獣医師不足 深刻 防疫業務 増すばかり 家畜伝染病を警戒
2017年02月28日
鶏舎への小動物の侵入防止策を生産者に指導する野村所長(左)(高知県大川村で)
鳥インフルエンザなどの家畜伝染病が世界的に多発し国内発生を防ぐ防疫強化が不可欠となる中、防疫指導を担う農業分野の公務員獣医師が農村部で不足の状況にある。2010年の宮崎県での口蹄(こうてい)疫発生などを機に、国は11年に畜産農家の飼養衛生管理基準を強化。公務員獣医師の役割が強化された上、特に今冬は鳥インフルの国内発生もあり防疫業務は増すばかり。各地で獣医師の確保が急務となっている。
2月の大雪の日、高知県の山間部にある大川村の養鶏農場「むらびと本舗」を、県中央家畜保健衛生所嶺北支所の野村泰弘所長が訪れた。この日は家畜伝染病予防法(家伝法)に基づく巡回指導。山道を車で1時間かけて訪問した。
農場の日々の飼養管理や異常の有無などを聞き取る中で、この農場の疾病対策の課題が浮かび上がった。野村所長は「訪問は大変だが、課題が見つかり来てよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
公務員獣医師に求められる防疫業務は、飼養衛生管理基準の強化を機に「がらりと変わった」(県畜産振興課)。牛、豚、鶏の全農家を巡回し、畜舎への入り方から車両の消毒、家畜の飲み水の調達方法、適正な飼養密度、防鳥ネットの設置など20を超す項目を確認する。徹底できるまで何度も通うこともあるという。限られた獣医師で広大な県内をカバーするのは負担が大きいのが実情だ。
野村所長は「巡回指導の他、家畜の診察や法定検査など業務は多忙。畜産が盛んな地域では、さらに激務だろう」と話す。
今冬、国内では現在までに7道県の10農場で鳥インフルが発生し、約140万羽を殺処分した。こうした有事の対応を主導するのも公務員獣医師だ。昨年11、12月と2農場で発生した青森県では、県の畜産担当者が総動員で殺処分や埋却、消毒、検査など封じ込めに奔走した。同県畜産課の牧野仁課長代理は「恒常的に人手不足。しかし鳥インフルエンザ発生で、地域の畜産を守るのは獣医師だと実感した」と使命をかみ締める。
近年は“動物の医者”を主役にした漫画の登場もあり、獣医師は人気職業として注目を浴びる。しかし、国内の獣医師は「対応する獣種や地域による偏在がある」(農水省)。14年の全国の獣医師数は約3万9000人で、ペット関連が39%と最多。家畜防疫や家畜改良などを担う公務員獣医師は9%と少数派だ。
統計では畜産の盛んな県を中心に公務員獣医師1人当たりの畜産農家戸数が多く、負担感を増している。獣医師1人当たりの戸数が少ない県でも「広大な地域をカバーできる人員数に満たない」(高知県)状況もある。農水省によると、獣医系学部の大学生は首都圏など都会出身が多く、地元の都会で獣医師職に就く場合が多い。団塊世代の退職もあり、地方部で公務員獣医師の恒常的な不足に陥っている。
こうした中、獣医師不足に悩む地方の各県が、担い手確保に乗り出している。学生のインターンシップや卒業後の研修、子育て離職した女性獣医師の復帰支援など、やりがいや働きやすい環境づくりに力を入れる。
獣医系学部に通う大学生の資金支援も活発だ。北海道や東北、中国・四国、九州などの17道県は、学生に修学資金を貸与し、卒業後に県内で公務員や獣医師として従事すれば返還を免除する制度を導入。北海道、青森県、高知県は、獣医系学部に進学する県内高校生に入学金などの資金を支援し、地元出身者の囲い込みを狙う。
農水省は「安全・安心な国産畜産物の安定供給には、公務員獣医師の役割が非常に重要」(畜水産安全管理課)と強調する。鳥インフルや口蹄疫などが海外で多発する中で、「家畜伝染病の発生防止は大命題。各都道府県の獣医師確保をしっかり支援していく」(同課)としている。(福井達之)
現場にしわ寄せ 巡回指導、診察、検査
2月の大雪の日、高知県の山間部にある大川村の養鶏農場「むらびと本舗」を、県中央家畜保健衛生所嶺北支所の野村泰弘所長が訪れた。この日は家畜伝染病予防法(家伝法)に基づく巡回指導。山道を車で1時間かけて訪問した。
農場の日々の飼養管理や異常の有無などを聞き取る中で、この農場の疾病対策の課題が浮かび上がった。野村所長は「訪問は大変だが、課題が見つかり来てよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
公務員獣医師に求められる防疫業務は、飼養衛生管理基準の強化を機に「がらりと変わった」(県畜産振興課)。牛、豚、鶏の全農家を巡回し、畜舎への入り方から車両の消毒、家畜の飲み水の調達方法、適正な飼養密度、防鳥ネットの設置など20を超す項目を確認する。徹底できるまで何度も通うこともあるという。限られた獣医師で広大な県内をカバーするのは負担が大きいのが実情だ。
野村所長は「巡回指導の他、家畜の診察や法定検査など業務は多忙。畜産が盛んな地域では、さらに激務だろう」と話す。
今冬、国内では現在までに7道県の10農場で鳥インフルが発生し、約140万羽を殺処分した。こうした有事の対応を主導するのも公務員獣医師だ。昨年11、12月と2農場で発生した青森県では、県の畜産担当者が総動員で殺処分や埋却、消毒、検査など封じ込めに奔走した。同県畜産課の牧野仁課長代理は「恒常的に人手不足。しかし鳥インフルエンザ発生で、地域の畜産を守るのは獣医師だと実感した」と使命をかみ締める。
都会に偏り地方悲鳴 公務員わずか9% 待遇改善や支援も
近年は“動物の医者”を主役にした漫画の登場もあり、獣医師は人気職業として注目を浴びる。しかし、国内の獣医師は「対応する獣種や地域による偏在がある」(農水省)。14年の全国の獣医師数は約3万9000人で、ペット関連が39%と最多。家畜防疫や家畜改良などを担う公務員獣医師は9%と少数派だ。
統計では畜産の盛んな県を中心に公務員獣医師1人当たりの畜産農家戸数が多く、負担感を増している。獣医師1人当たりの戸数が少ない県でも「広大な地域をカバーできる人員数に満たない」(高知県)状況もある。農水省によると、獣医系学部の大学生は首都圏など都会出身が多く、地元の都会で獣医師職に就く場合が多い。団塊世代の退職もあり、地方部で公務員獣医師の恒常的な不足に陥っている。
こうした中、獣医師不足に悩む地方の各県が、担い手確保に乗り出している。学生のインターンシップや卒業後の研修、子育て離職した女性獣医師の復帰支援など、やりがいや働きやすい環境づくりに力を入れる。
獣医系学部に通う大学生の資金支援も活発だ。北海道や東北、中国・四国、九州などの17道県は、学生に修学資金を貸与し、卒業後に県内で公務員や獣医師として従事すれば返還を免除する制度を導入。北海道、青森県、高知県は、獣医系学部に進学する県内高校生に入学金などの資金を支援し、地元出身者の囲い込みを狙う。
農水省は「安全・安心な国産畜産物の安定供給には、公務員獣医師の役割が非常に重要」(畜水産安全管理課)と強調する。鳥インフルや口蹄疫などが海外で多発する中で、「家畜伝染病の発生防止は大命題。各都道府県の獣医師確保をしっかり支援していく」(同課)としている。(福井達之)
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農政と地域政策 このままでは「脱輪」だ
産業政策と地域政策は農政の「車の両輪」といわれてきた。昨今の農政は前者の輪を回すのには熱心だが、後者の輪はしぼむばかりだ。地方創生の時代にあって、同省の地域政策は甚だ存在感に乏しい。このままでは「補助輪」への格下げどころか、脱輪しかねない。戦略を練り直して、地域政策の旗を揚げ直す時だ。
近年ヒットした地方施策といえば、道の駅、ふるさと納税、地域おこし協力隊、ジビエ、古民家などが思い浮かぶ。いずれも、農山漁村が舞台で農業とも関係が深いが、農水省の施策ではない。他省が主導したものか、民間の自主的な動きに後乗りしただけだ。
田園回帰や集落機能を維持するための「小さな拠点づくり」もそうだが、地方施策は旧自治省を引き継いだ総務省と並んで国交省が有効打を連発している。その政策立案の出発点は地域コミュニティーの維持・活性化である。定住のための雇用創出や、集落のライフラインを守るための商店の存続といった住民主体の起業を応援する施策は、関係者のやる気を引き出し、循環型域内経済の形成にも貢献する。こうした施策に親近感を抱く農業関係者は少なくない。農水省の施策よりも使い勝手が良いと話す自治体関係者もいる。
安倍政権の農政改革は「強い農業」を志向し、産業政策が柱だ。生産と流通の自由化、企業などの新規参入の促進、担い手への集中的な補助事業が特徴だが、明らかに平場の農業地帯を想定したものだ。政府の諮問会議は中山間地域農業の処方箋を示したことはない。それは幸いでもあるが、実態は置き去りにされているのである。
中山間地域は農地面積、農業産出額の4割を占め、国土保全や水源の育成など重要な多面的機能を果たしている。国連が多様な社会の創出を目指す持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、国内では地方への若い移住者が増えるという明るい兆しが見える中、地域政策の後退は時代に逆行しているのでないか。
農業サイドからの切り口がないわけではない。深刻な鳥獣被害を逆手に取るジビエ、農業と福祉を結び付けて障害者の雇用をつくる農福連携、農村に増える空き家や古民家を再利用した定住促進、訪日外国人を呼び込む農泊など、新たな動きが活発であり、実際にいくつかの成功事例も生まれつつある。直売所の余り野菜を使った子ども食堂への提供は、貧困が社会問題化する今日、意義が深い。
これらは安倍政権が現在進める構造改革や規制緩和と違って、だれも排除せず、抵抗勢力も既得権益層もいない。「対決型」の施策ではないからこそ、農村にも国民にも受け入れられやすい。隙間的ではあるが公益性の高い分野を農水省が主導すれば、国民的な関心に応える省としての存在感発揮と、農業・農村への国民的な理解もまた深まるに違いない。
2017年07月24日
[活写] 米袋 今度は、バッグ
徳島市の知的障害者自立・就労支援事業所「れもん徳島アートスタジオ」で、利用者が使用済み米袋をリサイクルした丈夫なバッグ作りに打ち込んでいる。
米穀店から集めた米袋を切り開き、口の広いバッグの形にミシンで縫製。柿渋の上に蜜ろうを塗り重ねて水に強くした。軽くて頑丈で、重さ6キロまでの荷物を運べる。
製造は山崎万由美さん(20)ら5人が担当する。全て手作業で完成まで3週間かかる。山崎さんは「布と違って縫い直せないので何度も点検しながら作る」と話す。
同施設では、利用者が雑貨製造などで収入を得ている。職員の折野百合さん(50)が「魅力的な商品で利用者の手取りを増やしたい」と、このバッグを発案。米袋が“今度はバッグに”との意味を込めて「コンドワバッグ」と名付け、2014年10月に売り出すと、人気を呼んだ。これまでに600個を生産し、予約も抱える。価格は2000円から。徳島市や鳴門市の雑貨店などで販売している。(木村泰之)
2017年07月24日
共済連 市村会長を再任
JA共済連は26日、通常総代会後の経営管理委員会と理事会で任期満了に伴う役員改選を行い、会長の市村幸太郎氏(JA兵庫西組合長)を再任した。副会長には西一司氏(北海道JAオホーツクはまなす会長)、小崎憲一氏(JA熊本うき会長)を新任した。
2017年07月27日
[つなぐ 若手農業女子の挑戦 1] 但馬牛継承に意欲 周囲の支援の輪広がる 兵庫県新温泉町 村田 瑞樹さん
農家の高齢化が進む中、若い力で産地を盛り上げようと、若手農業女子が各地で活躍している。地域に伝わるブランド農畜産物や伝統産品などを次代につなごうと奮闘する農業女子たちの挑戦と、地域への波及効果を追う。
「この子はおとなしいから近づいても大丈夫。あの子は顔を触られるのが苦手だから気を付けてあげた方がいいかな」。兵庫県新温泉町の地域おこし協力隊として、2016年から「但馬牛」の繁殖雌牛の飼養管理に励む村田瑞樹さん(22)は、ゆったりと草を食(は)む牛たちを優しいまなざしで見詰める。将来は同町で就農し、「神戸ビーフ」など全国のブランド和牛のもと牛となる但馬牛の伝統をつないでいく夢を描く。
大阪市出身で、農業とは縁のない生活を送ってきた村田さん。大好きな動物について学びたいと考え入学した大阪府立農芸高校で、ただかわいいだけではない「家畜」という動物の一生に触れたことをきっかけに畜産農家を志した。養鶏実習での食肉処理の体験を、涙を流しながらスピーチする先輩の姿に「野菜は生産から店頭に並ぶまでが見えるが、畜産は途中が見えず、知る機会もない」と感じ、強く印象に残ったという。
その後、入学した兵庫県立農業大学校で但馬牛と出合った。「こんなにも県民に大事にされ、誇りに思われている」ことに驚き、そんな牛を飼養したいという思いが芽生えた。
本格的な就農を目指し、卒業後は地域おこし協力隊として、兵庫県立但馬牧場公園で週4日間活動する。飼養する11頭の繁殖雌牛と子牛を管理しながら、分娩兆候の見極めや妊娠の有無の鑑定など、就農に向けた技術の習得に励む。牛の管理は経験がものをいうだけに、子牛にミルクを与えるタイミング一つをとっても勉強の連続という。
実践的な技術を学ぼうと、農家の下での実習にも意欲的に通う。実習を通じ「但馬牛を守りたいという思いだけではなく、実際に食べていかないといけない」という、農業で生計を立てることの厳しさと覚悟を学んだ。「学校では教科書での授業が中心。知識としては入ってくるが、実感が湧かなかった」と振り返る。
日々但馬牛と向き合う村田さんの姿に、町や周囲の農家も独立を応援しようと、支援制度や研修センターの整備を始めた。支援プログラムを活用し、まずは2年間、町内の農家から経産牛1頭、育成牛1頭のリースを受け、分娩から子牛の出荷まで一手に担う。コスト計算なども経験し、より実践的な経営感覚を身に付けていく。その後は貸し牛舎方式の研修センターに入り、独立する計画だ。
新温泉町牧場公園課の田原和彦課長は「何もせずに放っておけば畜産農家はどんどん減っていく。村田さんのような若い人を地域一丸となって支援していきたい」と力を込める。
将来は多頭ではなく、生活できる範囲で丁寧に飼養管理できる頭数での経営を目指す。村田さんは「就農支援の制度ができ、独立に向けたチャンスをもらえたので成功させたい」と意気込む。
キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。
2017年07月25日
なすレーヌ 広島県廿日市市
広島県廿日市市のレストラン「清流厨房せせらぎぶんこう」が、JA佐伯中央産直ふれあい市場で販売する焼き菓子。マドレーヌにJA管内特産の「佐伯長ナス」が入っている。バナナのようにしっとりとした、ざく切りの長ナスの優しい甘味が広がる。「ナスが苦手な人でもおいしく食べられる」と好評を博している。
地元の県立佐伯高校の生徒が発案し、商品化に向けて生産者、商工会、レストランが協力。配合の調整、味、パッケージのデザインなどを地域住民の投票で決めるなど、地域を挙げて作り上げた特産品だ。
価格は1個(約50グラム)140円。問い合わせはJA産直ふれあい市場、(電)0829(36)2831。
2017年07月26日
農政の新着記事
冷凍牛肉の輸入急増 来月 SG発動へ
冷凍牛肉の輸入量が急増し、輸入が一定量を超えると関税を引き上げる緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)が14年ぶりに発動することが、26日分かった。米国産の現地相場が安かったことに加え、中国が米国産の輸入解禁に踏み切ることから、一部業者が仕入れを強めた。発動すれば、現在38.5%の関税率が50%に高まる。日本と経済連携協定(EPA)を結ぶオーストラリアなどは対象国から除外される。
2017年07月27日
18年産米ナラシ対策 需給調整要件付けず 農水省「飼料用が定着
農水省が2018年産の米生産調整の見直しで、収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)について、需給調整への参加の要件を付けない方向で調整していることが分かった。同省は生産調整を守ってきた担い手には飼料用米など転作作物が定着しており、生産調整の非参加者も既に米の増産の余地はないとして、要件を外しても米の大幅増は見込まれないと判断した。一方、与党内などには需給安定へ要件付けを求める声が根強い。
2017年07月25日
安全作業訴え ポスター表彰決定
日本農業新聞と農水省が共催する2017年農作業安全ポスターデザインコンテストの受賞作品が24日、決まった。農水大臣賞は兵庫県丹波市の谷川真唯さん(27)の作品。「事故防止に必要な声掛けや周囲との協力を円陣で表現した」と喜ぶ。生産局長賞は東京都の横内寿樹さん(28)、日本農業新聞賞は滋賀県の橋本未知さん(25)が受賞した。
2017年07月25日
不動産鑑定士 農地での基準作成を 制度懇談会が提言 国交省
国土交通省の不動産鑑定評価制度懇談会は、不動産鑑定士が農地の鑑定をする際の基準を作るべきとの提言をまとめた。農地はこれまで、宅地などへ転用する場合を除いて法律上は鑑定の対象外だった。しかし、担保の査定や相続時の評価などで鑑定する機会が増加していると指摘。同省は提言を踏まえ、法改正も視野に、評価の基準作りを目指す。農地の売買が活発でない中で、鑑定士による鑑定促進が混乱を招かないか検証が必要だ。
2017年07月25日
「鳥獣管理士」養成 大学の授業 単位認定 技術協会
国内唯一の野生鳥獣管理の資格「鳥獣管理士」を認定する鳥獣管理技術協会(事務局=宇都宮大学)は、今年度から全国の大学などと連携し、養成に乗り出している。大学や専門学校の鳥獣管理学などの授業を、資格取得に必要な単位として認定。7月中にも認定校第1校として酪農学園大学(北海道江別市)の授業を認定する。専門知識や技術、経験を持つ人材を多く養成することで、正しい鳥獣害対策を全国に根付かせ、野生鳥獣との共生を目指す。
これまで、資格を得るには宇都宮市や都内で開かれる有料の講座を受講するか、シンポジウムなどに参加して単位を申請する必要があり、全国への普及が課題だった。
そこで今年度から大学や専門学校の野生鳥獣の専門的な授業を、単位として認定。同協会が認定した動物の生態や管理についての授業を受け、修了すれば受験資格を得られる仕組みにした。
今後、大学などに周知し認定校を広げることで全国に鳥獣管理士を増やしていく考えだ。
同協会副会長で宇都宮大学の小金澤正昭特任教授は「鳥獣管理は行政の担当職員数や住民の理解不足で対処しきれない面もある。野生鳥獣は長期的に正しい方法で管理していく必要があり、鳥獣管理士の果たす役割は大きい」と期待する。
鳥獣管理士は、2009年から同協会が認定する専門資格。鳥獣被害に対する専門知識を持った人材を養成、認定する。
行政やJA職員、野生動物に関心のある若者ら19都道府県の150人が1~3級の資格を取得。市町村や地域で対策を提案・実践するなど指導的役割を担っている。
2017年07月24日
EPAでGI保護 欧州産71、日本産31 チーズなどで使用不可も
農水省は、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)で、それぞれが保護することになった地理的表示(GI)の品目を公表した。日本は、欧州の「カマンベール・ド・ノルマンディー」(フランス)や「ゴルゴンゾーラ」(イタリア)など農産品71品目の名称を保護する。同省は関係者らの意見を踏まえて正式決定するが、こうした欧州のGI名称を付けたチーズを販売できなくなる可能性が高く、国内のチーズ工房も対応を求められる。
日本とEUは、地域の気候風土や伝統製法が育んだ農産品の名称をGIとして保護する制度がある。偽物の名称使用を禁じることで、農産品の価値を守る狙いがある。
今回の協定で、日本は欧州の農産品71品目、欧州は日本の31品目をそれぞれの市場で保護することに合意した。71品目には日本でも有名な「ロックフォール」(フランス)や「フェタ」(ギリシア)などが含まれる。こうした名称は欧州の本場の産品以外は使えなくなる。
国際レベルより厳しい保護水準を適用するため、「北海道産ゴルゴンゾーラ」のように産地を示したとしても、こうした表示はできない。「ゴルゴンゾーラ風ブルーチーズ」など「○○風」の表現も禁止する。
今回公表した産品は、国内のGI登録手続きと同様、一般募集した意見と専門家の審査を踏まえて最終決定する。その際、名称が一般化して欧州の特定の産品を示さない「普通名称」と判断されれば、GI保護対象から外れるケースもある。
イタリア産「パルミジャーノ・レッジャーノ」は、その翻訳の「パルメザンチーズ」の名称も保護する方針。だが、日本では米国産や国産原料を使った同名の粉チーズがパルメザンチーズとして浸透しており、利害関係者の意見も踏まえて使用の可否を判断する。
仏ノルマンディー地方の伝統的な「カマンベール・ド・ノルマンディー」やオランダの「ゴーダ・ホラント」は本場以外は使えなくなるが、「カマンベール」や「ゴーダ」は、国際規格として認められた普通名称のため、引き続き日本国内のチーズ工房も使用可能な見通しだ。
一方、EUは日本の38産品のうち、「神戸ビーフ」や「夕張メロン」など31産品を保護する。欧州で日本産の名称が保護されることになれば、輸出拡大が見込まれる。
2017年07月23日
米先物 試験上場を延長 政府・与党 異例の3回目
政府・与党は、8月7日に期限を迎える米の先物取引の試験上場を延長する方針を固めた。米の生産調整の見直しを2018年に控える中、米価安定を最優先にすべきだと判断。先物取引への投機マネーの流入で、米価の乱高下につながる懸念が払拭(ふっしょく)できないとして、試験上場を続けて動向を見極める方針だ。農産物先物取引では例のない3回目の試験上場延長になる。
2017年07月22日
米輸出 中国と協議 認可施設の拡大要請 農相
山本有二農相は21日、訪問先の北京で、中国農業部と動植物検疫を扱う国家質量監督検験検疫総局(質検総局)の閣僚とそれぞれ会談し、米の輸出拡大に協力を求めた。中国への米輸出は、中国側が認可した施設を通すことが条件で、山本農相は新たな施設を認可するよう要請。会談後記者団に「誠実に対応していただいた」と述べ、事態の進展に期待感を示した。
会談したのは、中国農業部の余欣榮農業副部長、質検総局の支樹平総局長。米輸出に必要な施設の追加認可に加え、東京電力福島第1原子力発電所事故を受け、福島、茨城など10都県の食品の輸入を停止していることから、この規制緩和も求めた。
会談後記者団の取材に応じた山本農相は、中国側の反応について「個別の案件は、中国側との申し合わせでコメントできない」として具体的な説明を避けた。
山本農相は、日中政府間で定期的に農業問題を協議する場が必要だとして「大臣級(会談)は年1回以上したい」と記者団に語った。現在は事務レベルで定期的に協議する枠組みがあるが、閣僚級はない。
中国は日本産食品の主要な輸出先だが、動植物検疫上の理由で牛肉や豚肉、ほとんどの果物が輸出できない。
米は年間消費量、輸入量ともに世界最大の市場だが、日本からの輸出は限られる。
中国側が認可した施設で精米・薫蒸する必要があるが、認可施設は精米工場が1カ所、薫蒸倉庫が2カ所しかないためで、この拡大が課題となっている。
山本農相は北京訪問に先立ち19、20日は上海で日本食PRイベントに出席し、日本産米をテーマにしたアンテナショップを視察した。
2017年07月22日
規制会議が議論再開 市場法抜本見直し焦点
政府の規制改革推進会議(議長=大田弘子政策研究大学院大教授)が20日、新たな規制改革の具体化に向けた議論に着手した。農業分野では、卸売市場法の抜本見直しが焦点。法律の廃止も視野に検討を進める政府に足並みを合わせ、産地が卸に出荷物を必ず引き取ってもらえる「受託拒否の禁止」の規定の存廃も含めて、年内に結論をまとめる。農産物の市場流通に大きな影響が出かねない問題だけに、議論の先行きに注視が必要だ。
2017年07月21日
日本産牛肉を解禁 9月から30カ月齢以下 台湾
台湾の食品衛生当局は、日本産牛肉の輸入停止措置を30カ月齢以下など条件付きで解禁する方針を示した。台湾は日本で牛海綿状脳症(BSE)が発生した2001年以降、日本産牛肉の輸入を停止しており、実現すれば16年ぶりとなる。今後2カ月間の意見募集期間を経て、早ければ9月に解禁する見通し。日本産農林水産物・食品の人気が高く、主要な輸出先の台湾で解禁されれば、輸出拡大への大きな追い風となる。
2017年07月19日