2017年7月22日05時00分
過熱しがちな中学・高校の運動部活動を、どうやって適切で均衡のとれたものにするか。スポーツ庁が検討会議を設け、指針づくりにとり組んでいる。
最近は、指導する教員の負担の重さにも注目が集まり、その是正は社会全体の関心事になっている。多くの生徒、保護者、教員が納得し、実効性のあるものにすることが大切だ。
スポーツ庁の昨年の調査では、練習を休む日を学校の決まりとして設けていない中学が2割超、土日にまったく休んでいないところが4割超を占めた。
休養日については、97年に当時の文部省の有識者会議が「中学で週2日以上、高校でも週1日以上の休み」をとるよう提言している。20年が経つのになかなか改善されていない。
今回の検討会議では「スポーツで良い成績を残すと進学に有利になる現実の反映だ」「強くなりたいという、親や生徒の熱意が強すぎる」などの指摘が出た。指導する側にも「厳しい練習が子どもの成長や生活指導に役立つ」との声は根強い。
たしかに部活動は生徒の心身を鍛え、社会性を育む場となり得る。そこから優れた選手も見いだされてきた。しかし、だからひたすら打ち込むことが尊いという話にはならない。
練習時間が一定のレベルを超えると、けがや故障が起きる頻度が高くなる。睡眠時間が短くなるほど練習の意欲は下がる。そんなデータもある。
大事なのは、部活動とそれ以外の生活とのバランスであり、練習の質だという認識を、すべての当事者がもつ必要がある。
例えば日本サッカー協会が世界に通じる選手や人材を育てるために設けた「アカデミー」の練習時間は、13~15歳が週560分、16~18歳は730分ほどだ。試合は週末の1度だけで連戦はない。週1回の休養日に加え、夏冬にオフ期間をおく。
参考になる数字だ。きつい練習が善という意識を、今度こそ変えてゆきたい。
指針づくりでは、外部指導者の活用も論点になっている。
外から招くコーチが役割を引き受けてくれれば、教員の負担軽減になる。だが、待遇や責任の分担など詰めるべき点は少なくない。そこで、規模も環境も異なる8府県市町を選び、指導者研修のプログラム開発や地域での人材確保策、プロチームとの連携などをテーマに研究を進める。全国の参考になるモデルを示してもらいたい。
今回のとり組みは、文化系の部活動のあり方を考える際の手がかりにもなるだろう。
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