machiyama_04

                                                                    photo by 與那原松美
<前回へ

話はさらに核心へ。町山さんは、少なからず関わった中から見えてきた日本映画の問題点、さらに映画の足を引っ張るどうしようもない政治の現状、そして日本映画が世界に羽ばたくためのヒントに至るまでを沸点ギリギリまで熱く語っていただきました!
さあ、万国の映画主義者よ、団結せよ!?

聞き手は「シネマラボ突貫小僧」代表の平良竜次です。

 
「ジリ貧の日本映画、巨大な中国市場」

竜次:町山さんというとアメリカ映画を中心に語られることが多いですが、翻って最近の日本映画についてはどう思われますか?
 
町山:多くの日本映画で良くないって言われてるもののほとんどは、一番はお金。なぜお金がダメかっていうと、日本国内でしかその、ペイするようにしか予算設定してないからですよね。
 
竜次:あ、そっか。そうですね。国内だけで回しているってことですね。
 
町山:そう。そうするとやっぱりねぇ、大作と言われても、実際の予算は5、6億円しか付けられないですよ。
 
竜次:うんうんうん。
 
町山:まともな予算が作れないんですよ。

竜次:じゃあ、海外の方は(日本映画は)まったく市場に出てないってことなんですか。
 
町山:まあ、公開しても…、失敗してきたんで。
 
竜次:うんうん。
 
町山:もう無理なんですよ。で、たった5、6億ですごくスケールのでかいもの作ろうとしたって、それは無理ですよ。
 
竜次:そうですね。
 
町山:日本映画の多くは、製作予算が発表されてる額、全部ウソですからね。
 
竜次:それは聞いたことあります…。
 
町山:実際は、直接製作費って4、5億ですよ。大作と言われてるものでも。
 
竜次:うん…。それにいろんな、P&Aというか広告・宣伝費用が付いてあれだけ大きくなるわけですね。
 
町山:そうそうそう。それで何かできるかっていうと、何もできないですよ。実際は。
 
竜次:ジリ貧の状態でずっと勝負仕掛けてるっていうことなんですね。
 
町山:そうです。まったくそうです。で、東南アジア市場っていうすごく大きな市場があって、実際ハリウッドは今、中国市場がすごく巨大っていうか、はっきり言うと世界一なんですよ。
 
町山:アメリカ以外は。アメリカ以外では中国が最大の市場なんですよ。
 
竜次:ええ、ええ。
 
町山:けれど、日本は中国に(作品を)送れないんですよ。
 
竜次:送れない…?
 
町山:中国国内の、その日本映画の公開限定数っていうのは2本なんですよ。わずか2本。
 
竜次:あ、あれは国別で割り当てられてるんですか?
 
町山:そうです。中国政府は、年間2本の日本映画しか公開しない。
 
竜次:なるほどなるほど。
 
町山:でもこれ解決する手段って簡単で、中国から金をつかめば日中合作になるから。
 
竜次:ああ、なるほど! その手で…。
 
町山:いけるんですよ。
 
竜次黒沢清さんは日中合作で頓挫しましたよね。
 
町山:あれは、日本政府と中国政府の問題で頓挫したんです。政治が、というかはっきり言うと安倍政権が日本映画の足引っ張ってるんですよ。
 
竜次:なるほど。
 
町山:冗談じゃないですよ。
 
竜次『永遠の0』とか言ってる場合じゃないですよね。


「政治は過去になるけど映画は永遠だから」
 
町山:冗談じゃない。僕は映画主義だから、映画のために国がすべてを捧げるべきだと思いますよ。
 
竜次:映画主義者だ(笑)。
 
町山:そう。靖国問題のために映画作れなくなるなんてとんでもない話ですよ! 映画が一番大事じゃん!
 
竜次:はははは! そうですよね。映画国家主義者ですから。
 
町山:映画国家主義者ですから…って、それナチだから(笑)!
 
竜次:それ危険だ(笑)。
 
町山:それナチだから! ゲッベルスだから(笑)!
 
竜次:ゲッベルスですね! あはははは!
 
町山:でもまあ、オタクだから、「え!! なぜ靖国問題なんかで映画作れなくなっちゃうの!?」と思いますよ。冗談じゃないよって思いますよ。だって、テメェらのくだらない政治の構想とか、はっきり言うと戦争ですら過去のものになるけど、映画は過去にならないですからね。
 
竜次:そうですね。
 
町山:映画は永遠ですからね。
 
竜次:見られ続ける限りは。
 
町山:そう。映画や絵や小説は永遠に残るけれども、戦争とか歴史、政治はすべて過去になりますから。
 
竜次:一過性ですからね。
 
町山:すべて過去になりますから。でも映画はならないですよ。
 
竜次:そうですね。
 
町山:ならないですよ。絵はならないですよ。小説はならない。だったらそっちが大事じゃないの!?
 
竜次:なるほどね(笑)!
 
町山:100年経った後に、100年前の政治的状況なんてだれも知らないですよ。
 
竜次:はあ〜。
 
町山:でも映画は観るじゃん。100年前の映画。
 
竜次:うんうんうん。
 
町山:100年前の小説読むじゃん。
 
竜次:うんうんうん。
 
町山:どっち大事なのかって。
 
竜次:すごい合点がいきました(笑)。
 
町山:そう思わないですか? そういう100年残るかも知れないものを、今現在の政治的な、政治家たちのその、何というかまあ処世のために潰しちゃうの?
 
竜次:うんうんうん。
 
町山:冗談じゃないよ! と思いますよねえ、本当に。どうかしてんじゃないの!? と思いますけど。
 
竜次:(爆笑)。面白いなあ!


「中国なら村一つ潰してくれますから!」
 
町山:でも本当に僕は、何やってんだろうと思いますよ。とにかく中国資本引っ張れば、日本映画は現在のその限定された製作費の枠から脱出できるんですよ。
 
竜次:なるほど。抜け道ですね、本当に。
 
町山:抜け道です。ただ、日中間の政治的な状況が悪過ぎるんで、それができないんですよ。
 
竜次:なるほどね。触れませんよね、そこら辺は。
 
町山:そう!
 
竜次:そうなっちゃうと、作り手としては怖いから。
 
町山:そう。もう本当にその、5億、6億程度で大作作れとかバカなこと、不可能なこと言ってるから、どうしようもないですよ。本当に。要するに、日中合作にしちゃって、そしたらCGとかも全部中国に出しちゃえばもっと安くなるから。
 
竜次:ははは!
 
町山:どんどん、ロケだって中国でやっちゃえばいいんだもん。
 
竜次:そうですよねえ。でかいセットいっぱい持ってますからね。
 
町山:そう。だって大作を日本国内でロケしようとしてるからものすごく限界があって、全然撮れないですよ。
 
竜次:じゃあ一体どこで撮るんだろうと…。

 
町山:だからもうすごく厳しいですよ。だからもうはっきり言ってロケ場所が、日本ていうのはものすごく撮影する許可取るとか大変で、しかも撮影許可時間の限定とかあるんですよ。
 
竜次:ええ、ええ。
 
町山:中国政府通せば、どんなとこでもできるし、「村ひとつ潰せ」って言ったら潰してくれますからね。
 
竜次:はははは! 危険だ! 映画主義!
 
町山:映画のために村ひとつ潰せって言ったら潰してくれますからね(笑)!
 
竜次:わははははは。
 
町山:「ちょっとここ爆破してくれ」って言ったら爆破してくれますからね。
 
竜次:爆破!(爆笑)
 
町山:ねえ(笑)。それでいいんですよ。いいんですよ、別に。ねえ?
 
竜次:(爆笑)
 
町山:映画大事なんだもん(笑)。
 
竜次:その通りです(笑)!
 
町山:ねえ。だって映画は残るんだもん、ねえ。だからもう本当にねえ、(今の状況は)酷いなあと思いますよ。


(つづきます!) 
<前回へ                      次回へ>