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初陣
作者による設定の元書いております、独自設定が苦手な方は注意してください。
2054年、かつての大戦争の傷跡が深く残る時代。
数年前、人類と深海の大きな戦争があった。
戦争だけなら今まで幾度となくあった、深海側は極東の地を目指し何度も戦いを挑んだ。
初めは大規模な軍事力を持っていたが度重なる敗戦により小さくなりつつあった深海側は数年前の戦争で、ほぼ全ての戦力を投下し人類側に対して最大の戦いを挑んだ。
それが数年前の大戦争、「東京湾戦争」
その傷跡も癒されることもなく両軍共に小規模な戦いを繰り返す日々へと塗り替えられようとしていた。
平和と闘争の狭間の時代。
平和を取り戻すために、平和から最も遠い場所で戦う彼女達。
10:30 名古屋港周辺海域
「マジかぁ...新人で手一杯だよこっちは。」
不明艦の海域侵犯を確認という無線が訓練海域にいる全員に届いた、鳴り響く警告、数少ない教官の一人が無線に向かって吠えている。
「不明艦隊は貴官より方位045、貴官らが最も近い、至急迎撃を。」
「ちぇっ、仕方ない、教官だけで迎撃に向かうよ龍驤、後ろからついて来て。」
「訓練艦隊は訓練中止、残った教官の誘導で基地へ進路を取り海域を離脱。」
今まで訓練していた静かな海の世界が裏返った。
12:00 名古屋港警備府
「なんとかなったねぇ。」
「ホンマや...訓練中くらい攻めて来んでもええのになぁ。」
北上と龍驤が一息つくように言った、先の不明艦迎撃に当たったのは彼女達である。
訓練艦隊と迎撃に当たった教官が合流したあと待ち伏せしていた潜水艦に襲われ被害こそ出たものの、奇跡的に死者は出なかった。
初めて目にし、体感した実戦に訓練艦隊の隊員達は興奮の声を上げていた。
潜水艦を撃沈したのは先導した教官だったが新人の中にもやはり例外というものがいるらしい。
「夕立、あんな戦い方してたらいつか死んじゃうよ...まだ新人なんだから実戦は教官に任せていいんだよ?」
「夕立は大丈夫っぽい!敵に一発喰らわせてやったし被弾もしてないっぽい!」
「そうじゃなくて...」
金髪と黒髪の少女が訓練隊員の人混みの中で話している、片方の金髪の少女、夕立は今回の戦闘で無許可での交戦だったが新人でありながら敵に損害を与える戦果を上げていた。
「そういやあの金髪の子の反撃は見事だったねぇ。」
「アホか、あんな戦い方しとったらすぐに死んでまうで?。」
「龍驤は心配性すぎるんだよ、あんくらい根性ないとやってけないっしょ?人手も足らないし。」
「だからって新人の時に死んでもうたら元も子もないやろ。」
名古屋港の端にあるこの警備府、新人が来る前は数人の小さな基地だった。
それは名古屋港一体を受け持つにしてはあまりに小さかった。
だが昔から戦ってきた古強者だったここの者達に鍛えられれば新人も立派に育つだろう。
19:00 ブリーフィングルーム
その日の夜全員がブリーフィングルームに集められた、訓練艦隊を襲撃した敵についてとこれからの方針について話すためである。
この警備府を取り仕切るのは司令官である長渕提督、本名、長渕和平。
作戦に関しては融通がきかない石頭と言うことで話題となっている。
「最近周辺海域の敵艦侵入が多い、不安だろうが新人も明日からスクランブル配置だ。」
新人達が騒つく、急な実戦配置であるため無理もない。
「今回の敵艦との交戦をみて夕立、時雨、二人は北上からの指名だ、明日からスクランブル配置だ。」
それを聞いた夕立は隣の時雨に小声で聞く。
「...いきなり飛び級っぽい?」
「あんないきなり許可なく敵に一発喰らわせたら目を付けられるに決まってるじゃないか...」
「けど明日からスクランブルと言えども実戦配置っぽい、今日の事はお咎めなしで時効っぽい。」
「けど...」
「なんで僕まで実戦配備?」
「...これでいいっしょ?」
ブリーフィングルームでの会議が終わり皆が各々の部屋に帰る中、北上は龍驤に言った。
「流石やな、隊長様様やな。」
新人である時雨と夕立を自分の部隊に配置してほしいと言う意見を出したのは他でもない龍驤だった。
「隊長レベルじゃないと部隊員編成の申請は通らんからなァ。」
「あいつは危ないでェ、近くに置かんと何しでかすかわからんわ。」
「夕立ちゃんのこと?」
「せや、貴重な人材を潰すわけにはいかんからなぁ。」
「じゃあ実戦配備したらもっとダメじゃんか。」
「目ェ離さなかったら危ない事はせんやろ。」
「...そういうもんかねェ?」
「でもなんで時雨ちゃんまで実戦配備?」
「多分夕立のブレーキになり得るのがあいつしかおらんからや。」
「...なるほど。」
そんな話をしながら二人は廊下を歩いて行った。
翌日 09:00 ブリーフィングルームにて
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ブリーフィング記録
2054.4/24 09:00
スクランブル
スクランブルだ、手短にブリーフィングをする。
またしても名古屋港近海に敵艦が侵入した。
沿岸警備基地が警告したものの今尚侵犯を続行しているようだ。
君たちは至急海域へと急行、敵艦に対し再度警告を、従わない場合は撃沈を許可する。
なお警告前の発砲は禁ずる。
なお今回初めて作戦に従事する新人二人は昨日言った通り、北上達、「ロザリオ隊」の指揮下に入ってもらう。
コールサインは、夕立は「ロザリオ3」。
時雨は「ロザリオ4」だ。
作戦行動中は全員コールサインで呼ぶこととする。
なお司令部のコールサインは「ユニティ」だ。
以上の事を留意し作戦を完遂せよ。
出撃。
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重要語句解説、人物解説
ロザリオ隊
名古屋港警備府第一艦隊第一小隊ロザリオ隊。
ロザリオ1こと北上とロザリオ2こと龍驤により構成される主力部隊。
部隊章は白い十字架。
長渕提督
本名、長渕和平。
名古屋港警備府の司令官。
かなりの堅物らしく任務中は融通がきかないことから別名「石頭」。
プライベートでも任務中とまではいかないが堅いらしい。
北上
ロザリオ隊隊長、数年前の大戦から戦い続けている歴戦の猛者、それ故長渕提督からも一目置かれているが数年前の大戦での戦歴は謎に包まれている。
龍驤
ロザリオ隊二番艦、北上とは数年前の大戦からの仲である。
こちらも大戦での戦歴は不明。
夕立と時雨を部隊に引き込んだ張本人。
夕立
ロザリオ隊三番艦、訓練中に敵に無許可で一撃を喰らわせた問題児。
時雨
問題児である夕立のブレーキとなる唯一の存在としてロザリオ隊に編成される。
本人は別に一撃喰らわせたりとかはしていない。
不憫である。
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