【雑記】『怪獣の出る金曜日』は海外の目にどう映っているのか

前段


 
 今やレイトン教授やイナズマイレブンでおなじみとなったレベルファイブですが、私の中ではPS2ソフトの『ダーククロニクル』のイメージが強く残っています。これ、本当に面白いゲームだと思うのですが、最近のレベルファイブの作品から見ても、続編が出るのは難しそうです。発売しても売れないという判断なのか、そもそもSCEとの権利関係的な問題なのかそこらへんは分かりませんが、現代の技術でもう一度この流れを汲んだ作品を作って欲しいものです。ちなみにその前作にあたる『ダーククラウド』はアーカイブスでプレイできるようになりました。こちらは未プレイですのでどうこう言えませんが、高い評価を得ているようなのでその内プレイしたいと思います。クロニクルについても、また深く魅力を掘り下げてみたいですね。
 
 そんなレベルファイブですが、3DS用のソフトとして、『GUILD SERIES』と呼ばれるゲームシリーズを展開しています。1作目は1つのソフトに複数のゲームが入っているというオムニバス形式の作品であり、作品一つ一つの面白さについてはともかく(未プレイなため。しかしニンテンドーeショップの評価を見ると、総じて高い評価を得ているようです)、展開の仕方としては面白いと思いました。ただ、売り上げ的にはあまり振るわなかったようです。シリーズ2作目はダウンロード専売となり、現在シリーズとしては2つ、作品数としては7つで展開されている本シリーズですが、ダウンロード専用ソフトの定番シリーズとなるよう今後の発展を願う次第です(買ってもない人間が言うことではありませんが)。

 シリーズ二作目のGUILD02において、『怪獣が出る金曜日』というアドベンチャーゲームが発売されました。監督・脚本は『ぼくのなつやすみ』シリーズでお馴染みの綾部和さんです。そこから分かりますように、ゲームの内容もノスタルジックなものになっているようです。舞台は「巨大怪獣が出るテレビ番組の中」。『三丁目の夕日』みたいな昔の日本と日本特撮の要素を混ぜ込んだ感じの世界観であると思われます(多分)。ところで、このGUILDシリーズは海外でも展開されていまして、この『怪獣が出る金曜日』も『Attack of the Friday Monsters! A Tokyo Tale』として発売されています。個人的には海外向けな要素を含んでいないように思うのですが(外国の方がぼくのなつやすみをプレイして面白いと思えるのかという話と同じで)、こういうゲームがはたしてどういった評価を受けているのかを、海外サイトのレビューを通じて見てみたいと思います。Destructoid  スコア:9/10
元記事:http://www.destructoid.com/review-attack-of-the-friday-monsters-a-tokyo-tale-258514.phtml
(2013-08-14)

Attack of the Friday Monstersは、驚くほどに魅力的でフルボイスなテーマソングによって始まる。この曲は、両親が自分を愛してくれている理由がよくわからないということを歌ったもので、私は面食らった。そして、それが私の残りのゲーム人生を過ごす場所であったのだ。そのデベロッパーが目指しているものは、最近の多くのゲームとは正反対の方向にあるように思われる。

彼らの力点は、プレイヤーを特定の時間と場に置いて、多くは独りでそして冷静にその状況に留めさせることにある。それはAnimal Crossing(どうぶつの森)EarthBound(MOTHER2)比較されており、本作品がこれらの愛すべき傑作とその目的を似たものとする一方で、全く異なる方法でこれら両ゲームと似た特徴を持つようになっている。

ゲーム内では、その世界の中に居続けるために、散歩をしたり、誰かと話したり、地面に転がっている光り輝く珠を拾い上げることの他にも、もっと色々なことをしなければならないのではと思う人が居るかもしれない。また、自分はこういうものが好きなんだという仮定をたてるには充分に、自分自身と物事に対する自分の好みを理解しているのだと考えている人もいるかもしれない。もしそうならば、Attack of the the Friday Monstersはその仮定が間違っていることを証明してくれるだろう。

Attack of the the Friday MonstersではResident Evil(バイオハザード)や昔のMonkey Islandのように、予め描写された背景を用いている。つまり様々なアングルの固定カメラが設置されていて、ゲーム内の移動に応じで、それらが切り替えられる。これらの背景は全て水彩絵の具で描かれたかのようで、アングルが変わる度に強烈な印象を与える、穏やかな誠実さを引き起こしている。

「シネマティック」なアプローチをとっているゲームのほとんどが、多種多様のバーチャルな演技とドラマティックな展開を採用している一方で、Attack of the Friday Monstersは歩調合わせ、構想、そして美しいアートワークに忠実な作品となった。ジブリ映画のセリフのないシーン(トトロの森をメイが探検するところとか、アシタカが村人にばれないように抜けだすところにような)を畏怖していた人は、私と言っていることがわかると思う。

プレイヤーは、街に引っ越してきたばっかりの少年「そうた」を操ることになる。彼の新たな環境とともに、彼の両親との関係が表面上よりも複雑であることがわかってくる。母親はすぐに彼をお使いに出すが、恐らく年齢的な問題で、彼は任せられた仕事を覚えていられない。何回プレイヤーがそうたをお使いに行かせたとて、彼は忘れてしまうのである。

これは、プレイヤーが日本の少年の心と目を通してAttack of the the Friday Monstersの世界を見るということである。そうたはある時代と場所で生活し、そこにいる子どもたちは、現在と同じかもしれないが奇妙な大人を怖がったりはしない。だから、彼は全ての男性、女性、そして子どもに話しかけながら、街中を走り回る。そこに、彼らが恐怖の元になるかもしれないという思いはない。そうたが本当に脅威を感じているのは、田舎町を踏みつぶしていく巨大な怪獣だけである。奇妙なことに、全く同じ街で怪獣が出るテレビ番組が制作されているのである。

このゲームでは、そうたが怪獣の存在を決して疑わない一方で、プレイヤーには怪獣が本物であるのか、それとも街の大人によって緻密に創られた、サンタクロースのような幻想であるのか深く言及されない。いじめ、親であること、家族関係、そして属するとはどういうことかといったことについての考えは決して不明瞭ではないのだが、結局、現実はどうであるのか、そしてそうたはそれをどのように解釈しているかを判断するのは難しい。

このゲームは26個のエピソードに分かれており、見た目『ムジュラの仮面』に出てきた「ボンバーズ団員手帳」と似ている。しかしこれらのエピソードが番号順に消化されていくことはめったにない。あるエピソードが半分ぐらい終わったと同時にまた別のエピソードが始まるかもしれないし、次のエピソードが始まる前に、一つのエピソードが完結することだってある。この構造が、やることがいっぱいあって、しないといけないことがない普通の子どもが、物事に注意を向けるパターンを模倣したものであることは偶然ではない。だから物事が論理的な順番で起こる必要はなく、やりたいようなやり方で、上手く収まるのである。



メインストーリーが終わった後には、ささやかなやりこみ要素がある。しかしそれを含めても、3,4時間であればこのゲームを遊びつくせるだろう。1時間あたり訳2ドルである。中に飛び込みたくなるとか、エンディングクレジットを見た後すぐにまたプレイしたくなるような類のゲームではない。しかし、中身の詳細について記憶が薄れてきた時にはまた読み返したくなるような、優良な短篇集である。

美しいグラフィックに、訴えるものがある音楽、選択的だが効果的な声の演技、素晴らしいストーリー、そしてたまに出てくるくだらないジョーク。それらの要素によって、Attack of the the Friday Monstersは、あなたの永久コレクションに加わるに値する作品となっている。『風ノ旅ビト』や『The Walking Dead』のようなタイトルが教えてくれたのは、ゲームは常に自分のやっていることを教えてくれるわけではなく、自分がどこにいるのか、自分が誰といるのかを教えてくれることもある。Attack of the the Friday Monstersは、ストーリーの短いゲームを楽しむまた別の方法として、これら2つの絶賛された作品の傍に立っている。

NintendoWorldReport スコア:8.5/10
元記事:http://www.nintendoworldreport.com/review/34991
(2013-07-22)

自分の子供時代をもう一度そっくりそのまま体験することは、現実ではできない。しかし、今回のAttack of the the Friday Monstersでは、1970年台の日本を代替とした舞台ではあるが、それを可能なものとしたのである。プレイヤーは「藤の花」に住む少年そうたとなって、世界をめぐる。この街には巨大な怪獣が出没し、毎週金曜日になると暴れまわる。しかし、この怪獣はプレイヤーと戦う存在ではない。代わりにそれらは、ゲームの魅力的でしばしば奇抜な背景としての役割を果たしているのだ。

多くの側面で本作品は、スタジオジブリ作品との共通点を持っている。そしてその共通点は、同様の作品と比べても多い。ゲームプレイを凌駕する代わりとして、プレイヤーを楽しませ続けるための方法として、外見と物語に大きく頼っているのだ。ゲームを始めた時に、すぐにあることに気づくだろう。音楽が素晴らしいのである。タイトル画面の曲を聞くと、家でジブリ映画を見ているような気分になる。かなりの労力がサウンドデザインに割かれたことが簡単にわかる。それは音楽以上の働きをしている。藤の花を歩いていると、人の話し声から、鳥のさえずりまで、いくつもの音が聞こえてくるだろう。加えて、ゲーム内の会話の多くは、日本語でのフルボイスである。

このゲームは、背景が事前に描写されていて、アニメ調の美しさに非常にマッチている。画面が美しさで溢れている。キャラクターモデルもアニメ調なのだが、カメラがズームアウトする時には、スケッチのような絵になる。けれどもこれは、3DSのスクリーン解像度の問題以外の何物でもないと思う。間近ではなめらかに見えるのだから。

もちろん、この作品の真の魅力はそのストーリーだ。幸運なことに、それはまさにプレゼンテーションのように展開される。つまりこの作品では、多くの怪獣アクションを見るなんてことはない。何本もの特撮映画やテレビ番組(特にウルトラマン)を見る代わりに、そうたの足を通じて自分の子供時代を追体験し、物語は進んでいく。



一方でこのゲームの欠点は、そのゲームプレイそのものにある。物語をすすめるために街を探索し、人と話すこと以外には本当にやることがない。「怪獣カード合戦」という、他の子どもと遊べる、収集要素ありのカードゲームがあるが、ルールは極めて単純である。じゃんけんをしたことがあれば、問題なく勝つことができるはずだ。カードゲームをすることは、物語をすすめる助けになる。ゲームに勝てば、相手を子分とし、呪文をかけることができる。呪文にかかった子分は、物語をすすめるために次に話さなければならない人物を明らかにしてくれる。

Attack of the Friday Monstersは長い時間を要するゲームではない。メインストーリーは3時間程度で終わるだろうし、ゲーム全体でも4~5時間あれば大丈夫だろう。それにもかかわらず、その魅力的な物語と非常に優れた外観は、あなたの時間を使うに値するものだろう。特に、60~70年代の日本の怪獣映画がすきなのであれば。

EDGE スコア:7/10
元記事:http://www.edge-online.com/review/attack-of-the-friday-monsters-a-tokyo-tale-review/
(2013-07-23)



本作品は完結で、一本道である。子分の地位を失うことで、特定の会話を解除すれば、メインストーリーでは、番号の付けられた中間地点の間を歩くだけである。しかし、綾部(製作者)氏はそれが問題とならないような時間と場所に、プレイヤーを完全に連れて行く。風変わりに、そして奇妙なかたちで最終場面に到達することで、プレイヤーは心奪われた聴衆となり、そうたと彼が新しく見つけた友達と一緒に、ヒーローを応援することになるだろう。


後段

 頭が追いつかなくなってきたのでひとまずここらへんで。大手ニュースサイトさんがよくやる、レビューの要旨を抜き出して得点順にまとめるといった作業がどれだけ大変かを思い知りました。そもそもどれだけレビューサイトあんねんと。皆ゲーム大好きなんですね。

 今回は3つほど記事を挙げてみました。もっと点数の低い記事もありましたが、指摘されているネガティブな点は上記の記事と変わらない気がするのでとりあえずです。これらから分かるのは、まず古き良き日本(みたい)という舞台設定は共感を得るかはともかくとして、普通に受け入れられているということです。私も普通にL.Aノワールを楽しんだので同じことですかね。ゲームという仮想空間上の物語である以上、自分が想像できない、体験したこともない設定であっても、さして問題ではないのでしょう。SFやゾンビものだって、未体験という枠で括れば同じですもんね。

 また、ジブリ映画と比較されていることが多いです。特にトトロですね。日本らしいアニメ調のグラフィックを見ると、やはり海外の方はジブリを真っ先に連想するのでしょうか。むしろここまで言われているからには、私達がプレイしてもきっと想起するのでしょうね。これは未プレイなため実際どうなのかは言えませんが……。

 そして、総じてストーリーと音楽、グラフィックが褒められています。それってゲームの要素の大部分じゃないのかと思うのですが、逆にゲームを進めるそのシステムには賛否があるようです。ボリュームに関してもまちまちですね。高評価のところは、短いが密度があるといった表現をしています。手軽に楽しめて、損することもないといったとこでしょうか。そんなゲームに800円程度お金をかける意味はあるか、というのも一つの争点でしょうか。

 ともあれ、おおむね並~高評価の間に落ち着いているようです。ということは『ぼくのなつやすみ』も同じように評価されるのでしょうか。と、前段から海の向こうで販売されていないことを前提に書いていますが、実際にはもう発売されているとかいうオチは避けたいところです。

 海外と日本のゲームに対する趣味・嗜好は異なるといいますが、逆に本当に面白いものはどこにいったって評価されるともいわれます。どっちも本当なのでしょうが、この『怪獣が出る金曜日』のように、特殊な(と私は思うのですが)舞台設定であっても、構成要素一つ一つがしっかりと評価されていることを知れたのは、嬉しい事でありました。

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