各地で発覚 車検切れ公用車

各地で発覚 車検切れ公用車
車を所有するドライバーなら、2~3年に1度「車検のお知らせ」が届くと、予想される“出費”にため息をつく方も多いと思います。ただ、車検は「道路運送車両法」で定められ、違反すれば罰則が科せられる厳しいルール。安全運転には欠かせないという思いもあるからこそ、そのための出費も覚悟できるというもの。
ところが今、全国各地で役所の公用車の“車検切れ”の使用が相次いでいます。国民健康保険料の徴収に使う乗用車、パトロールカー、さらには急病人などを搬送する救急車まで……。中には車検切れの公用車で交通事故を起こすケースも出ています。なぜ自治体で“車検切れ公用車”の使用が相次いでいるのでしょうか?
(ネットワーク報道部 中川早織記者/秋田放送局 五十嵐圭祐記者)
今月14日。秋田市役所で5月に車検が切れた公用車を使っていたことがわかり、市は記者会見を開いて謝罪しました。発覚したきっかけは職員が公用車の窓ガラスに貼ってある車検の満了日を示すシールを見て車検が切れていることに気がついたということです。

連日の“車検切れ”

今月14日。秋田市役所で5月に車検が切れた公用車を使っていたことがわかり、市は記者会見を開いて謝罪しました。発覚したきっかけは職員が公用車の窓ガラスに貼ってある車検の満了日を示すシールを見て車検が切れていることに気がついたということです。
車検が切れた日以降、公務で使われたのは19日間。およそ1160キロを走行しており、この間に事故や故障はありませんでした。市の幹部は「市民の皆様の信頼を損ねたことに対して深くおわびするとともに、信頼回復に全力を挙げて参ります」と頭を下げました。

その5日後の今月19日。今度は秋田県南部の横手市役所で上下水道課の公用車1台が、車検が前日に切れていたにも関わらず公務に使われていたことがわかりました。秋田市で車検切れの公用車が使われていたことが明らかになったため、横手市でも公用車の車検の満了日を調べたところ、1台が車検切れの状態で使われていたことがわかったということです。

秋田県ではことし2月、大仙市でも救急車が車検の切れた状態で2か月半余りにわたって107人の救急搬送を行っていたことが明らかになっています。

北海道岩見沢市 “車検切れ”で事故も

車検切れの公用車の使用が相次いでいるのは秋田県だけではありません。今月7日には愛知県東浦町の2台の公用車が車検が切れているにもかかわらず使用されていたことがわかり、担当の課長ら4人が処分を受けました。

さらに宮崎県西都市では、公用車で青色の回転灯をつけて防犯や交通安全のパトロールをする「青パト」が、車検が切れた状態で業務に使われていたことがわかりました。
このほかにもことしに入ってから、千葉県成田市、山口県下松市などでも車検切れの公用車の使用が明らかになりました。4月には北海道岩見沢市で、公用車で国民健康保険の保険料の徴収業務を行っていた嘱託職員が普通乗用車と事故を起こし、確認したところ車検切れだったことがわかりました。まさに、全国各地で“車検切れ公用車”が走りまくっているのです!

千葉県八千代市では書類送検の事態

こうした自治体による“違反走行”に警察も動き出しています。千葉県警は先月、八千代市で16人の市の職員が車検切れの公用車を運転していたなどとして、書類送検しました。車検切れの車は、主に道路パトロールに使っていたもので自賠責保険も切れている状態で、7か月近くにわたり使用されていたということです。走行距離は3000キロに及んでいました。16人の職員は誰1人として“車検切れ”に気づかなかったそうです。
八千代市は「このような事態を招いたことを深く反省し、今後はこうした事態が二度と起きないように管理を徹底する」としています。

国も事態を重視

公用車の車検切れの使用について、ある自治体の職員は「車検をする業者から定期的に送られてくる案内を頼りにしていて、職員で把握することを怠っていた」と話していました。
また「車を購入したディーラーから知らせが来なかった」とか「組織改編で職員が少なくなったことで、多忙になり見過ごしてしまった」などと話す職員もいました。

しかし、車検切れの車の走行は「法律違反」。こうした事態について車検制度を所管する国土交通省自動車局整備課は、「公用車による法律違反はあってはならない。うっかりして車検切れになったということがないよう、満了日をしっかり把握して適切に使用・管理するべきだ」と話しています。
事態を重く見た国土交通省は各自治体に対して、ことし4月時点の公用車の検査状況についてアンケート調査を進めています。まだ結果はまとまっていませんが、“とんでもない結果”にならないことを祈るばかりです。

「車検切れ」が発覚した自治体では、車のダッシュボードや運転日誌に車検の満了日を明記したり、車検を担当する職員を決めて見落としをなくす取り組みを始たりするなどの対策を取り始めています。“うっかり”では済まない「車検切れ」。徹底した自治体の管理が求められます。