武尊43ICRPにしろ政府までがしっかりと1㎜㏜にしてきたことを説明して下さい。そして今でも関係機関はそれらを守っているのは、何故なのかを教えて下さいませんか。


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天邪鬼の私は、法律であろうと、学会の定説であろうと、大御所のご意見であろうと、すべて疑って、否定して、かかりますが、放射脳の皆さんは、逆に、政府は信用ならん!と騒ぐのに、政府が決めた1mSvという数字は、黄門さまの紋所の様に崇め奉ります。


放射脳の方には大変残念ですが、この数字は、「法律」には書き込まれていません。規制のための「便宜」で決められた拘束力の強くない数字です。

もっと重要なことに、実際の健康被害とは全く無関係です。放射線生物学研究で分かっているのは、一回(一年ではない!)の被ばくが100mSv以上で、健康被害があること、と、年に数Sv以上で健康被害があることです。
文献1をご覧ください。


繰り返し書きますが、万が一に、年に1mSvの被ばくで健康被害の確率があるならば、年に1Sv程度もの被ばくをする宇宙ステーションに、決して、人を送ってはなりません(文献2)。年に1Sv迄は健康被害がない、と「確信するから」こそ、宇宙飛行士を送り出せるのです。(年に20mSvの地域から人を「強制」排除するのは、宇宙ステーション事業と、全く矛盾していますがーー。)

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(法規制の目的と規制値の決め方)


法の規制の目的と規制値の決め方について、原発事故直後に論じました(文献3)。本記事の最後に全文を再掲しておきます。


あらゆる場合に於いて、例えば、自動車の速度規制、トラックの可載重量規制、火災報知器、などなどでは、重大な事故の発生を「未然に防ぐ」ために、「実際の事故が発生するよりはるかに低いレベル」の規制値を設定します。


規制値を低くしすぎると、検出器に誤作動が多くなります。すると、実際に危機が発生したとき、人々は警告を無視するので、規制の意味がなくなります。また、規制値を低くしすぎて、それを維持するためのコストが、本当に事故が起きる場合よりも大きくなるならば、事故防止対策の意味がなくなります。


誤作動が少なく、且つ、規制のためのコストがかかりすぎない、そのような条件の下での、最も小さな値で、規制することになります。


ICRPの勧告)

放射脳が崇め奉る、国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線の規制に関して世界各国に勧告しますが、2007年勧告で、次のことを書いています。

【放射能の規制の目的】

被ばくを伴う活動を「過度に制限することなく」適切なレベルで人と環境を防護すること

【除外と免除】

除外;規制できないことは、除外。

免除:制御の努力がリスクに比べて大きすぎるのは規制が不要。


当然のことながら、私の「法規制の目的と規制値の決め方」と同じです。


除外の補足説明をします。


体内に存在するK-40は、これを規制すると、却って不健康になるので、規制の対象外です。

規制値を、自然界にある放射線や宇宙線よりも小さい「値」に設定すると、宇宙線を遮蔽したり、広大な大地を「除染」しなければなりません。ほぼ実行不可能なので、除外します。自然放射線のレベルが地域によって異なるので、規制値も地域によって異なります。


便益とコストの補足説明です。

レントゲン撮影は、病気を発見するために必要ですから、そのための規制値は大きくしなければなりません。また、それに従事する人は、漏れX線を浴びる機会が増えますので、その対象者の規制値は大きくすることになります。放射線技師の線量限度が50mSv/年であるのは、その程度であれば、対策にかかるコストは、経済的に合理的だからです。放射線技師が一般の人より、放射線に強いから、ではありません。


一方で、一般公衆は。放射線を扱うことはありませんので、規制値を緩和する必要はなく、思い切り低い値にしても構いません。

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(放射線を規制する法令)


一般公衆の放射線の規制値は、「法律」でも、その下の「規則」でも決められていません。「告示」で登場するだけです。拘束力が極めて弱い数字です。


法令は、国会で制定する「法律」、内閣が決める「政令」、各省の大臣が発する「省令」、その下に位置する、人事院規則、国家公安委員会規則などの「その他の命令」からなります。

さらに細かい取り決めに『告示』と「通達」がありますが、どの程度の拘束力があるか、私は、理解できていません。

地方自治体も議会が制定する「条例」と、首長が制定する規則、各部局が制定する規則を持っています。


原子力基本法に基づいて、各省は法律を持っています。

経産省は「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」を持っていますが、その下に規則があり、さらにその下の「大臣告示」に線量限度が書かれています。

文科省も同じです。「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律」の下の施行規則の下の大臣告示「同位元素の数量などを定める件」「設計認証等に関する技術上の基準に係る細目を定める告示」に数値が書かれています。


厚労省の「労働安全衛生法」の下の「電離放射線障害防止規則」には、一般公衆に関する規定はありません。


他にも人事院規則などに放射線の規制があると思いますが、「規則」レベルに、規制値は書かれていない、と理解しています。

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(参考文献)
1)

2011071003:21 「放射線ホルミシスの領域(電中研報告)ーーオタワ大データベースの追加でより確実に」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51977982.html

2)
2013
073108:00「若田光一さんが日本人初の宇宙ステーション船長にーーー半年で400mSvを被曝?1mSv/年を大騒ぎする反原発市民団体は、こんな被曝を許すの?騒がないの?」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52120082.html

3)
2011
032618:22 「法規制の目的と規制値の決め方」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51934157.html



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(付録:文献2の文章を再掲)


法規制は、隠れた危機を早期発見するために、なるべく大きな安全係数をかけるべきです。原因が完全に露出し、危険度が計算できる場合は、迅速処理に支障が出ない様に安全係数を小さくすべきですが、決して2以下にしてはなりません。


一般公衆の個人に対する「線量限度」は、全身に対し1mSv/年と決められています。一方で、放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1年間にさらされてよい放射線の限度は50mSvで、1回の緊急作業でさらされてよい放射線の限度は、100mSvです。


一般の人と業務従事者が50倍以上違うのは、決して、業務従事者の放射線耐力が高いからではありません。どんな訓練をしようと、放射線耐力は高められません。


一般に、危険は、癌の早期発見が良い例ですが、発見が早ければ早いほど、小さな被害で処置できます。このため、なるべく高い感度で異常が発見できる必要があります。一方、検出の感度を高くしすぎると、誤報が増え、警報が鳴ることに人が慣れてしまい、警報が意味をなさなくなります。火災報知器の感度を上げすぎてはいけません。


放射能の管理も全く同じです。通常より高い放射線が検出されれば、危険が成長し始めているおそれがあります。そこで、誤作動が余り起きない程度にレベルを下げた規制が行われます。


300ベクレル/kg1mSv/年は、平時の、危機発見のための、検出器の誤動作が少ない限りにぎりぎりに感度を高めた、規制値です。


しかし、一旦、危機源が発見でき、素性がハッキリすれば、もう検出感度を上げる必要はありませんし、感度を上げたまま作業を制限すれば、危険源除去の処理を不可能にします。このために、業務従事者の許容被曝量は、相当に高く設定されなければなりません。


業務従事者の許容線量が高く設定されているのは、決して、業務従事者の命が軽いわけでも、少々のリスクを負う義務があるわけではありません。十分な知識(例えば、1mmの厚さの鉛なら何keVのX線が遮蔽できるか、等)を持っていて、危険を避けることができるからです。


今回の場合で言えば、原発が原因であることは明白なのですから、平時の基準値を維持する必要はありませんし、規制値の維持は、被災の復興を大きく阻害します。実際に、相当の弊害が生じています。今は有事ですから、安全係数2程度で行動すべきです。