であることが明らかにされています。
羈束裁量とは、認定してもしなくてもどちらでも良いという訳では無く、行政官は、規則や手続きに問題がなければ認定すべし!という法律慣用句です。

 

❷さていよいよ、「今回の」規則改正です。
冒頭にカッコで囲んだ部分をいかに解釈すれば良いのでしょうか?
大切なことは、法令の文章は(個人個人の想いや状況判断を交えて)解釈すべき問題では無く、できるだけ客観的に、“すなおに”読み取るべきものであります。
ここに重要な条文が有るので是非じっくり読んでみてください。

検定規則
附則(平成十六(※2004年)・一・三○国家公安委員会規則一)
1.(施行期日)この規則は、平成十六年七月一日から施行する。
4.(遊技機の規制に関する経過措置)この規則の施行前にされた許可又は承認の申請に係る遊技機に関する(法二十条)第一項の基準(※著しく射幸心をそそる・・云々)については、当該認定をうけた日・・・から起算して三年を経過するまでの間は、なお従前の例による。
5.(遊技機の認定に関する経過措置)

次の各号に掲げる遊技機に関する(法20条)第一項の基準については、なお従前の例による。
一 この規則の施行の際現に公安委員会に提出されている遊技機規則第一条第一項の認定申請書に係る遊技機
二 この規則の施行日以後に公安委員会に提出された・・認定申請書に係る遊技機でこの規則の施行前に・・遊技機試験を受けたもの
三 この規則の施行の際現に・・指定試験機関に提出されている・・遊技機試験申請書に係る遊技機

※この「附則」の規定は、まさにあの《スロット4号機の撤去》を狙った最近の最も大きな規則改正時の【経過措置】です。
今回今年の7月(11日)に警察庁から出された「別紙」の【経過措置】は、基本的には上記の13年前と、ほぼ同じ文脈で理解することができると思います。

上記5.の一、二、三、は今度の規則改正に照らしてみると、
一、は2018年1月31日までに認定申請書が受け付けられているP・S遊技機
二、は2018年2月 1日以後に認定申請書が公安委員会に提出されるであろうP・S遊技機
三、は2018年2月 1日までに適合試験の手続きが為されている機械で、2月1日以後に試験適合され➡各県公安委員会に検定申請されるであろうP・S遊技機
と読み替えるとよいでしょう。

❸ 来年2018年2月1月に施行されるとされている新規則は、「出玉基準」や「適合試験のやり方」に関して、前回の2004年の規則大改正時と比べても勝るとも劣らない大改正に成るだろうと思われます。
この意味でこの前回の「附則」による【経過措置】の取り計らいは充分“今回の規則改正”に参考に成ると思います。
驚くべきことに2004年当時、この「認定制度」のことが殆どのホール企業に理解されていなかった事です!
具体的には(スロットで云うと)「吉宗」「秘宝伝」「押忍!番長」「北斗の拳」「俺の空」等の、いわゆる「4号機」主要機について殆ど「認定」を取得していた企業が無かっただろうという事実です。
と云う事は最終2007年秋まで営業所で使用されていた主要スロット機は、殆どが検定切れの状態のまま、適正に使われているものと「見做された=みなし機」と云う事に成ります。
みなし機ということは、公安委員会(警察)からみて“適正”と見なして頂いていた“首の皮一枚”状態であったわけで、当局さえその気になれば、「2005年中には100%撤去しなさい!」との指導が入れば2005年中に全てのストックタイプの4号機は市場から消えていたはずです。
でもそうならなかったのは、どうしてなのでしょう?当局が“なさけの情”をかけて頂いた?そんな“なさけ”で行政が左右されるとは到底考えられません。
ということは・・まさに上記の「附則」に書かれた経過措置を、適正に当局が遵守しただけと解釈すべきでしょう。

※これは何も業界が“ごり押し”して“勝ち取った既得権”といった類いのモノでは決してなく、ただ単に警察庁が当時の【経過措置】条文を適正に遵守した指導を為さったというだけの事です。
「附則」とか「経過措置」とかいう言葉は、法曹界以外の一般の人から見れば、「法」「政令」「規すなわち、則」の本文ほど“力の無い”“仮のとりきめ”程度の響きがあるかもしれませんが、実は「附則」にある「経過措置」の条文も、本体の条文と全く同じ【法的拘束力】を持つのです。

 

❹これから先は、正式に8月下旬ごろ正式に公布される「新・規則」の条文、解説文を拝見してからにしましょう。
今の段階で7月のパブリックコメント時の改正条文案を見て、侃々諤々の議論をこれ以上進めてもあまり意味が無いでしょう。

もう一度「認定」の制度主旨に帰りましょう。
「著しく射幸心そそるおそれのあるもの」でない限り、認定申請を受理したら、認定をおろしなさい、というのが法、規則の大原則であることを再確認しましょう。
羈束裁量というのは、行政官の恣意的な認定・不認定を防ぐ、法の自己規制の精神です。

もう一つは、「法律は不遡及」という大原則です。刑事法でも民事法でも、その行為の時点で違法では無かったものが、新法に成ってから、過去に遡って“違法”に成る事は無い!という法治国家の大原則です。
そうしますと、
ⅰ)スロットの所謂「5.0号機」のAT機、ART機の殆どは、サブ基盤の働きにより大当りの出現率や出玉性能等に影響を及ぼすことが、「検定後」に明らかと成ったため、法20条1項で規定する“認定できない”遊技機に該当する。
これは異論がないでしょう(笑)。

ⅱ)スロットの所謂「5.5」号機は2015年10月以降に、“サブ基盤制御”を止めて、メイン基盤のみによる大当り性能を規制しているという意味においては、法20条にいう「著しく射幸心をそそるおそれがある」とは、まず云えないだろうと思います。
であるならば、5.5号機は、あとはセキュリティ上に重大な欠陥がある等のミスが認められない限り、新・検定規則においても「認定」が取得可能であると言わなければなりません。

ⅲ)まして、今年の10月以降に発売されるスロットの、所謂「5.9」号機が検定の切れる2020年以降に《認定申請が出来なくなる》などとは、いったい誰が言いだされたのでしょうか!?
認定制度は、射幸心の縛りにおいて著しく射幸心をそそるものでなく、健全な遊技性を持つ機械については、旧規則上の「認定」を「経過措置」として認めようという、優れて経済性も加味した規定である筈です。
ここの主旨を理解されないと、出玉性能に於いて差異が無いと考えられる「5.9号機」と「6.0号機」について、《5.9は認定されないが、6.0なら認定される》と云った間違った理解に陥る恐れがある事を指摘して、この稿を終わりたいと思います。

新「規則」が(いくらかの修正を経て)いかに発表されるのか、しっかり見極めたいと思います。

以 上

カテゴリー: パチンコ,業界動向

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