――オーディション会場にただ木刀を持ってきてる人?(笑)。危険人物ですよ!

大園 置こうと思ったんですけど、木刀を置くのはなんか……ダメかなと思って、やっぱり持って。緊張しながら、木刀をマイクみたいに両手で持って、そのまま歌って終わりました。

――何を歌ったんですか?

大園 新垣結衣さんの『赤い糸』を。

――木刀が似合わないバラード曲(笑)

大園 声も力スカスで。でも、緊張のせいで声が震えて、いいビブラートになったかなって(笑)。自分ではそう思ってたけど、先輩に「そういう審査をする人には、震えとビブラートの違いくらいわかるんだよ」「なんでちゃんとしないの?思ってたのと全然違うよ!」って言われて。

――自分では「落ちたな」と思いました?

大園 完全に!100%!

――木刀持って歌って「私、何させられてるんだろう?」って感じですよね。

大園 市内まで来て「変な子」って思われた……って。終わったあと、恥ずかしくてずっと泣いていました。

――わざわざ恥をかきに行ったようなものだと。オーディションのあとに何をしたか覚えてます?

大園 鹿児島のアミュプラザわかりますか?

――すみません、わからないです(笑)

大園 ちゃーちゃんと弟も来てたんですけど、先輩たちとみんなでアミュプラザに行って、みんなで牛タン食べて帰りました!

会えなくなるけど

――つぎの3次審査は?

大園 それもまた忘れてて(笑)。友達と映画の『ペット』を観てたんですよ。かわいいなぁ〜って思っていたらメールが来てですね。「受かりました」って。3次審査は東京で、しかも土曜日だったんですよ。どうせ3次で落ちるから、日曜日に遊んで帰ろうってなって。ちゃーちゃんと「東京行って何する?」「どこ行きたい?」って言ってました。

――お母さんも楽しんじゃってますね(笑)

大園 3次はダンス審査があったんですよ。「これを覚えてください」って課題があって。でも、ダンスなんてやったことないかり「どうしよう?」と思ってたんです。そしたら、勧めてくれた先輩の3人のうち2人がダンス部で、振りを全部覚えてくれて私に教えてくれたんですよ。「足!」とか言われて。

――スパルタ指導で(笑)

大園 お家に来てくれて、「もういいよ。これ以上はできない」って言われるまでみんなで練習しました。あとはもう本番で頑張るだけで。

――その時点で、合格したいという気持ちは芽生えていましたか?

大園 まだなかったです。3次審査に受かったときは「次の日遊べなくなっちゃったなあ……」って思ったので。

――翌日が4次審査だったんですよね。

大園 でも、4次審査で落ちて「東京で遊べずに、落ちて鹿児島に帰ってくる」って悲しいじゃないですか。

――たしかに、それは悔しいですよね。

大園 だから、ここで落ちるのはちょっとイヤだなと思いました。で、4次審査が歌の審査だったんですけど、前日に、ちゃーちゃんと一緒にカラオケに行って練習しました。「ここは強く、もっと感情を込めて!それはただ歌ってるだけだよ?」とか言われながら。

――お母さんもスパルタ指導ですね

大園 ちゃーちゃんは歌が好きなんですよ。で、4次審査ではericaさんの『あなたへ贈る歌』っていう曲を歌って。たぶん本番は全然上手く歌えなかったんですけど、なぜか4次審査も受かって「ええぇぇ〜!」みたいな(笑)

――つぎがSHOWROOM審査で、一週間後くらいに最終審査でしたね。

大園 ここまで来ちゃってどうしよう……と思っていたんですけど、先輩たちは「いや、SHOWROOMで桃子の本性が出て落ちる」って言ってました。「何もできないでしょ?」って。

――アイドルらしいアピールができない?

大園 自己PRは「自分のいいところを紹介する」って意味なのを、最終審査が終わったあと知ったんです。それまでオーディション中の自己PRは「私はネガティブで頭も悪くて、特技もなくて」みたいなことをずっと言ってて。先輩から「自分のことを正直に話せ」って言われていたので。

――むしろ悪いところをアピールしてたんですね。

大園 ピアノも5歳から中3までずっと習っていたのに全然弾けなくて。「だから桃子はダメなんだ」っていうのが口癖で、嫌なことがあるとすぐそう言っちゃうんですよ。

――最終審査はけっこう事件レベルでしたよね。

大園 もう事件ですね(笑)。

――「乃木坂46のいいところは?」という質問に対して大園さんが……。

大園 頭に入ってこなかったんです。質問されているのに、考えている途中で「何を聞かれているんだっけ?」ってわからなくなってしまいました。

――それで「もう一回いいですか?」っていうやり取りが3回くらいあって。

大園 でも、結局答えられなかったです。そしたら「鹿児島のいいとことは?」って聞かれました。その前にちょうど、控室で「鹿児島は畑しかないよ」「お芋が美味しいよ」って話をしてたんです。それが蘇ってきたので……。

――「畑がたくさんあるところ」って答えてましたね。

大園 そしたら「美味しいものは?」て質問されて、「お芋ってそんなに美味しかったかな?」とか思っちゃって(笑)。いろいろやらかしたなぁと思って、恥ずかしくて泣いちゃいました。他の子はしゃべり方も上手いし、しっかりしているのに、私はなんでこんなにダメなんだろう……って。

――そのあと合格発表があり、「今から言う場所に並んでください」と言われて、大園さんはセンターに立ちました。

大園 センターが何なのかよくわかってなかったけど、なんかヤバイことしてるのかな?と思って(笑)

――オーディションを勧めてくれた先輩たちはどんな反応でしたか?

大園 「どうするんですか!みんなと離れるんですよ?いいんですか桃子と会えなくて」って言ったんですよ。そしたら「桃子の人生を変えることになっちゃってごめんね」「本当に嫌だったら、今から行かなくてもいいよ」って言われて。でも、ここまで来て行かなかったら、ただのアホじゃないですか(笑)

――たしかにそうですよね(笑)

大園 でも、「普通の人ができない経験をできるし、一回行ってみるのもいいんじゃない?」って。

――先輩にそう言われたんですか?

大園 はい。それで「そっかぁー」と思って。

――素直(笑)。ご両親は?

大園 とーちゃんは「行ってこいよー」って(笑)。ちゃーちゃんは「はぁ……もう何やってくれてんの。途中で止めておけばよかった……」って言ってました。

――たしかに人生が180度変わりましたよね。

大園 高2の夏休みが暇だったし、こんなことになると思わなかったから受けたんですよ。もともとは地元の専門学校に行く予定で、ちゃーちゃんにも「専門学校までは家から出さない」って言われてて。

――社会人になるまでは実家で暮らしなさい、と。

大園 一人暮らししたいし、まわりも「福岡行く」って人が多かったので「桃子も行きたいんだけど!」って言っても、「それまではダメ」って言われてて。

――それが上京して、芸能界に入ることに(笑)

大園 ビックリですよね。本当にアイドルをやっていけるのか……。

――「ネガティブで特技もない」と言っていましたが、自信を持てることはないですか?

大園 自信?誰よりもトマトが大好きです。それは自信あります。

――乃木坂46の中でも一番トマト好き?

大園 大好き大好き!絶対勝つ!

――「トマト好き」だったらセンター取れそうですか?

大園 いいの?(笑)

――トマトセンターなら先輩たちも譲ってくれるんじゃないですか?

大園 トマトは渡したくない!


大園桃子 1999年9月13日生まれ、鹿児島県出身。くったくのない笑顔と愛らしい鹿児島訊りを持つ、桃の天然水。武道館で地元の有名CM、「将来、なんになるの一?」「公務員!」を再現。新たなコール&レスポンスを完成させた。愛称は「ももこ」。