相続の配偶者分増加へ　婚姻２０年以上の遺産　住居は分割対象外に

　民法の相続分野の見直しを進めている法制審議会（法相の諮問機関）の部会は十八日、婚姻関係が二十年以上の夫婦の場合、配偶者が生前贈与や遺言で与えられた住居は、相続人が遺産分割で取り分を計算する際の対象から除外する案をまとめた。配偶者は、法定相続に基づくと住居を除いた遺産の二分の一を得ることになり、住居を含めた遺産の二分の一を得る現在の仕組みよりも取り分が増える形となる。

　現行法では、配偶者が住居の所有権を得ると、評価額次第では残る遺産の分割で得られる財産が少額にとどまり、働くことが難しい高齢者だと生活が不安定になる恐れがある。案は高齢化社会が進む中、生活の困窮を防ぐ狙いがある。

　現在は住居が生前贈与されるなどしていても、遺産分割の際には改めて住居を含めて取り分を計算するが、案では住居を除外して計算することになる。法務省は、配偶者に住居を与えた故人には、住居を遺産と見なさない意思があったと推定する規定を民法に設ける方針で、八月上旬〜九月末に意見公募を実施。二〇一八年一月ごろまでに要綱案を作成し、同年の通常国会に民法改正案の提出を目指す。

　婚姻期間の長さにかかわらず、現行法では法定相続分が一定となっているため、部会は財産形成に対する配偶者の貢献が大きい場合、相続分を増やす方向で検討を進めてきた。昨年、婚姻関係が一定期間（二十年または三十年）以上の場合、遺産分割の配偶者の法定相続分を現行の二分の一から三分の二に引き上げる案を示したが、反対意見が多かったため、別の案を検討していた。

　さらに部会は、故人が残した預貯金について、相続人が遺産分割する前でも、一定の仮払いを受けられる制度を創設する案もまとめた。これは一六年十二月、最高裁が、預貯金は法定割合分をそのまま相続し、遺産分割の対象にはならないとしていた従来の判例を変更し、遺産分割の対象となるとしたことを受けた対応。