五輪まで3年 都以外の自治体“情報不足に不安” NHK調査

五輪まで3年 都以外の自治体“情報不足に不安” NHK調査
2020年東京オリンピックの開幕まで24日でちょうど3年となります。大会の競技会場がある東京都以外の自治体では、組織委員会などからの情報が不足しているため準備に不安を感じ、輸送やボランティアの確保が課題だと考えていることがNHKのアンケートでわかりました。
東京大会は現時点で40の競技会場のうち、サッカーやゴルフ、それに自転車などおよそ4割の会場が東京都以外にあり、都内だけでなく会場がある自治体も準備を進める必要があります。

ことし5月、東京都、組織委員会、政府、それに関係自治体は、結論が先送りされていた都外の自治体の役割について、仮設の整備費を都が負担することで合意しましたが、輸送や警備などについて具体的な結論は出ませんでした。

NHKは東京都以外の競技会場がある24の自治体に対して、準備の現状を尋ねるアンケートを実施しました。その結果、大会運営の中核を担う組織委員会や東京都からの情報が不足しているため、準備に不安を感じている自治体が多いことがわかりました。

この中では、組織委員会から明確な指示がないため、準備を進めることが難しいといった指摘や、全体の計画やスケジュールが示されていないといった意見がありました。

また、準備での課題は何か、10の項目から尋ねたところ、最も多かったのは「輸送」で、一斉に訪れる大勢の観客で起こる渋滞の対策をどうするかや、正確な時間での運行が求められる中、円滑な輸送ができるのか懸念する声も寄せられました。

次に多かった課題は「ボランティア」で、多くの言語への対応など専門的なスキルを持った人材をどう確保するかや、育成をどう進めていいかわからず、統一した研修を開いてほしいという要望も出ていました。

「輸送」が課題の自治体「情報示して」

静岡県伊豆市は、輸送を課題として挙げた自治体の1つです。

伊豆市では、自転車競技のトラックとマウンテンバイクの2種目が行われます。自転車競技は、当初都内の仮設施設で予定されていましたが、コスト削減のため会場が見直され、伊豆市内にある2つの既存施設で行うことになりました。市内の最寄り駅から会場につながるルートは1本だけで、途中、道幅3メートルでセンターラインが無くバス1台が通るのが精いっぱいの県道もあります。組織委員会は、この道を正式な輸送ルートとして決めていませんが、市は、大会までに間に合うよう県とともに前もって拡幅工事を計画し、近隣住民と用地取得の交渉を進めています。

また伊豆市には、毎年7月、8月は海水浴客を中心に75万人以上の観光客が訪れ、市によりますと、市内各地で渋滞が見られるということで、大会期間中、関係者や観客などが数万人規模で市内を訪れると渋滞に拍車がかかるのではないかと心配しています。

さらに競技会場が都内からおよそ100キロ離れているため、組織委員会は、会場近くの宿泊施設を選手村の分村として利用することを計画していますが、場所など具体的なことは決まっていません。

伊豆市の東京オリンピック・パラリンピック推進課の大路弘文主幹は、「伊豆市には観光で訪れる人も多く、市としては、いち早く対策を進めたいが、具体的な情報が無いため準備に取りかかることができず困っている。組織委員会などには、役割分担やスケジュールなど詳細な情報を示してほしい」と話していました。

組織委「情報行き届くように」

組織委員会の武藤敏郎事務総長は「組織委員会は、これまで基本計画を作っている段階で、これから詳細を決めていく。関係する自治体の協力がないと大会は成功しないので、今後は情報が十分に行き届くようにしたい」と話していました。

ボランティア確保の課題は

東京オリンピックでサッカーとバスケットボールの会場となるさいたま市では、ボランティアの確保に向けて独自の取り組みを進めています。

さいたま市内では、バスケットボールの試合がさいたまスーパーアリーナを会場に2週間余りにわたって行われるほか、サッカーが埼玉スタジアムを会場に開催されます。

さいたま市は、会場周辺や最寄り駅などで観客の案内や観光案内などを行うボランティアが、延べ3000人必要になると見込んでいます。これまで国際的なマラソン大会や自転車レースなどを主催してきたさいたま市が、人数の確保と合わせて重要になると考えているのが、ボランティアを取りまとめるリーダーの育成です。

さいたま市がリーダー役として期待している大学院生の水野遥夏さんは、去年とおととし、国際的なマラソン大会にボランティアとして参加し、給水所のスタッフなどを務めました。このときの経験から水野さんは、ボランティアが責任感ややる気を持つには、一人一人に対し同じ目線から指示を出すリーダーの役割が重要だと考えています。
水野さんは、「リーダーによってボランティアのやる気や団結力が違ってくる。ボランティアの人たちが、またやりたいと思えるようにリーダーの役割を担っていきたい」と話していました。

さいたま市は、東京オリンピックに向けてスポーツ競技団体や観光ガイドの団体に呼びかけて、150人のリーダーを育成したいとしています。
さいたま市オリンピック・パラリンピック部の高根哲也部長は「ボランティアの方に連絡や指示をするには、行政の人間だけでは足りず、統率してくれるリーダーがいないと機能しない。さいたま市のボランティア文化が、レガシーになるようにしていきたい」と話していました。