京都産業大学(京都市)は14日、国家戦略特区を利用した獣医学部新設を断念すると表明した。学校法人・加計(かけ)学園が来春、愛媛県今治市に獣医学部新設を計画していることを受け、「国際水準に足る質の高い教員を確保することが難しくなった」(黒坂光〈あきら〉副学長)と説明している。

 京産大は、獣医学部新設の足がかりと位置づけていた動物生命医科学科を含む「総合生命科学部」の3学科を再編し、先端生命科学科と産業生命科学科からなる「生命科学部(仮称)」に改組する方針という。黒坂副学長は「非常に残念だが、ライフサイエンス研究の発展も私たちの大きな目標であったので、そちらにかじを切った」と述べた。

 山田啓二・京都府知事もこの日の会見で「獣医学部について『もう少し広げてはどうか』という話もあっただけに、残念な思いもある」と語った。

 京産大は、関西圏特区での獣医学部新設を目指し、加計学園と事実上競合していたが、政府が示した条件に合わず、特区の事業者には加計学園だけが応募した。野党は、加計学園が選ばれる過程で、政府内に意図的に京産大を外す動きがあったのではないかと追及している。

 安倍晋三首相は6月の講演で「2校でも3校でも、意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく」と述べたが、「2校目」に最も近いとみられていた京産大が断念し、国内では当面、新たに獣医学部ができる見通しは立たなくなった。