今回は、ニッカ独自に作られたカフェモルトを採り上げます。
ニッカ・カフェモルトは2014年1月にヨーロッパで先行販売され、6月には日本でも発売が開始されました。
ニッカウヰスキーでは、グレーンウイスキー向けの複式蒸留器としてカフェ式蒸留器を採用しています。
これは、一般的な複式蒸留機に比べると効率が悪いものの、素材となる醸造酒の香りが残りやすい特徴があります。
創業者の竹鶴正孝は、早くからカフェ式蒸留機に目をつけていて、アサヒビールの子会社にあったこの蒸留器を使いたいと親会社に嘆願し、1960年代からグレーンウイスキーの蒸留用として使われてきました。
1999年には宮城峡蒸留所に移され、グレーンウイスキーの蒸留用にとして現役で使われています。
この蒸留機を利用して作られたのが、カフェモルトウイスキーです。
原料はモルトウイスキーと同じく大麦麦芽で、モルティングから醸造してもろみ(ウォッシュ)を作るまではモルトウイスキーと同じですが、蒸留をカフェ式の蒸留器で行うのが大きな違いです。
製造工程でいえば、モルトウイスキーではなくグレーンウイスキーの一種と言えます。
モルトのもろみを複式蒸留器にかける場合、コーンなどとは異なり、メンテナンスが厄介になることや、残りを家畜の飼料にしにくいなどのデメリットがあります。
また、グレーンウイスキーが格下とみられていた時期にカフェモルトウイスキーを作ること自体が無謀、贅沢な行動だったといえます。
それでも奇跡的できたのは、ニッカのブレンダーからの素朴な疑問と挑戦があってのことだといえます。
現在、カフェモルトを使っている銘柄は、オールモルト、モルトクラブ、そして宮城県限定販売の伊達の3銘柄です。
今回は、カフェモルトと比較するために、まだ残しておいたカフェグレーンも飲んでみたいと思います。
そのため、ロックではなく、ストレートとトゥワイスアップにしてテイスティングします。
カフェモルトは、飲む前の香りはアルコールの刺激の奥にカラメルのような香りが伝わってきます。
ストレートで飲んで最初に感じられるのは、ゴムや硫黄のような香り、そのあとにバナナのような甘い香りがしてきます。 奥にはウッディな香りもしています。
味わうと多少のアルコールの辛味はあるものの、香りにつられるかのようにバナナのような味、 さらにはナッツのような味が奥から伝わります。
加水すると、鼻に伝わる香りにはビネガーのような刺激が加わった印象です。
舌に転がすと、甘い香りは穏やかになってモルトやウッディな香りが前に出てきます。
味わいは、先ほどのビネガーの香りを延長したかのように酸味が加わり、深みが加わった感じがします。
いずれにしても、余市や宮城峡のシングルモルトとは異なる印象に仕上がっています。
対象として、カフェグレーンも味わってみます。
飲む前の香りは、アルコール由来の刺激が大勢を占めていて、甘い香りはあまりしません。少しエステリーな香りが来るかどうかという感じです。
ストレートで飲んでみると、カフェモルトと同じゴムのような香りが最初にしますが、そのあとには不思議と甘い香りはそれほどしません。バーボンほどではないもののエステリーな香りが後から続いて、多少とうきびのような香りが奥からします。
味わいはアルコールの辛味が強めで、甘みはそれなり。味はカラメルというよりも砂糖の持つ純粋な甘さを感じます。
加水すると、飲む前の香りはストレートと大差はないです。
舌に転がすと、アルコールの刺激が大勢を占めることに変わりはなく、多少加えたモルト原酒からくるモルトそのものの香りが後から追いかけてくる感じです。
味わいもストレートと比較してもさほど変わらない印象です。強いて言えば、バニラのような甘さが加わった印象です。
全体的にみると、カフェグレーンがモルトウイスキーのとがった個性を穏やかにする役割を持たせるためか、とても当たり障りのない香りと味わいがありましたが、カフェモルトはモルトウイスキーのように主体性を持たせるためなのか、カフェグレーンよりも甘みや酸味が強く感じられました。
最後に両者を1:1でヴァッティングしてみました。
飲む前の香りは、不思議なことにそれぞれを嗅いだ時とは異なって華やかさがふえました 。
エステリーさがありつつも、シェリー樽原酒のようなブドウのような香り、さらにはメロンっぽい独特の刺激を伴い甘い香りも感じられました。
ストレートで実際に口にしても、ゴムっぽい印象はあるものの、 そのあとになぜかレーズンのような香りが後に来ます。後からはバナナ、バニラっぽさのある甘い香り、奥からはモルト、ウッディな香りが追いかけてきます。
味わいはアルコールの刺激、辛みが強いものの、奥からはバナナのような味を感じます。
1:1で加水すると、先ほどまでの香りは鳴りを潜めます。
舌に転がしてみると、モルト由来の香りと甘みが強く感じられ、 奥からはウッディな香りが顔を出します。
味わいはアルコールの刺激が控えめになり、モルトの甘みが感じやすくなっています。意外にもカフェモルト単体で感じた酸味は消えていました。
3種類の方法で飲んでみましたが、驚くほど印象がそれぞれ異なる結果になりました。
特に1:1でヴァッティングしたときに、それぞれの印象とは異なる第三の印象が出てきたことはとても興味深いです。改めてウイスキーの奥深さを堪能できました。
カフェモルトについていえば、単体でもカフェグレーン以上に個性が強く出ていて十分楽しめるものになっていました。
どうしてもグレーンウイスキーは格下に見られがちですが、カフェモルトはその概念を覆せるほどの個性を持ったウイスキーになっています。
価格は700ml、45度で5000円台前半が相場。ノンエイジのピュアグレーンウィスキーとしては割高なのは否めないですが、他の世界各地のメーカーが真似をしていないことを考えれば、十分な価値がある値段だと思います。
<個人的評価>
・香り C:アルコールの刺激の後にバナナのような香り、奥からウッディ。加水するとビネガーの刺激が加わる。
・味わい B:バナナ、ナッツのような甘い味。加水すると酸味が加わる。
・総評 B:ニッカしか作れない独自のウイスキーを楽しむうえでは決して高いとは言えない。
ニッカ・カフェモルトは2014年1月にヨーロッパで先行販売され、6月には日本でも発売が開始されました。
ニッカウヰスキーでは、グレーンウイスキー向けの複式蒸留器としてカフェ式蒸留器を採用しています。
これは、一般的な複式蒸留機に比べると効率が悪いものの、素材となる醸造酒の香りが残りやすい特徴があります。
創業者の竹鶴正孝は、早くからカフェ式蒸留機に目をつけていて、アサヒビールの子会社にあったこの蒸留器を使いたいと親会社に嘆願し、1960年代からグレーンウイスキーの蒸留用として使われてきました。
1999年には宮城峡蒸留所に移され、グレーンウイスキーの蒸留用にとして現役で使われています。
この蒸留機を利用して作られたのが、カフェモルトウイスキーです。
原料はモルトウイスキーと同じく大麦麦芽で、モルティングから醸造してもろみ(ウォッシュ)を作るまではモルトウイスキーと同じですが、蒸留をカフェ式の蒸留器で行うのが大きな違いです。
製造工程でいえば、モルトウイスキーではなくグレーンウイスキーの一種と言えます。
モルトのもろみを複式蒸留器にかける場合、コーンなどとは異なり、メンテナンスが厄介になることや、残りを家畜の飼料にしにくいなどのデメリットがあります。
また、グレーンウイスキーが格下とみられていた時期にカフェモルトウイスキーを作ること自体が無謀、贅沢な行動だったといえます。
それでも奇跡的できたのは、ニッカのブレンダーからの素朴な疑問と挑戦があってのことだといえます。
現在、カフェモルトを使っている銘柄は、オールモルト、モルトクラブ、そして宮城県限定販売の伊達の3銘柄です。
そのため、ロックではなく、ストレートとトゥワイスアップにしてテイスティングします。
カフェモルトは、飲む前の香りはアルコールの刺激の奥にカラメルのような香りが伝わってきます。
ストレートで飲んで最初に感じられるのは、ゴムや硫黄のような香り、そのあとにバナナのような甘い香りがしてきます。 奥にはウッディな香りもしています。
味わうと多少のアルコールの辛味はあるものの、香りにつられるかのようにバナナのような味、 さらにはナッツのような味が奥から伝わります。
加水すると、鼻に伝わる香りにはビネガーのような刺激が加わった印象です。
舌に転がすと、甘い香りは穏やかになってモルトやウッディな香りが前に出てきます。
味わいは、先ほどのビネガーの香りを延長したかのように酸味が加わり、深みが加わった感じがします。
いずれにしても、余市や宮城峡のシングルモルトとは異なる印象に仕上がっています。
対象として、カフェグレーンも味わってみます。
飲む前の香りは、アルコール由来の刺激が大勢を占めていて、甘い香りはあまりしません。少しエステリーな香りが来るかどうかという感じです。
ストレートで飲んでみると、カフェモルトと同じゴムのような香りが最初にしますが、そのあとには不思議と甘い香りはそれほどしません。バーボンほどではないもののエステリーな香りが後から続いて、多少とうきびのような香りが奥からします。
味わいはアルコールの辛味が強めで、甘みはそれなり。味はカラメルというよりも砂糖の持つ純粋な甘さを感じます。
加水すると、飲む前の香りはストレートと大差はないです。
舌に転がすと、アルコールの刺激が大勢を占めることに変わりはなく、多少加えたモルト原酒からくるモルトそのものの香りが後から追いかけてくる感じです。
味わいもストレートと比較してもさほど変わらない印象です。強いて言えば、バニラのような甘さが加わった印象です。
全体的にみると、カフェグレーンがモルトウイスキーのとがった個性を穏やかにする役割を持たせるためか、とても当たり障りのない香りと味わいがありましたが、カフェモルトはモルトウイスキーのように主体性を持たせるためなのか、カフェグレーンよりも甘みや酸味が強く感じられました。
最後に両者を1:1でヴァッティングしてみました。
飲む前の香りは、不思議なことにそれぞれを嗅いだ時とは異なって華やかさがふえました 。
エステリーさがありつつも、シェリー樽原酒のようなブドウのような香り、さらにはメロンっぽい独特の刺激を伴い甘い香りも感じられました。
ストレートで実際に口にしても、ゴムっぽい印象はあるものの、 そのあとになぜかレーズンのような香りが後に来ます。後からはバナナ、バニラっぽさのある甘い香り、奥からはモルト、ウッディな香りが追いかけてきます。
味わいはアルコールの刺激、辛みが強いものの、奥からはバナナのような味を感じます。
1:1で加水すると、先ほどまでの香りは鳴りを潜めます。
舌に転がしてみると、モルト由来の香りと甘みが強く感じられ、 奥からはウッディな香りが顔を出します。
味わいはアルコールの刺激が控えめになり、モルトの甘みが感じやすくなっています。意外にもカフェモルト単体で感じた酸味は消えていました。
3種類の方法で飲んでみましたが、驚くほど印象がそれぞれ異なる結果になりました。
特に1:1でヴァッティングしたときに、それぞれの印象とは異なる第三の印象が出てきたことはとても興味深いです。改めてウイスキーの奥深さを堪能できました。
カフェモルトについていえば、単体でもカフェグレーン以上に個性が強く出ていて十分楽しめるものになっていました。
どうしてもグレーンウイスキーは格下に見られがちですが、カフェモルトはその概念を覆せるほどの個性を持ったウイスキーになっています。
価格は700ml、45度で5000円台前半が相場。ノンエイジのピュアグレーンウィスキーとしては割高なのは否めないですが、他の世界各地のメーカーが真似をしていないことを考えれば、十分な価値がある値段だと思います。
<個人的評価>
・香り C:アルコールの刺激の後にバナナのような香り、奥からウッディ。加水するとビネガーの刺激が加わる。
・味わい B:バナナ、ナッツのような甘い味。加水すると酸味が加わる。
・総評 B:ニッカしか作れない独自のウイスキーを楽しむうえでは決して高いとは言えない。
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ついでにシングルモルト余市 ノンエイジと1:1で混ぜてロック...。
どうも余市モルトの癖が勝ってしまい、せいぜい氷が解けてきた時に出てくる酸味が、多少カフェモルトらしさを残している感じがします。
1:2のほうがかみ合いそうなイメージです。
(6/28)
古希を過ぎた我が父に差し出したところ、2週間で半分以上減っていました。
2000円台が限界の父の予算の上では倍以上するカフェモルトは好まれているようです。
ついでにシングルモルト余市 ノンエイジと1:1で混ぜてロック...。
どうも余市モルトの癖が勝ってしまい、せいぜい氷が解けてきた時に出てくる酸味が、多少カフェモルトらしさを残している感じがします。
1:2のほうがかみ合いそうなイメージです。
(6/28)
古希を過ぎた我が父に差し出したところ、2週間で半分以上減っていました。
2000円台が限界の父の予算の上では倍以上するカフェモルトは好まれているようです。
コメント
コメント一覧
アルコールの刺激が結構強いようですので私の好みに合うかわかりませんが今度BARで試飲してみたいと思います。
正直言って、値段の割にこの味と香りでどうかな、という感想は持ちやすいと思います。
ただ、ニッカしか作っていないオンリーワンのウイスキーだと考えればまだ納得がいくかと思います。
一応はグレーンなので、カフェグレーンのようにシングルモルトと割って楽しむのもありでしょう。
カフェモルトは他のウイスキーと全く異なる味わいで衝撃でした。ウイスキーの味は樽にかなり左右されると思うのですが、このウイスキーはモルト本来の味を感じさせるように作られていると感じました。まぁそういうコンセプトみたいですので当たり前なのですが。
モルティで香ばしい香りがあり、モルティなウイスキー好きにはたまらないウイスキーでしょう。非常に面白い味でした。
他にも何種類かRERAさんが記事にされていたウイスキーを飲んだため、またコメントをするかもしれません。その時はよろしくお願いします。
カフェモルトやカフェグレーンは、グレーンウイスキーを格下だと思っている人たちの印象を大きく破壊するほどの旨さがある気がします。
カフェモルトを蒸留する際にはかなりの手間がかかってしまいますが、より多くのブレンドデッドで採用してほしいわがままもあります。
そこで、竹鶴がかねてから眼を付けていたカフェ式の蒸留器を購入して、アサヒビールの西宮工場(朝日酒造)へ設置したのだとか。ニッカが独立会社のときはアサヒビールからグレーンウイスキーを購入していましたが、正式にアサヒビール資本になってからは朝日酒造を合併し、現在、このカフェ式蒸留器はニッカの宮城峡に移設されたというお話だと思いましたけど?
書かれている通り、もともとカフェ式の蒸留器はアサヒビールの西宮工場にありました。
その後1990年代に宮城峡蒸留所に移されて現在に至っています。
資金面においてはアサヒビールが支援しましたが、どの方式にするかは竹鶴の判断によるものです。
ほんと面白旨いですね
これを更に年数かけて・・・ああ私には買えない代物になりそうな予感
これ空けたら次はカフェグレーン試そうかと思ってます