東京五輪会場「伊豆ベロドローム」五輪ルールで競輪開催へ…1周の距離も自転車の素材も違う
20年東京五輪の自転車競技会場「伊豆ベロドローム」(静岡・伊豆市)で、車券発売のある競輪を開催する方向であることが24日、スポーツ報知の取材で分かった。ベロドロームは1周250メートルで木製の屋内バンク。同距離のバンクで競輪は行われておらず、開催される場合はレースを国際競技ルールで行うほか自転車も競技仕様のカーボンフレームを採用する模様。東京五輪を見据え、来年度の開催を目指している。
11年10月に総工費36億円をかけて完成した伊豆ベロドローム。国内で国際大会が行われる際の主戦場として、世界的な評価も高い自転車競技専用スタジアムだ。20年東京五輪の自転車トラック競技の会場にも決まっているが、車券発売を伴う競輪は1周333メートル、400メートル、500メートルのバンクで行われるため、1周250メートルと国際大会仕様のバンク形状を持つベロドロームで競輪が開催されたことは一度もなかった。
だが、東京五輪まで3年と迫るなか、大きな決断が下されそうだ。「ベロドロームで競輪を開催するという話はあるし、進んでいる。東京五輪へ向けてのアピールと理解を深めてもらえればと思う」と複数の競輪関係団体の幹部。五輪では「ケイリン」という種目が00年シドニー大会から採用されているが、日本選手は08年に永井清史の銅メダルが最高。自転車競技全体でも04年アテネ大会でのチームスプリントで銀メダルが最高成績で、苦戦を強いられてきた。
もう一つの理由は、会場の改修費の問題だ。ベロドロームの客席数は1800だが、IOCは五輪開催には5000席を条件としており現在、3600~3800席程度の折衷案が検討されている。いずれにせよ大幅な改修工事が必要で、億単位とみられる費用を捻出するためにも、競輪開催は重要となる。
開催にはルールを改正するなどの法整備を行うことが不可欠。実際に始まればインターナショナルルールによる7人制で行われ、自転車のフレームも五輪仕様のカーボン製になることが濃厚だ。五輪を含めた国際大会は、1周250メートルで木製の屋内バンクが主流。まさに五輪仕様で行う方向で検討されており、すでにベロドロームを使用して試験的に模擬レースも行われた。リオ五輪に出場した脇本雄太は「みんなが真っすぐに走れるなら250メートルは歓迎。ただ、6車立てとかじゃないと危ないかも」と話した。
北京、ロンドン、リオと3大会連続出場した渡辺一成は「ルールも含めた環境が整ってくれれば」と期待を寄せた。東京で自転車競技では12年ぶりとなる五輪メダリストが誕生し、レースに登場すれば競輪への注目度も上がるのは確実。競輪界が東京への挑戦の一歩を踏み出すことになる。
◆自転車競技 トラックレース、ロードレース、マウンテンバイク、BMXに大別される。東京五輪からトラックの「マディソン」、BMXの「フリースタイル・パーク」が追加された。これによりトラックレースは6種目(ケイリン、スプリント、チームスプリント、チームパシュート、オムニアム、マディソン)、ロードレースは2種目(ロードレース、タイムトライアル)、BMXは2種目(レース、フリースタイル)、マウンテンバイクは1種目(クロスカントリー)となり、男女で計22種目が争われる。
◆競輪を開催するには 実際に開催されれば国内初となり、ベロドロームは44場目の競輪場となる。競輪を主催(施行)するには、都道府県および総務相が指定する市町村が施行者になり、経産相の許可を受ける必要がある。統括する公益財団法人JKAが主催する可能性も。主催者には売り上げの3~4%、ベロドロームにも4%程度が入る。仮にJKAが管理するとすれば、災害にあった自治体や財政難に苦しむ自治体に還元されるケースも。廃止が決定的になっていた千葉競輪は一転、屋内250メートルバンクを建設し存続に向け舵(かじ)を切った。
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