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尖閣漁船衝突事件:民主党政権の対応を振り返る

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自民党の丸山和也議員が、2013年4月23日に開催された参議院予算委員会において、2010年9月に発生した尖閣漁船衝突事件を取り上げた。丸山議員の主張は、
①菅内閣は中国の恫喝に脅えて、公務執行妨害で逮捕した中国人船長を釈放した、
②官邸が地検に命令を出して釈放した。すなわち政治が指揮権発動して司法に介入した、
という疑惑があるので、菅直人元首相及び仙谷由人元官房長官を参考人として招聘し、集中審議することを委員会に求めた。[1]

丸山議員が求めている集中審議を早急に実施して、事件の事実関係を整理し、事件を風化している日本国内に向けて、増長しつつある中国、そして世界に向けて情報を発信してもらいたい。中国との関係において、一時的には関係が悪化するだろうが、その過程を経ないと、真の意味で日中関係が改善できないと思う。

①日本人の一部(おそらくは多く)は、「中国と摩擦を起こさないことが大切である」と考えている。それが「弱腰外交」になり、外交攻勢を招いている。[2]

②中国政府は、「日本は服従する国だ」「日本は脅せば譲る」と考えている。
・フジタの社員を拘束した。(後述)
・レアアースの輸出を禁止した。[3]
・一連の反日デモを規制しない。

③世界の一般的な人々は、「無人島を巡って日本と中国が争っており関係が悪化している」というレベルの情報しか知らない。事件当時、中国はフジタの社員を拘束したが、日本政府がその事実を積極的に世界に向けて発表していれば、世界中が日本の味方になってくれたはずである。これからでも遅くない。日中関係に係る包括的な情報を積極的に発信することによって、世界の人々は日中のどちらに非があるかを判断することができるだろう。

以下、国会での委員会での発言を基に、経緯、フジタの社員拘束、指揮権発動に関する議員の見解をまとめてみた[4]。丸山議員がいうように「この事件はある意味では戦後最大の事件」[1]であり、風化させてならないことを改めて認識した。

1.経緯

この事件は、2010年9月、菅直人首相、仙谷由人官房長官のときに発生した。

図:尖閣漁船衝突事件の経緯 [5]


9/7:中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突。船長逮捕。
9/9:石垣海上保安部が船長を公務執行妨害容疑で那覇地検石垣支部に送検。
9/13:船長以外の船員(14人)を帰国させ、漁船を返す。
9/19:中国人船長の拘置期間10日間延長(29日まで)。
9/20:中国はフジタの社員4名を拘束した。
9/21:フジタは社員が拘束された旨、在上海総領事館に連絡した。[6]
9/23:中国側から、日本政府に対し領事通報がある。
9/24:検察首脳会議で釈放が決まる。那覇地方検察庁が船長を処分保留で釈放と発表。
9/25:船長を釈放。
9/30:フジタの3人解放。
10/9:フジタの最後の1名解放。
11/1:漁船衝突時の映像(約7分)が、衆参予算委員会所属の一部の議員にのみ限定公開。
11/4:44分に編集された漁船衝突時の映像が、「sengoku38」によってYouTube上に流出。
11/10:海上保安官が、自らが「sengoku38」だと名乗り出る。
11/26:仙谷官房長官の問責決議。

2.フジタの社員拘束について

(1)概要

・フジタ社員の四名及び中国人社員1名が、2010年9月、河北省石家荘市における遺棄化学兵器処理関連工事(建設工事)に取り組めるかどうか、現地の事情を視察していた。
・軍事管理区域と呼ばれている区域へ立入り撮影を行ったとして、中国軍事施設保護法違反の容疑で中国当局に拘束され、いわゆる居住監視の下に置かれた。
・9月23日夜、中国国営新華社通信が、フジタ社員を取り調べている旨、報道した。
・9月30日に日本人社員3名及び中国人社員1名が解放された。
・10月9日に最後の日本人社員1名が解放された。[7]

(2)外務省の見解

・前原誠司外務大臣は、フジタの社員が開放された数週間後に、「フジタの事件、邦人拘束事案でございますけれども、これに関しては、尖閣諸島をめぐる一連の動きと関係があると断じることはできなかったということによりまして、この邦人拘束事案が起きたからといって在留邦人に対する注意喚起は特に具体的に行っておりません。」と述べている。[8] これに対し野党は厳しく追求している。

・事件の半年後に、松本剛明外務大臣は、「私どもは、その後も、政府として、中国政府に対し、被疑事実、適用条文等の事案の詳細について説明を求めてきておりますが、いまだ正式な回答は得ていないところでございます。」と答弁している。[9]

3.指揮権発動に関する国会議員他の意見

(1) 小野寺五典議員(自民党・衆)
政治が検察に介入をする、もしこの介入をしたことを政治家が明らかにしなければ、例えば私たち政治家にまつわる政治と金の問題、これだって、知らないところで検察に政治が圧力や介入をすることができることになるじゃないですか。[10]
(2) 長島昭久議員(民主党・衆)
 私は、今回この問題(注:沖縄県尖閣諸島をめぐる事案)で問われているのは、国家の意思だと思うんですね。日本国の国家の意思が問われている、そのように思うんです。したがって、検察に対する政治の介入があったかどうか、こういう問題が本質的な問題では実はない、私はそう思う。国家の意思を体現しているのは政府なんですね。国家の意思を体現しているのは政府。介入すべきときはきちっと介入する、私はそれが求められていると思いますよ。

なぜなら、外交問題というのは、法執行機関である検察の手に負えるような問題ではない、私はそう思うんですね。外交には国民の生命財産がかかっている、私はそう思います。検察ができることは、せいぜい国内法秩序を守ること。政府は、国民の生命と財産、主権と領土、これをしっかり守ることが政府の責任だと私は思います。それを、これまでの政府の説明を伺っていると、検察の判断を追認するかのような、そういう御説明がなされている。私は、この説明で納得していただける国民の皆さんは恐らく一人もおられないと思っているんです。[11]
(3) 仙谷由人国務大臣(民主党・衆) 
塩崎委員から、司法の独立、それで、先ほどから捜査に対する政治の介入があったのではないか、こういう議論がなされてまいりました。私は、この論点は大変重要な論点だと思います。つまり、与党だからこう言い、野党だからこう言いという話ではあってはならないと思います。

一体、これは嫌がらせで言っているんじゃないんですよ。一つの立場として、私の尊敬する御党の総裁の谷垣さんは、これは、逮捕した段階で釈放する手もあったということをおっしゃいます。これは、捜査に対する政治の介入、あるいは政治の指揮で、いわば警察や海上保安庁に身柄があるとき、あるいは入国管理局に身柄があるときには、そういう政治的な裁量で、外交問題もよく考えて、そういう措置をすべきであったという意見なのかもわかりません。そのことは、ある意味では捜査に対する政治の介入と大きく非難されるいわれはないのかもわかりません。

次の四十八時間以内、検察官の手持ちではありますけれども、しかし、この段階で、刑事司法に対して政治の側が、あるいは法務大臣が検察庁法十四条を行使して何らかのことを行う。もっと厳しく捜査をやれというのも、これは指揮権の発動です。あるいは、やるなというのも指揮権の発動になります。それをあえてやることが、どういう場合に許されて、どういう場合にはやってはならないのかという基準がまだ、実例というか、先例としても確立されていない。これは大いに議論をしなければならないと思います。

さらに、司法過程に入ったときに皆さん方は、いわゆる政治の介入をされたと非難を一方でしながら、外交としては拙劣だと。政治の介入をして、責任を明らかにして、捜査に対して、刑事司法に対して影響力を行使せよとおっしゃられているのかどうなのかわからない。ここを私は本当に真剣に国会で議論すべきことだと思っております。今後とも議論をしたいと思います。[12]

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