中国共産党内における共青団系の派閥は、その大親分であった1980年代の胡耀邦の時代以来、日本に対して比較的好意的で知日派も多いことで知られる。共青団は現在政権を握る習近平との折り合いも悪い。

 共青団中央が今回、ネット上の愛国者に冷や水をかけるような文章を発表したのは、習近平政権が推し進める過度の愛国アピールに釘を刺す意図もあるのだろう。投稿の真意は、日本の国情を論じることにあるのではなく、中国国内の政治的な駆け引きにあるという意地悪な見方も可能である(事実、『新華網』など政府系メディアに転載された本文の要約版では、原文に記されていた日本についての具体的な話はほとんど削ぎ落とされ、中国人の心構えを説く部分ばかりがピックアップされている)。

45年ぶりに変化しつつある日本観

 ただ、それでも読み取れることはある。現代の中国では従来のような「反日」ではなく、長年の停滞が続く日本をあざ笑う「侮日」の風潮がネット世論の一部で生まれはじめている点。また、そんな中国人の油断に警鐘を鳴らしたい共青団ですらも、国内の愛国者たちを説得するにあたって、日本に「前途の希望がない」(原文は「前途無亮」)ことを前提とした論理を当たり前のように用いている点などだ。

 なにより今回の投稿文で衝撃的なのは、従来の中国人が日本を肯定的に論じる際に必ず口にしてきた「日本人は礼儀正しい」「日本の科学技術は先進的だ」「日本のものづくりはすごい」といった、漠然としたリスペクトがばっさり切り捨てられている点だろう。

 1972年の日中国交正常化以来、中国人の日本へのイメージは、過去の戦争被害への憎しみと、アジア随一の経済力や科学技術の発展を実現させた先進国への羨望と・・・、という愛憎入り交じるものだったのだが、それが本質的に変質し始めているようにも見える。

 他にも、近年は中国国内のコラム記事の見出しや質問サイトなどで、日本の停滞を指摘する意見が見られることが少なくない。一例を紹介しておきたい。