部分的には無駄な報告も含まれていたかもしれませんが、それでも「<報告・連絡・相談>は部下の義務」と言われたもの。そうした報告の合間に上司から指導が入り、すぐに実行することで部下は素早く成長できたのではないでしょうか。

 ところが、最近は「課長、いいですか?」と報告に行くと、

「残業が多過ぎる。報告はメールでいいから」

 と、報告業務を拒否する上司も登場。直接報告をするという古典的な仕事のルールが染みついた部下にしてみれば悩んでしまう時代になったのです。

 とはいえ、多くの上司は部下の行動を知りたいもの。いまだに直接相対で報告を求める上司も少なくありません。ただ、悩ましいのは、上司はすべてを報告してほしいわけではないことです。あるときには報告をしてほしくて、あるときには報告は不要だったりします。ですから、その基準が部下にはわからないのです。そんな状況に混乱して悩む部下が実際に増えているといいます。

 では、ここで1人の悩める部下を紹介しましょう。

取引先キーマンの退職を報告し忘れ、
上司の怒りが大爆発

 ネット広告会社に勤務するRさん(27歳)は、普段から上司に対して報告をきっちりしていると自負する社員。社内には業務報告システムがあるものの、

「上司に判断を仰ぐ可能性があるものは、直接報告しています」

 とのこと。そこまでしているので、自分と上司の関係は盤石だと確信している様子です。

 そんなRさんが取引先で打ち合わせをしているとき、お客様から

「そう言えば、うちの部門の担当部長が今月で定年なんだ。お宅の上司とは仕事で接点があったはず」

 と、取引先の担当部長(Tさん)が間もなく退職することを聞きました。ところが仕事が立て込んで営業会議に参加できないことが2週間も続き、上司には伝えることが出来ないまま時間が過ぎていきました。

 決して伝えたくなかったわけではありませんが、「顔を合わせたときに話せばいいレベル」と認識していました。そのため3週間ほど情報は上司のKさんに伝わらないままになっていました。

 そんなある日、Kさんが職場でRさんに声をかけてきました。

「ちょっと聞きたいのだけど、君はT部長が定年退職することを聞いていながら僕に教えてくれなかったね。なぜなんだ?」

 と、質問が飛んできました。そこで、時間がなかったこと、次回の営業会議で伝えようと思っていたこと、さらに判断を仰ぐべき内容でもないので後回しになったことを説明しました。