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 いくら口調をやわらかくしても、根拠を示して正面から答えなければ「丁寧な説明」をしたことにはならない。

 2日間に及んだ衆参両院の閉会中審査で、加計学園問題をめぐる疑念は晴れなかった。

 原因ははっきりしている。

 安倍首相や官邸、内閣府など政権側の説明に、記録の裏付けがまるでなかったからだ。

 大きな疑問がいくつも積み残されている。例えば昨年9月、「総理は自分の口からは言えないから私が代わって言う」と和泉洋人・首相補佐官から対応を迫られたとする、前川喜平・前文部科学次官の証言である。

 前川氏は面会の日時を再確認し、時刻の記憶違いまで修正して答弁した。ところが和泉氏の方は「記憶はまったくない。従って言っていない」と根拠を示さず否定した。ウソをつけば偽証罪に問われる証人喚問で、両氏の言い分を聞く必要がある。

 面会予約が要る首相官邸を、愛媛県今治市の職員が特区に決まる前になぜ訪問できたのか。この疑問にも、当時の首相秘書官が「私の記憶する限りはお会いしていない」とひたすら繰り返し、まともに答えなかった。ならば今治市関係者に真相を聞きたい。

 そして、今年1月の決定直前まで加計学園が手を挙げているのを知らなかったという首相の答弁だ。過去の国会答弁との矛盾を野党に突かれたが、首相の発言が事実なら、昨秋の時点で首相周辺から「総理のご意向」などの声が出ること自体がおかしいことになる。

 一方、農林水産相と地方創生相は昨年8~9月に、首相の友人で学園理事長の加計孝太郎氏自身から計画を聞いていた。加計氏の証言も聞く必要がある。

 不都合な「記録」はあれこれと理屈をつけて葬ろうとする。自衛隊の日報問題や森友学園の問題とも共通する安倍政権の姿勢は変わっていない。2日間の審査で説明責任を果たしたとは到底言えない。

 疑念をぬぐいたいなら、首相は自らの指導力で関係省庁に記録を探させるべきだ。行政文書の作成・保存・開示のルールを見直すことも欠かせない。

 同時に、野党が憲法53条に基づき求めている臨時国会召集にただちに応じる必要がある。

 首相は予算編成や法案準備を理由に後ろ向きだが、この規定は少数党の権利を保障するためにある。拒否は許されない。

 自民党自身、5年前にまとめた憲法改正草案で「20日以内」の召集をうたったではないか。有言実行を首相に求める。

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