乃木坂46の曲は1曲も知らず、メンバーの名前もほとんど知らない……そんな鹿児島の少女が3期生として加入し、武道館でセンターを踊るまでには、知られざるドラマがあった。運命の桃は何故、この場所に流れ着いたのか?涙と訛りが印象的な「本物。美少女」が語る、ヒロイン誕生前夜。

愛車ジョルノ

――インタビューで鹿児島弁は出ますか?

大園 でも、最近は出ないですね(託りながら)。

――開始3秒で訊りが出てますけど(笑)

大園 標準語とイントネーション(↑)が違うんですよ。

――イントネーション(↓)じゃなくて?

大園 イントネーション(↑)。ははは。

――「イントネーション」のイントネーションがすごいことになっていますけど、鹿児島弁でしゃべっていただいて全然構いませんよ。

大園 了解しました!

――大園さんの地元は、鹿児島でもかなり田舎のほうだと伺いました。

大園 はい。まわりには何にも……でも、家が建ちました。

――今までは家がなかったんですか?

大園 お家の左前がばーちゃん家なんです。で、目の前が畑で、裏も畑だったんですね。でも、最近、目の前も裏にも家が建ったんですよ。きれいな家に囲まれると、自分の家が汚く見える……。

――まわりが新築だと余計に。

大園 ……って弟が言ってました。

――あ、大園さんじゃなくて(笑)。近所にコンビニはありますか?

大園 コンビニは近くに3つもあるんですよ!すごくないですか?

――どれくらいの距離ですか?

大園 歩いて7分、歩いて7分、歩いて7分。

――3軒とも絶妙な距離にありますね(笑)

大園 でも、歩いて7分だから、バイクで行けば3分!

――バイクに乗っていたんですか!?

大園 はい。バイクに。ブン!

――(笑)。原付ってこと?

大園 学校のみんなは乗ってます。

――徒歩通学だと大変な距離なんですね。大園さんは何に乗っていたんですか?

大園 ジョルノ。かわいいですよねぇ。東京のバイク屋さんにですね、私が乗っていたのと同じジョルノがいたんですよ!かわいかったぁ〜。

――愛犬の話をするかのように話しますね(笑)。通学は片道どれくらいかかるんですか?

大園 バイクで20分です。家から学校まで何もないんですよ。山、畑、田んぼ……人の家。

――そして、田園風景をジョルノで駆け抜ける私(笑)

大園 あ、雨の日になるとミミズが……知ってました?

――たぶん知らないので、ぜひ教えてください!

大園 ミミズって夜のうちにお散歩して、本当は朝までに帰らなくちゃいけないのに、遠くまで行きすぎて帰れなくなって干からびちゃうんです。

――そうなんですね。雨上がりの日は通学路にミミズがたくさんいる?

大園 かわいそう……。

――地元では何をして遊んでいました?

大園 友だちの家に行くか、あとは、うーん…「暇だね」って。

――あははは。やることがない?

大園 公園にみんなで行ったりもしますよ。

――公園で何をするんですか?

大園 いや、特に。「とりあえず行こうかー」って。

――みんなで集まっておしゃべりする?

大園 友達といっしょに公園を歩いていました。

――歩く?平和ですねぇ。

大園 シャボン玉を持っていったりもしましたよ。でも、友だちの家でシャボン玉をやったら……ビチョビチョになっちゃって。

――当たり前ですよ!(笑)

大園 ふふふ。シャボン玉かわいいですよね?

――大園さんの話を聞いていると、のどかな気分になりますね。

木刀で赤い糸

――芸能界には興味があったんですか?

大園 まったくなかったです。

――テレビもあまり見ない?

大園 ドラマは観ます。次の日、学校でみんなが話していて「そんなのも知らないの?」ってなるので。でも、お笑いは絶対観ません。

――バラエティ番組?

大園 お父さんと弟が……これって「お父さん」って書きますか?

――家ではなんて呼んでいるんですか?

大園 とーちゃんって呼んでる!

――いいですよ(笑)。「とーちゃん」って書きますね。

大園 うん。とーちゃんと弟はお笑いばっかり観てて。でも、桃子と「ちゃーちゃん」は……。

――えっ!?

大園 お母さんです。「それ観るなら、とーちゃんの部屋行って観てよ。観たくないから」って言って。桃子とちゃーちゃんは、あんまりお笑いは観ないです。

――どうして乃木坂46のオーディションを受けようと思ったんですか?

大園 1コ上の女の先輩たちに勧められました。いつも勉強とか教えてもらっている3人組の先輩で、そのひとりに乃木坂ファンの先輩がいて。最初「桃子にお願いがある」って言われたから「なんですか?」って聞いたら、「乃木坂が3期生を募集してるから受けてよ」って言われたんです。

――大園さんは、乃木坂46についてよく知っていました?

大園 「AKB48の公式ライバルです」くらいしか知らなくて。アイドルとかもよくわからなかったので、「先輩、なに言ってんですかー?」って(笑)。

――冗談で言っているのかと思ったんですね。

大園 はい。だから「わかりましたー!」って言いながら、オーディションの写真を送ってなかったんです。毎日「もう写真撮った?」って先輩に聞かれて、「まだですよ」って答えてそのままにしていて……。そしたら「もう期限が近いから早くして!」って(笑)

――圧をかけられたんですね(笑)

大園 だから「今日撮りますね」って言って、お家に帰ってすぐ玄関でパシャって撮って送りました。

――「これで先輩の言うことは守ったぞ」と。

大園 はい。で、受かると思ってないから送ったことも忘れてたんです。先輩に「通知来た?」って聞かれても「来るわけないですよー」って言ってて(笑)。そしたら、ちゃーちゃんが「ねえ、なんかこれ来てたよ」って言って、結果通知が新聞と新聞の間に挟まってたんですよ。それが2次審査の4日前ぐらいで。

――危ない!そのまま新聞回収に出していた可能性もあったんですね。

大園 それで、先輩に「1次審査を通りました」って言ったら「え!?」みたいな反応で。

――先輩は、大園さんに本気で乃木坂46に入ってほしかったんですか?

大園 冗談ですよね。「受かると思ってた」って言ってたけど、絶対遊びだったと思うんですよ。だって笑ってましたもん。

――でも、「桃子なら合格できるかも?」とは思っていたでしょうね。だって、どうしようもない人にはオーディションを勧めないですよ。

大園 ふふふ。そのあとの2次審査は鹿児島市内であったので、先輩たちも会場に一緒に来てくれたんです。

――自分たちが勧めたオーディションですから、それは気になりますよね。

大園 でも、会場の空気がすごく重くて……。

――ピリピリしてたんですか?

大園 みんな緊張してるからシーンとしてました。先輩たちもまだ受付のところにいたんですよ。桃子がちゃんと入っていくまで見送ってくれてて。

――「もしかしたら逃げるんじゃないか?」と(笑)

大園 ふふふ。で、控室に入ったらその空気に怖くなっちゃって「やっぱり無理です〜〜」って泣きながら先輩のところに戻ったんですよ。そしたら「なにやってんの!?」「早く行ってよ!」って背中を押されて、しぶしぶ行って。

――2次審査では特技を披露したんですか?

大園 剣道を5年間やってたので、一応、木刀を持っていって……。先輩たちに「たぶんみんなすごい特技を披露するけど、桃子は特技がないから素振りをしながら自己紹介をしなさい」って言われて。でも、そんなことをしたら、すごい変な人じゃないですか?

――インパクトはありますけどね(笑)

大園 審査員の方は、たぶん木刀を使うと思ってたんだけど、私は「使いません」ってその場に置こうと思って。

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