~ 「規則」改正についての視座(前編) ~

業界のご意見番・小森勇の一喝(60)

~ 「規則」改正についての視座(前編) ~

 

いよいよ「規則」改正である。
ここで云う「規則」とは、➀風営法施行規則、②遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則、の2つの規則の事を云う。
➀と②とは、お互いに補完し合う関係で、風営「法」の“幹”と成る条文の詳細を規定しており、メーカーや営業者(ホール)にとっては、「法」よりもむしろこの二つの「規則」の熟知が必須と成ると云っても良いくらいだ。
にも拘らず、“一般の人”にとっては、法律や規則の条文というモノは、どうも難解な文章という印象が強く、とてもじゃないが読み親しめるような代物ではない事が困ったものだ(笑)。

 

既に7月11日に、警察庁から規則改正の骨子と概要が発表されていて、それに対する「パブリックコメント」を広く一般国民から募り、最終的に諸コメントを参考にしながら、8月の然るべき日に「公布」、そして「施行(しこう)日」は平成30年(2018年)2月1日と、“オシリ”の日は既に決まっています。
既に7月11日以降凄まじい数の意見・コメントが警察庁のHPに寄せられているようですし、少なからぬ識者の方が、ネットで改正による影響の分析を為さっています。
そこで自分としては、単に“小森の意見”をそれらに加えるというよりは、〈どういった視点でこの規則改正を見るべきなのか?〉に絞って分析と提案をしてみたいと考えます。

━どういう「立場で」分析するのか?━

 

「改正」を通して【ぱちんこ業界はどう変わって行くのか?】【どう変わって行かねばならないのか?】の視点を抜きにして、出玉性能の影響はどうなる!とか、遊技人口はどうなる!とかの議論を侃々諤々と行っても、とても虚しい空論に終わると思います。
なぜなら、論者の【立脚点】が見えない議論なんて、絵の世界で行くと【画家の視点が見えない画】みたいなもので、ただ読者に不安と間違った認識を与えかねないからです。
ex.1)「ぱちんこ機」の方は出玉が落とされても「さほど」影響はきつくないけど、「 スロット」の方は、“いわゆる6号機”になれば単純に5.5号機のスペックダウンに過ぎないから、確実に稼働は下がるーーと云った議論
2)「景品金額」が5万円以下と成ると、打つ気が起こらなくてやめてしまう客が(MAX機撤去の時よりも)増えてしまうだろうーーといった論調
3)「景品金額」の引き下げは、のめり込み防止にはほとんど役立たない!――といった議論
等がそうした例です。
“天の声”の立場で地上を見下ろしたような論評なのか、或いはひたすら“傾向と対策”じゃないけれど、自分なら得意先に「こうアドバイスする」といった作戦論なのか、視点がよく分かりません。
自分は【立場抜きの評論家】では在りたく無いです。
このパチンコ業界を心底愛し、たとえ規制が厳しくなっても、規制に従いつつ上手に生き抜き、むしろ規則改正をキッカケにして逆に営業内容が良く成って欲しい!という立場で、この論考を纏める事を予め表明しておきたいと思います。

 

❶《来年2月1日以降に成ると、現行機械は違法となるので、認定は取れなくなる!》という或る意見を未だに信じ切って、暗澹たる思いに成っているオーナー様が案外多いのには驚かされます。
誰か影響力のある方が、6月20日頃、こういった論調を流されたようなので、それがどこよりも早くLINE等で全国に拡散したためであろうと推測されます。
その論調の中では《規則改正により現行のPもSも“みなし機”と成ってしまうから、「認定」も取れなくなる!》などと堂々と書かれていました。
更にこの情報は“日工組から漏れ出た情報だ”とか“日遊協の○○さんの情報だ”とかの尾ひれ背ひれが付くものだから、余計信憑性を帯びて、読む者を暗澹たる気持ちにさせる読み物でした。

正直言って自分も、そこまで尾ひれ背ひれが付くと〈今度と云う今度は認定も難しいかも?〉という惧れが一瞬頭をよぎった事を告白します。
しかし7月11日にパプリックコメント(意見の募集)と共に警察庁から出された「別紙」を見て、こりゃ一から議論を整理すべきであるぞ!
との思いに駆られ本稿を記すことに致しました。

 

━経過措置を読み解く━

 

❷「別紙」の「4 経過措置」に、こう書き記されています。
「現行基準による認定を受けた遊技機又は検定を受けた型式に属する遊技機(経過措置により、施行日後、現行基準での認定又は検定を受けるものを含む。)について、附則で定める各起算日から3年間は、引き続き営業所への設置を認めることなどを規定する。」
とはっきり書かれています。

つまり、経過措置がはたらくことにより、来年2月1日以降も、現行設置機の「認定」が受けられる、という事が明記されているのです。
但し、全ての現行設置機の全てが「認定」から更に3年間使える訳では無い事に注意。
ⅰ)「著しく客の射幸心をあおるおそれがある」遊技機は、「認定」が取れない(※風営法第20条第1項)。
ⅱ)「認定」が取れるかどうかは、各都道府県の公安委員会(※実質的に各県の県警の主管)が決める事なので、機種によっては認定が取れる県と、取れない県とが生じる可能性も無きにしも非ず。
ⅲ)現行設置機の「認定」が取れたとしても、その機種のメーカーが〈部品切れ等の理由で、部品供給ができなくなった!〉と云って来たら、その時点で所謂「みなし機」と成ってしまうので、部品が一個でも壊れた時点で、その機種はお店から撤去しなければならない。
従って上記ⅰ)~ⅲ)の制約を常に受けるので、例えば既に認定の取れているスロットの5.0号号機で、もう一度「認定」が取れるかと云うと、ほぼ絶望的です。
なにせ例の出玉20,000枚超を出した事があるという『高射幸性リスト』に殆どの機種が掲載されているからです。

ではスロットの5.5号機は「認定」に関してはどうなのでしょう。
結論的に云えば、殆どの5.5号機は、来年2月1日以降も、「認定」が取れる筈です。
だって今回の「経過措置」において、そう書かれているからです(笑)。

 

❸ ここでちょっと昔に遡って、前回最も大きな「規則改正」が為された平成16年(2004年)7月に、13年ぶりに遡ってみましょう。
この時の大きな規制は、「所謂」4号機スロットを終了させ、新たに「所謂」5号機と云われる仕様のマシンへと移行させることが大きな目玉だったと思います。
2007年に完全撤去になった4号機の後の5号機の営業実績は、一言でいえば〈2007年から約1年半は、“無明の”闇を彷徨った〉と云っても良かったかと記憶しています。
スロットはあのまま行くと遊技機の総設置台数の15%位まで落ちてしまうのではないか?と当時のマネージャーの殆どは感じたと思います。
ところが初代ガンダムとか初代エウレカセブンとかが出てくるころから、下げ止まりで底をうったな!という実感を持たれたホールが多かったと思います。
極めつけは「新鬼武者」が爆発的人気がでたことで、それこそ“あまねくどこのホールも”〈新鬼武者、新鬼武者〉の大合唱となり、その後はそれまでの暗闇を吹き飛ばすかのように、スロットの設置台数もIN枚数もドンドン伸びて、今日のスロット“第二の全盛期”とも云える状況が創られてきたわけです。

このターニングポイントは、日電協などのメーカー団体が製造内規で取り決めている事項の「解釈基準」の変更によるものと聞き及びます。
もちろんこの内規といえど、警察当局の与り知らぬものである筈も無く、当局との内々の擦り合わせにより解釈の変更が認めらて来たとみるべきでしょう。
大切なことは、前回の規則改正にあっても、平成16年(2004)1月31日公布→同年7月1日より施行とされた訳ですが、【今回の改正と同様】経過措置が設けられ、その経過措置は反故にはされなかった!という“実績”があります。

cf.風営法施行規則の「附則」(平成16年1月30日国家公安委員会規則一)の「5の二」において何と書かれているか、読まれた方はありますか?
「二 この規則の施行の日以後に公安委員会に提出された遊技機規則第一条第一項の認定申請書に係る遊技機でこの規則の施行前に遊技機規則第十三条の遊技機試験をうけたもの」については「なお従前の例による」
※なんと、新規則が施行された以降でも「著しく客の射幸心をそそるおそれが」無い機械であれば、認定申請ができることを前提に、この附則による経過措置が書かれています。
※2004年に当時の「新規則」が施行されたにもかかわらず、その後「吉宗」「押忍!番長」「秘宝伝」「北斗の拳」「俺の空」などの4号機の最後の主力機が、2007年まで営業所での設置・稼働が認められたのは、こうした経過措置により「認定」を取る事が認められたからだ、とも解釈できるわけです。

cf.(同様に)「検定規則」の「附則」(平成16年1月30日国家公務員法規則一)の「4」にも、
「4 この規則の施行前にされた・・(中略)・・認定・・(中略)・・を受けたもの又は・・(中略)・・検定を受けた・・遊技機」は、「著しく客の射幸心をそそるおそれが」あるかどうか?の判断基準については、当該認定を受けた日(中略)から起算して三年を経過するまでの間は、なお従前の例による。」と記されています。
※但し、風営法施行規則の場合と異なり、平成16年当時の新規則の施行後に「認定申請」が可能かどうかについては、何も書かれていません。

 

━未来への希望を失わず進む━

 

❹ こうして、前回の規則改正時の時をも振り返ってみると、来年2月1日以降は、いま使っている機械は“みなし機”と成ってしまうから、認定申請などできなくなる!
という議論は、いかにも法解釈のイロハも御存じない暴論であると言わざるを得ないと思います。
ましてキチンと「検定」を取得して平穏に営業に供している機械が、いきなり“みなし機”に成るなどと云う論評は、1995年当時とこんがらがった議論と云わなければなりません。
たしかに1995年当時の“現金連チャン機”撤去の当時は、多くのホールが「認定」等というものを取得せずに、“黙って”6年も7年もそのまま使っていたわけですから、「みなし機」という「法に無い」表現でも説得力があった訳ですが、今の時代そんな機械の使い方をしているホールは、「未承認変更」による処分がバンバン出ている今日、殆ど、いや“皆無”と云って良いでしょう。
“みなし機”等という“意味不明瞭”な言葉を使用するのは、厳に慎むべきだと思います。

❺ 結論的に云うと、
「ぱちんこ機」は、今の「CR必殺仕事人Ⅴ」や「CR北斗の拳転生」のようなミドル機も、2020年には「認定申請」ができる筈ですし(※2021年までの3年間の経過措置期間内だから)、スロットでいえば、今の“5.5号機”は殆どが3年延長の認定申請ができる筈です。
ただし、くどいようですが、製造メーカーが部品供給が出来ない!という事態が起これば、仮に認定取ってもそれ以降は意味無くなってしまいますが・・・

❻ 今回の「規則」改正についての視座(前編)は、これにて終わりたいと思います。
私にとって大切なことは、日本で営業している10,000店舗近い営業所が、でき得ればこれ以上閉店することなく、未来への希望、展望を失わないで欲しいという視点に尽きます。
今の自分はまだ“未熟者”で、〈出玉性能が更に下げられて将来が見えないならば、勝手に閉店すればよいじゃないか!〉といった突き放した言い方が、とてもできないという事だけは告白したいと思います。

「前編 了」

カテゴリー: パチンコ,戦略・戦術,業界動向

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