厳罰化でニッポンは「性犯罪大国」になる
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厳罰化でニッポンは「性犯罪大国」になる

性犯罪を厳罰化した改正刑法が施行された。明治40年の刑法制定以来となる大幅な見直しで、被害者の告訴を必要とする「親告罪」規定の撤廃が改正の柱だ。被害者の精神的負担が大きく、事件化は氷山の一角とも言われる。潜在化した性暴力の立件が増えれば、ニッポンは間違いなく「性犯罪大国」になる。

性犯罪を厳罰化した改正刑法が施行された。明治40年の刑法制定以来となる大幅な見直しで、被害者の告訴を必要とする「親告罪」規定の撤廃が改正の柱だ。被害者の精神的負担が大きく、事件化は氷山の一角とも言われる。潜在化した性暴力の立件が増えれば、ニッポンは間違いなく「性犯罪大国」になる。

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男性だって被害者だった

  学生時代、埼玉県内に独り暮らしをしながら都内まで通学をしていたのですが、埼京線で痴漢に遭遇したことがあります。そのときは怖くて相手の顔を見ることもできませんでした。
 DV被害も受けたことがあります。私はゲイ(男性同性愛者)で未婚・別居の付き合いだったので、デートDVといったほうが正確かもしれません。 当時、パートナーだった男性と些細(ささい)なケンカをしたときに「おまえはネコ(受けの意味)なんだから、タチ(攻めの意味)の言うことを聞けよ!」と訳の分からないことを言われたので、私が「意味分からないんだけど」と逆らうと、大声を出されたりたたかれたりと怖かったです。そのときには、男女間だけではなく同性間でもDVってあるのだなと驚きました。
いじめや暴力を受けた経験
いじめや暴力を受けた経験
 そして性犯罪を厳罰化する改正刑法が先月成立しました。強姦罪の法定刑引き上げや、起訴するのに被害者の告訴が必要となる「親告罪」規定の削除が柱となっています。性犯罪に関する刑法の大幅改正は、明治時代の制定以来約110年ぶりとなります。本日、7月13日から施行されます。改正法では強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更しました。さらに、これまで女性に限定されていた被害者に男性を含め、性交類似行為も対象となります。
 これまで性暴力加害者の多くが男性だから、男性が被害者になることはない、男性は苦しみを表に出さないので、被害は深刻ではないと思われてきました。こうして存在や苦しみを見えなくされたたくさんの男性サバイバーが、孤立のなかで苦しんできたのです。
 一方で、私が代表を務めている「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」調査結果ではLGBTなどのセクシュアルマイノリティーの児童生徒が性的な暴力の被害に遭っていることが判明しています。
 とくに「性別違和のある男子」の23%が服を脱がされたり、恥ずかしいことを強要されたりするなどの性的な暴力被害を経験しています。男性、女性、LGBT、子供などすべての人々の性の安全という人権を守ることはとても重要なことです。今回の法改正において、ジェンダーに関係なく性犯罪の被害者になり得るという意識の広がりが期待されます。(明智カイト「Yahoo個人ブログ」 2017.7.13 一部抜粋)

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「優しい隣人」に暗い影

不合理極まりなかった刑法

法務省旧本館。刑法施行(1908年)前の1895年、司法省庁舎として竣工した
 刑法は、明治時代に制定され、性犯罪に係る大きな改正は110年ぶりです。報道では、主に、現行刑法の強姦罪の名称を変更し、罰則を重くするなどの改正が取り上げられていますが、それだけではなく、実は、明治時代の男尊女卑の思想に大きく終止符をうつ改正でもありました。というのは、現行刑法では、強盗犯が引き続き強姦に及んだ場合、「強盗強姦罪」として無期懲役の刑もある重罪です。
 しかし、その順序か逆の場合、つまり、強姦犯が、被害女性が怖がっているのを見て、引き続いて強盗に及んだ場合、無期懲役などの重罪にはなりません。単に順番が違うだけで、どうして刑の重さがそんなに違うのか。被害女性の肉体的、精神的侵害は同じであるのに、不合理極まりないのです。結局、明治時代には、強姦は重罪と見られておらず、重くない強姦を犯したら、被害女性が怖がるのを見てつい出来心的に強盗に及んだとすれば、最初から悪質な強盗を犯した上、強姦まで犯した場合と比較して、情状が重いとまではいえないという理由だと思います。
 この度の改正において、強盗と強姦の前後・順番を問わず、同じく重罪とされました。実は、この改正、私にとって、ことのほか思い入れがありました。この男尊女卑の思想を刑法の次元でも改正しなければならない。それが、議員を目指した私の一つの動機です。4年前の参議院議員全国比例選挙に出馬した際の選挙公約にも掲げていたからです。その選挙では、残念ながら次点となり当選できませんでした。
 その選挙の際に、池袋などにおいて私の応援演説をしてくれたのが小池代議士(当時)でした。そして、その後も、小池代議士は、「若狭さん、この性犯罪の改正は、女性の人権上大変大事なので、引き続き力を尽くしましょう」と言われ、私の背中を押してくれたのが小池代議士でした。その後、私は、衆議院議員になる前、衆議院議員になってからも、法務省に働きかけ、今回の改正で、明治時代の男尊女卑の思想に、この部分に限っては、ピリオドを打てたというものです。(若狭勝「そのL字交差点に立って」2017.06.17
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