男はみんな「元カノの成分」でできている

43歳男性が忘れられない人を思い出すとき

男は昔の恋人を「忘れない」のではない。男は昔の恋人で「できている」のだ(写真 : Graphs / PIXTA)
都内のテレビ美術制作会社で働く燃え殻さんは、約9万人のフォロワーを抱える人気ツイッタラーでもあります。「140文字の文学者」とも呼ばれる燃え殻さんが挑んだ初小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』の題材となったのは、「昔の彼女」という存在でした。

 

ボクは21年間、同じ会社に勤めている。もちろん、辞めたいと思ったことは何度もある。でも「辞めます」と言った時の社長の困った顔を見たくないという情けない理由で、同じ会社にずっといるような人間だ。21年間、罪も犯さず、ずる休みもほとんどせず、勤め上げた人間を人は、大人だと安易に呼んだりする。秘訣を聞きにくる人までいる。ただ「辞める」という決断力がなかった人間だとバレないように、ボクは今日も働いている。

ボクの会社の近くには公園があって、昼になると毎日お弁当を買ってベンチに座り、iPodを起動させる。ほどなく小沢健二の『天使たちのシーン』が流れてくる。ボクはぼんやりとベンチに座りながら、この音楽を聴いていた頃の彼女を思い出したりする。

【神様を信じる強さを僕に 生きることをあきらめてしまわぬように にぎやかな場所でかかりつづける音楽に 僕はずっと耳を傾けている 耳を傾けている 耳を傾けている】――小沢健二『天使たちのシーン』

自分の運命を大きく変えてくれた「あの人」

もしも人生で小説を書くことがあるならば、もう会う事はかなわない、自分の運命を大きく変えてくれた「あの人」を書きたいと思って生きてきた。そんな日が本当に来るとは思っていなかったけれど。よく男は未練たらしいとか、元カノはずっと自分のことを好きだと思っているんじゃない? とか言われる。でも言わせてほしい。それは違うのだ。

男は昔の恋人を「忘れない」のではない。男は昔の恋人で「できている」のだ。

いい年して恥ずかしいのだけれど、ボクの口癖は「マジかー」だ。それは最初、彼女の口癖だった。彼女はラーメンがうますぎても、飼い猫が永眠したとメールで知っても「マジかー」と言って笑ったり、泣いたりしている子だった。ボクは彼女が嬉しくても悲しくても、棒読みで言う「マジかー」がツボだった。

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  • NO NAME
    43で未だ付き合った経験もないので元カノなんていない私は誰の成分で生きてるんだろうか。
    up388
    down30
    2017/7/22 08:12
  • NO NAME
    綺麗さっぱり元カレを脳から排出してきた女から見たら
    マジかー
    up402
    down102
    2017/7/22 07:24
  • NO NAME
    記事に引き込まれた。

    自分は、下品で申し訳ないが、体の相性があまりに良すぎて未だに元カノを忘れられない。
    もう20年近く前に別れたのに、未だに彼女を超える相性の人とは巡り会えていない。
    今は妻もいる、しかしいつも比べてしまう自分がいる。
    これだけはどうにもならない。いくら工夫しても、やっぱりしっくり来ない。
    このままではセックスレスになりそうだから、なんとか忘れようとしてる。
    何かいい方法はないものか。

    思い返せば、体の相性も良かったが、その女性とは趣味趣向もマッチしてた。
    なんせ趣味が合うからデートがいつも楽しい。
    今の妻とは趣味趣向、会わないところがある。
    やっぱりこういった互いのパーソナリティーの部分が、身体同士のコミュニケーションにも影響してるのだろうか?

    …何で別れたんだろ。
    up498
    down203
    2017/7/22 07:45
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