イワナを釣り、山菜を採り、野イチゴを摘むなど、食料は現地で調達する自給自足のサバイバル登山家として知られる服部文祥さん。この6月、イラストレーターの妻・小雪さんと中学1年生の娘・秋(しゅう)さん、愛犬・ナツとともに日本有数の秘境・新潟県の早出川源流域を訪れました。
サバイバル技術なら百戦錬磨の父親が、都会育ちの娘に何を教えるのか? この夏家族で旅行をする方、7月15日放送の「大自然グルメ百名山」は必見ですよ! 撮影の裏話を、山田和也ディレクターに伺いました。
「もっと深く山を体感したい」服部文祥の登山哲学
――番組に登場する服部文祥さんは、どんな人物なのですか?
服部さんは、最高難度の“K2”(標高8,611mの、エベレストに次ぐ世界第2位の山)に登頂した実力の持ち主です。しかし、「今後も高い山に登り続けたいわけではない」とおっしゃっています。というのも、7,000mクラスでも前人未踏の山は少ないですし、服部さん自身もさまざまな山を踏破しているので、高い山に登るモチベーションが下がっているんですよ。
K2レベルの登頂者になると、登山界では一目置かれる存在です。しかし、実際に登山する際は何十人もの隊員が同行して、荷物を運んでもらいながら、決まったルートを登ります。このやり方を否定しているわけではありませんが、「果たしてこれは本当に“登山”と言えるのか? 単なる“移動”ではないか?」と、服部さんは自問自答した結果、限られた装備で山に入る“サバイバル”を始めました。
道のないところに分け入り、自力で食料を調達し、地形や天気を確認して進む。「人間よりも獣に近い感覚になると、山をより深く体感できる。そこに本来の楽しさがある」と服部さんは考えています。
――今回撮影をした早出川は、どんな場所なのでしょうか?
新潟県の村松町にある自然豊かな源流域で、周囲には登山道や人工物が一切ない100%の天然の山です。ちなみに渓流釣りでは有名なスポットで、約30cmのイワナが採れるんですよ!
今回のロケでは、トータルで5日間滞在しました。まず、源流域にたどり着くために尾根を越え、川沿いで2〜3日キャンプ。その間に食料をたくわえて奥へ進んでいくというスケジュールです。専用のシューズを履いて沢を登っていきましたが、ときには滝を登らなければいけなかったので、大変でしたね。
――なぜ歩きづらい川を進むのですか?
地図で現在地を見失わないためです。森に入ると、自分たちがどこにいるか分からなくなってしまうのですが、川をたどっていけば地図の上でルートを確認できるんですよ。ただ、初心者の方が川に添って進むと危険な場合もありますので、まねしないでくださいね!
山には食料がいっぱい! サバイバル登山の知恵と技術
――小雪さんと秋さんの様子はいかがでしたか?
小雪さんは、食料を持っていかないことに不安を感じていて、初日は秋さんと「生きて帰ろうね」と話していました(笑)。ですが、山から降りて感想を聞いたときは「半信半疑でついてきたけど、山はとても豊かで、飢えることがなかったので驚きました」とおっしゃっていました。
ロケ中は、イワナのほかにヒキガエルやシマヘビを食べたのですが、実はどちらも古くから食されていて、とてもおいしいんです。これも、“サバイバル登山”にたけた服部さんの技術と知識があるからこそ味わえるんですよ。最小限の道具で、雨でも火を起こして食材をおいしく調理できる、そんな生きるための知識と技術の大切さを見せてくれます。
家族が体験した、山での成長ストーリー
――ずばり、見どころはどこでしょうか?
個人的には、服部さんの愛犬・ナツに助演女優賞をあげたいです(笑)。ナツは都会で生まれ育った犬なので、水に入ることも岩場を登ることもできず、時には抱っこしてもらいながら進んでいました。しかし段々と自分で考えて進めるようになり、岩場も自力でピョンピョン飛び越えられるように。そんなナツの成長が、見どころの1つですね。
また、服部さんはなんでもできる“スーパーお父さん”なので、小雪さんも秋さんも尊敬しています。常に家族の安全を守り、たくさん食べ物を持って帰る父親を、家族は信頼する。現代ではなかなか見られない家族の形を捉えることができたと思いますので、ぜひ見ていただきたいと思います。
ただ、小雪さんも秋さんもだんだん自分達で食料を調達できるようになっていきます。自分で取った生き物を殺して食べることを経験し、何を思うのか……。“自分でやってみること”の大切さが伝わる展開になっているので、どうぞお楽しみに!
美しい渓流に、見たこともないくらい大きなイワナ。ワタクシも「こんな夏休みを過ごしてみたい!」と思いました。
楽しくて、愉快で、ちょっとドキドキの家族アドベンチャー、7月15日(土)放送の「大自然グルメ百名山」を、お見逃しなく〜♪