週刊新潮2014.10.16号
p22~26
新聞協会賞 「手抜き除染」キャンペーンに自作自演の闇がある!
火のないところに煙を立たせるのが、お家芸なのか。慰安婦虚報や「吉田調書」大誤報に留まらず、今後は、新聞協会賞まで受賞した「手抜き除染」記事でも自作自演の疑惑が浮上。朝日新聞にとって重要な情報源だった元除染作業員が、”やらせ体質”を実名告発する。
メディアにとって、スクープ記事が必要不可欠であることに異論はない。社会的影響力を維持し、さらには部数増に直結しうるからである。
しかし、特ダネを獲得するために、記者の取材活動はどの範囲まで許されるのか。
実は、昨年度の新聞協会賞を受賞した朝日の『手抜き除染』キャンペーンに、大いなる疑惑が持ち上がっている。
それは、『手抜き除染』の告発を行った元除染作業員の証言による、朝日に自作自演があったという批判である。
元除染作業員の梶村圭一郎氏(31)は、1年以上にわたって150枚超の手紙を本誌に寄せてきた。そこには、<利用するだけ利用して、捨てられた気がします>、<自身の特ダネを得るために、取材者を唆して記事を作ります>などと、使い捨てにされた”情報源”の悲痛な訴えが綴られている。
そもそも、新聞協会賞は、傍目には、業界内の論理で決められる、単なる”内輪ネタ”に映るかもしれない。とはいえ、日本新聞協会に加盟するマスコミ各社は、1957年の創設以来、その受賞をめざし、鎬(しのぎ)を削ってきた。
とりわけ、朝日は2006年に特ダネを追う特別報道部を立ち上げ、常に、新聞協会賞に照準を合わせてきたのである。
政府事故調による福島第一原発の故・吉田昌郎所長の調書を入手し、<所長命令に違反、原発撤退>(5月20日付朝刊)と根拠のない誤報を大々的に報じたのは、その特別報道部の取材班だった。朝日は、この『吉田調書』報道を新聞協会賞に応募したものの、今年度は9月3日、同じく朝日の東京社会部、特別報道部による<徳洲会から猪瀬直樹・前知事への5000万円提供>の記事が賞を獲得した。その後、『吉田調書』報道に、事実の歪曲が発覚し、記事そのものが取り消しになったのはご存じの通りだ。
ともあれ、朝日としては、一昨年は福島第一原発事故をテーマにした連載記事『プロメテウスの罠』キャンペーンと、3年連続で新聞協会賞を獲得している。なかでも、『手抜き除染』は、いかにジャーナリズムの神髄である調査報道を実践した記事であるかを自画自賛し、朝日の就活サイトでも、リクルート事件を手掛けた”伝説の記者”とともに、特別報道部の取材班が取り上げられているほどなのだ。
誘導的になっても
それは、どのような報道だったのか。
朝日による『手抜き除染』キャンペーンは、13年1月4日から始まった。この日、朝日は1面トップに<手抜き除染 横行>、<回収した土、川に投棄>と大見出しを掲げ、社会面でも<これで除染か>などとセンセーショナルに報じた。
その記事によれば、朝日の記者4人が前半の12月11~18日のあいだ、福島県の楢葉、飯館、田村の3市町村で除染現場に計130時間張り込み、決定的な”手抜き”場面を写真や動画で撮影することに成功。加えて、除染作業員約20人から、ゼネコンや下請け会社の支持で土や枝葉などをルールを破り投棄したとの証言を得たという。
「袋につめなければならない草木をここに捨てました」と話す、”20代の男性”も登場する。都内のハローワークで3次下請けの求人を見つけ、楢葉町で働く除染作業員だった。
朝日のスクープ報道の根幹をなす証言を行っているのは、この”20代男性”なのである。
記事には、次のように書かれている。
<大日本土木(編集部注・元請け会社)の現場監督は当初から、作業班約30人に「袋に詰め切れない分は捨てていい」「(除染区域を示す)テープの外の崖に投げていい」と指示し、作業員らは従った。(略)男性は納得できなかった。大きな袋を抱えて斜面を上り下りするのは確かに大変だが、これで除染したと言えるのかー>
義憤に駆られた”20代男性”は、現場監督とのやり取りを録音し、朝日の記者に提供した。
その一問一答が、
<男性「落としちゃっていいんですか」
監督「うんうん、OK。しょうがない」>
などという具合に掲載されている。
つまり、『手抜き除染』が組織ぐるみでおこなわれていることを、”20代男性”が自らの証言と隠し録音によって暴いたのだ。
朝日の『手抜き除染』キャンペーンは約半年間にわたって続けられ、結果、被災地の住民は憤慨し、発足したばかりの安倍政権はその対応に追われるハメになった。
実は、この大スクープ記事を支えた”20代男性”こそ、冒頭に触れた梶村氏なのである。
彼はなぜ、朝日の記事に関わるようになったのだろうか。
梶村氏の手紙によると、
<私が、除染作業を始めたのは、(2010年の)10月2日からです。場所は、楢葉町木戸ダム周辺で、前田JVの現場です。(略)実際、現場内では手抜き除染を含め、手当金未払い等もあり、士気は低下していました。環境省に電話しても解決せず、暗澹とした雰囲気の中、朝日新聞本社に電話をしました>
すると、その日の夜、携帯電話に、Aと名乗る女性記者から連絡があったという。
<後日会って話を聞きたいと言われ、11月上旬頃にJRいわき駅で待ち合わせをすることにしました。当日、A記者は2時間位、遅刻をして、いわき駅に着きました。そして、駅近くの”まねきねこ”という、カラオケBOXに行きました。店内に入りましたら、「自宅近くの美味しいパン屋で買った」という、クリームパンを渡され、「お近付きの印に」等と言って、オリンパス社製のボイスレコーダーを渡されました>
紙面を飾った現場監督とのやり取りは、朝日の記者からプレゼントされたボイスレコーダーで録音されたものだった。
さらに、梶村氏は手紙にこう綴っている。
<記事では、作業員が勇気を持って、録音を自身で決意した等となっていますが、実態はA記者からICレコーダーを手渡され、録音を依頼されました。しかも、現場監督が不法投棄している部分という注文付きでした。同記者は、多少誘導的になっても良いから、現場監督の録音が欲しいと言って来ました>
事実、朝日の記事になっていない部分の音声データには、現場監督から不法投棄の現地を取るべく、梶村氏が”捨ててもいいんすか?”などと執拗に問いかけている様子も記録されている。
彼の手紙はさらに、環境省でのヒアリングについても触れ、
<今年(13年)1月10日深夜、A記者の紹介で環境省へ行き、同省職員のX等三名と話し合いました。その中でテープレコーダーの件を聞かされましたので、A記者に依頼されて、等と答えました。その後、環境省が発表した報告書の中に、私が述べた内容が載っていました。同記者は、「何で、あんな事を言ったの。環境省のXに抗議して」等と言って怒っていました。私は、Xから録音テープを是非聞きたいと言われていましたので、その旨を併せて伝えたところ、「絶対に駄目」と口止めされました>
どうやら、A記者は誘導尋問させたことが露見するのを怖れていたようなのだ。
除染区域外
おまけに、隠し録音をした5日後の12月2日、梶村氏はA記者を不法投棄の現場に案内しているのが、このときも”やらせ”と批判されかねない取材があったという。
<朝日新聞動画サイトや朝日系列の報道ステーション等で、作業員のインタビューの様子を流していましたが、少なくとも私の発言内容は、A記者が作成した内容です。私が、不法投棄の現場を案内した際、一枚のメモ帳を渡され、「これを読んでいる所を、録画させて頂いても良いですか」と言われましたので、「はい」と答えて応じました>
台本通りに、A記者から「地元の人がこれを知ったらどう思いますかね?」と訊ねられ、「多分、憤られるんじゃないですかね」などと読み上げた。
当然、”梶村証言”に基づく、朝日の報道に不審の目を向ける者もいなかったわけではない。
環境省の当時の除染担当者によれば、
「環境省としても調査を開始し、朝日などから指摘のあった19件のうち、5件に手抜きがあったと認定しました。それでも、梶村さんのケースはなんとも不可解。というのは、県道から20メートル以上離れた”除染区域外”の灌木を刈り、なおかつ、”除染区域外”に投棄してあったのです。業者にとって、なんのメリットもない。ですが、朝日はそこを不法投棄現場だと報じていました」
要するに、A記者は除染区域の範囲を知らずに記事にした疑いが否めないのである。
実際、梶村氏も、
<(A記者は)明らかに作業員が捨てたゴミではない物までも、作業員の不法投棄だと言って、喜んで写真を撮っていました。実体験として、除染現場には様々な種類のゴミが捨ててあります。それを知ってか知らずか、作業員の不法投棄とするのは、A記者の偏向と言いますか、事実の捏造を感じます>
と批判している。
だから、役人はダメなのよ!
そして、一昨年の12月初め、朝日では『手抜き除染』を記事にすることが決まり、A記者の取材は本格化することになった。
<12月8日から16日までの間、A記者と一緒に、福島県いわき市に在る「わ可ば」と「鬼ヶ城」に宿泊して、取材をしていました。(略)この間の「衣・食・住」の費用は全て、朝日が出してくれました>
<四六時中、A記者と一緒に取材をしていて、賃金に不満を抱いている作業員を唆して、取材をしている印象を持ちました。特に、田村市の現場で働いていて、鬼ヶ城のコテージで寝泊まりしている作業員とは意味深な関係でした。(略)A記者の携帯に、「何処其処の現場で捨てています。早く来て下さい」と作業員から連絡があります。賃金やゼネコンに不満を抱いている作業員が、腹癒せに不法投棄のヤラセをしていました>
確かに、朝日の紙面には、田村市の除染作業員が、落ち葉の塊を川に蹴り落としているシーンを撮った連続写真が掲載されている。
A記者は、宿泊している旅館で除染作業員らにビールや中華料理を振る舞うだけでなく、ギフトカードなどを手渡すこともあったという。もしや、撮影に成功したのは、接待攻勢が功を奏したからか・・・・。
さらに、なによりも”やらせ”批判に値するのは、梶村氏を扇動し、環境省へ『手抜き除染』の告発文書を送らせた取材手法である。
それについて、梶村氏がこう語る。
「一昨年の12月26日、A記者から、”環境省の担当者と話して欲しい”と、電話がかかってきて、午後2時半に東京スカイツリー駅で待ち合わせをしました。ハイヤーに乗り込むと、A記者は環境省に電話をし、”元除染作業員と話してください”と言って、私に電話を替わった。私はA記者から指示されるままに、不法投棄が横行していることなどを説明しました」
それから、2人は上野駅近くの喫茶店で、環境大臣宛ての告発文を作成した。
「A記者は、取材ノートを見ながら、ノートパソコンに文章を打ち込んでいました。途中、”梶村くんの実名で出してくれるよね”などと訊ねてきた。近くのプリントショップで文書を印刷し、そこに署名を求められました。私が、”妻と暮らしている住所は書きたくない”と言ったら”本籍地でもいいよ”と」
すぐさま、ハイヤーで環境省に向かい、受付で除染担当者を呼び出した。
その時に対応した、当時の担当者に話を聞くと、
「確かに、その日、A記者から面会を求められました。でも、会議があったので、”いきなり来られても・・・・”と断ると、”だから、役人はダメなのよ!”などと怒られたことを覚えています」
すると、A記者は告発文書をファックスすることに決めたという。梶村氏が続ける。
「妻と渋谷で待ち合わせをしていると言うと、”じゃ、渋谷に行く途中のコンビニでファックスしよう”と言い出しました。結局、道玄坂のファミリーマートから環境省に送信し、あとで郵送したとも聞きました。告発文書にかかわる費用はすべてA記者持ちです」
これでは、ほとんどA記者が告発したも同然。しかも、環境省の調査が進まずにいると、朝日は1面に<手抜き情報放置 除染業者を聴取せず>①とのタイトルを打ち、<26日には草木の投棄を指示された20代男性が実名で手抜き情報をファックスで本省と事務所に送った>のに、環境省が放置していたことがわかったと報じたのだ(13年1月10日朝刊)。
まさに、マッチポンプ以外の何ものでもない。
独特な体質
実を言えば、梶村氏は現在、ある地方の拘置所に収監中である。そのため、取材は主に手紙のやり取りになったわけだが、逮捕された理由を訊ねると、
「いわき市内の同じ寮で生活していた除染作業員から7万円の横領罪で訴えられ、昨年の4月中旬、警察に厄介になりました。被害者の除染作業員は面会に来たとき、”朝日の記事を取り下げたら示談に応じる”などと言い出した。”お前のせいで、現場の管理が厳しくなったし、たくさんの人間が苦労させられたんだ”と詰め寄られたのです」
示談すれば不起訴になる可能性も高く、記事の取り下げも含めてA記者に連絡を取ろうとしたものの、ナシの礫だったという。
「A記者からは”ゼネコンなどから圧力がかかったら相談して”と言われていました。でも、いざ、そうなってみると、何のバックアップもしてくれなかった。むろん、私にまったく罪がないとは言いません。でも、”やらせ”と言っても過言でないくらい、取材に協力したのい、あまりの仕打ちです」
しかも、横領に問われたことがきっかけとなって、離婚問題まで生じた。さらに、それに伴う親族間のトラブルによって窃盗事件でも逮捕されたという。
さて、塀の中からの訴えに朝日はなんと答えるか。
「環境省に手抜き除染を通報する文書を送ったり、ICレコーダーで音声を録音したりしたのは、取材協力者の意思にもとづくもので、弊社記者の指示によるものではありません」(広報部)
と、木で鼻を括ったような対応である。環境省へ告発文書を送ったときのファックス代、切手代などについても誰が負担したのかさえ明らかにしようとしない。未だに、不誠実な回答を繰り返しているのだ。
京都大学の中西輝政名誉教授はこう指摘する。
「”サンゴ事件”しかり、”吉田調書”の誤報しかり、これほど自作自演記事が続発するのは、朝日の独特な体質に起因している。それは、自らの主張を押し通すためには事実を捻じ曲げることさえ厭わないという体質です。しかも、いかにメディアとしてのモラルが欠如しているか、ということに、朝日の記者はまったく気づいていないのです」
いくら、誤報を繰り返しても、独善的な体質が改められることは期待できそうにないのだ。
①<手抜き情報放置 除染業者を聴取せず>
朝日新聞『環境省、手抜き除染情報を放置 ゼネコン業者の聴取せず』2013.1.10

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201301090533.html
(何で告発したことが分かったのかなあ・・ってヤラセだとすると納得できる記事)





参考
作業員H氏→反原発工作員でした
朝日、誤報の“エリート集団”解体か 調査報道の花形「特報部」
週刊新潮 ・今や針のムシロに座らされた「吉田調書」スクープ班が待つ処分
p22~26
新聞協会賞 「手抜き除染」キャンペーンに自作自演の闇がある!
火のないところに煙を立たせるのが、お家芸なのか。慰安婦虚報や「吉田調書」大誤報に留まらず、今後は、新聞協会賞まで受賞した「手抜き除染」記事でも自作自演の疑惑が浮上。朝日新聞にとって重要な情報源だった元除染作業員が、”やらせ体質”を実名告発する。
メディアにとって、スクープ記事が必要不可欠であることに異論はない。社会的影響力を維持し、さらには部数増に直結しうるからである。
しかし、特ダネを獲得するために、記者の取材活動はどの範囲まで許されるのか。
実は、昨年度の新聞協会賞を受賞した朝日の『手抜き除染』キャンペーンに、大いなる疑惑が持ち上がっている。
それは、『手抜き除染』の告発を行った元除染作業員の証言による、朝日に自作自演があったという批判である。
元除染作業員の梶村圭一郎氏(31)は、1年以上にわたって150枚超の手紙を本誌に寄せてきた。そこには、<利用するだけ利用して、捨てられた気がします>、<自身の特ダネを得るために、取材者を唆して記事を作ります>などと、使い捨てにされた”情報源”の悲痛な訴えが綴られている。
そもそも、新聞協会賞は、傍目には、業界内の論理で決められる、単なる”内輪ネタ”に映るかもしれない。とはいえ、日本新聞協会に加盟するマスコミ各社は、1957年の創設以来、その受賞をめざし、鎬(しのぎ)を削ってきた。
とりわけ、朝日は2006年に特ダネを追う特別報道部を立ち上げ、常に、新聞協会賞に照準を合わせてきたのである。
政府事故調による福島第一原発の故・吉田昌郎所長の調書を入手し、<所長命令に違反、原発撤退>(5月20日付朝刊)と根拠のない誤報を大々的に報じたのは、その特別報道部の取材班だった。朝日は、この『吉田調書』報道を新聞協会賞に応募したものの、今年度は9月3日、同じく朝日の東京社会部、特別報道部による<徳洲会から猪瀬直樹・前知事への5000万円提供>の記事が賞を獲得した。その後、『吉田調書』報道に、事実の歪曲が発覚し、記事そのものが取り消しになったのはご存じの通りだ。
ともあれ、朝日としては、一昨年は福島第一原発事故をテーマにした連載記事『プロメテウスの罠』キャンペーンと、3年連続で新聞協会賞を獲得している。なかでも、『手抜き除染』は、いかにジャーナリズムの神髄である調査報道を実践した記事であるかを自画自賛し、朝日の就活サイトでも、リクルート事件を手掛けた”伝説の記者”とともに、特別報道部の取材班が取り上げられているほどなのだ。
誘導的になっても
それは、どのような報道だったのか。
朝日による『手抜き除染』キャンペーンは、13年1月4日から始まった。この日、朝日は1面トップに<手抜き除染 横行>、<回収した土、川に投棄>と大見出しを掲げ、社会面でも<これで除染か>などとセンセーショナルに報じた。
その記事によれば、朝日の記者4人が前半の12月11~18日のあいだ、福島県の楢葉、飯館、田村の3市町村で除染現場に計130時間張り込み、決定的な”手抜き”場面を写真や動画で撮影することに成功。加えて、除染作業員約20人から、ゼネコンや下請け会社の支持で土や枝葉などをルールを破り投棄したとの証言を得たという。
「袋につめなければならない草木をここに捨てました」と話す、”20代の男性”も登場する。都内のハローワークで3次下請けの求人を見つけ、楢葉町で働く除染作業員だった。
朝日のスクープ報道の根幹をなす証言を行っているのは、この”20代男性”なのである。
記事には、次のように書かれている。
<大日本土木(編集部注・元請け会社)の現場監督は当初から、作業班約30人に「袋に詰め切れない分は捨てていい」「(除染区域を示す)テープの外の崖に投げていい」と指示し、作業員らは従った。(略)男性は納得できなかった。大きな袋を抱えて斜面を上り下りするのは確かに大変だが、これで除染したと言えるのかー>
義憤に駆られた”20代男性”は、現場監督とのやり取りを録音し、朝日の記者に提供した。
その一問一答が、
<男性「落としちゃっていいんですか」
監督「うんうん、OK。しょうがない」>
などという具合に掲載されている。
つまり、『手抜き除染』が組織ぐるみでおこなわれていることを、”20代男性”が自らの証言と隠し録音によって暴いたのだ。
朝日の『手抜き除染』キャンペーンは約半年間にわたって続けられ、結果、被災地の住民は憤慨し、発足したばかりの安倍政権はその対応に追われるハメになった。
実は、この大スクープ記事を支えた”20代男性”こそ、冒頭に触れた梶村氏なのである。
彼はなぜ、朝日の記事に関わるようになったのだろうか。
梶村氏の手紙によると、
<私が、除染作業を始めたのは、(2010年の)10月2日からです。場所は、楢葉町木戸ダム周辺で、前田JVの現場です。(略)実際、現場内では手抜き除染を含め、手当金未払い等もあり、士気は低下していました。環境省に電話しても解決せず、暗澹とした雰囲気の中、朝日新聞本社に電話をしました>
すると、その日の夜、携帯電話に、Aと名乗る女性記者から連絡があったという。
<後日会って話を聞きたいと言われ、11月上旬頃にJRいわき駅で待ち合わせをすることにしました。当日、A記者は2時間位、遅刻をして、いわき駅に着きました。そして、駅近くの”まねきねこ”という、カラオケBOXに行きました。店内に入りましたら、「自宅近くの美味しいパン屋で買った」という、クリームパンを渡され、「お近付きの印に」等と言って、オリンパス社製のボイスレコーダーを渡されました>
紙面を飾った現場監督とのやり取りは、朝日の記者からプレゼントされたボイスレコーダーで録音されたものだった。
さらに、梶村氏は手紙にこう綴っている。
<記事では、作業員が勇気を持って、録音を自身で決意した等となっていますが、実態はA記者からICレコーダーを手渡され、録音を依頼されました。しかも、現場監督が不法投棄している部分という注文付きでした。同記者は、多少誘導的になっても良いから、現場監督の録音が欲しいと言って来ました>
事実、朝日の記事になっていない部分の音声データには、現場監督から不法投棄の現地を取るべく、梶村氏が”捨ててもいいんすか?”などと執拗に問いかけている様子も記録されている。
彼の手紙はさらに、環境省でのヒアリングについても触れ、
<今年(13年)1月10日深夜、A記者の紹介で環境省へ行き、同省職員のX等三名と話し合いました。その中でテープレコーダーの件を聞かされましたので、A記者に依頼されて、等と答えました。その後、環境省が発表した報告書の中に、私が述べた内容が載っていました。同記者は、「何で、あんな事を言ったの。環境省のXに抗議して」等と言って怒っていました。私は、Xから録音テープを是非聞きたいと言われていましたので、その旨を併せて伝えたところ、「絶対に駄目」と口止めされました>
どうやら、A記者は誘導尋問させたことが露見するのを怖れていたようなのだ。
除染区域外
おまけに、隠し録音をした5日後の12月2日、梶村氏はA記者を不法投棄の現場に案内しているのが、このときも”やらせ”と批判されかねない取材があったという。
<朝日新聞動画サイトや朝日系列の報道ステーション等で、作業員のインタビューの様子を流していましたが、少なくとも私の発言内容は、A記者が作成した内容です。私が、不法投棄の現場を案内した際、一枚のメモ帳を渡され、「これを読んでいる所を、録画させて頂いても良いですか」と言われましたので、「はい」と答えて応じました>
台本通りに、A記者から「地元の人がこれを知ったらどう思いますかね?」と訊ねられ、「多分、憤られるんじゃないですかね」などと読み上げた。
当然、”梶村証言”に基づく、朝日の報道に不審の目を向ける者もいなかったわけではない。
環境省の当時の除染担当者によれば、
「環境省としても調査を開始し、朝日などから指摘のあった19件のうち、5件に手抜きがあったと認定しました。それでも、梶村さんのケースはなんとも不可解。というのは、県道から20メートル以上離れた”除染区域外”の灌木を刈り、なおかつ、”除染区域外”に投棄してあったのです。業者にとって、なんのメリットもない。ですが、朝日はそこを不法投棄現場だと報じていました」
要するに、A記者は除染区域の範囲を知らずに記事にした疑いが否めないのである。
実際、梶村氏も、
<(A記者は)明らかに作業員が捨てたゴミではない物までも、作業員の不法投棄だと言って、喜んで写真を撮っていました。実体験として、除染現場には様々な種類のゴミが捨ててあります。それを知ってか知らずか、作業員の不法投棄とするのは、A記者の偏向と言いますか、事実の捏造を感じます>
と批判している。
だから、役人はダメなのよ!
そして、一昨年の12月初め、朝日では『手抜き除染』を記事にすることが決まり、A記者の取材は本格化することになった。
<12月8日から16日までの間、A記者と一緒に、福島県いわき市に在る「わ可ば」と「鬼ヶ城」に宿泊して、取材をしていました。(略)この間の「衣・食・住」の費用は全て、朝日が出してくれました>
<四六時中、A記者と一緒に取材をしていて、賃金に不満を抱いている作業員を唆して、取材をしている印象を持ちました。特に、田村市の現場で働いていて、鬼ヶ城のコテージで寝泊まりしている作業員とは意味深な関係でした。(略)A記者の携帯に、「何処其処の現場で捨てています。早く来て下さい」と作業員から連絡があります。賃金やゼネコンに不満を抱いている作業員が、腹癒せに不法投棄のヤラセをしていました>
確かに、朝日の紙面には、田村市の除染作業員が、落ち葉の塊を川に蹴り落としているシーンを撮った連続写真が掲載されている。
A記者は、宿泊している旅館で除染作業員らにビールや中華料理を振る舞うだけでなく、ギフトカードなどを手渡すこともあったという。もしや、撮影に成功したのは、接待攻勢が功を奏したからか・・・・。
さらに、なによりも”やらせ”批判に値するのは、梶村氏を扇動し、環境省へ『手抜き除染』の告発文書を送らせた取材手法である。
それについて、梶村氏がこう語る。
「一昨年の12月26日、A記者から、”環境省の担当者と話して欲しい”と、電話がかかってきて、午後2時半に東京スカイツリー駅で待ち合わせをしました。ハイヤーに乗り込むと、A記者は環境省に電話をし、”元除染作業員と話してください”と言って、私に電話を替わった。私はA記者から指示されるままに、不法投棄が横行していることなどを説明しました」
それから、2人は上野駅近くの喫茶店で、環境大臣宛ての告発文を作成した。
「A記者は、取材ノートを見ながら、ノートパソコンに文章を打ち込んでいました。途中、”梶村くんの実名で出してくれるよね”などと訊ねてきた。近くのプリントショップで文書を印刷し、そこに署名を求められました。私が、”妻と暮らしている住所は書きたくない”と言ったら”本籍地でもいいよ”と」
すぐさま、ハイヤーで環境省に向かい、受付で除染担当者を呼び出した。
その時に対応した、当時の担当者に話を聞くと、
「確かに、その日、A記者から面会を求められました。でも、会議があったので、”いきなり来られても・・・・”と断ると、”だから、役人はダメなのよ!”などと怒られたことを覚えています」
すると、A記者は告発文書をファックスすることに決めたという。梶村氏が続ける。
「妻と渋谷で待ち合わせをしていると言うと、”じゃ、渋谷に行く途中のコンビニでファックスしよう”と言い出しました。結局、道玄坂のファミリーマートから環境省に送信し、あとで郵送したとも聞きました。告発文書にかかわる費用はすべてA記者持ちです」
これでは、ほとんどA記者が告発したも同然。しかも、環境省の調査が進まずにいると、朝日は1面に<手抜き情報放置 除染業者を聴取せず>①とのタイトルを打ち、<26日には草木の投棄を指示された20代男性が実名で手抜き情報をファックスで本省と事務所に送った>のに、環境省が放置していたことがわかったと報じたのだ(13年1月10日朝刊)。
まさに、マッチポンプ以外の何ものでもない。
独特な体質
実を言えば、梶村氏は現在、ある地方の拘置所に収監中である。そのため、取材は主に手紙のやり取りになったわけだが、逮捕された理由を訊ねると、
「いわき市内の同じ寮で生活していた除染作業員から7万円の横領罪で訴えられ、昨年の4月中旬、警察に厄介になりました。被害者の除染作業員は面会に来たとき、”朝日の記事を取り下げたら示談に応じる”などと言い出した。”お前のせいで、現場の管理が厳しくなったし、たくさんの人間が苦労させられたんだ”と詰め寄られたのです」
示談すれば不起訴になる可能性も高く、記事の取り下げも含めてA記者に連絡を取ろうとしたものの、ナシの礫だったという。
「A記者からは”ゼネコンなどから圧力がかかったら相談して”と言われていました。でも、いざ、そうなってみると、何のバックアップもしてくれなかった。むろん、私にまったく罪がないとは言いません。でも、”やらせ”と言っても過言でないくらい、取材に協力したのい、あまりの仕打ちです」
しかも、横領に問われたことがきっかけとなって、離婚問題まで生じた。さらに、それに伴う親族間のトラブルによって窃盗事件でも逮捕されたという。
さて、塀の中からの訴えに朝日はなんと答えるか。
「環境省に手抜き除染を通報する文書を送ったり、ICレコーダーで音声を録音したりしたのは、取材協力者の意思にもとづくもので、弊社記者の指示によるものではありません」(広報部)
と、木で鼻を括ったような対応である。環境省へ告発文書を送ったときのファックス代、切手代などについても誰が負担したのかさえ明らかにしようとしない。未だに、不誠実な回答を繰り返しているのだ。
京都大学の中西輝政名誉教授はこう指摘する。
「”サンゴ事件”しかり、”吉田調書”の誤報しかり、これほど自作自演記事が続発するのは、朝日の独特な体質に起因している。それは、自らの主張を押し通すためには事実を捻じ曲げることさえ厭わないという体質です。しかも、いかにメディアとしてのモラルが欠如しているか、ということに、朝日の記者はまったく気づいていないのです」
いくら、誤報を繰り返しても、独善的な体質が改められることは期待できそうにないのだ。
①<手抜き情報放置 除染業者を聴取せず>
朝日新聞『環境省、手抜き除染情報を放置 ゼネコン業者の聴取せず』2013.1.10
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201301090533.html
(何で告発したことが分かったのかなあ・・ってヤラセだとすると納得できる記事)
参考
作業員H氏→反原発工作員でした
朝日、誤報の“エリート集団”解体か 調査報道の花形「特報部」
週刊新潮 ・今や針のムシロに座らされた「吉田調書」スクープ班が待つ処分
コメント
コメント一覧
朝日も新潮も
元除染作業員に
いいように使われただけのことだと思います。
この手の話は今までも沢山あって
告発報酬を狙って来県する人も少なくありません。
当時は出入りの規制もかかったエリアの除染で
しかも誰も住んでいない山間部の作業での告発で
誰が徳をするのかは考えればわかること。。
それらを考慮した上で
改めて田村での手抜きを冷静に見てみると
基本的なことなんですが
川に流したとされる落ち葉等が
本当に除染対象物だったのかの確証がない。
現場では全てが対象物ということはありません。
事前モニタリングで回収するものと
そうではないものを区別します。
何でもかんでも回収したのでは
仮置場がいくらあっても足りない。。
そして朝日が張り込んだと言う
2012年12月11日~18日の8日間で延べ130時間・・・
http://www.asahi.com/articles/ASGB77VF6GB7UUPI00D.html
ちなみに12月16日は日曜日で作業は無いはずなので
手抜き作業を張り込むとすれば実質7日間。
単純に1日18時間。
作業員でさえ8時~17時で1日9時間です。
この時期は17時を過ぎれば真っ暗。
日の出も遅い。
1日18時間も何をやっていたのでしょうか・・・
しかも当時は関係者以外入れないエリアで・・
現場取材が本当だとしたら
忍者としかいいようがありません。。
福島 信夫山ネコの憂うつ
http://shinobuyamaneko.blog81.fc2.com/
地元でみている人は、又違った見解があるのですね。
リンクありがとうございます。あまり知識ないので大変参考になりました。
>この時期は17時を過ぎれば真っ暗。
>日の出も遅い。
>1日18時間も何をやっていたのでしょうか・・・
( ゚Д゚)・・・・
半袖で農作業してる人の写真を南京大虐殺(南京入城は12月)の証拠アルと言ってるのを思い出しました(´・ω・`)
火の気もないのに山の中18時間張り込んだんでしょうか?
言われてみると色々不思議
>川に流したとされる落ち葉等が
>本当に除染対象物だったのかの確証がない。
ですねー。スクープって言うんでどんな証拠が!?と思ったら落ち葉蹴ってるだけで(やらせ疑惑の記事を先に見てしまったせいかもしれませんが)
こんなの何の証拠にもならんと拍子抜けしてしまいました。